三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

「街並み」問題をみんなで考える

2015年04月06日 06時05分39秒 | Weblog
さて、街並みについての話題、
きのうもさまざまに意見やコメントが寄せられています。
とくに、江戸までの時期についての街並みについて、やり取りが寄せられて
大変興味深い知見についての情報も寄せられました。
以下、要旨を抜粋して掲載いたします。

・日本の古い町並みを見ると、軒の高さが揃っていたり、
屋根の向きや勾配が揃っていたり、ルールがあったと思います。
大工の口伝には、家のプロポーションや
隣との関係を大事にしたものも残っているようです。
おそらく、明治になって変わったのでしょう?
江戸時代の町並みを再現して見たいですね。
・(Shigeru Narabeさんからの情報)近世の街並みについては、京都において
秀吉が京都の伏見に至る街道沿いの町家を二階建にすることを命じています。
これは、平屋が混じると見苦しいという意図があったようです。
江戸においても、1649年に3階建が禁止され、その後、 享保の改革では
「家作り、なるべき成はひきく建て」ることとされ、1806年には、
棟高が2丈4尺に制限されました。これらは、街並み形成が目的ではなく、
身分制度の維持が目的であったと考えられています。
http://www.lij.jp/html/jli/jli_2008/2008spring_p015.pdf
~とくに名前を記したこの(Shigeru Narabeさんからの情報)は
まことに面白い研究論文を見ることができました。
以下、リンク先の興味深い関連部分の引用です。

建物高さの歴史的変遷(その1)
―日本における建物の高さと高層化について―
大澤 昭彦[土地総合研究所 研究員]
土地総合研究 2008年春号より

城下町の街並み
・・・天守閣をとりまく城下町の建築物の高さはどうだったのか。
1590(天正18)年に天下統一を果たした豊臣秀吉は、
京都の城下町化を考え、伏見から京都へむかう「御成道」沿いの
町屋の街並み形成を目的として高さ制限を行った。
この通り沿いには、平屋か農家風の葛屋が多く見苦しいために、
「表は二階造にして角柱に作るべし。家並高下のなきやふ仕候てしかるべし」
と命じた。また、ルイス・フロイスによる『日本史』には、
「暴君関白(秀吉)は・・・都の市(京都)に、かつて見られなかったような
建造物とか豪華な諸建築を次つぎに完成し、日々築造していった。
彼は市に平屋の家が一軒とて存在することを許さず、すべての家屋が
二階建とされるよう命じた」とある。
つまり、2階建て以外は認めなかったことから、統一的な街並み景観の整備を
意図していたことがうかがえる。
しかし、桃山時代から江戸時代初期にかけての京都の風景を伝える
洛中洛外図屏風によれば、関が原の役後、京の町はさらに繁栄した結果、
3階建も出現しており、高さ制限が守られないこともあった。
また、江戸時代に入ると、京都ばかりでなく、江戸においても
3階建てが出現しはじめる。江戸図屏風等において、
日本橋の商家で3階櫓のある町屋が確認できるという。
当時の3階櫓がどのような用途に利用されたかが不明であり、
「どちらかといえば裕福な商人の見栄や財力の
象徴的空間構造物といった性格が強かった」のではないかとされている。
一部の町屋は高層化していたものの、洛中洛外図屏風で
一般市民の家屋を見ると、そのほとんどが板葺きの平屋建て長屋であった。
・・・以上、引用終わり。

・ありがとうございます。昔の町ぶれにあるのではないかと思いましたが、
貴重な研究を拝見しました。
・江戸がこうですから、恐らく諸藩の城下町も右ならえだったと想像されますね。
・美観に配慮した規定ではないにしろ、町並みに与えた影響は大きいですね。
いまこそ、美の基準が欲しいですね。

っていうような次第であります。
この他にも、現代のわたしたちの身近な「街並み」景観についての
やり取りもあり、活発に意見交換されてきております。
住宅メディアの作り手としては、興味がどんどん深まっております。
写真は、昨日に引き続き、飛騨高山の街並み。
こうした街並みは、「飛騨の匠」として京都奈良の首都建設に徴発された
当地の建築技術者たちがふるさとに帰還してきて
首都で身につけた建築デザインを応用して作り続けた木造建築群。
日本の木造建築が純粋培養されたような街並みで
とくに欧米人が珍重して大勢訪れてきています。
こういう「美感」を生み出した日本的感受性を発展させる必要がある。・・・



コメント
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