三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【ダクトエアコンによる全室冷暖房システム】

2016年09月06日 04時59分09秒 | Weblog


9月2日の新住協札幌総会での研究発表で注目されていたのが、
東京での表題のシステム搭載の住宅事例。
これまでエアコン暖冷房については、基礎断熱の結果生成する「床下ピット」を
活用することで、1階に床暖房効果もあってコンクリート基礎の「蓄熱」効果も
利用するものが一般的に多く取り組まれてきたけれど、
ダイキン工業さんが「ダクト式エアコンの10畳用タイプ」という
手頃な小型のものを新発売したことを受けて、
それを階間の空間をピットとして活用して、上下階に暖冷房送風するというもの。
鎌田紀彦先生から、この実験的住宅のことはReplan連載記事打合せ時に、
お話を伺っていましたが、ダクト式エアコンは従来は高価な大型のビル用ばかり。
今回小さい能力のものが発売されたことで、実現に至ったもの。
ダイキン工業の「アクティビティビルトインS28RVL(10畳用)」というヤツ。




通常の熱負荷計算にて熱負荷を計算すると、
暖房で2,854W(機器4,000W)
冷房で5,599W(機器2,800W)
となって、冷房の能力が足りないけれど、これまでの経験で
Q1.0住宅であれば足りると想定したと言うこと。
建物のプランとしては狭小地での3階建てですが、
密集都市部では一般的とも言える住宅。
ただ、このケースでは建築確認申請後に機器導入が決まったので、
天井裏のスペースが少なく、縦ダクトスペースも足りないため、
本来の計画からすると限界のある事例と言うことにはなっている。
またより効果的な、熱交換換気とエアコンの連動も不十分とのこと。
しかし今週7日には現地で鎌田先生と東大の前真之准教授が打ち合わせて
この住宅の熱環境実測調査も行われる予定になっている。
この発表直後から「すぐにでも導入したい」という
工務店関係者の会場からの声が発せられていました。
メーカー側もこうした鎌田先生主導の実験について大いに注目していて
実験への協力や機器改良について大変前向きと言うことなので、
有為なローコスト暖冷房システムに育っていく可能性があります。
カタログ価格で365,000円程度で全館空調が実現できれば、
日本の住宅にとって大きな革新を呼ぶことは間違いがないところ。
ただ、東京での事例と言うこともあって反響のあったみなさんは
比較的に温暖地のみなさんが多かった印象。
寒冷地域では暖房用の熱負荷との見合いでどうか、
また、寒冷地では従来同様、基礎断熱の床下ピット利用が
より優位な設備選択としてあるので、どうなるかというところ。
いずれにせよ、その稼働状況などの推移を注目したいと思います。
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