三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

ニシン漁場の食卓

2008年09月24日 06時31分44秒 | Weblog



最近は北海道内でも、歴史的な建築物の保護再生が進んでいるようですね。
きのうご紹介したような、北海道開拓記念館の活動などが
そうした動きを支えているように思います。
きのうも、小樽の奥の余市にカミさんと出かけてきまして、
いろいろ歴史的な建築物などを見学してきました。
カミさんとこうして出かけられるのはありがたいと思っています。

で、写真は江戸期の「ニシン漁場」内部の様子です。
ニシン漁には、日本海側の東北北陸から多くの出稼ぎ労働力が動員されました。
そういう住み込み労働者に対して、給仕された食堂の様子。
とはいっても、専用に膳を用意するのではなく、
ここでは、床下にごらんのような椅子を据え付けてあって、
その上に普段は架けている床板を外すと、
そのまま、食堂に早変わりして、しかもその床板がそのまま、
食卓テーブルに変身するように工夫されていました。
まるで、ビフォーアフターみたいな仕掛け。
実際に椅子に座ってみると、なんとも寸法がぴったりで、
座り心地も考えられ、しかも食卓までの距離感も過不足がありません。
その上、食卓の高さも床板テーブルの嵩上げ分で、まことにちょうどいい。
椅子の座り幅も極限的に考えられていると感じる幅です。
これ以上狭ければ、用をなさないだろう、ギリギリの寸法。

こうした建築は、日本の作事の伝統の中の寸法感覚という部分の
精妙さをはっきりと認識させてくれます。
まぁ、実用と建築費用との見合いで、
このような部分こそ、徹底的な研究開発がされていたことだろうと推測されます。
とくに、この建築は施主としての漁場主の経済と、
労働力確保のための他漁場との競争の大きな部分でもあったろうと考えられます。
北海道開拓の村に移築保存された「青山漁家」では
「メシはいくら食ってもタダ」というのが、
優良な労働力確保競争の決め手だったということなんです。
そんな経済の流れの中で、このような建築にも反映されている部分。
心地よさというものと、建築寸法などの接点が明瞭に見えます。

きのうは見学にあたって、ガイドさんが懇切ていねいに説明をしていただけました。
いろいろな部分で大変勉強にもなった次第です。
建築は結局、その時代その時代の可能な材料を使って
用と予算のせめぎ合いの中で、工夫を重ねるもの。
先人の建築はさまざまなことを教えてくれていると感じます。



NPO住宅クレーム110番|イザというときに役立つ 住まいのQ&A
北海道・東北の住宅雑誌[Replan(リプラン)]|家づくり・住まいの相談・会社選び

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする