◎ウダーナヴァルガ
(2009-05-18)
釈迦の名を借りた経典は多い。その中で釈迦本人の言と言われる数少ないものが、ウダーナヴァルガ(感興のことば)。
『25.来ることも無く、行くことも無く、生ずることも無く、没することも無い。住してとどまることも無く、依拠することも無い。――――それが苦しみの終滅であると説かれる。
26.水も無く、地も無く、火も風も侵入しないところ---、そこには白い光も輝かず、暗黒も存在しない。
27.そこでは月も照らさず、太陽も輝かない。聖者はその境地についての自己の沈黙をみずから知るがままに、かたちからも、かたち無きものからも、一切の苦しみから全く解脱する。
28.さとりの究極に達し、恐れること無く、疑いがなく、後悔のわずらいのない人は生存の矢を断ち切った人である。これが彼の最後の身体である。
29.これは最上の究極であり、無上の静けさの境地である。一切の相が滅びてなくなり、没することなき解脱の境地である。』
(真理のことば感興のことば/中村元訳/岩波文庫P244から引用)
修行の基本は、悪を為さず、善を為すこと。そこから始まって、地水火風の四大・四元素もない現象の生起しない世界に踏みいる。そこには光も闇もない。
これはもはや人間個人の世界ではなく、それを描写するに値する言葉もない世界のこと。第六身体以上の世界でのこと。
ウダーナヴァルガには所々に、解脱する人は最後の肉体であることが語られているが、今生で解脱するような人は輪廻転生の最終ターンとしての肉体であることが、堂々と指摘されている。さすがに釈迦であり、そのフランクな語り口で重厚な真実を惜しげもなく述べている。