最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

医療法人の臨時総会については一般法人の基準を類推適用しません

2024-05-27 15:24:38 | 日記
令和4(許)18  臨時社員総会招集許可申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
令和6年3月27日  最高裁判所第三小法廷  決定  棄却  東京高等裁判所
 医療法人の社員が一般法人法37条2項の類推適用により裁判所の許可を得て社員総会を招集することはできない

弁護士のブログはありますが、マスコミでは報道されていないので事実確認から見ていきます。
1 医療法人早明会の社員である抗告人らが、当該医療法人の理事長に対して社員総会の招集を請求したが、その後招集の手続が行われないと主張して、裁判所に対し、社員総会を招集することの許可を求める事案であり、、社団たる医療法人の社員が一般社団法人及び一般財団法人に関する法律37条2項の類推適用により裁判所の許可を得て社員総会を招集することができるか否かが争われている。

何か嫌な臭いがしますね。病院の経営を巡って勝手な人事をしたのか、何なのか分かりませんが。そこで非主流派の人たちが、おいちょっと待てよと異議申し立てをするために社員総会を開けよと要求したのですが、主流派に拒絶されたようです。そこで裁判所の命令で社員総会をやれないかという訴えです。私も医療法人法については素人なのですが、会社で言えば社長と取締役の暴走に株主がふざけんなよ!と申し立てたような感じのようです。

2 一般法人法は、一般社団法人の適切な運営のために、37条1項において、一定の割合以上の議決権を有する社員が理事に対して社員総会の招集を請求することができる旨規定し、同条2項において、その請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合などには、当該社員は、裁判所の許可を得て、社員総会を招集することができる旨規定する。・・・医療法46条の3の2第4項は、医療法人の理事長は、一定の割合以上の社員から臨時社員総会の招集を請求された場合にはこれを招集しなければならない旨規定するが、同法は、理事長が当該請求に応じない場合について、一般法人法37条2項を準用しておらず、また、何ら規定を設けていない。

これはまずいですね。悪さをするのは会社に限らず自治体でも病院でも起きるもんです。これを防止する仕組みがないということですか?

平成18年法律第84号による改正をはじめとする数次の改正により整備され、その中では一般法人法の多くの規定が準用されることとなったにもかかわらず、変更令和4年(許)第18号 臨時社員総会招集許可申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件令和6年3月27日 第三小法廷決定されることがなかったものである。他方、医療法は、医療法人について、都道府県知事による監督(第6章第9節)を予定するなど、一般法人法にはない規律を設けて医療法人の責務を踏まえた適切な運営を図ることとしている。

ん?これって理由になるんですか?他の部分は改正されたけど、この臨時社員総会については変更なしで、県知事による監督があるからいいでしょう?ってことですか。法律の変更については、政治的要因ですよね。県知事が監督ですか?まあ県知事の名前の下でやるんでしょうけど、公務員にそこまでできますか?公の場で戦うのは最終手段であるべきで、もっと組織の自治権があってしかるべきだと思いますよ。

結論
裁判官全員一致の意見でした。
一般法人法37条2項は類推適用されないと解するのが相当である。そうすると、医療法人の社員が同項の類推適用により裁判所の許可を得て社員総会を招集することはできないというべきである。

釈然としませんね。類推適用するしないの判断基準はどこなんです?

裁判官渡 惠理子の補足意見
医療法が、その現行規定上、社員に社員総会の招集権限それ自体を付与していない理由には、医療法人の責務や役割に照らし、社員による当該招集権限の濫用を防止する必要があるということが挙げられる。その一方で、医療法人の規模や経営形態、社員から臨時社員総会の招集を請求された理事長がこれに応じない理由や状況等は様々であり、社員において臨時社員総会の招集を実現させる法的手段を保障することが医療法人の適切な運営に必要である場合があることも否定できない。

当然ですね。

医療法は、46条の3の2第4項において、理事長は、一定の割合以上の社員から臨時社員総会の招集を請求された場合にはこれを招集しなければならない旨を規定することによって、社員による社員総会の招集権限の濫用防止との調和を図りつつも、上記のような場合には社員が医療法人の運営に直接関与することを認めることによりその適切な運営を確保する趣旨に出たものと解される。

少数派が因縁つけて病院を混乱させないためには仕方ないよねと言ってますね。

上記訴訟手続は、一般法人法37条2項に基づく非訟事件手続とは異なり、理事長において、当事者として臨時社員総会の招集請求に応じない理由等を含めて主張立証を尽くすことが期待され、また、社員も理事長もその判決に対する控訴をすることができることからすれば、これらの審理を通じて、より医療法人についての適正手続を確保することができ、上記医療法46条の3の2第4項の趣旨、ひいては同法の現行規定にも整合するものということができる。


その条文がこれです。
4 理事長は、総社員の五分の一以上の社員から社員総会の目的である事項を示して臨時社員総会の招集を請求された場合には、その請求のあつた日から二十日以内に、これを招集しなければならない。ただし、総社員の五分の一の割合については、定款でこれを下回る割合を定めることができる。

ということは今回は20%に満たない社員から開けよと要求があった訳ですか。というか、これを理由にしっかり書くべきですね、補足意見ではなく。結論はいいとして、全体として論旨が今ひとつでした。

裁判長裁判官 渡 惠理子
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴
裁判官 長嶺安政
裁判官 今崎幸彦

同性愛カップルも事実婚を認め犯罪給付金を言支給せよ

2024-05-24 21:45:45 | 日記
令和4(行ツ)318  犯罪被害者給付金不支給裁定取消請求事件
令和6年3月26日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄差戻  名古屋高等裁判所

 犯罪被害者と同性の者は、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得る

NHKの報道です
犯罪被害者遺族給付金で初判断「同性パートナーも対象」最高裁
名古屋市の内山靖英さん(49)は、10年前に、同居していたパートナーの男性を殺害され、犯罪被害者の遺族を対象にした国の給付金を申請したものの認められず、不服として愛知県に対する裁判を起こしました。
裁判では、給付金の対象とされている「事実上の婚姻関係にあった人」に同性のパートナーが含まれるかどうかが争点となり、1審と2審は、対象に含まれないとして訴えを退け、内山さんが上告していました。
26日の判決で、最高裁判所第3小法廷の林道晴裁判長は「被害者の死亡で、精神的、経済的打撃を受けるのは、異性か同性かで異なるとはいえない。被害者と同性のパートナーも事実婚に該当し、給付金の対象になりうる」という初めての判断を示しました。
そのうえで、被害者と事実婚の関係だったかどうか、さらに審理を尽くす必要があるとして、名古屋高等裁判所で審理をやり直すよう命じました。
判決は5人の裁判官のうち4人の多数意見で、1人は「同性パートナーは事実婚には該当しない」という反対意見を出しました。


事実関係から見ていきます。
(2)上告人(昭和50年生まれの男性)は、平成6年頃に昭和37年生まれの男性(以下「本件被害者」という。)と交際を開始し、その頃から同人と同居して生活していたところ、同人は、平成26年12月22日、第三者の犯罪行為により死亡した。

同性愛カップルが事実上の婚姻生活をしていた。その片方が殺人事件で殺された。

(3)「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当すると主張して、遺族給付金の支給の裁定を申請したところ、愛知県公安委員会から、平成29年12月22日付けで、上告人は上記の者に該当しないなどとして、遺族給付金を支給しない旨の裁定を受けた。

原審では

犯給法5条1項1号は、一次的には死亡した犯罪被害者と民法上の婚姻関係にあった配偶者を遺族給付金の受給権者としつつ、死亡した犯罪被害者との間において民法上の婚姻関係と同視し得る関係を有しながら婚姻の届出がない者も受給権者とするものであると解される。

原審では婚姻関係じゃないから駄目よと拒否されたようです。当然ですね。事実婚が認められるんだから、同性愛でも認めろよってことなんでしょう。でも、事実婚を認めると戸籍法が死文化されるんですよ。このあたりは裁判官はなあなあで話を勧めますが、これでは何のために法律があるのか分かりません。同性愛の結婚については、養子縁組で加速関係は法的に代替されています。だから今回は親子関係を結んでおけば済んだ話です。

最高裁はこれに対して
(1)犯罪等により害を被った者及びその遺族等の権利利益の保護を図ることを目的とする犯罪被害者等基本法が制定され(同法1条)、基本的施策の一つとして、国等は、これらの者が受けた被害による経済的負担の軽減を図るため、給付金の支給に係る制度の充実等必要な施策を講ずるものとされた(同法13条)。そして、平成20年法律第15号による改正により、犯給法は、犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族等の犯罪被害等を早期に軽減するとともに、これらの者が再び平穏な生活を営むことができるよう支援するため、・・・

この場合この趣旨に合ってるんでしょうか。昭和50年代生まれとなれば40歳過ぎですよね。通常であれば働いていておかしくない年齢です。

(2)犯給法5条1項は、犯罪被害者等給付金の支給制度の目的が上記 のとおりであることに鑑み、遺族給付金の支給を受けることができる遺族として、犯罪被害者の死亡により精神的、経済的打撃を受けることが想定され、その早期の軽減等を図る必要性が高いと考えられる者を掲げたものと解される。

経済的はともかく精神的ですか。金やるから泣くのは止めろと言う趣旨ですか?なんか違う気がしますけどね

犯罪被害者との関係や共同生活の実態等に鑑み、事実上婚姻関係と同様の事情にあったといえる場合には、

これが曲者なんですよ。法的に婚姻関係にあっても別居状態にある場合は、婚姻関係は破綻として不支給になるのでしょうか?事実上婚姻関係を認めたとして、複数の相手を渡り歩くのも婚姻関係として認めるのでしょうか?ここをはっきりさせないと、似たような感じでどんどん請求が来ますよ。一番確実なのは、法的な関係の有無でばっさり判断基準を決める事なんじゃないですかね。

(3)犯罪被害者と同性の者は、犯給法5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得ると解するのが相当である。

明らかに過剰な判断です。同性愛だから拒否したのではなく法的に関係が築かれていないことを理由にすべきでした。

裁判官林道晴の補足意見
犯罪被害者との間で異性間の内縁関係に準ずる関係にあったといえる場合には、異性間の内縁関係にあった者と同様に犯罪被害者の死亡により精神的、経済的打撃を受けるものと考えられるから、上記文言に該当するものとして、遺族給付金の支給を受けることができる遺族に含まれると解するのが相当である。

同性か異性かははいいとして、内縁ってのは行けませんね。そもそもその内縁関係ってのはどのくらいの期間、どういう状態であることが定義されるのでしょうか?客観的事実に基づく根拠が弱いではないですか。そういういつでも逃げ出せる状況にある人を救済することの社会的意義はどこにありますか?また出会って1週間で結婚する人もいますけど、そういう人が6日目に殺されたとした場合、救済されないんですよね。法的安定性を担保できないような判決を出すべきではありません。

裁判官今崎幸彦の反対意見
1 遺族給付金の支給額は、政令により算定される基礎額に、「遺族の生計維持の状況を勘案して」政令で定める倍数を乗じて得た額とされている(9条1項)。このことは、遺族給付金が犯罪被害者遺族の生活保障を意識して設計されたものであることを示している。他方、支給される遺族の範囲として、犯罪被害者の収入によって生計を維持していたことを要件としていないこと(5条1項)など、必ずしも遺族の生活保障の性格とは整合しない規定も置かれている。
また、労働者災害補償保険法による給付等や損害賠償を受けたときはその価額の限度において支給しないとする一方(7条、8条)、犯罪被害者が死亡前に負担した療養費用等について支給額を加算する規定を置いている(9条5項)ところなどは、遺族給付金が損害の塡補としての性格を有していることを示すものといえる。
2 犯給法は、遺族給付金が犯罪被害者遺族に対する生活保障と損害の塡補という2つの機能を十全に果たすことを通じ、上述したような制度の趣旨、ひいては法の目的が達せられることを期待しているものといってよいと思われる。


これはごもっともです。主な収入源を絶たれ未成年者の子がいた場合、基本は保険に入っておけよと思いますけど、これは救済してやらなければなりません。しかもそれは緊急に必要な金額に限るべきだと思います。精神的という問題は慰謝料の代わりに先払いしてやるという制度であれば、それもいいのですが。これ以上になると政策論のなって裁判官の判断の良し悪しを論じることから離れるので、元に戻します。

3 犯罪被害者相互の間に、潜在的にせよ前述のような利害対立の契機をもたらすものでもある。こうした結果が遺族を含めた総体としての犯罪被害者の社会的ニーズに応えるものであるかは、犯給法の解釈上重要な考慮要素と思われる。
4 同性パートナー固有の権利として、精神的損害を理由とした賠償請求権については、もとより事案によることではあるが、認める余地があると考えている。
しかし、財産的損害、とりわけ扶養利益喪失を理由とする損害賠償請求権については、民法752条の準用を認めない限りにわかに考え難いというのが大方の理解であろう。そうであるとすれば、犯罪被害者の同性パートナーに認められる損害賠償請求権は、仮に認められるとしても異性パートナーに比べて限定されたものとなる。


そういえば同性カップルで不貞行為で民事訴訟ってのがありましたね。結局あれは却下されたような。どこまでの行為が不貞ではないのか、そのあたりが定義されていないと判断しようがありません。

5 犯給法5条1項1号の「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」と同一又は同趣旨の文言が置かれている例は少なくないが、そうした規定について、多数意見がいかなる解釈を想定しているかも明らかでない。
7 なお、多数意見は、上告人が本件被害者との間において「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当するか否かについて審理を尽くさせるために原審に差し戻すとする一方で、「事実上婚姻関係と同様の事情」という要件の中身については何も語らない。


この点はごもっとも。審議がきちんとなされてないですね。

裁判長裁判官 林 道晴 ダメ
裁判官 宇賀克也 ダメ
裁判官 長嶺安政 ダメ
裁判官 渡 惠理子 ダメ
裁判官 今崎幸彦 マトモ

死んで10年経って相続が完了してようが、遺言書が出てきたらやり直せ

2024-05-12 13:06:25 | 日記
令和4(受)2332  遺言無効確認等請求事件
令和6年3月19日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所
 相続回復請求の相手方である表見相続人は、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、当該真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができる

10年後に遺言発見、相続認められず 最高裁が初判断
法定相続人が不動産を相続して10年以上たった後、他にも相続人がいるとする遺言が見つかった場合、誰が不動産を所有できるのか――。こうした点が争われた訴訟の上告審判決が19日、最高裁第3小法廷(渡辺恵理子裁判長)であった。同小法廷は法定相続人による相続財産の取得は遺言によって妨げられないとする初判断を示した。

相続案件の裁判って本当に嫌なんです。読むだけでもしんどくなりますよ。

事実確認から見ていきます。

(1)Bは、平成13年4月、甥である上告人Y1及びA並びに養子である被上告人に遺産を等しく分与する旨の自筆証書遺言(以下「本件遺言」という。)をした。
(2)Bは、本件不動産を所有していたが、平成16年2月13日に死亡した。Bの法定相続人は、被上告人のみである。
(3)被上告人は、平成16年2月14日以降、所有の意思をもって、本件不動産を占有している。被上告人は、同日当時、本件遺言の存在を知らず、本件不動産を単独で所有すると信じ、これを信ずるにつき過失がなかった。
(4)被上告人は、平成16年3月、本件不動産につき、被上告人単独名義の相続を原因とする所有権移転登記をした。


父ちゃんが死んで、子どもが相続しました。遺言がなく通常の手続きでした。
後から遺言書が出てきたようですが、その経緯は全くここでは書かれていません。これは重要だと思いますよ。というのは、普段から父ちゃんとのつながりがあれば、死んだのはすぐに分かると思います。そうなれば、相続あるいは死後認知の話が出て来るはずですが、10年経ってから出てきたとか。相続する意思があれば、10年は待たなくてもその前に何かやっていたはずです。遺伝子的には親子かもしれませんが、社会的に親子だったのかという点は議論されなかったようです。この点は重要だと思いますけどね。

これにつて最高裁は
民法884条が相続回復請求権について消滅時効を定めた趣旨は、相続権の帰属及びこれに伴う法律関係を早期かつ終局的に確定させることにある(最高裁昭和48年(オ)第854号同53年12月20日大法廷判決・民集32巻9号1674頁参照)ところ、上記表見相続人が同法162条所定の時効取得の要件を満たしたにもかかわらず、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成していないことにより、当該真正相続人の相続した財産の所有権を時効により取得することが妨げられると解することは、上記の趣旨に整合しないものというべきである。

何かよく分からない判例を持ってきましたね。これって退職金の時効の話でしょう?どう関係しますの?とは言え、法律が「その事実を知ってから5年」で時効が成立とあるので、死んで10年経ったからって時効は成立しないようです。これは条文がある以上仕方ないかな。

ということに立ち戻ってみると、やはり父親との関係はどうだったのか、ここが判断材料となるべきだと思いますけどね。

裁判官全員一致でした
裁判長裁判官 渡 惠理子
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴
裁判官 長嶺安政
裁判官 今崎幸彦

 消費者裁判手続特例法の適用がおかしくないか?

2024-05-05 18:47:03 | 日記
令和4(受)1041  共通義務確認請求事件
令和6年3月12日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所
 消費者裁判手続特例法2条4号所定の共通義務確認の訴えについて同法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当するとした原審の判断に違法があるとされた事例

朝日新聞の報道です。
消費者被害を回復する裁判制度、利用拡大へ道 最高裁が初判断
暗号資産に関する情報商材の販売で生じた被害をめぐり、被害者に代わって消費者団体が被害回復を図る「消費者団体訴訟制度」の対象になるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷(長嶺安政裁判長)は12日の判決で、「対象になる」との判断を示した。「対象にならない」とした一、二審判決を取り消し、審理を東京地裁に差し戻した。

ウェストローの記事です
過失相殺の可能性は、消費者被害に対する集団的救済の障害となるのか

この事件は、本ブログの「トンデモ判決 自動取引FXのDVDの返金要求」に関連する事件です。事件概要は本ブログのリンク先か、判決文の前半を読んでください。

原審では
被上告人らによる本件各商品の購入の勧誘等が不法行為となり、これによって、本件対象消費者が誰でも確実に稼ぐことができる簡単な方法があると誤信したとしても、そもそも投資等においてそのような方法があるとは容易に想定し難く、本件対象消費者につき、仮想通貨への投資を含む投資の知識や経験の有無及び程度、本件各商品の購入に至る経緯等の事情は様々であることからすれば、過失相殺について、本件対象消費者ごとにその過失の有無及び割合を異にする。また、本件対象消費者が本件各商品を購入した動機については、誰でも確実に稼ぐことができる簡単な方法があると誤信した場合のほか、そのような誤信をせずに、単に仮想通貨で稼ぐ方法に興味を抱いた場合も想定され、本件対象消費者ごとに因果関係の存否に関する事情も様々である。したがって、本件については、法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当する。

要するに商品を買う前に、怪しいと思ったでしょう?盲目的に買ったとしたならば、それって勝った側の過失だよね、だから、全額ではなく過失割合で返金が妥当でしょう、という趣旨です。

これ自体でも問題ありだと思いますよ。投資目的でその勉強道具を買うわけですよね。投資の一環なのだから、消費者として扱うのはどうなんですか?という議論は全くされないのですか。地裁も高裁もちょっと変です。

最高裁は
法は、消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害を集団的に回復するため、共通義務確認訴訟において、事業者がこれらの消費者に対して共通の原因に基づき金銭の支払義務を負うべきことが確認された場合に、当該訴訟の結果を前提として、簡易確定手続において、対象債権の存否及び内容に関し、個々の消費者の個別の事情について審理判断をすることを予定している

それはごもっとも。

本件各商品につき虚偽又は実際とは著しくかけ離れた誇大な効果を強調した説明をしてこれらを販売するなどしたというものであるところ、前記事実関係によれば、被上告人らの説明は本件ウェブサイトに掲載された文言や本件動画によって行われたものであるから、本件対象消費者が上記説明を受けて本件各商品を購入したという主要な経緯は共通しているということができる上、その説明から生じ得る誤信の内容も共通しているということができる。

ならば、詐欺罪として刑事事件化すべきじゃないですかね。それやってます?

本件対象消費者につき、過失相殺をするかどうか及び仮に過失相殺をするとした場合のその過失の割合が争われたときには、簡易確定手続を行うこととなる裁判所において、適切な審理運営上の工夫を講ずることも考えられる。

あくまでも民事で片を付ける気ですよね。となれば投資の一環で失敗こいた扱いでしょう。

過失相殺及び因果関係に関する審理判断を理由として、本件について、法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当するとした原審の判断には、同項の解釈適用を誤った違法がある。

全員一致でした。これは弁護士の問題なのか、刑事機縁として立件できないから民事にしたのか分かりませんが、最初の論点を誤っている気がしますね。

裁判官林道晴、裁判官宇賀克也の補足意見
共通義務確認訴訟の段階では、個々の消費者の個別の事情についてはいまだ明らかでないことが少なくないと思われるものの、本件のように、消費者契約に至る主要な経緯等が客観的な状況等からみて共通しているということができるような場合には、上記経緯等についての個々の消費者の個別の事情に係る争点に関しては、陳述書等の記載内容を工夫することなどにより、簡易確定手続の審理を合理的に行うことができるのではないかと思われる。また、当事者多数の訴訟において、仮に過失相殺をするとした場合には、当事者(被害者)ごとに存する事情を分析、整理し、一定の範囲で類型化した上で、これに応じて過失の割合を定めるなどの工夫が行われているところであり、同様の工夫は、簡易確定手続においてもなし得るものと考えられる。

法の解釈ではなく手続きを簡略化しろというだけのようです。

裁判長裁判官 長嶺安政
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴
裁判官 今崎幸彦

ということで、全員論点ずれ