三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

日本の公共空間デザイン

2008年05月16日 07時46分29秒 | 歴史探訪

写真は足利氏の本拠に建てられた寺院の正面からの外観。
よく歴史巡りなどをすると、日本では決まって宗教的な施設になる。
この足利氏の発祥地とされる居館跡地も
お寺として存続しているのですね。
京都に残っている建築も多くがそういう残り方をしている。
金閣は足利義満が私邸、迎賓館的に造営したものだし、
京都中、歴代の権力者が妄執に駆られて造営した建物がそういう形で残る。
なにやら、現代の宗教法人の無税特典というのは日本伝統の文化なのかと、
つい、疑ってしまいます(笑)。

こういう敷地の大きな建物空間の場合、
そのなかにいくつかの建物が共鳴するように配置されます。
よくあるのが、背の高い建築~塔のようなもの、
校倉のような倉庫状の建築、
そして、大きな屋根のデザインで見せる主建築。
きっと、このような配置デザインって、中国の影響から来るものでしょうね。
地形と方位などを考えて、良い気が満ちるように考えられているのでしょう。
そして、時間を掛けて植栽が施され、
独特の東アジア的な「公共的空間」が演出されてきているのだと思います。
で、そういうなかでもやはり、この写真のように大きな屋根の
デザインというものが、一番直接的にひとびとに訴求してくる。
屋根はいろいろな建築的検討の結果、選択されるのでしょうが、
この建物など、大変ユニークな造形を見せてくれる。
寄せ棟を基本にした入母屋ですが、ちょっと寸詰まりなのが楽しい。
日本人はいちばん、寄せ棟というのが心情に似合っているのでしょうか?
寄せ棟は、台風などの風の被害に対して柔構造のような気がします。
まずそういう気候風土に対する適格性があって、
そのうえで、心情的なものが積み上がっていくものなのでしょう。
古民家などでは、ほとんどの屋根が寄せ棟です。

やっぱりこういう空間性には、ほっとするようなものがありますね。
日本人ということを意識させられる部分。
でも、北海道では、なぜか寄せ棟はほとんど採用されない。
たぶん、日本と北海道を分ける最大のものは屋根デザインでしょう。
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