日本建築学会「地球の声」デザイン小委員会と北海道の建築界との
やりとりが続いていますが、今月末1月29日には札幌で
「“地球の声”デザイン小委員会・拡大委員会@北海道」と題して
セミナー形式のイベントが決定しました。
日時:2018年1月29日(月)18:00-20:30
場所:北海道大学建築都市デザイン・スタジオ MUTSUMI HALL
(北海道札幌市北区北13条西8丁目) 申込不要・入場無料。
主要テーマは-北海道における『環境住宅』の実践事例をもとに議論する-
「建築デザインにおいて『環境を考える』とは?」
主催:日本建築学会 地球環境委員会 「地球の声」デザイン小委員会
<参加予定メンバー:塚本由晴、川島範久、能作文徳、金野千恵、
常山未央、海野玄陽>
共催:北海道大学工学研究院建築都市空間デザイン部門、JIA北海道支部
以下、主催者側から寄せられた趣意書(要旨)をお知らせします。
〜新建築住宅特集2016年6月号の『環境住宅』特集における作品群
および巻頭論考「自然と繋がるDelightfulな建築へ」には
さまざまな意見が寄せられた。「環境」系建築家の作品には
外皮性能(高断熱高気密)をないがしろにしているものが未だ多いのでは?
コストパフォーマンスを考えていないといった批評も見られました。
そのような批評を踏まえ、建築学会の「地球の声」デザイン小委員会では
公開の拡大委員会を発売1ヵ月後に建築会館で開催。そこでは性能とデザインの
敵対的図式で捉えるのではなく(性能担保は当然として)
その先の建築のあり方を問題にしなければ、といった議論が交わされた。
「環境配慮」や「サステナビリティ」は、ともすれば原理主義に陥り、
多様であるべき具体的な議論を十把一絡げに片付けてしまう危険性をはらむ。
そこで様々な地域(気候風土・文化歴史)において様々な考えのもと、
「実践」をベースにした『環境住宅』の多様な可能性を議論する機運が生まれた。
2017年11月24日には東京・建築会館で堀部安嗣氏、竹内昌義氏、藤野高志氏、
末光弘和氏に登壇いただき、第2回の公開拡大委員会を開催。
しかし東京在住の建築家だけで議論するのでは至らない何かがあるのでは?
という不安を払拭するまでには至りませんでした。
そもそも当初の『環境住宅』特集への批評も北海道から多く寄せられたもの。
日本の中で最も寒冷な北海道では、1950年代より防寒住宅研究が開始され、
1969年には日本初の断熱性能基準「北海道防寒住宅建設等促進法」が示された。
このように、北海道は「高断熱・高気密構法による温熱環境制御」に
日本で最も早い時期から取り組んできた先進的な地域。
そこで今回は「地球の声」デザイン小委員会が札幌に場所を移し、
北海道で実践されている建築家の方々を交え、東京でのこれまでの話題を
共有するとともに、北海道の多様な実践を紹介いただきます。
建築デザインのエコロジカルな転回をどのように捉えるのか、
それによって実践はどう変わっていくか?幅広い議論を期待します。〜以上。
というようなことですが、
既報のようにわたし自身から発出の部分が大きくあり、文中で触れられている
「『環境住宅』特集への批評も北海道から多く寄せられた」のは拙ブログが起点。
その経緯から今次企画には人的仲介、見学住宅アテンドなど協力しています。
従来、建築・環境分野は北総研や荒谷登先生、鎌田紀彦先生などの研究者が
北海道の寒冷気候対応の住宅建築工法を実践的に解明してきた流れがあり、
それを支える地域としての「希求」がベースにあった動きなのだと思います。
こうして開発された最重要の「要素技術」が高断熱高気密であり、
この技術はいまの寒冷地における「基本」として存在していると同時に、
今日、北海道起点のこの要素技術は本州以南地域で大きく受容され、
日本の住宅技術革新の中核と位置づけられていることは自明だと思います。
そうした状況の中、この技術開発のメインカレントとは従来やや距離感のあった
いわゆる温暖地建築デザインの立場からの「環境住宅」アクションが見られた。
これに対しわたしどもは、前述のような視点から一定の意見を持っているものです。
住宅メディアとして、この動向には関心を持っている次第。
この企画への多数のみなさんの注目、参加を期待しております。