◎第一の関心事は冥想修行
釈迦は、超能力をなにげなく用いる。
ジャータカ(釈迦前生譚)の320話に薄情者前生物語というのがあり、この中に釈迦が二人の資産家夫婦の訪問をアポなしで受ける場面がある。(師は釈迦)
『二人は、ジェータ林の近くに来て、
「水を飲もう」と僧林に入り、水を飲んだ。師は早朝にその二人が<聖者の最初の境地>に達する可能性があることを見ぬき、〔二人が〕やってくるのをお待ちになりながら、香気ある房舎の一室で六色の仏の光明を放ちつつすわっておられた。
二人は水を飲んでからやって来て、師を拝んですわった。』
釈迦が早朝に、その超能力で、二人の夫婦が来訪することを予知し、なおかつその二人が<聖者の最初の境地>に達する可能性があるのを真っ先に見ぬいたことがポイント。
占い者なら、金持ちなのか、健康なのか、夫婦仲がうまくいっているのかなどと、通俗的なことを見たがるものだろうが、釈迦の関心はその一事にある。まずは冥想修行であって、そしてどうやって悟りに導けるかが第一。
ジャータカは史実ではないのだろうが、釈迦であったらこうだろうという、気軽な超能力使用を含めた日常の所作がうかがえる一場面である。