盛岡の家、シリーズ10回目です。
前回に引き続き、構造の補強の様子です。
最近は新築ではプレカット、と呼ばれるシステムが圧倒的に普及してきています。
これは、CADに書かれた設計図を入力してやると、
自動的に必要な構造材を、マシーンカットしてくれるもの。
建築現場に運び込んで、現場ではほぼ組み立てるだけで
きわめて短期間で、「建て方工事」が終了できるのですね。
木造の工事が合理化されたという意味では、すばらしいと思います。
でも、たとえばこうした写真のような「構造補強」といった現場では
左下写真にあるように、その現場の状況に合わせて柔軟に対応できる、
大工造作技術が不可欠になります。
長い年月を耐えてきた古い構造材をできるだけ生かしながら
その建物の建築当時以上の構造強化を図るためには
継ぎ足すように「新材」で補強していかなければなりません。
そうすると必然的に、現場で採寸しながら、組み手部分も「工夫しながら」
長期的な構造性能を発揮させる大工技術が求められるのです。
こうした技術は、しかし、プレカットの普及とともに
かなり希少なものになってきていると思います。
もちろん合理化自体は当然のことだし、それを後戻りさせることは難しいと思います。
でも一方で、いまある建築の再生利用とか、
サスティナブルな建築を考えていけば、当然こういう技術の延命も必要。
技術って、案外簡単に「消えてしまう」ものでもあるのです。
私たち自身だって、昔はできたことが、必要がなくなって
今もう一度やれと言われても、にわかにはできない、ってこと多いですよね。
身近な例で言えば、わが社の建築工事のときに頼んだ電線の露出配線。
あのときは、北海道でもうその技術を持っていたのは
たったひとりだけで、ホントに技術が消えてなくなる寸前だったんですよね。
そういう意味では、リフォームは、技術を持っている工務店にとっては
大きなチャンスなのだ、ということはできますね。
量的には日本の所帯数の総計を大きく上回るストックがある住宅業界。
必然的に、「いまあるものを、長く延命させて利用可能にする技術」
というものが、社会から求められてくると思うのです。
そのときに、適切に建物を診断し、良好な性能を足していけるような
頼りになる工務店であってほしいと、思いますね。