最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

第一小法廷 雑すぎて分からない判決文・・・結局事実誤認?

2016-09-25 13:00:35 | 日記
平成28(あ)456  覚せい剤取締法違反被告事件
平成28年7月27日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  大阪高等裁判所
 刑法等の一部を改正する法律(平成25年法律第49号)による刑の一部の執行猶予に関する各規定の新設と刑訴法411条5号にいう「刑の変更」

何とこれが判決文の全文です。

弁護人井木ひろしの上告趣意は,憲法違反をいう点を含め,実質は事実誤認,量刑不当,原判決後の刑の変更の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
所論に鑑み,職権で判断する。刑法等の一部を改正する法律(平成25年法律第49号)による刑の一部の執行猶予に関する各規定(刑法27条の2ないし27条の7)の新設は,被告人の再犯防止と改善更生を図るため,宣告刑の一部についてその執行を猶予するという新たな選択肢を裁判所に与える趣旨と解され,特定の犯罪に対して科される刑の種類又は量を変更するものではない。そうすると,刑の一部の執行猶予に関する前記各規定の新設は,刑訴法411条5号にいう「刑の変更」に当たらないというべきである(最高裁昭和22年(れ)第247号同23年11月10日大法廷判決・刑集2巻12号1660ノ1頁参照)。
よって,同法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。


今まで見た判決文で最短です。何を言ってるのかさっぱりわかりません。判決文は、その後に判例を判断するものとして使うので、当事者だけの問題では済みません。もう少し丁寧な判決文を望みます。
ニュースに出ていないか、弁護士のブログでもないか探してみましたが、今のところ見つかりませんでした。弁護士が一人も書いていない所を見ると、プロの眼から見ても重大な判断ではなかったようです。

表題からして、恐らく麻薬取締法違反で逮捕されたのでしょう。H25年に刑法が改正されて、執行猶予の範囲が広がりました
被告はその改正されたことについて執行猶予を求めましたが、裁判所は被告が要求しているのは事実認定であって、課される罪名は変わらないとしました。なので、上告の理由なしとして判決を出しました。

こんな判決文を最高裁で掲示する必要があるのでしょうか?これだったら、全ての判決文を公開してもいいレベルです。掲載するか否かどなたが判断してのか分かりませんが、いい加減にせい!と言いたいレベルです。
判断の内容はともかく、判決文はもう少し丁寧に書くべきです。


第一小法廷
裁判長裁判官 池上政幸
裁判官 櫻井龍子
裁判官 大谷直人
裁判官 小池 裕

東京地裁 慰安婦報道で朝日新聞への名誉棄損裁判請求棄却

2016-09-18 10:12:16 | 日記
まだ地裁の段階なので判決文は公開されていませんが、恐らく最高裁まで争われるでしょう。
この裁判の概要は、あまり報道されていません。マスコミがマスコミをかばう姿勢が見え隠れしています。

当の朝日新聞の報道です。
 朝日新聞の慰安婦に関する報道で「国民の名誉が傷つけられた」として、渡部昇一・上智大名誉教授ら国内外の2万5722人が朝日新聞社に謝罪広告や1人1万円の慰謝料を求めた訴訟の判決で、東京地裁(脇博人裁判長)は28日、原告の請求を棄却した。原告は控訴する方針。
 対象は、慰安婦にするため女性を無理やり連行したとする故吉田清治氏の証言記事など、1982~94年に掲載された計13本の記事。原告側は「日本国民の国際的評価を低下させ、国民的人格権や名誉権が傷つけられた」と訴えた。
 判決は、記事は旧日本軍や政府に対する報道や論評で、原告に対する名誉毀損(きそん)には当たらないとした。報道によって政府に批判的な評価が生じたとしても、そのことで国民一人一人に保障されている憲法13条の人格権が侵害されるとすることには、飛躍があると指摘した。また、掲載から20年以上過ぎており、仮に損害賠償の請求権が発生したとしてもすでに消滅している、とも述べた。
 朝日新聞社広報部は「弊社の主張が全面的に認められた、と受け止めています」との談話を出した。


産経新聞は次の通りです。
従軍慰安婦問題の報道内容に疑義が生じたのに、朝日新聞社が長年検証してこなかったとして、読者ら482人が同社に1人1万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は16日、請求を棄却した。
 原告側は「憲法で保障された知る権利が侵害された」と訴えたが、北沢純一裁判長は「憲法の規定は国の統治行動に対するものであって、私人間には適用されない」と退けた。
 その上で「報道内容に疑義が生じた場合、訂正の要否や時期は新聞社の自律的判断に委ねられる。報道方法が不適切だったり訂正をしなかったりすれば業界から淘汰されるから、報道機関の判断には一定の歯止めが期待できる」と指摘。さらに「こうした賠償請求ができるとなれば、報道の自由に重大な影響を及ぼし、国民の知る権利に応えることができなくなる」と述べた。



おそらくこの裁判の原告であろう、朝日新聞を糺す国民会議のHPはこちらです。

海外によく行く人は嫌というほど感じたことがあるでしょう。私も経験がありますが、ヨーロッパ出張中に従軍慰安婦の番組が報道され、その場にいた現地の人の視線を感じました。思いっきり恥ずかしい思いをさせらたのです。しかもその報道が捏造によってです。
こういう被害にあった人は、名誉棄損として訴える事につながったのでしょう。裁判の戦略としては、虚偽の事実によって新聞を買わせた詐欺罪として告訴したほうが、確実だったのかもしれません。
とは言え、捏造記事を発行し有償で販売し、訂正記事を後に出したとはいえ、法的制裁を加えられないというのは、捏造の自由を認めることになるのではないでしょうか。

東京高裁 忘れられる権利はあるのか

2016-09-11 18:53:49 | 日記
まだ、高等裁判所の判決が出たばかりなので最高裁の判例データベースには記載されていません。

日経新聞の報道では以下の通りです。

 逮捕歴のある男性がインターネット検索サイト「グーグル」の検索結果から逮捕に関する記事の削除を求めた仮処分申し立てで、東京高裁(杉原則彦裁判長)は12日、過去の情報について「忘れられる権利」を認めた昨年12月のさいたま地裁決定を取り消す決定をした。忘れられる権利については「法律で定められたものではなく要件や効果が明確でない」とした。
 忘れられる権利について高裁が言及するのは初めてとみられる。
 杉原裁判長は決定で「男性の逮捕歴は社会的に関心の高い行為で、5年程度が経過しても公共の利害に関わる」と判断。グーグルが検索サイトで大きなシェアを占めることなどから「削除すれば多くの人の表現の自由と知る権利を侵害する」と述べた。
 忘れられる権利については本質的には名誉毀損やプライバシー侵害にもとづく申し立てと変わらず「独立して判断する必要はない」とした。
 地裁決定などによると、男性は約5年前の児童買春・ポルノ禁止法違反事件で罰金の略式命令が確定。氏名などで検索すると、逮捕時の記事が複数表示されていた。
 昨年12月のさいたま地裁決定は「犯罪の性質にもよるが、ある程度の期間の経過後は過去の犯罪を社会から忘れられる権利がある」と言及し、記事の削除を認めた。グーグルが決定を不服として高裁に抗告していた。
 グーグルは「知る権利と情報へのアクセスを尊重した判断と考えている」とコメントした。
 忘れられる権利をめぐっては、欧米を中心に議論が活発化。2014年には欧州司法裁判所が検索結果の削除をめぐる訴訟で忘れられる権利を認め、注目を集めた。一方で、表現の自由や知る権利への影響を懸念する声も上がっている。
 検索結果の削除を求める訴えは国内でも相次ぎ、事例によって裁判所の判断が分かれている。



これは限りなく広告ですが、こんな紹介もあります。

判決文も一切公開されていないので、どんな事実関係があり、どんな条文でどのように判断されたのか全く分かりません。
この日経の記事によると、どのような犯罪でどのような刑を受けた内容なのかが全く記載されていないため、全ての犯罪に一括適用されるのかとも思えるようにも思えてきます。
この事件と関係するか分かりませんが、産経新聞での報道はこのようなものです。

男性は児童買春・ポルノ禁止法違反の罪で罰金50万円の略式命令が確定。名前と住所で検索すると3年以上前の逮捕時の記事が表示された。男性の仮処分申し立てに対し、さいたま地裁が昨年6月、「更生を妨げられない利益を侵害している」として削除を命令。グーグル側がこの決定の取り消しを求めていた

もしこの事件であれば、性犯罪ですからね。性犯罪は再犯の可能性が高いので、これは抑止力のためにも載せておくことは公共の利益に叶うもののように思えます。その意味では、東京高裁の判断は国民を守るために必要なものであると思います。

トンデモ判決:離職せん別金に充てるため共済会に対して補助金を出すのは適法

2016-09-06 17:39:33 | 日記
平成25(行ヒ)533  鳴門市競艇従事員共済会への補助金違法支出損害賠償等請求事件
平成28年7月15日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  高松高等裁判所

競艇臨時従事員に支給する離職せん別金に充てるため,市が競艇従事員共済会に対して補助金を交付したことが,地方自治法232条の2所定の公益上の必要性を欠き違法であるとされた事例

これはマスコミで報道されなかったので、判決文から読み解いていきます。

鳴門競艇従事員共済会から鳴門競艇臨時従事員に支給される離職せん別金に充てるため,鳴門市が平成22年7月に共済会に対して補助金を交付しました。これは、給与条例主義を定める地方公営企業法38条4項に反する違法,無効な財務会計上の行為であるなどとして,市の住民である上告人らが,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,被上告人市長を相手に,当時の市長の職にあった者に対する損害賠償請求をすることを求める裁判でした。

これだけ聞くと、税金を使ってパートのお別れ会の選別を公費からは払ったというのはいただけません。
事実関係では、裁判所は次のように見ています。

公営企業の競艇場が、公営企業法に基づいて人を雇い、法に従って給料が定められています。この鳴門競艇もこれに従った団体です。
1)共済会は,臨時従事員の相互共済により福利厚生及び互助融和を図ることを目的として,臨時従事員で法定月間開催日数以上雇用される者(会員)と市企業局の職員(特別会員)とで組織される団体である。
2)離職時の基本賃金(日額賃金)に在籍年数及びこれを基準とする支給率を乗じるなどして算出した離職せん別金を支給していた。
3)鳴門市企業局補助金等交付規程(平成25年鳴門市企業管理規程第4号による改正前のもの)及び鳴門市競艇従事員共済会離職せん別金補助金交付要綱は,鳴門市競艇従事員共済会離職せん別金補助金の申請,決定等に関し必要な事項を定めていた

うーん、ここが異常ですね。公務員がお手盛りで給料の支払いをできるようにしていたのですね。

4)共済会の会長であるCは,平成22年6月30日,企業局長であるBに対し,離職せん別金補助金1億0457万3722円の交付を申請し,Bは,同年7月7日,その交付を決定した。
5)このうち,共済会自身の負担額は360万8500円であり,上記の離職せん別金の原資に占める本件補助金の割合は約97%であった。


(住民訴訟)
第二百四十二条の二
四  当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあつては、当該賠償の命令をすることを求める請求

基本的にこれで訴えるしかないのですが、裁判所は職権で訴える法律の妥当性を審査します。
市長による予算の調製がこれらの行為又は事実に当たらないことは明らかである


はぁ?としか言いようがないですね。確かに、この条例を決めたのは議会かも知れませんが、予算の執行は市長の名前で行われるでしょう。

しかも、続きます。
地方自治法232条の2の定める公益上の必要性があるとしてされた本件補助金の交付は,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであって,同条に違反する違法なものというべきである。
(寄附又は補助)
第二百三十二条の二  普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。

これはそうかもしれません。
訴える条文が違うからといって、こんなにあっさりやっていい話ですか?

これについて、、某弁護士のブログでもとりあげられていますが、「条例で決めないで,裁判所がその程度の退職金を出すことは、地方自治法232条の2に定める補助金の公益性に適合すると判断した。これは,議会の権限を裁判所が奪うもので,民主主義に反します。公務員の給与は労使交渉で決めるものではなく、議会が決めるものなのです。直接払えば違法なのに,互助会を通じて補助金を出せば適法というのでは,脱法行為が蔓延する。」この意見に賛成です。

裁判官全員一致の意見でした。
第二小法廷
裁判長裁判官 鬼丸かおる トンデモ
裁判官 千葉勝美 トンデモ
裁判官 小貫芳信 トンデモ
裁判官 山本庸幸 トンデモ

共犯の範囲はどこまでか

2016-09-01 18:06:04 | 日記
平成26(あ)747  業務上過失致死傷被告事件
平成28年7月12日  最高裁判所第三小法廷  決定  棄却  大阪高等裁判所

花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,警察署副署長に同署地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立しないとされた事例

westlawでしかまとめられていません。

(1) 平成13年7月21日午後7時45分頃から午後8時30分頃までの間、o海岸公園において、花火大会等が実施されたが、その際、最寄りのJR西日本a駅と同公園とを結ぶ本件歩道橋に多数の参集者が集中して過密な滞留状態となった上、花火大会終了後a駅から同公園へ向かう参集者と同公園からa駅へ向かう参集者が押し合ったことなどにより、強度の群衆圧力が生じ、同日午後8時48分ないし49分頃、同歩道橋上において、多数の参集者が折り重なって転倒し、その結果、11名が全身圧迫による呼吸窮迫症候群(圧死)等により死亡し、183名が傷害を負うという本件事故が発生した。
 (2) 当時明石警察署署長であったAは、同警察署管轄区域内における警察の事務を処理し、所属の警察職員を指揮監督するものとされており、同警察署管内で行われる本件夏まつりにおける同警察署の警備計画の策定に関しても最終的な決定権限を有していた。
 B地域官は、地域官として、明石警察署の雑踏警備を分掌事務とする係の責任者を務めていたところ、平成13年4月下旬頃、A署長に本件警備計画の策定の責任者となるよう指示され、これを受けて、明石市側との1回目及び2回目の検討会に出席し、配下警察官を指揮して本件警備計画を作成させるなどした。B地域官は、A署長の直接の指揮監督下にあり、本件警備計画についても具体的な指示を受けていた。
 Xは、明石警察署副署長として、警察事務全般にわたりA署長を補佐するとともに、その命を受けて同警察署内を調整するため配下警察官を指揮監督する権限を有していた。Xは、本件警備計画の策定に当たっても、A署長の指示に基づき、B地域官の指揮下で本件警備計画を作成していた警察官に助言し、明石市側との3回目の検討会に出席するなどした。また、Xが同警察署の幹部連絡会において、本件警備計画の問題点を指摘し、A署長がこれに賛成したこともあった。
 (3) 本件事故当日、A署長は、明石警察署内に設置された署警備本部の警備本部長として、雑踏対策に加え、暴走族対策、事件対策を含めた本件夏まつりの警備全般が適切に実施されるよう、現場に配置された各部隊を指揮監督し、警備実施を統括する権限及び義務を有していた。A署長は、本件事故当日のほとんどの場面において、自ら現場の警察官からの無線報告を聞き、指示命令を出していた。
 Xは、本件事故当日、署警備本部の警備副本部長として、本件夏まつりの警備実施全般についてA署長を補佐し、情報を収集してA署長に提供するなどした上、不測の事態が発生した場合やこれが発生するおそれがあると判断した場合には、積極的にA署長に進言するなどして、A署長の指揮権を適正に行使させる義務を負っており、実際に、署警備本部内において、現場の警察官との電話等により情報を収集し、A署長に報告、進言するなどしていた。
 なお、署警備本部にいたA署長やXが本件歩道橋付近に関する情報を収集するには、現場の警察官からの無線等による連絡や、テレビモニター(本件歩道橋から約200m離れたホテルの屋上に設置された監視カメラからの映像を映すもので、リモコン操作により本件歩道橋内の人の動き等をある程度認識することはできるもの)によるしかなかった。
 一方、B地域官は、本件事故当日、o海岸公園の現場に設けられた現地警備本部の指揮官として、雑踏警戒班指揮官ら配下警察官を指揮し、参集者の安全を確保すべき業務に従事しており、現場の警察官に会って直接報告を受け、また、明石市が契約した警備会社の警備員の統括責任者らと連携して情報収集することができ、現場付近に配置された機動隊の出動についても、自己の判断で、A署長を介する方法又は緊急を要する場合は自ら直接要請する方法により実現できる立場にあった。


この事件は、テレビで何度か検証された 有名な事件でした。当時の検察は不起訴としたため、強制起訴しました。
歩道橋での事故は予見できたかとなると、予見しているから警察が出動しているのですよね。

検察官の職務を行う指定弁護士は,被告人とB地域官は刑訴法254 条2項にいう「共犯」に該当し,被告人に対する関係でも公訴時効が停止している と主張しました。
そこで、被告人とB地域官が刑訴法254条2項にいう「共犯」に該当す るというためには,被告人とB地域官に業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立する 必要があると最高裁は判断しました。

共同正犯とは、構成要件段階における共同正犯の成立には、各人の構成要件的故意または構成要件的過失と「共同して犯罪を実行した」ことが必要である。 「共同して犯罪を実行」とは、共同実行の意思(意思の連絡)及び共同実行の事実があることを意味するとされる(さらに、結果犯では結果と因果関係が、身分犯の共同正犯については身分者が1人以上いることが必要である。)。共同正犯の成立要件は次のようになります。
第60条  二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

共同実行の事実の具体的意味内容(何を共同するか:共同の対象)については、特に共謀共同正犯の成否と関連して議論がある。刑法の自由主義的見地(罪刑法定主義・謙抑主義)を重視する立場からは、60条の意味を限定的に解し、実行行為を共同することが必要とする(実行行為の共同が必要とする部分的犯罪共同説:共謀共同正犯否定)が、刑法の法益保護機能(処罰の必要性)を重視する立場からは、60条の意味を広く解し、犯罪実現に向けての行為を共同することとし、少なくとも一部の者による実行行為は必要であるが、実行行為の共同は必要ではないとする。(構成要件行為の共同が必要とする部分的犯罪共同説あるいは行為共同説:共謀共同正犯肯定) これは結局、自由主義と法益保護(処罰の必要性)のいずれを重視するかという価値判断に依存する問題である。
共同正犯については、その解釈範囲に差があるようですが、今回はかなり狭まった解釈をしているようです。
これが、反社会的勢力の場合でも同じ結論に至ったのか疑問です。

明石 警察署の職制及び職務執行状況等に照らせば,B地域官が本件警備計画の策定の第 一次的責任者ないし現地警備本部の指揮官という立場にあったのに対し,被告人 は,副署長ないし署警備本部の警備副本部長として,C署長が同警察署の組織全体 を指揮監督するのを補佐する立場にあったもので,B地域官及び被告人がそれぞれ 分担する役割は基本的に異なっていた。本件事故発生の防止のために要求され得る行為も,B地域官については,本件事故当日午後8時頃の時点では,配下警察官を 指揮するとともに,C署長を介し又は自ら直接機動隊の出動を要請して,本件歩道 橋内への流入規制等を実施すること,本件警備計画の策定段階では,自ら又は配下 警察官を指揮して本件警備計画を適切に策定することであったのに対し,被告人に ついては,各時点を通じて,基本的にはC署長に進言することなどにより,B地域 官らに対する指揮監督が適切に行われるよう補佐することであったといえ,本件事 故を回避するために両者が負うべき具体的注意義務が共同のものであったというこ とはできない。被告人につき,B地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立 する余地はないというべきである。

この個所がどうも納得いきません。「助言」や「通報」ではなく「補佐する」のであれば、注意義務は共同であるのではないでしょうか。しかも警察署長であれば、現場責任者と言ってよいレベルです。県警本部であれば、裁判所の言うことは分かります。

事実認定が争われてこの結果になったのではなく、法文解釈でこの結果になったというのは私も納得できません。付帯意見もなく全員一致です。

第三小法廷
裁判長裁判官 大谷剛彦 納得できない
裁判官 岡部喜代子  納得できない
裁判官 大橋正春  納得できない
裁判官 木内道祥  納得できない
裁判官 山崎敏充 納得できない

これ以降、注意義務違反、監督義務違反で民事でしか戦えないのは残念です。