中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

三字経と唐詩

2010-09-16 08:38:05 | 中国のこと
 西安の謝俊麗の息子の撓撓(ナオナオ)は今日(9月16日)で2歳になった。最近はどんどん成長し、言葉もずいぶん増えてかなりのことも言えるようになっているようだ。夜寝る前になると「パパは要らないからゴミ箱に捨てる」などと言うのよと俊麗は笑っていた。ある童謡の歌詞でも「空の星」と言うのを「空のママ」と言い換えたりするというから可愛い。

           

 中国の家庭教育でよく使われるものに「三字経」というのがある。宋代の王応麟という儒者が作ったもので、儒学を基本にして、諸子百家の伝承や中国の歴史、当時の常識的知識を分かりやすく三文字一組の漢文に表わしたもので、次のように始まる。

1.人之初,性本善,性相近,習相遠。

 人は生まれたばかりの時,その本性と性情は誰でもがみな純粋で善良であった。そして小さい時には誰もが皆その本性,性情,賢愚などの資質に大きな差異はない。しかしながら成長する過程において各人が皆異なった環境や習慣に影響されて、大人になったときには各人の本性、性情、賢愚には極めて大きな差異が生じてしまった。

2.苟不教,性乃遷,教之道,貴以專。

 もしも子供に対する教育を重視せずに教育を施さないならば,子供たちがもともと持っていた純粋な本性や素晴らしい資質,善良な性情が歪曲し変化してしまう。子供を正しく教育する道(方法)は真摯な態度でその真意を常に子供の心の上に注ぐことこそが最も重要なことである。

 以下、第87まであり、全部で1044文字ある。この三字経を撓撓は暗誦し始めたらしい。まだ字は読めないから、俊麗が読むのを聴いて覚えたようだ。今は第13まで言えるらしい。もちろん意味はまったく分からないだろうが、リズムがあって気に入っているのだろう。俊麗の家にはこの三字経の一覧を印刷したものがあって、撓撓がもっと幼い頃から窓際に掛けてあったのを、送ってきた写真で見たことがある。それで教えているのかも知れない。



 撓撓は三字経以外に唐詩も暗誦できるようだ。唐詩も中国では幼いときから暗誦させる家庭はあるようで、上海にいる孫璇 の息子も暗誦するそうだ。北京在住のある女性のブログに「中国人はこうやって機会あるごとに徹底的に暗誦をせる。小学校に上がるころにはかなりの詩を暗誦できるようになっている」とあった。撓撓が暗誦できるのは、《咏鹅》、《憫農》、《相思》、《静夜思》の4つらしい。このうちの《静夜思》は「牀前 月光を看る 疑うらくは 是れ地上の霜かと 頭(こうべ)を挙げて 山月を望み 頭をたれて 故郷を思う」という李白の有名な詩。《咏鹅》は、初唐の四傑と称された駱賓王の7歳の時の作と伝えられる、「ガチョウ、ガチョウ、ガチョウ 首を曲げ天に向って歌う 白い羽毛が水に浮き 赤い水掻きが漣波をおこす」という簡単な詩で、中国では小学校1年生の時に習うそうだ。詩は韻がありリズムがいいから子どもにも受け入れられるのだろうが、唐詩とはさすがに中国だと思う。

 電話口で俊麗に促されて、恥ずかしそうな、嬉しそうな小さな幼い声で撓撓が、三字経の一節と唐詩とを暗誦してくれた。私は中国語の知識が乏しいから、何を言っているのか理解できなかったが、とても可愛く思った。11月に西安に行く予定をしているので、撓撓や李真の息子の宸宸(チェンチェン)に会って、1年ぶりの成長の様子を見るのが楽しみだ。