内舘牧子著 「すぐ死ぬんだから」
終活なんて一切しない。それより今を楽しまなきゃ。
78歳の忍ハナは、60代まではまったく身の回りをかまわなかった。
だがある日、実年齢より上に見られて目が覚める。
「人は中身よりまず外見を磨かねば」と。仲のいい夫と経営してきた酒屋は
息子夫婦に譲っているが、問題は息子の嫁である。自分に手をかけず、
貧乏くさくて人前に出せたものではない。それだけが不満の幸せな老後だ。
ところが夫が倒れたことから、思いがけない裏を知ることになる―。
人は加齢にどこまで抗えるのか。どうすれば品格のある老後を迎えられるのか。
『終わった人』でサラリーマンの定年後の人生に光を当てた著者が
放つ新「終活」小説!
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とっても面白かった。図書館に予約していて、忘れた頃に順番が来ました。
タイトルも面白い。一気読みです。
あとがきにこのように書かれていました。
ある時、80代中心の集まりに出たことがある。その場で思い知らされたのは、
免罪符の元で生きる男女と、怠ることなく外見に手をかけている男女に、
くっきりと二分されている現実だった。
残酷なことに、同年代とは思えぬほど、外見の若さ、美しさ、溌剌ぶりには
差が出ていた。そして外見を意識している男女ほど、活発に発言し、笑い、
周囲に気を配る傾向があった。たぶん、自信のなせる業だろう。あの時、
外見は内面に作用すると実感させられたものだ。
「すぐ死ぬんだから」と自分に手をかけず、外見を放りぱなしという生き方は
「セルフネグレクト」ではないかと。ネグレクトは育児放棄という意味で
よく使われるが、「セルフネグレクト」はつまり、自分で自分を放棄することである。
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主人公ハナの心の声が小気味よい。
牧子さんのエッセーを図書館で借りてこよう。