帰り道で小さな十字路を通ったとき、きーんと透った空気の匂いがした。
今年もその花の季節が来て、この道の何処かの家で、もうジンチョウゲが咲いているのだと思った。
まだ実際には見ていないのだが、すぐに、そこここで、香り出すだろう。
花は沈香(じんこう)と丁字(ちょうじ)の香りに似ていることからの名。
丁字の開花前の蕾は、スパイスのクローブ。
小川 宏さんの『話し上手は聞き上手』(清流出版発行)の ”誤りやすい言葉”の中にも、沈丁花は登場している。読み方はーー、
チンチョウゲ ではなく、 ジンチョウゲが正しいそうだ。
モノクロの映画のシーンで、座敷の障子を開けると、坪庭に見事な沈丁花の大株が見えた。香りまでもが匂うようであった。あれは何の映画だったのだろう。