「京都御所」一般公開の参観記シリーズ3回目の今日は、「春興殿」から「紫宸殿」までを参観順路に沿ってご紹介します。
「春興殿」
「春興殿」は紫宸殿の東に位置しています。ここは天皇継承のしるしである三種の神器の内、御鏡を安置するところですが、現在は、御鏡は東京の賢所にあって、即位の大礼を行う時ここに移御し、奉安されます。
現在の建物は、大正天皇の即位の折りに造られたもので総檜造り、銅葺き入母屋屋根の御殿で、内部は外陣、内陣、内々陣の三つよりなっており、内陣は天皇御拝の位置となっています。
神鏡を奉安する所は内々陣だそうです。
「承明門(じょうめいもん)」
「承明門」は、紫宸殿の前面にあって、築地塀の諸門と異なり、朱色の円柱を用いた瓦葺の中国風の門です。大きさは、五間、三戸、十二脚門となっています。
この門は、天皇行幸、並びに上皇御譲位の後の出入りに用いられます。また、恒例、臨時の節会、その他、御即位、御元服、立后、立太子など厳儀の際この門を開きます。
写真では見えませんが、中央の正面に岡本保誠の「承明門」の額が掲げられています。
・朱色が鮮やかな「承明門」です。奥の御殿が紫宸殿です。
「日華門」
「日華門」は、紫宸殿の南庭の東側にあり、「承明門」と同様、朱色の円柱を用いた瓦葺の中国風の門です。内裏を構成する内閤門のうちの一つです。
「紫宸殿」
「紫宸殿」は、即位礼などの重要な儀式を行う最も格式の高い正殿です。大正天皇、昭和天皇の即位礼もここで行われました。
建築様式は入母屋、檜皮葺(ひわだぶき)の高床式宮殿建築で、南面して建てられており、中央に天皇の御座「高御座(たかみくら)」、その東に皇后の御座「御帳台(みちょうだい)」が置かれています。
現在の高御座と御帳台は、大正天皇の即位礼に際して造られたものです。
・天皇の御座「高御座(たかみくら)」です。不鮮明なので、下に参考画像を掲載します。
(参考)
・これは平城遷都1300年祭のときに大極殿に作られた実物大の「高御座(たかみくら)」です。
・皇后の御座「御帳台(みちょうだい)」です。
・「紫宸殿」と軒廊(こんろう)です。「紫宸殿」の前面には白砂の南庭が広がり、東側に「左近の桜」、西側に「右近の橘」が植えられています。
「左近の桜」と「右近の橘」の由来
「左近の桜」と「右近の橘」は、平安宮内裏の紫宸殿(南殿ともいう)の前庭に植えられている桜とタチバナのことで、左近・右近は左近衛府(さこんえふ)・右近衛府(うこんえふ)の略称です。
平安時代以降の儀式の時、左近衛府の官人は紫宸殿の東方に、右近衛府の官人は西方に列して陣をしき、ちょうどその陣頭の辺に植えられているのでこの名があるそうです。
「左近の桜」は、元は梅であって、794年の平安遷都のとき桓武天皇によって植えられましたが、960年の内裏焼亡の際に焼失し、内裏新造のとき、梅に代えて重明親王(しげあきらしんのう)の家の桜を植えたものだそうです。
また、「右近の橘」は平安遷都以前、そこに住んでいた橘大夫という人の家に生えていたものといわれています。
・「紫宸殿」の東側に植えられている「左近の桜」です。
・「紫宸殿」西側に植えられている「右近の橘」です。防霜のため覆屋が設置されていました。