夕方、後輩女子Cちゃんとカルピスの話になった。
予算作成は根気がいる仕事で、集中力が途切れるとどちらからともなく声を掛ける我々。
「疲れました」
と言う彼女に、机の中からキャンディーを取り出して「どうぞ」と差し上げた。カルピス味のキャンディーだ。
「あ!懐かしいですね、カルピス」
とCちゃんは笑った。
カルピスといえば、小学校時代の夏休みである。
お中元でカルピスがよく我が家に届いた。うちは三人兄弟なので「あそこん家は子供が多いから」という理由で送り主たちが送ってよこしたのだと今ならば容易に想像がつく。
今はよく知らないが、当時、カルピスはガラス製の瓶に入っていた。やけにずっしりとしたそれは子供の手で持つには難しく、主に祖母や母が冷蔵庫からそれを取り出してカルピスを作ってくれた。白い原液がねっとりと線を描いてガラスのコップに溜まっていく様子が、蝉時雨とうだるような暑さとともに思い出される。茶の間に運ばれた水と氷で薄められたカルピスが入ったグラスは、やがて表面に水滴を纏い始める。線になって流れていく水滴が網戸からそよぐ風に揺れるのを見つめながら、甘くて冷たい液体を飲み干す幼き日の亮子。
嗚呼、私の夏の原風景。
…ふっ(恍惚)。
しかし、その甘美な思い出はやがて私に不快な感覚を呼び覚ます。
あれだ、あれ。
カルピスを飲むと喉の奥というか口内に、なんつーのかな、何かがへばりつかないか。
子供の時、真相を確かめたくて、カルピスを飲みながら、わざと唾を溜めて勢いよくティッシュに「ペッ」と吐きだしたことがある。するとやけに純白で小さなねばねばしたものを確認。
「これなに?」と大人たちに聞いても「カルピスの塊だよ」と適当なことを言われてあしらわれ、やがてそんなことはどうでもよくなり、大人になった。
今日、後輩女子Cちゃんに「カルピスを飲んだ後ってさー、口の中で何かが発生しない?するよね?」と訊ねたが、「え、ないです」と即答されてしまった。え?なんで?同じ栃木出身なのに?
偶然通りかかったパートさんに訊いたら「あ、あるある。あれ、なんだろうね」と言い、「ない」と答えたCちゃんに「え、ないの?」と驚きの表情を浮かべていた。
あれ、なんだろう。
カルピスのHPによると…
「「カルピス」を飲んだ後、口の中や舌の上に残る白い塊は何?」
答え:
「カルピス」を飲んだあとに口の中に異物が残った経験がある人もいるでしょう。
それは、「カルピス」の中に含まれるカゼインというたんぱく質と、唾液に含まれる成分が反応してできた白いかたまりです。
また、唾液の中の成分には個人差があるため、凝集物のできる人とできない人がいます。この凝集物はからだに悪い影響を与えるものではなく、胃の中で胃酸により溶かされます。
と書いてある。
でた、個人差!!
私・パートさんと後輩女子Cちゃんの間に高々と壁が聳えている気がした。
カルピスの壁。
カルピス、すげー。ベルリンの壁もびっくりだ。
そしてカゼインと唾液に含まれる成分のケミストリーが私とCちゃんを分断したのを感じた。
予算作成で励まし合いながら日々残業をしている仲なのに。
夏の思い出。謎の白い物体。分断。
…嗚呼、カルピス最強伝説ここにあり。
嗚呼、ここまで熱く書いていたら無性にカルピスが飲みたくなってきたなう。
もう何年も飲んでいない、カルピス。飲んだらまた口内で白い物体を発生させ、あの夏の日に帰ろう。
「おなか すいたやろ カルピスも 冷えてるよー」
(By「火垂るの墓」清太のお母さん@浜辺)
予算作成は根気がいる仕事で、集中力が途切れるとどちらからともなく声を掛ける我々。
「疲れました」
と言う彼女に、机の中からキャンディーを取り出して「どうぞ」と差し上げた。カルピス味のキャンディーだ。
「あ!懐かしいですね、カルピス」
とCちゃんは笑った。
カルピスといえば、小学校時代の夏休みである。
お中元でカルピスがよく我が家に届いた。うちは三人兄弟なので「あそこん家は子供が多いから」という理由で送り主たちが送ってよこしたのだと今ならば容易に想像がつく。
今はよく知らないが、当時、カルピスはガラス製の瓶に入っていた。やけにずっしりとしたそれは子供の手で持つには難しく、主に祖母や母が冷蔵庫からそれを取り出してカルピスを作ってくれた。白い原液がねっとりと線を描いてガラスのコップに溜まっていく様子が、蝉時雨とうだるような暑さとともに思い出される。茶の間に運ばれた水と氷で薄められたカルピスが入ったグラスは、やがて表面に水滴を纏い始める。線になって流れていく水滴が網戸からそよぐ風に揺れるのを見つめながら、甘くて冷たい液体を飲み干す幼き日の亮子。
嗚呼、私の夏の原風景。
…ふっ(恍惚)。
しかし、その甘美な思い出はやがて私に不快な感覚を呼び覚ます。
あれだ、あれ。
カルピスを飲むと喉の奥というか口内に、なんつーのかな、何かがへばりつかないか。
子供の時、真相を確かめたくて、カルピスを飲みながら、わざと唾を溜めて勢いよくティッシュに「ペッ」と吐きだしたことがある。するとやけに純白で小さなねばねばしたものを確認。
「これなに?」と大人たちに聞いても「カルピスの塊だよ」と適当なことを言われてあしらわれ、やがてそんなことはどうでもよくなり、大人になった。
今日、後輩女子Cちゃんに「カルピスを飲んだ後ってさー、口の中で何かが発生しない?するよね?」と訊ねたが、「え、ないです」と即答されてしまった。え?なんで?同じ栃木出身なのに?
偶然通りかかったパートさんに訊いたら「あ、あるある。あれ、なんだろうね」と言い、「ない」と答えたCちゃんに「え、ないの?」と驚きの表情を浮かべていた。
あれ、なんだろう。
カルピスのHPによると…
「「カルピス」を飲んだ後、口の中や舌の上に残る白い塊は何?」
答え:
「カルピス」を飲んだあとに口の中に異物が残った経験がある人もいるでしょう。
それは、「カルピス」の中に含まれるカゼインというたんぱく質と、唾液に含まれる成分が反応してできた白いかたまりです。
また、唾液の中の成分には個人差があるため、凝集物のできる人とできない人がいます。この凝集物はからだに悪い影響を与えるものではなく、胃の中で胃酸により溶かされます。
と書いてある。
でた、個人差!!
私・パートさんと後輩女子Cちゃんの間に高々と壁が聳えている気がした。
カルピスの壁。
カルピス、すげー。ベルリンの壁もびっくりだ。
そしてカゼインと唾液に含まれる成分のケミストリーが私とCちゃんを分断したのを感じた。
予算作成で励まし合いながら日々残業をしている仲なのに。
夏の思い出。謎の白い物体。分断。
…嗚呼、カルピス最強伝説ここにあり。
嗚呼、ここまで熱く書いていたら無性にカルピスが飲みたくなってきたなう。
もう何年も飲んでいない、カルピス。飲んだらまた口内で白い物体を発生させ、あの夏の日に帰ろう。
「おなか すいたやろ カルピスも 冷えてるよー」
(By「火垂るの墓」清太のお母さん@浜辺)