令和4(行ツ)318 犯罪被害者給付金不支給裁定取消請求事件
令和6年3月26日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 名古屋高等裁判所
犯罪被害者と同性の者は、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得る
NHKの報道です
犯罪被害者遺族給付金で初判断「同性パートナーも対象」最高裁
名古屋市の内山靖英さん(49)は、10年前に、同居していたパートナーの男性を殺害され、犯罪被害者の遺族を対象にした国の給付金を申請したものの認められず、不服として愛知県に対する裁判を起こしました。
裁判では、給付金の対象とされている「事実上の婚姻関係にあった人」に同性のパートナーが含まれるかどうかが争点となり、1審と2審は、対象に含まれないとして訴えを退け、内山さんが上告していました。
26日の判決で、最高裁判所第3小法廷の林道晴裁判長は「被害者の死亡で、精神的、経済的打撃を受けるのは、異性か同性かで異なるとはいえない。被害者と同性のパートナーも事実婚に該当し、給付金の対象になりうる」という初めての判断を示しました。
そのうえで、被害者と事実婚の関係だったかどうか、さらに審理を尽くす必要があるとして、名古屋高等裁判所で審理をやり直すよう命じました。
判決は5人の裁判官のうち4人の多数意見で、1人は「同性パートナーは事実婚には該当しない」という反対意見を出しました。
事実関係から見ていきます。
(2)上告人(昭和50年生まれの男性)は、平成6年頃に昭和37年生まれの男性(以下「本件被害者」という。)と交際を開始し、その頃から同人と同居して生活していたところ、同人は、平成26年12月22日、第三者の犯罪行為により死亡した。
同性愛カップルが事実上の婚姻生活をしていた。その片方が殺人事件で殺された。
(3)「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当すると主張して、遺族給付金の支給の裁定を申請したところ、愛知県公安委員会から、平成29年12月22日付けで、上告人は上記の者に該当しないなどとして、遺族給付金を支給しない旨の裁定を受けた。
原審では
犯給法5条1項1号は、一次的には死亡した犯罪被害者と民法上の婚姻関係にあった配偶者を遺族給付金の受給権者としつつ、死亡した犯罪被害者との間において民法上の婚姻関係と同視し得る関係を有しながら婚姻の届出がない者も受給権者とするものであると解される。
原審では婚姻関係じゃないから駄目よと拒否されたようです。当然ですね。事実婚が認められるんだから、同性愛でも認めろよってことなんでしょう。でも、事実婚を認めると戸籍法が死文化されるんですよ。このあたりは裁判官はなあなあで話を勧めますが、これでは何のために法律があるのか分かりません。同性愛の結婚については、養子縁組で加速関係は法的に代替されています。だから今回は親子関係を結んでおけば済んだ話です。
最高裁はこれに対して
(1)犯罪等により害を被った者及びその遺族等の権利利益の保護を図ることを目的とする犯罪被害者等基本法が制定され(同法1条)、基本的施策の一つとして、国等は、これらの者が受けた被害による経済的負担の軽減を図るため、給付金の支給に係る制度の充実等必要な施策を講ずるものとされた(同法13条)。そして、平成20年法律第15号による改正により、犯給法は、犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族等の犯罪被害等を早期に軽減するとともに、これらの者が再び平穏な生活を営むことができるよう支援するため、・・・
この場合この趣旨に合ってるんでしょうか。昭和50年代生まれとなれば40歳過ぎですよね。通常であれば働いていておかしくない年齢です。
(2)犯給法5条1項は、犯罪被害者等給付金の支給制度の目的が上記 のとおりであることに鑑み、遺族給付金の支給を受けることができる遺族として、犯罪被害者の死亡により精神的、経済的打撃を受けることが想定され、その早期の軽減等を図る必要性が高いと考えられる者を掲げたものと解される。
経済的はともかく精神的ですか。金やるから泣くのは止めろと言う趣旨ですか?なんか違う気がしますけどね
犯罪被害者との関係や共同生活の実態等に鑑み、事実上婚姻関係と同様の事情にあったといえる場合には、
これが曲者なんですよ。法的に婚姻関係にあっても別居状態にある場合は、婚姻関係は破綻として不支給になるのでしょうか?事実上婚姻関係を認めたとして、複数の相手を渡り歩くのも婚姻関係として認めるのでしょうか?ここをはっきりさせないと、似たような感じでどんどん請求が来ますよ。一番確実なのは、法的な関係の有無でばっさり判断基準を決める事なんじゃないですかね。
(3)犯罪被害者と同性の者は、犯給法5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得ると解するのが相当である。
明らかに過剰な判断です。同性愛だから拒否したのではなく法的に関係が築かれていないことを理由にすべきでした。
裁判官林道晴の補足意見
犯罪被害者との間で異性間の内縁関係に準ずる関係にあったといえる場合には、異性間の内縁関係にあった者と同様に犯罪被害者の死亡により精神的、経済的打撃を受けるものと考えられるから、上記文言に該当するものとして、遺族給付金の支給を受けることができる遺族に含まれると解するのが相当である。
同性か異性かははいいとして、内縁ってのは行けませんね。そもそもその内縁関係ってのはどのくらいの期間、どういう状態であることが定義されるのでしょうか?客観的事実に基づく根拠が弱いではないですか。そういういつでも逃げ出せる状況にある人を救済することの社会的意義はどこにありますか?また出会って1週間で結婚する人もいますけど、そういう人が6日目に殺されたとした場合、救済されないんですよね。法的安定性を担保できないような判決を出すべきではありません。
裁判官今崎幸彦の反対意見
1 遺族給付金の支給額は、政令により算定される基礎額に、「遺族の生計維持の状況を勘案して」政令で定める倍数を乗じて得た額とされている(9条1項)。このことは、遺族給付金が犯罪被害者遺族の生活保障を意識して設計されたものであることを示している。他方、支給される遺族の範囲として、犯罪被害者の収入によって生計を維持していたことを要件としていないこと(5条1項)など、必ずしも遺族の生活保障の性格とは整合しない規定も置かれている。
また、労働者災害補償保険法による給付等や損害賠償を受けたときはその価額の限度において支給しないとする一方(7条、8条)、犯罪被害者が死亡前に負担した療養費用等について支給額を加算する規定を置いている(9条5項)ところなどは、遺族給付金が損害の塡補としての性格を有していることを示すものといえる。
2 犯給法は、遺族給付金が犯罪被害者遺族に対する生活保障と損害の塡補という2つの機能を十全に果たすことを通じ、上述したような制度の趣旨、ひいては法の目的が達せられることを期待しているものといってよいと思われる。
これはごもっともです。主な収入源を絶たれ未成年者の子がいた場合、基本は保険に入っておけよと思いますけど、これは救済してやらなければなりません。しかもそれは緊急に必要な金額に限るべきだと思います。精神的という問題は慰謝料の代わりに先払いしてやるという制度であれば、それもいいのですが。これ以上になると政策論のなって裁判官の判断の良し悪しを論じることから離れるので、元に戻します。
3 犯罪被害者相互の間に、潜在的にせよ前述のような利害対立の契機をもたらすものでもある。こうした結果が遺族を含めた総体としての犯罪被害者の社会的ニーズに応えるものであるかは、犯給法の解釈上重要な考慮要素と思われる。
4 同性パートナー固有の権利として、精神的損害を理由とした賠償請求権については、もとより事案によることではあるが、認める余地があると考えている。
しかし、財産的損害、とりわけ扶養利益喪失を理由とする損害賠償請求権については、民法752条の準用を認めない限りにわかに考え難いというのが大方の理解であろう。そうであるとすれば、犯罪被害者の同性パートナーに認められる損害賠償請求権は、仮に認められるとしても異性パートナーに比べて限定されたものとなる。
そういえば同性カップルで不貞行為で民事訴訟ってのがありましたね。結局あれは却下されたような。どこまでの行為が不貞ではないのか、そのあたりが定義されていないと判断しようがありません。
5 犯給法5条1項1号の「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」と同一又は同趣旨の文言が置かれている例は少なくないが、そうした規定について、多数意見がいかなる解釈を想定しているかも明らかでない。
7 なお、多数意見は、上告人が本件被害者との間において「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当するか否かについて審理を尽くさせるために原審に差し戻すとする一方で、「事実上婚姻関係と同様の事情」という要件の中身については何も語らない。
この点はごもっとも。審議がきちんとなされてないですね。
裁判長裁判官 林 道晴 ダメ
裁判官 宇賀克也 ダメ
裁判官 長嶺安政 ダメ
裁判官 渡 惠理子 ダメ
裁判官 今崎幸彦 マトモ
令和6年3月26日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 名古屋高等裁判所
犯罪被害者と同性の者は、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得る
NHKの報道です
犯罪被害者遺族給付金で初判断「同性パートナーも対象」最高裁
名古屋市の内山靖英さん(49)は、10年前に、同居していたパートナーの男性を殺害され、犯罪被害者の遺族を対象にした国の給付金を申請したものの認められず、不服として愛知県に対する裁判を起こしました。
裁判では、給付金の対象とされている「事実上の婚姻関係にあった人」に同性のパートナーが含まれるかどうかが争点となり、1審と2審は、対象に含まれないとして訴えを退け、内山さんが上告していました。
26日の判決で、最高裁判所第3小法廷の林道晴裁判長は「被害者の死亡で、精神的、経済的打撃を受けるのは、異性か同性かで異なるとはいえない。被害者と同性のパートナーも事実婚に該当し、給付金の対象になりうる」という初めての判断を示しました。
そのうえで、被害者と事実婚の関係だったかどうか、さらに審理を尽くす必要があるとして、名古屋高等裁判所で審理をやり直すよう命じました。
判決は5人の裁判官のうち4人の多数意見で、1人は「同性パートナーは事実婚には該当しない」という反対意見を出しました。
事実関係から見ていきます。
(2)上告人(昭和50年生まれの男性)は、平成6年頃に昭和37年生まれの男性(以下「本件被害者」という。)と交際を開始し、その頃から同人と同居して生活していたところ、同人は、平成26年12月22日、第三者の犯罪行為により死亡した。
同性愛カップルが事実上の婚姻生活をしていた。その片方が殺人事件で殺された。
(3)「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当すると主張して、遺族給付金の支給の裁定を申請したところ、愛知県公安委員会から、平成29年12月22日付けで、上告人は上記の者に該当しないなどとして、遺族給付金を支給しない旨の裁定を受けた。
原審では
犯給法5条1項1号は、一次的には死亡した犯罪被害者と民法上の婚姻関係にあった配偶者を遺族給付金の受給権者としつつ、死亡した犯罪被害者との間において民法上の婚姻関係と同視し得る関係を有しながら婚姻の届出がない者も受給権者とするものであると解される。
原審では婚姻関係じゃないから駄目よと拒否されたようです。当然ですね。事実婚が認められるんだから、同性愛でも認めろよってことなんでしょう。でも、事実婚を認めると戸籍法が死文化されるんですよ。このあたりは裁判官はなあなあで話を勧めますが、これでは何のために法律があるのか分かりません。同性愛の結婚については、養子縁組で加速関係は法的に代替されています。だから今回は親子関係を結んでおけば済んだ話です。
最高裁はこれに対して
(1)犯罪等により害を被った者及びその遺族等の権利利益の保護を図ることを目的とする犯罪被害者等基本法が制定され(同法1条)、基本的施策の一つとして、国等は、これらの者が受けた被害による経済的負担の軽減を図るため、給付金の支給に係る制度の充実等必要な施策を講ずるものとされた(同法13条)。そして、平成20年法律第15号による改正により、犯給法は、犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族等の犯罪被害等を早期に軽減するとともに、これらの者が再び平穏な生活を営むことができるよう支援するため、・・・
この場合この趣旨に合ってるんでしょうか。昭和50年代生まれとなれば40歳過ぎですよね。通常であれば働いていておかしくない年齢です。
(2)犯給法5条1項は、犯罪被害者等給付金の支給制度の目的が上記 のとおりであることに鑑み、遺族給付金の支給を受けることができる遺族として、犯罪被害者の死亡により精神的、経済的打撃を受けることが想定され、その早期の軽減等を図る必要性が高いと考えられる者を掲げたものと解される。
経済的はともかく精神的ですか。金やるから泣くのは止めろと言う趣旨ですか?なんか違う気がしますけどね
犯罪被害者との関係や共同生活の実態等に鑑み、事実上婚姻関係と同様の事情にあったといえる場合には、
これが曲者なんですよ。法的に婚姻関係にあっても別居状態にある場合は、婚姻関係は破綻として不支給になるのでしょうか?事実上婚姻関係を認めたとして、複数の相手を渡り歩くのも婚姻関係として認めるのでしょうか?ここをはっきりさせないと、似たような感じでどんどん請求が来ますよ。一番確実なのは、法的な関係の有無でばっさり判断基準を決める事なんじゃないですかね。
(3)犯罪被害者と同性の者は、犯給法5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得ると解するのが相当である。
明らかに過剰な判断です。同性愛だから拒否したのではなく法的に関係が築かれていないことを理由にすべきでした。
裁判官林道晴の補足意見
犯罪被害者との間で異性間の内縁関係に準ずる関係にあったといえる場合には、異性間の内縁関係にあった者と同様に犯罪被害者の死亡により精神的、経済的打撃を受けるものと考えられるから、上記文言に該当するものとして、遺族給付金の支給を受けることができる遺族に含まれると解するのが相当である。
同性か異性かははいいとして、内縁ってのは行けませんね。そもそもその内縁関係ってのはどのくらいの期間、どういう状態であることが定義されるのでしょうか?客観的事実に基づく根拠が弱いではないですか。そういういつでも逃げ出せる状況にある人を救済することの社会的意義はどこにありますか?また出会って1週間で結婚する人もいますけど、そういう人が6日目に殺されたとした場合、救済されないんですよね。法的安定性を担保できないような判決を出すべきではありません。
裁判官今崎幸彦の反対意見
1 遺族給付金の支給額は、政令により算定される基礎額に、「遺族の生計維持の状況を勘案して」政令で定める倍数を乗じて得た額とされている(9条1項)。このことは、遺族給付金が犯罪被害者遺族の生活保障を意識して設計されたものであることを示している。他方、支給される遺族の範囲として、犯罪被害者の収入によって生計を維持していたことを要件としていないこと(5条1項)など、必ずしも遺族の生活保障の性格とは整合しない規定も置かれている。
また、労働者災害補償保険法による給付等や損害賠償を受けたときはその価額の限度において支給しないとする一方(7条、8条)、犯罪被害者が死亡前に負担した療養費用等について支給額を加算する規定を置いている(9条5項)ところなどは、遺族給付金が損害の塡補としての性格を有していることを示すものといえる。
2 犯給法は、遺族給付金が犯罪被害者遺族に対する生活保障と損害の塡補という2つの機能を十全に果たすことを通じ、上述したような制度の趣旨、ひいては法の目的が達せられることを期待しているものといってよいと思われる。
これはごもっともです。主な収入源を絶たれ未成年者の子がいた場合、基本は保険に入っておけよと思いますけど、これは救済してやらなければなりません。しかもそれは緊急に必要な金額に限るべきだと思います。精神的という問題は慰謝料の代わりに先払いしてやるという制度であれば、それもいいのですが。これ以上になると政策論のなって裁判官の判断の良し悪しを論じることから離れるので、元に戻します。
3 犯罪被害者相互の間に、潜在的にせよ前述のような利害対立の契機をもたらすものでもある。こうした結果が遺族を含めた総体としての犯罪被害者の社会的ニーズに応えるものであるかは、犯給法の解釈上重要な考慮要素と思われる。
4 同性パートナー固有の権利として、精神的損害を理由とした賠償請求権については、もとより事案によることではあるが、認める余地があると考えている。
しかし、財産的損害、とりわけ扶養利益喪失を理由とする損害賠償請求権については、民法752条の準用を認めない限りにわかに考え難いというのが大方の理解であろう。そうであるとすれば、犯罪被害者の同性パートナーに認められる損害賠償請求権は、仮に認められるとしても異性パートナーに比べて限定されたものとなる。
そういえば同性カップルで不貞行為で民事訴訟ってのがありましたね。結局あれは却下されたような。どこまでの行為が不貞ではないのか、そのあたりが定義されていないと判断しようがありません。
5 犯給法5条1項1号の「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」と同一又は同趣旨の文言が置かれている例は少なくないが、そうした規定について、多数意見がいかなる解釈を想定しているかも明らかでない。
7 なお、多数意見は、上告人が本件被害者との間において「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当するか否かについて審理を尽くさせるために原審に差し戻すとする一方で、「事実上婚姻関係と同様の事情」という要件の中身については何も語らない。
この点はごもっとも。審議がきちんとなされてないですね。
裁判長裁判官 林 道晴 ダメ
裁判官 宇賀克也 ダメ
裁判官 長嶺安政 ダメ
裁判官 渡 惠理子 ダメ
裁判官 今崎幸彦 マトモ