平成27年(受)第1384号 保険金請求本訴,不当利得返還請求反訴事件
平成28年3月4日 第二小法廷判決
老人デイサービスセンターの利用者が当該センターの送迎車から降車し着地する際に負傷したという事故が,当該送迎車に係る自動車保険契約の搭乗者傷害特約における当該送迎車の運行に起因するものとはいえないとされた事例
Aさんが老人デイサービスセンターのデイケアを受けていました。送迎バスで移動していたのですが、降りようとしたときに転んで怪我をして後遺症が残りました。入院通院費用を自動車保険で支払いを求め、一度支払ったも分について返還を要求した事件です。
まず事実認定ですが、「本件特約においては,本件車両の運行に起因する事故により,その搭乗者が身体に傷害を被り,入通院した場合に入通院保険金を支払い,また,上記傷害の結果,当該搭乗者に本件特約の定める後遺障害が生じた場合に後遺障害保険金を支払う旨が定められている。」とあります。「本件車両の運行に起因する事故により」とは実に微妙な表現ですね。
Aさんは,平成22年11月当時83歳で骨粗しょう症であり,身長が約115㎝で,円背があり、と明らかに歩行に障害がありそうです。
ところが、介護職員は降車時に踏み台を使用しなかったのです。
他にも事実認定はありますが、基本的にこの2点に尽きると思います。
そして、判決理由です。
上記の事実関係によれば,本件事故は,Aが本件センターの職員の介助により本件車両から降車した際に生じたものであるところ,本件において,上記職員が降車場所として危険な場所に本件車両を停車したといった事情はない。また,Aが本件車両から降車する際は,上記のとおり,通常踏み台を置いて安全に着地するように本件センターの職員がAを介助し,その踏み台を使用させる方法をとっていたが,今回も本件センターの職員による介助を受けて降車しており,本件車両の危険が現実化しないような一般的な措置がされており,その結果,Aが着地の際につまずいて転倒したり,足をくじいたり,足腰に想定外の強い衝撃を受けるなどの出来事はなかった。そうすると,本件事故は,本件車両の運行が本来的に有する危険が顕在化したものであるということはできないので,本件事故が本件車両の運行に起因するものとはいえない。
まあそうでしょう。車両を動かしている最中に起きた事故ではないし、また車両そのものの欠陥による事故ではないですね。むしろ、裁判所が認めたようにデイケアセンターの作業ミスでしょう。これは当然の判断んでしょうね。
第二小法廷
裁判長裁判官 山本庸幸
裁判官 千葉勝美
裁判官 小貫芳信
裁判官 鬼丸かおる
「本件車両の運行に起因」とは、介護施設側の立場であれば車にかかわっていれば全てとなるでしょうね。しかし、保険会社はなぜ一度でも保険金を払ったのか、よく分かりません。
平成28年3月4日 第二小法廷判決
老人デイサービスセンターの利用者が当該センターの送迎車から降車し着地する際に負傷したという事故が,当該送迎車に係る自動車保険契約の搭乗者傷害特約における当該送迎車の運行に起因するものとはいえないとされた事例
Aさんが老人デイサービスセンターのデイケアを受けていました。送迎バスで移動していたのですが、降りようとしたときに転んで怪我をして後遺症が残りました。入院通院費用を自動車保険で支払いを求め、一度支払ったも分について返還を要求した事件です。
まず事実認定ですが、「本件特約においては,本件車両の運行に起因する事故により,その搭乗者が身体に傷害を被り,入通院した場合に入通院保険金を支払い,また,上記傷害の結果,当該搭乗者に本件特約の定める後遺障害が生じた場合に後遺障害保険金を支払う旨が定められている。」とあります。「本件車両の運行に起因する事故により」とは実に微妙な表現ですね。
Aさんは,平成22年11月当時83歳で骨粗しょう症であり,身長が約115㎝で,円背があり、と明らかに歩行に障害がありそうです。
ところが、介護職員は降車時に踏み台を使用しなかったのです。
他にも事実認定はありますが、基本的にこの2点に尽きると思います。
そして、判決理由です。
上記の事実関係によれば,本件事故は,Aが本件センターの職員の介助により本件車両から降車した際に生じたものであるところ,本件において,上記職員が降車場所として危険な場所に本件車両を停車したといった事情はない。また,Aが本件車両から降車する際は,上記のとおり,通常踏み台を置いて安全に着地するように本件センターの職員がAを介助し,その踏み台を使用させる方法をとっていたが,今回も本件センターの職員による介助を受けて降車しており,本件車両の危険が現実化しないような一般的な措置がされており,その結果,Aが着地の際につまずいて転倒したり,足をくじいたり,足腰に想定外の強い衝撃を受けるなどの出来事はなかった。そうすると,本件事故は,本件車両の運行が本来的に有する危険が顕在化したものであるということはできないので,本件事故が本件車両の運行に起因するものとはいえない。
まあそうでしょう。車両を動かしている最中に起きた事故ではないし、また車両そのものの欠陥による事故ではないですね。むしろ、裁判所が認めたようにデイケアセンターの作業ミスでしょう。これは当然の判断んでしょうね。
第二小法廷
裁判長裁判官 山本庸幸
裁判官 千葉勝美
裁判官 小貫芳信
裁判官 鬼丸かおる
「本件車両の運行に起因」とは、介護施設側の立場であれば車にかかわっていれば全てとなるでしょうね。しかし、保険会社はなぜ一度でも保険金を払ったのか、よく分かりません。