最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

警察官の証拠捏造に近い捜査での証拠は無効

2021-09-25 09:29:32 | 日記
令和2(あ)1763  覚醒剤取締法違反,大麻取締法違反,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律違反被告事件
令和3年7月30日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所
 違法収集証拠として証拠能力を否定した第1審の訴訟手続に法令違反があるとした原判決に,法令の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

結構重要な裁判だと思うのですが、朝日新聞しか記事が残っていません。
以下、朝日新聞の報道です
警察官が覚醒剤の空袋を捜査対象者の車に仕込んだ疑いが指摘される薬物事件の上告審判決で、最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)は7月30日、違法捜査の有無をはっきりさせずに関連証拠を採用した二審・東京高裁判決を破棄し、高裁に審理を差し戻した。裁判官5人の全員一致の意見。・・・一審・東京地裁は、警察官が自分のズボンに手を入れてから男性被告(57)の車の運転席ドアの内ポケットに手を伸ばした車載カメラの映像などから、空袋を仕込んだ疑いを認定。これを根拠にした令状取得手続きには「重大な違法」があるとして関連証拠を採用せず、覚醒剤の所持や使用など一部を無罪とした。


警察官が証拠捏造ってことですかね。昭和の事件じゃないんだから。事実認定から見ていきます。

(1)平成30年3月30日午後4時41分頃,警察官は,職務質問を行うため,自動車(以下「本件車両」という。)を運転中の被告人に対して停止を求め,本件車両は道路左端(以下,同所及びその付近を「本件現場」という。)に停止した。警察官は,本件車両の運転席ドアを開け,被告人に対し,運転免許証の提示に応じるよう説得した。
警察官は,同日午後4時48分頃,本件車両の運転席ドアポケットに,中身の入っていないチャック付きビニール袋の束(以下「本件ビニール袋」という。)がある旨を被告人に告げた。
その後,運転免許証の提示に応じた被告人に覚醒剤取締法違反の犯罪歴が多数あることなどが判明し,被告人が任意の採尿や所持品検査に応じなかったことから,警察官は,同日午後5時8分頃,令状請求の準備に取り掛かることとした。


邪推ですが、これは職質じゃなくて麻薬取締官に監視されてましたね。

(2)警察官は,同日午後7時頃,覚醒剤の所持及び自己使用の各被疑事実により,本件車両等に対する捜索差押許可状及び被告人の尿を採取するための捜索差押許可状(以下「強制採尿令状」という。)を請求した。その際の疎明資料には,本件車両の運転席ドアポケットに本件ビニール袋が入っていることを確認した旨記載された取扱状況報告書,同ドアポケットに本件ビニール袋がある状況を撮影した写真が添付された写真撮影報告書が含まれていた。警察官は,同日午後11時4分頃,上記各令状の発付を受け,本件現場に向かった。

警察官に対して帰りたい旨の意思やそのために本件車両のドアや窓を閉めさせてほしいことを伝え,その後,弁護士の助言を求めて電話をかけたり,帰りたい旨述べて本件現場を立ち去ろうとしたりしたが,警察官は,被告人を取り囲み,被告人の動きに応じてその身体に接触するなどして立ち去りを制止した。

これは明らかにやり過ぎです。警察官職務執行法2条に明らかに違反しています。が、一般人は知りませんからそれを受け入れている傾向があります。拒否していいんですよ、たまにyoutube動画でやり過ぎ警察官がupされていますが、職務違反なので名前も晒してOKです。

(3)警察官は,同日午後11時25分頃,本件車両等に対する捜索差押許可状に基づき捜索差押えに着手し,覚醒剤を発見して被告人を覚醒剤所持の現行犯人として逮捕し,逮捕に伴う捜索差押えも実施し,これらの手続により本件車両から発見した本件薬物を差し押さえた。
被告人は,警察署に引致され,同月31日午前4時42分頃まで断続的に取調べを受ける中で,警察官から,強制採尿令状が出ている旨を告げられて,同日午前4時48分頃,自ら採取した尿を
任意提出した

罠に嵌りましたね。任意であればまだ裁判で刑が軽くなるだろうということでの判断だったのでしょうが、違法捜査による証拠は証拠能力は無効にされます。

ここで事実認定が争われました。

証拠物の押収等の手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり,これを証拠として許容することが,将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては,その証拠能力は否定されるものと解すべきである(最高裁昭和51年(あ)第865号同53年9月7日第一小法廷判決・刑集32巻6号1672頁参照)。
前記1の事実経過の下においては,本件各証拠の証拠能力を判断するためには,本件事実の存否を確定し,これを前提に本件各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断する必要があるというべきである。しかるに,原判決は,本件ビニール袋がもともと本件車両内にはなかった疑いは残るとしつつ,その疑いがそれほど濃厚ではないなどと判示するのみであって,本件事実の存否を確定し,これを前提に本件各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断したものと解することはできない。本件各証拠の証拠能力の判断において本件事実の持つ重要性に鑑みると,原判決には判決に影響を及ぼすべき法令の解釈適用の誤りがあり,これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。


そりゃそうでしょう。違法捜査だもの。

裁判倉三郎の補足意見
1 収集手続の違法の重大性を基礎付ける事実の存否に争いがあれば,検察官が当該事実の不存在の立証責任を負い,その立証に失敗すれば,当該事実があったものとして収集手続の違法判断がされる。
3 原判決は,本件事実の存否を前提とした本件各証拠の収集手続の違法判断を明示することなく,本件事実があった疑いは拭い去ることができないがその疑いはそれほど濃厚ではないことを指摘し,その程度にとどまる事情だけでは排除要請状況は認められないと判示している。

朝日新聞と随分と書いてある内容が違いますね。

本件各証拠の収集手続の違法判断がされるべきであるのに,本件事実があった疑いの程度によっては排除要請状況が認められないとして本件各証拠の証拠能力を肯定することは,実質的に,検察官が本件事実の不存在の立証に成功したのと同じ効果をもたらすものであり,立証責任の原則にも反する結果となろう。

裁判長裁判官 林 道晴
裁判官 戸倉三郎
裁判官 宮崎裕子
裁判官 宇賀克也
裁判官 長嶺安政

全員当然の判断でしょう。

監査役は会計帳簿を見るだけでは監査したとは言えない

2021-09-19 13:14:43 | 日記
令和1(受)1968  損害賠償請求事件
令和3年7月19日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所

会計限定監査役は,計算書類及びその附属明細書の監査を行うに当たり,当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではない

日経新聞の報道監査役の任務、帳簿の裏付け確認必要な場合も 最高裁によると
判決によると、横領があったのは千葉県内の印刷会社。経理担当社員が2007~16年に計2億円超を着服し、銀行口座の残高証明書を偽造した。会計監査を担っていながら横領に気づかなかったとして、会社側が監査役を訴えた。
第2小法廷は「監査役は会計帳簿の内容が正確であることを当然の前提として監査してよいものではない」と指摘。「帳簿が信頼性を欠くことが明らかでなくても、帳簿の作成状況の報告を取締役に求めたり基礎資料を確かめたりすべき場合がある」と述べた。裁判官4人全員一致の意見。
一審・千葉地裁は「漫然と監査し、監査役としての任務を怠った」と賠償を命じたが、二審は「明らかに帳簿が信頼性を欠くなどの特段の事情がない限り、帳簿に不適正な記載があることを積極的に調べる義務を負わない」と判断を覆していた。


この裁判について、弁護士法人が多くのコメントを出しています。が、法律家ですから、最高裁の判断が今後の判断に影響するので、いかに理解するかの話になっています。判断の妥当性について書いているものは今のところなさそうなので、解説していきます。

1 本件は,株式会社である上告人が,その監査役であった被上告人に対し,被上告人がその任務を怠ったことにより,上告人の従業員による継続的な横領の発覚が遅れて損害が生じたと主張して,会社法423条1項に基づき,損害賠償を請求する事案である。

よくある話ですが、個人企業が法人成りになったものの、事実上一人親方で法人にする意味が見当たらないような会社が腐るほどあります。法廷要件を満たすために名義貸しは普通に行われております。例えば、監査役はもっとも法的責任が小さいと言って、判子貸して!の一言で仲間内でなって貰っており、報酬もないのでなったことすらよく分かっていない人がかなりいます。自動車のスピード違反並みに結構守られていない法律の筆頭でもあります。スピード違反は警察が取り締まりますが、会社は当事者が裁判を起こさない限り問題になることはありません。

(2)被上告人は,昭和42年7月から平成24年9月までの間,上告人の監査役であった者であり,その監査の範囲は会計に関するものに限定されていた。

随分長い間監査役だったようです。事業譲渡でもあったのでしょうか。

(3)経理を担当していた従業員(以下「本件従業員」という。)は,平成19年2月から平成28年7月までの間,多数回にわたり上告人の名義の当座預金口座(以下「本件口座」という。)から自己の名義の預金口座に送金し,合計2億3523万円余りを横領した。・・・本件従業員は,上記の横領の発覚を防ぐため,本件口座の残高証明書を偽造するなどしていた。

アニータ事件を思い出します。住宅供給公社の役員は、「名義を貸していただけだ」だとか、「知らなかったんだから仕方ない」など意味不明なことを言っていた記憶があります。
本件もかなり悪質ですね。

(3)上記各期の監査において,本件従業員から提出された残高証明書が偽造されたものであることに気付かないまま,これと会計帳簿とを照合し,上記計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認するなどした。その上で,被上告人は,上記各期の監査報告において,上記計算書類等が上告人の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示している旨の意見を表明した

うーん、本当かなという気もしますが。

(4)銀行からの指摘で横領が発覚した。

銀行からのツッコみですか。結構あるみたいですね、取引先からの請求書だとか納品書だとか。監査役の人はちゃんと見たほうがいいですよ。全部見ろとは言いませんが、乱数表を使って伝票のサンプリング調査をやったほうがいいです。

地裁は問題ないよとしましたが、最高裁は、
監査役設置会社(会計限定監査役を置く株式会社を含む。)において,監査役は,計算書類等につき,これに表示された情報と表示すべき情報との合致の程度を確かめるなどして監査を行い,会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見等を内容とする監査報告を作成しなければならないとされている(会社法436条1項,会社計算規則121条2項(平成21年法務省令第7号による改正前は149条2項),122条1項2号(同改正前は150条1項2号))。

めんどくさいことを書いていますが、要するに監査するには基準があって最低限守らなければなりませんよ、公認会計士だけではなく監査役も同様ですよと言っています。

この監査は,取締役等から独立した地位にある監査役に担わせることによって,会社の財産及び損益の状況に関する情報を提供する役割を果たす計算書類等につき(会社法437条440条442条参照),上記情報が適正に表示されていることを一定の範囲で担保し,その信頼性を高めるために実施されるものと解される。
株主総会前までにちゃんと監査しろよ、そして取締役の圧力がかからない状態で監査しろよぐらいの意味です。

会計帳簿は取締役等の責任の下で正確に作成されるべきものであるとはいえ(会社法432条1項参照),監査役は,会計帳簿の内容が正確であることを当然の前提として計算書類等の監査を行ってよいものではない。監査役は,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでなくとも,計算書類等が会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかを確認するため,会計帳簿の作成状況等につき取締役等に報告を求め,又はその基礎資料を確かめるなどすべき場合があるというべきである。

この辺りから法律家らしい悪文が始まります。
要するに、会計帳簿は取締役の責任と指示で作成される。だからと言って、その帳簿が正しいだろうという思い込みを捨てて、ちゃんと監査しなさい。場合によっては、取締役を呼びつけてでもしっかり監査しなさい。
世間では、監査役とは閑散役と揶揄されるくらいの扱いですが、法律はそうなっていませんよ。やることはやりなさいとプレッシャーをかけています。

会計限定監査役は,計算書類等の監査を行うに当たり,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても,計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではない。


間違ってもメクラ判は容赦しませんよ。職を執行してね。

5 これと異なる見解に立って,被上告人はその任務を怠ってはいないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。

言っていることは正しいのですが、会計基準と同時に監査基準ってのがあります。公認会計士級の監査をしろとは言いませんが、少なくともこの監査基準を持ち出してもいいんじゃないですか?監査役として最低限やらなければならない指針がなければあまり意味ないと思いますが。

裁判官全員一致の意見でした。

裁判官草野耕一の補足意見
会計限定監査役は,公認会計士又は監査法人であることが会社法上求められていない以上,被上告人が公認会計士資格を有していたとしても,上告人の監査に当たり被上告人にその専門的知見に基づく公認会計士法2条1項に規定する監査を実施すべき義務があったとは解し得ないという点である(会社計算規則121条2項が同法2条1項に規定する監査以外の手続による監査を容認しているのはこの趣旨によるものであろう。)。
会社法の監査は公認会計士級の監査を求めているのではないと言っています。その点は同意します。監査対象となる会社の規模にもよりますけど、公認会計士を1日確保したら15万円で、毎月2日、決算期は5日間はふつうかかります。これは最低ラインです。中小零細企業には難しい話ですね。

監査役の職務は法定のものである以上,会社と監査役の間において監査役の責任を加重する旨の特段の合意が認定される場合は格別,そうでない限り,監査役の属性によって監査役の職務内容が変わるものではないという点である。

監査役の属性って何をさしているのでしょうか。説明はありません。

上記の各点を踏まえ,本件口座の実際の残高と会計帳簿上の残高の相違を発見し得たと思われる具体的行為(例えば,本件口座がインターネット口座であることに照らせば,被上告人が本件口座の残高の推移記録を示したインターネット上の映像の閲覧を要求することが考えられる。

この程度のことすらやってなかったのですね。そりゃ駄目でしょう。

裁判長裁判官 草野耕一 妥当判決
裁判官 菅野博之 妥当判決
裁判官 三浦 守 妥当判決
裁判官 岡村和美 妥当判決

当然判決 普天間拡張工事

2021-09-14 17:48:59 | 日記
令和3(行ヒ)76  地方自治法251条の5に基づく違法な国の関与(是正の指示)の取消請求事件
令和3年7月6日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  福岡高等裁判所  那覇支部

1 沖縄県漁業調整規則(昭和47年沖縄県規則第143号。令和2年沖縄県規則第53号による改正前のもの)41条1項に基づく水産動植物の採捕に係る許可に関する県知事の判断は,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められる場合には,地方自治法245条の7第1項所定の法令の規定に違反していると認められるものに該当する
2 沖縄県漁業調整規則(昭和47年沖縄県規則第143号。令和2年沖縄県規則第53号による改正前のもの)41条に基づく水産動植物の採捕に係る許可の申請について,県知事において審査基準にいう申請内容の必要性を認めることができないと判断したことが裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められた事例


朝日新聞の報道です。
辺野古サンゴ訴訟、沖縄県の敗訴確定 2人が反対意見
第三小法廷は問題のサンゴは軟弱区域の外にあり、防衛省は工事を継続できると指摘。工事が進んでサンゴが死滅するのを防ぐためには移植が必要で、防衛省が19年に申請した移植許可に玉城知事が応じなかったのは「裁量権の逸脱・乱用にあたる」と判断した。そのうえで関係法令を所管する農水相が出した是正指示は適法と結論づけた。
 5人の裁判官のうち3人の多数意見で、宇賀克也(学者出身)、宮崎裕子(弁護士出身)の両裁判官は反対意見を書いた。宇賀裁判官は、軟弱区域の設計変更が拒否されれば工事全体の実現に支障が生じ、「サンゴ移植は無駄になる」と言及。変更申請の承認見通しを考慮する必要性を指摘し、移植許可の判断を保留した知事の対応を是認した。
 判決を受け、農水省は「農水相の主張が認められたものと認識している」、防衛省沖縄防衛局は「普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、辺野古移設に向けた工事を着実に進めていきたい」とコメントした。


皆さんは、お判りでしょうから事件概要は飛ばします。

訴えの争点は次の通りです。
(1)ア 漁業法(平成30年法律第95号による改正前のもの。以下同じ。)65条2項1号は,都道府県知事は,漁業取締りその他漁業調整のため,水産動植物の採捕に関する制限又は禁止に関して必要な規則を定めることができる旨を規定する。水産資源保護法(平成30年法律第95号による改正前のもの。以下同じ。)4条2項1号は,都道府県知事は,水産資源の保護培養のために必要があると認めるときは,水産動植物の採捕に関する制限又は禁止に関して,規則を定めることができる旨を規定する。
イ 本件規則は,漁業法等その他漁業に関する法令とあいまって,沖縄県における水産資源の保護培養,漁業取締りその他漁業調整を図ること等を目的とするものである(1条)。本件規則は,造礁さんご類を採捕してはならない旨を規定するが(33条2項),試験研究等のための水産動植物の採捕に係る知事の許可(以下「特別採捕許可」という。)を受けた者が行う当該試験研究等については,同項の規定を適用しないものとしている(41条1項)。


滑走路埋め立て予定地は、許可なしで取ってはいけないサンゴがあって漁業権もある、これは県の管轄であることの確認です。

(2)サンゴの移植後4年の生存率は20%である。
(3)国は,アメリカ合衆国軍隊が使用する沖縄県宜野湾市所在の普天間飛行場につき,同国との間で,一定の措置を講じた後に返還される旨を合意し,その後,同飛行場の代替施設を名護市辺野古沿岸域に設置することとした。
(4)沖縄防衛局は,名護市辺野古の辺野古崎地区及びこれに隣接する水域(以下,この水域を「本件水域」という。)に上記代替施設を設置するため,平成25年3月22日,沖縄県知事に対し,本件水域の公有水面の埋立て(本件埋立事業)の承認を求めて,公有水面埋立承認願書を提出した。
(5)本件水域のうち辺野古崎の東側部分における大半の水域の地盤が軟弱であることが,平成30年頃までに判明した。この結果を受けて,同局は,本件軟弱区域について,本件埋立出願の願書に記載された設計の概要に含まれていない内容の地盤改良工事を追加して行うことを決定した。
(6)沖縄県副知事は,平成30年8月31日,沖縄県知事の職務代理者の委任に基づき,沖縄防衛局に対し,上記 の事情により本件埋立事業が公有水面埋立法4条1項1号及び2号の各要件に適合していないこと等を理由として,本件埋立承認を取り消した。もっとも,国土交通大臣は,地方自治法255条の2第1項に基づく沖縄防衛局の審査請求を受けて,平成31年4月5日付けで,上記の本件埋立承認の取消しを取り消す旨の裁決をした。


(7)沖縄防衛局は,平成31年4月26日及び令和元年7月22日、大浦湾側に生息する合計約3万9590群体の小型さんご類(以下「本件さんご類」という。)を本件水域外の近隣の水域に移植することを内容とする特別採捕許可の申請をした。

この後沖縄県はその許可を出すも出さないも何の判断もしませんでした。

ウ 漁業法等を所管する大臣である被上告人は,本件各許可処分をしない沖縄県の法定受託事務の処理が,漁業法65条2項1号等に違反するなどとして,令和2年2月28日付けで,同県に対し,地方自治法245条の7第1項に基づき,7日以内に本件各許可処分をするよう求める本件指示をした。

申請から約2年後に、そろそろいい加減にしろよという言うことになりました。これだけ中国の脅威が迫っている中で、沖縄県は何を考えているのでしょうか。そんなに中国に占領されたいのでしょうか。
(8)沖縄防衛局は,令和2年4月21日付けで,沖縄県知事に対し,公有水面埋立法42条3項において準用する同法13条ノ2第1項に基づき,本件埋立事業に係る設計の概要について,本件地盤工事を追加する旨の変更の承認の申請をした。
(9)上告人は,本件指示に不服があるとして,令和2年3月30日付けで,国地方係争処理委員会に対し,地方自治法250条の13第1項に基づく審査の申出をしたが,同年6月19日付けで,本件指示が違法でないと認める旨の審査の結果の通知を受けた。上告人は,これに不服があるとして,同年7月22日,同法251条の5第1項1号に基づき,本件訴えを提起した。


最高裁は
沖縄県における水産資源の保護培養,漁業調整等を図ることを目的とし(1条),造礁さんご類の採捕を全面的に禁止しつつ(33条2項),知事から個別の特別採捕許可を受けた者が行う試験研究等に限り,その禁止を例外的に解除することとしている(41条1項)。・・・本件規則41条1項に基づく特別採捕許可に関する沖縄県知事の判断は,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められる場合には,地方自治法245条の7第1項所定の法令の規定に違反していると認められるものに該当するということができる。

当然の判断ですね。判断せず2年も放置したわけですから、単なる防衛施設庁への嫌がらせというかサボタージュというか。そもそも漁業権については賠償金のかたちで片付いています。サンゴの問題と地盤の問題ですよね。

本件さんご類は適法に実施し得る本件護岸工事により死滅するおそれがあった以上,水産資源の保護培養を図るとともに漁業生産力を発展させるという漁業法等の目的を実現するためには,本件さんご類を避難させるべく本件水域外の水域に移植する必要があったというほかはない。
前記第1の2 によれば,本件図書を添付してされた本件埋立出願は,本件埋立承認により,環境保全等につき十分配慮されたものであることという公有水面埋立法4条1項2号の要件に適合すると判断されており,その設計の概要に含まれる本件護岸工事の実施は,本件図書に適合する妥当な環境保全措置が採られる限り,水産資源の保護培養等を図るという漁業法等の目的にも沿うものということができる。


防衛施設庁はやることやろうとしていると認めています。

本件指示の時点で,上告人において本件各申請の内容に必要性を認めることができないと判断したことは,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められる。

ということで沖縄県は、因縁つけて仕事しなかったじゃないかと言っています。

主文は2人を除いて全員一致で、沖縄県にさっさと判断しろと判決が出ました。
裁判官宇賀克也の反対意見
海底等の情報が不確実な段階で審査がなされることも想定されるから,同法に基づく承認の要件は,承認の時点で確実に判断することが困難な内容を含むいわゆる将来予測型情勢判断とならざるを得ない。そのため,設計の概要の変更が制度上予定されている(公有水面埋立法13条ノ2,42条)。

第十三条ノ二 都道府県知事正当ノ事由アリト認ムルトキハ免許ヲ為シタル埋立ニ関シ埋立区域ノ縮少、埋立地ノ用途若ハ設計ノ概要ノ変更又ハ前条ノ期間ノ伸長ヲ許可スルコトヲ得

要するに、県は設計変更を求める権限があるとしています。

沖縄防衛局が実施設計のための海底地盤調査を行ったところ,設計の概要の前提とされた土質と異なり,設計の概要に従った工事を実施した場合,埋立ての安全性が認められないことが客観的に明らかになり,同局もこのことを認めている。
本件では,是正の指示がなされた時点では,変更承認の申請はなされていなかった。変更が客観的に見ておよそ実現不可能な場合には,当該埋立ての目的は実現できないことになり,埋立工事の続行は許されるべきではなく,当初の承認は撤回されるべきであろう。


確かに安全上問題があるかもしれませんが、それは一般人が使用する施設ではないですよね。間違っても分譲する土地の開発じゃないですよね。さらにいうと2年間放置した正当な理由になりえるのでしょうか?

裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったとはいえない理由

行政手続法11条2項,環境影響評価法33条2項は,かかる場合があることを前提にした規定である。そして,それぞれ
の許認可等の許否を判断するに当たっては,それぞれの制度の目的を踏まえて,各法令における許認可等の要件該当性を判断することになり,その結果,同一の公共事業について,ある法令に基づく許認可等は与えられても,他の法令に基づく許認可等は与えられないという結果になることも当然あり得ることになる。本件においても,公有水面埋立法に基づく承認がなされているとしても,特別採捕許可の申請の許否の判断においては,漁業法等その他漁業に関する法令とあいまって,沖縄県における水産資源の保護培養,漁業調整等を図ることという本件規則1条の目的を踏まえる必要がある。


おいおい、行政手続法11条は2項のまえに1項の「審査又は判断を殊更に遅延させるようなことをしてはならない。」とあるでしょう。こっちの方が問題でしょう。環境アセスメントも必要でしょうが、戦場になったらそれどころじゃないですよ。それを防止するための施設ですからね。国防に関することは自治体は口出ししてはならない原則はないのでしょうか。こんな裁判官のせいで死ぬのは嫌ですよ。
その上で、

同時点までに許可をしなかったことに違法性がないというにとどまり,本件変更申請が承認された場合には,特段の事情がない限り,本件各許可処分がされるべきことになると考えられる。

実際試掘して60m杭を打たないと駄目だと分かったとしてもですよ、それは防衛施設庁がやる仕事であって、県がやる話ではないですよね。あくまでも防衛施設であって、リゾート開発ではないのですから。不思議ちゃん級の論点ずれです。

裁判官宮崎裕子の反対意見
本件埋立出願の願書に記載された設計の概要に全く含まれていなかった地盤改良工事であるから,公有水面埋立法42条3項において準用する同法13条ノ2第1項に基づき,当初の設計の概要に本件地盤工事を追加する旨の変更承認を受けない限り,この埋立てを施行することはできない。

地下に杭を打ったことで表面に影響が出るのでしょうか?そこから有害物質が流れて海洋汚染になるというのであれば、そこを論証していただきたい。

本件埋立出願は,本件埋立承認により環境保全等につき十分配慮されたものであることという公有水面埋立法4条1項2号の要件に適合すると判断されていることを挙げて,当初の設計の概要に含まれている本件護岸工事の実施は,本件図書に適合する妥当な環境保全措置が採られる限り,漁業法等の目的にも沿うものであると判示している部分には賛成できない・・・・特に当初の設計の概要には全く含まれていなかった本件地盤工事を大浦湾側の大半において行うという大幅な変更)を余儀なくされ,その埋立てを行うためには変更承認を受ける必要があることが明らかとなっているのであるから,本件埋立承認においてなされた2号要件適合性の判断は実質的には無意味なものになっていると考えざるを得ない。

当初申請があった工事とは比べ物にならないほど大規模になったから、最初の申請は事実上無効だというようです。だったらその旨を明らかにして、審査しなおせばいいわけで2年間放置した合理的根拠になりますか?

最後に
特段の事情がない限り,本件各許可処分がされるべきことになると考える。

最後が言い訳がましく聞こえるのは私だけでしょうか?

裁判長裁判官 林 道晴 当然
裁判官 戸倉三郎 当然
裁判官 宮崎裕子 言い訳がましい
裁判官 宇賀克也 意味不明
裁判官 長嶺安政  当然

防衛施設庁は沖縄県に工事遅延損害金を請求できないのでしょうか?
それと、国防に関する案件は自治体は口を挟んではいけない原則を作りましょう。

意見:日本はもはや法治国家ではない

2021-09-13 08:49:15 | 日記
特別在留許可含め、法務省がしっかりしてくれなければ、こういうのに日本が食いつくされます。

がんのペルー人、在留請求 高額治療受けられず
退去強制命令を受け2017年に大阪出入国在留管理局(大阪市住之江区)の施設に収容され、昨年5月に身柄を拘束されない仮放免となった日系ペルー人の男性(47)が国民健康保険に加入できず、高額の費用がかかる治療が受けられないとして、在留特別許可を求める再審査を23日、大阪入管に申し立てた。

【独自】がん治療で国保必要と訴えたペルー人男性 入管庁が「在留特別許可」を出す方針固める
日系ペルー人の男性が『がんの治療費』を払うために国民健康保険に入れるよう国に「在留特別許可」を求めていた問題で、出入国在留管理庁は男性に「在留特別許可を出す方針を固めた」ことがわかりました。

こういうのを美談にしてはいけません。そもそも、在留資格がないのに日本にいた不法滞在者=犯罪人です。
言葉が通じやすい母国で治療したらいいじゃないですか。この治療費は誰が負担するのでしょうか?我々が高いなと思いながら払ってきた健康保険から出されるのですよ。基金はじゃぶじゃぶに余っているわけではありません。これが前例となってどんどん人が入ってくるでしょう。
法務省はごね得を許すのでしょうか?

ペルー国籍親子3人強制退去取り消し 名古屋地裁判決
日本で生まれた長女(10)を含むペルー国籍の親子3人が、名古屋入国管理局による強制退去処分の取り消しを求めた訴訟で、名古屋地裁(増田稔裁判長)は9日、「日本で生まれ、家庭内でも日本語を使用する長女がペルーで生活することになれば大きな困難が生じるのは明確」として、国に処分の取り消しを命じる判決を言い渡した。
判決文によると、ペルー人の両親と息子3人は1994年、他人名義の旅券を使って不法に日本へ入国、97年6月に名古屋入管に申請した在留期間の更新は許可されなかった。一家は同入管に出頭せず、2000年4月には長女が誕生。06年10月、出頭して日本での在留特別許可を求めたが、名古屋入管は09年1月、息子3人に1年間の在留特別許可を与える一方、両親と娘は強制退去処分とした。


母国語を教えるかどうかは家庭の問題です。国家が関与する話ではありません。

イラン人の母国送還取り消し=「死刑の可能性」-大阪高裁
(追加情報)イラン人の母国送還取り消し=「死刑の可能性」-大阪高裁
今もこの殺人犯は日本にいるのでしょうか?日本の法律であればさっさと送り返すことになっています。外国の事情は知ったことではありません。こういうことに関する条約すらありません。

大株主であった時期に帳簿閲覧を要求、併合してその分の金を払ったからと言って閲覧を拒否できない

2021-09-12 08:47:07 | 日記
令和1(受)2052  株主総会議事録閲覧謄写請求事件
令和3年7月5日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所

会社法182条の4第1項に基づき株式の買取請求をした者は同法182条の5第5項に基づく支払を受けた場合であっても上記株式の価格につき会社との協議が調い又はその決定に係る裁判が確定するまでは同法318条4項にいう債権者に当たる

会社法はニュースになりにくいのでしょうか。結構重要な裁判だと思いますが、どこも取り上げていないようです。

事実認定を見ていきます。
(1)平成28年7月4日に開催された上告人の臨時株主総会及び普通株式の株主による種類株主総会において,同月26日を効力発生日として上告人の普通株式及びA種種類株式のそれぞれ125万株を1株に併合する旨の決議がされた。
(2)被上告人は,上告人の株式4万4400株を有していたところ,上記各株主総会に先立ち,上記各決議に係る議案に反対する旨を上告人に通知した上,上記各株主総会において上記議案に反対し,同月25日までに,会社法182条の4第1項に基づき,上告人に対し,本件株式を公正な価格で買い取ることを請求した。


無茶苦茶な株式併合ですね。よほど買い取り請求をしている人を排除したかったのでしょう。

(3)被上告人は,本件株式の価格の決定について上告人との間で協議が調わないことから,同法182条の5第2項所定の期間内に,東京地方裁判所に対し,本件株式の価格の決定の申立てをした。
(4)上告人は,同年10月21日,同条5項に基づき,被上告人に対し,自らが公正な価格と認める額として1332万円を支払った。


1株300円換算ですね。非上場の会社の株の買い取り価格は結構難しいのですよ。過去にも裁判官がトンデモな価格設定をして悶着が起きています。
当然、感情的にも悶着が起きていますし、金額もそこそこ行きますからね、そりゃどのように決めたのか会社の資料を見せろというのは当たり前の行動でしょう。

(5) (3)の申立てに係る事件は,本件訴訟の原審口頭弁論終結時において,上記裁判所に係属中であった。

当然そうなりますね。おそらく開示を拒んだのでしょう。
2 本件は,被上告人が,上告人に対し,被上告人は本件株式の価格の支払請求権を有しており上告人の債権者に当たるなどと主張して,会社法318条4項に基づき,その株主総会議事録の閲覧及び謄写を求める事案である。

要するに、裁判中にちゃんとした証拠書類を見せろよ、お前隠してるだろ?の状態ですね。結果として1332万円払ったんだから、お前とはもう縁が切れている。だから、帳簿は見せられないと反論したようです。

最高裁では、
同法182条の4第1項に基づき株式の買取請求をした者は,同法182条の5第5項に基づく支払を受けた場合であっても,上記株式の価格につき会社との協議が調い又はその決定に係る裁判が確定するまでは,同法318条4項にいう債権者に当たるというべきである。

要するに、金を払ってもらう前に「資料を見せろ」と請求したのだから、その請求は正当な権利である。この後に金を払ったとは言え、そもそもその算定が正しいかどうか上訴の可能性もあるのだから、ちゃんと見せろという趣旨のようです。

至極まっとうな判決でした。

第二小法廷判決
裁判長裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

これが裁判になる理由がわかりません。少数株主だから見せないというのであれば分かりますが、大株主であった時期に帳簿を見せろと言っているのであって、拒む法的根拠となりそうな点は全くはないと思いますが。

当然判決 宅建の名義借りで利益の配分は無効

2021-09-11 21:59:59 | 日記
令和2(受)205  報酬等請求本訴,不当利得返還請求反訴,民訴法260条2項の申立て事件
令和3年6月29日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所
無免許者が宅地建物取引業を営むために宅地建物取引業者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,公序良俗に反し,無効である

この事件は結構重要だと思うのですが、一般の新聞社は報道していません。司法書士グループのページで解説していますが、長いので直リン先を見てください。
無免許者が宅建業者から名義を借りて不動産取引を行ない、利益を両者で分配する合意は無効【最高裁令和3年6月29日判決】が不動産業界に与える激震

事実認定を見ていきます。
(1)被上告人は,平成28年10月頃,Aと共に,不動産取引に係る事業を行う旨の計画を立てた。
上記計画においては,被上告人は,自らを専任の宅地建物取引士とする会社での勤務を続けつつ,その人脈等を活用して,新たに設立する会社において不動産取引を継続的に行うことが予定されていた。


これそもそも利益相反ですね。勤務先の会社にしっかり了解を取っていたのでしょうか。

(2)宅地建物取引士の資格を有するyが上記計画に加わり,同人を新たに設立する会社の専任の宅地建物取引士とすることになった。
(3)yは,平成29年1月,上記計画に従って上告人を設立してその代表取締役に就任し,上告人は,同年2月,yを専任の宅地建物取引士として宅地建物取引業の免許を受けた。


最初から免許取れよって話ですね。

(4)被上告人は,平成29年2月頃までに,不動産仲介業者である株式会社Bから,C株式会社の所有する土地建物の紹介を受けた。被上告人は,上記計画に基づく事業の一環として本件不動産に係る取引を行うことにしたが,yに対する不信感から,本件不動産に係る取引に限って上告人の名義を使用し,その後は上告人及びyを上記事業に関与させないことにしようと考え,Aを通じてyと協議した。その結果,同年3月7日,被上告人と上告人との間で,要旨次のとおりの合意が成立した。

仲間割れですか。
(5)本件不動産については,平成29年3月,Cを売主,上告人を買主とし,代金を1億3000万円とする売買契約が締結され,同年4月,上告人を売主,Dを買主とし,代金を1億6200万円とする売買契約が締結された。これらの売買契約については,被上告人が売却先の選定,Bとのやり取り,契約書案及び重要事項説明書案の作成等を行った。
(6)被上告人は,平成29年4月26日,上告人に対し,本件不動産の売却代金からその購入代金,費用等及び名義貸し料を控除した残額が2319万円余りとなるとして,同売却代金の送金を受け次第,本件合意に基づき同額を支払うよう求めた。
(7)上告人は,平成29年4月27日,上記売却代金の送金を受けたが,自らの取り分が300万円とされたことなどに納得していないとして上記の求めに応じず,上記計画に基づく事業への関与の継続を希望するなどしたものの,同年5月,被上告人に対し,本件合意に基づく支払の一部として1000万円を支払った。


これまでに10回引越しした経験と不動産を購入した経験からいうと、不動産屋は正直いってヤクザな商売だと思っています。こんなに簡単た試験でバンバン免許を与え、やらずふんだくりの商売はあり得ません。
例えば、実際に経験した例では賃貸に出した時、契約では月初めの1日からの入居としていたのに、20日以上前の前月10日から入居させていた。それについて何の連絡もなかった。
鍵の調子が悪いということで、不動産屋が鍵を買えたので請求書が来た。後で確認に行ったら、以前のカギで空いた。要するに架空工事請求だった。
これに始まり、工事にかなりの金額の上乗せを請求するのはざら。
借りた経験からしても、一度仲介したら一切応じず、10年住んだ部屋なのに不動産屋と家主がグルになって30万円の壁紙全取り換えを請求されたことがあります。もちろん国土交通省の指針が出た後の話です。
最終的には、各県の不動産の管理部門にクレームを入れて黙らせましたが、こういう雲助が多いのは確かです。おかしい要求があった場合は、こちら「宅地建物取引業免許(知事免許)に関する窓口一覧」を参考に悪質不動産屋を叩き潰して下さい。決して泣き寝入りしないでください。

本題に戻すと、こういう雲助が入らないように資格試験を用意しているにもかかわらず、先の司法書士グループの記事によれば「激震が走る」レベルで相変わらず業界としては倫理観が弱いようです。

最高裁は
(1)宅地建物取引業法は免許を受けない者(以下「無免許者」という。)が宅地建物取引業を営むことを禁じた上で(12条1項),宅建業者が自己の名義をもって他人に宅地建物取引業を営ませることを禁止しており(13条1項),これらの違反について刑事罰を定めている(79条2号,3号)。・・・宅建業者が無免許者にその名義を貸し,無免許者が当該名義を用いて宅地建物取引業を営む行為は,同法12条1項及び13条1項に違反し,同法の採用する免許制度を潜脱するものであって,反社会性の強いものというべきである。そうすると,無免許者が宅地建物取引業を営むために宅建業者との間でするその名義を借りる旨の合意は,同法12条1項及び13条1項の趣旨に反し,公序良俗に反するものであり,・・・無免許者が宅地建物取引業を営むために宅建業者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,同法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものとして,公序良俗に反し,無効であるというべきである。
(2)前記事実関係等によれば,本件合意は,無免許者である被上告人が宅建業者である上告人からその名義を借りて本件不動産に係る取引を行い,これによる利益を被上告人と上告人で分配する旨を含むものである。そして,被上告人は本件合意の前後を通じて宅地建物取引業を営むことを計画していたことがうかがわれる。これらの事情によれば,本件合意は上記計画の一環としてされたものとして宅地建物取引業法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものである疑いがある。


疑いがあるレベルではなく、真っ黒でしょ。

第三小法廷
裁判官全員一致
裁判長裁判官 戸倉三郎
裁判官 宮崎裕子
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴

当然判決です。名義貸しした人も免許取り消しぐらいのことはあってしかるべきことだと思いますよ。裁判官は官舎を転々とするから、こういう目に合わないでしょうが、もっと宅建業者に厳しい判断を出してもらいたいものです。

裁判とはずれますが、宅建業者は不正な取引、雑な仕事をしても通常は人生に2回以上お世話になることはない人の方が多いでしょう。奴らの常識は世間の非常識というようなことを消費者に押しつけ、あるいはだましに近いことをやっても泣き寝入りなことがあります。特に心理的貸し物件の墓場跡地や沼地に建設ガラを不法投棄して「●●台団地」とあたかも高台にあるかのような嘘の名前を付けたり、以前からがけ崩れの危険性が言われていたあの有名なH島県A南区の不動産を売っていたような悪徳不動産屋を市場買った排除するような法律が必要です。

似たような案件として、飲食店の衛生管理者・調理師免許も問題ですよね。あれも、もっとしっかり取締ったほうがいいと思います。

製薬会社の商品を大学の先生が捏造データで論文記載、これは誇大広告にならない

2021-09-10 07:32:53 | 日記
平成30(あ)1846  薬事法違反被告事件
令和3年6月28日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  東京高等裁判所

 1 薬事法(平成25年法律第84号による改正前のもの)66条1項の規制する
  「記事を広告し,記述し,又は流布」する行為の意義
2 薬事法(平成25年法律第84号による改正前のもの)66条1項の規制する
  特定の医薬品等の購入・処方等を促すための手段としてされた告知といえるか否
  かの判断方法
3 学術論文の学術雑誌への掲載が,薬事法(平成25年法律第84号による改正
  前のもの)66条1項の規制する行為に当たらないとされた事例


当事者の声明です。上告審で無罪確定 6月28日の最高裁判所における決定について

ミクスOnlineの報道によると
ノバルティスファーマは6月29日、ARB・ディオバンの医師主導臨床研究におけるデータ改ざんをめぐる問題で、最高裁が東京高検の上告を棄却し、元社員の白橋伸雄被告と両罰規定に問われたノバルティスファーマの無罪が確定したと発表した。決定は、28日付。旧薬事法(現・医薬品医療機器等法)66条(虚偽・誇大広告)違反に問われた裁判は2017年3月の第一審、18年11月の控訴審ともに無罪判決が言い渡されていた。
白橋被告は、京都府立医科大で実施された医師主導臨床試験「KYOTO HEART Study」の2本のサブ解析でデータ解析を担当。広告資材に活用するため、急性心筋梗塞や脳梗塞での有用性を示すようデータを改ざんし、虚偽データに基づいて執筆させた論文を医学誌に掲載、Webなどを通じて医学界に広く伝播させたとして起訴された。ノバルティスファーマも元社員への監督不十分を理由に両罰規定を問われていた。
第一審、控訴審ともに、旧薬事法66条の法解釈、特に論文掲載が広告に該当するか、が焦点となった。控訴審では、広告の三要件のひとつである誘因性を主観的・客観的に備えていないとして、「顧客を誘引する手段に該当しない」とした。「たとえ、被告人がデータを作成・提供したデータが虚偽で、研究者らを情を知らない道具として利用して、論文を投稿させたとしても、66条1項違反には当たらない」として、実質的な販促行為を主張した検察の訴を退けていた。


m3.comの報道です。
裁判長は論文の記載を薬事法違反の対象とすることについて「憲法が保障する学問の自由との関係で問題を生じさせることになる」と指摘した。 2017年3月の東京地裁判決では「論文作成においてイベントの水増し、恣意的な群分け、データの改ざんがあったが、学術論文を作成、投稿することは薬事法の規制対象には当たらず、罪に当たらない」、2018年11月の東京高裁判決では「医薬品の誇大広告を規制する薬事法66条1項は、そもそも学術論文作成を対象にしていない。薬事法で規制することは自由闊達な研究の発展を阻害する可能性もある」として、共に無罪を言い渡していた。

これは難しいですよね。工学系の論文であれば、もろに商品名が出ており特にソフトウェアであればそれの宣伝?と思えるのも出ています。さらに、学術雑誌を運営するには研究費からの捻出では全く維持できないために企業からの支援を募っている状態です。となると、その雑誌に資金提供して自社のことについて論文を書いてもらうとなると、これは適正かどうかが疑われてしまいます。
例えば、政治家の贈収賄事件があったと仮定します。すると、その贈賄側の企業がニュース番組のスポンサーであったりすると、全く忖度しないか?となるとそうでもありません。おそらく報道局どころかトップからの指示で、スポンサーの不利になるようなことは一切報道しないでしょう。
これと同じようなことが、薬学系の雑誌でも起きたのではないかと疑われたようです。

では、事実認定を見て行きましょう。悪文極まりないので、ぶった切って解説します。
1 A社は血圧降下剤を作って販売している。A社の従業員のBが某医科大学の教室に臨床実験をお願いした。A社はその結果を広告に使おうとした。ところが、某医大の先生がデータ改ざんを行って海外のweb雑誌に投稿し、閲覧可能な状態になった。

薬事法66条1項は,「何人も,医薬品,医薬部外品,化粧品又は医療機器の名称,製造方法,効能,効果又は性能に関して,明示的であると暗示的であるとを問わず,虚偽又は誇大な記事を広告し,記述し,又は流布してはならない。」と規定する。
第1審判決は,事実関係については,本件各公訴事実記載の事実をおおむね認めたが,薬事法66条1項が規制するのは,顧客を誘引するための手段として同項所定の事項を広く世間に告げ知らせる行為であり,「記事の記述」も同手段としてされるものであることを要するとした上で,本件各公訴事実記載の各論文を作成し,本件各公訴事実記載の各雑誌(に投稿して掲載させた行為は,一般の学術論文の学術雑誌への掲載と異なるところはなく,同手段としての性質を有しないから,同項の規制する「記事の記述」に当たらないとして,被告人及び被告会社に対し,無罪を言い渡した。


薬事法に限らず、景品表示法でも同様に嘘を書いてはならない、誇大広告はしてはならない趣旨が書いてあります。
で、論文は一般顧客を誘因する広告に該当するか?が争われたようです。敢えて言いますが、会員に限定された論文であろうがなかろうが、基本的に薬学系・医学系の専門家が読むことが多いでしょう。血圧降下剤は、一般人がその辺で飼うものではありません。医者の処方に基づいて入手可能になります。だから、論文は立派に広告でもあります。
実際には研究職でなければそんなもん読んでいる時間はなく、薬のセールスマンから情報を入手することになるでしょう。それでも、某大学の先生のお墨付きがありますというでしょうね。

でも論点はそこであってはいけないと思います。そもそもが、某医大の先生が虚偽のデータで論文を書いたことに問題があるのですよね。A社並びにB社はその事実を知っていたのでしょうか?そちらの方が論点とされるべきじゃないでしょうか。

そして論点ずれのまま話が進んでいきます。
薬事法66条1項「記事を広告し,記述し,又は流布」する行為は,特定の医薬品等に関し,当該医薬品等の購入・処方等を促すための手段として,不特定又は多数の者に対し,同項所定の事項を告げ知らせる行為をいうと解するのが相当である。・・・同項の規制する特定の医薬品等の購入・処方等を促すための手段としてされた告知といえるか否かは,当該告知の内容,性質,態様等に照らし,客観的に判断するのが相当である。

確かに某医大の先生が販売するものではないですよ。だから売るつもりはなかったという主張は正しいですが、それが成立するならばこれは広告代理店と広告主の関係でも言えますよね。

研究者らを著者とし,同補助解析等の結果得られたとされる新規の医学的発見に関し,研究の目的,方法,条件等を開示し,研究者らの考察を示し,研究の限界なども付記するなど,通常の学術論文の作法に従って作成されたものであること,本件各論文が投稿され,掲載された本件各雑誌は,いずれも査読を要する医学分野の専門的学術雑誌であることが認められる。このような本件各論文の内容,性質,本件各雑誌の性質等に照らすと,本件各雑誌に掲載された本件各論文の主な読者層は研究者や医師等の医学分野の専門家であると想定され,本件各論文の本件各雑誌への投稿,掲載は,著者である研究者らによる同一分野の専門家らに向けた学術研究成果の発表であるといえる。

お花畑ですね。これが、特定の研究分野で使われる薬剤であればどうなんですか?宣伝と変わりませんよ。著者にその意図がなかったとしても、メーカーはフルでそれを使うでしょう。それが商売ですから。

以上によれば,本件各論文の本件各雑誌への掲載は,特定の医薬品の購入・処方等を促すための手段としてされた告知とはいえず,薬事法66条1項の規制する行為に当たらないというべきである。

論点ずれの挙句に意味不明結論です。

裁判官山口厚の補足意見
本件におけるような学術論文の作成・投稿・掲載を広く同項による規制の対象とすることは,それらが学術活動の中核に属するものであり,加えて,同項が虚偽のみならず誇大な「記事の記述」をも規制対象とするものであることから,学術活動に無視し得ない萎縮効果をもたらし得ることになろう。それゆえ,その結果として,憲法が保障する学問の自由との関係で問題を生じさせることになる。このことを付言しておきたい。

そこか?
捏造した人はその人で別で裁かれているのでこの裁判には関係ないというのは分かりますが、そもそもこのA社と従業員Bが裁判になること自体が異常です。無罪は当然です。

第一小法廷決定
裁判官全員一致の意見
裁判長裁判官 山口 厚
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 深山卓也

全員論点ずれ

きちんと判決文を書け!常習犯の計の減免について

2021-09-09 17:20:52 | 日記
令和2(あ)919  常習特殊窃盗被告事件
令和3年6月28日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  福岡高等裁判所
前訴の訴因につき有罪の第1審判決が確定した場合において,後訴の訴因を構成する行為が前訴の第1審判決後にされたものであるときの前訴の確定判決による一事不再理効の範囲

今回は1枚ペラの判決文です。

被告人は,前訴で住居侵入,窃盗につき有罪の第1審判決の宣告を受け,控訴及び上告が棄却されて同判決は確定したが,その後起訴された本件の常習特殊窃盗を構成する住居侵入,窃盗の各行為は,いずれも前訴の第1審判決後,その確定前にされたものであることが認められる。このように,前訴で住居侵入,窃盗の訴因につき有罪の第1審判決が確定した場合において,後訴の訴因である常習特殊窃盗を構成する住居侵入,窃盗の各行為が前訴の第1審判決後にされたものであるときは,前訴の訴因が常習性の発露として行われたか否かについて検討するまでもなく,前訴の確定判決による一事不再理効は,後訴に及ばない。したがって,本件について同法337条1号により判決で免訴の言渡しをしなかった第1審判決に誤りはないとした原判決の結論は正当として是認できる。
よって,同法414条386条1項3号,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。


事実前提も何も説明がないので、判決文としては問題があります。何が訴えの内容なのかこれでは分かりません。なぜこの条文が出起用されるのかの正当性も見えてきません。司法の傲慢さがまた見えてきます。

推測するに、常習的に窃盗を繰り返していた犯人がいた。犯人は捕まって裁判にかけられて有罪になった。その裁判の前に別の事件で有罪判決を受けている。同様の犯罪の場合は、刑の減免が許されることがあるという規定があるので刑をまけろという訴えのようです。
裁判所は、犯罪の常習性に関係ない。先の裁判は判決が不満だからと後の裁判で免訴は認めないとしました。
という推測です。

この推測であれば当たり前すぎる判決ですが、あまりにも雑過ぎて判断のしようがない判決文です。

第一小法廷決定
裁判長裁判官 木澤克之
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也

全員、きちんと書け!

無責任判決:税務署は相続税の対象について個別には評価しない

2021-09-08 09:19:24 | 日記
令和2(行ヒ)103  相続税更正処分等取消請求事件
令和3年6月24日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所
相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)55条に基づく申告の後にされた増額更正処分のうち上記申告に係る税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合において,課税庁は,同法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をするに際し,当該判決の拘束力によって当該判決に示された個々の財産の価額等を用いて税額等を計算すべき義務を負うか(消極)

FP税理士法人しかマトモに書いていないので、そちらを見てください。
事実認定から見ていきます。
(1)Aさんのお母さんが平成16年2月28日になくなったので、その年の12月に6人のきょうだいが共同相続人になって相続しました。相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)55条により法定相続分(各7分の1)に従って財産を取得したものとして課税価格の計算がされ,被上告人の課税価格は22億6374万4000円,納付すべき税額は10億7095万円とされた。
(2)江東東税務署長は,平成19年2月13日,被上告人に対し,本件相続に係る遺産に含まれる第1審判決添付別表1の「銘柄」欄記載の株式(以下「本件各株式」という。)の一部の価額が過少であるなどとして増額更正処分をした。
江東東税務署長は,平成23年2月28日,被上告人に対し,課税価格を40億6089万円,納付すべき税額を19億7000万9300円として,上記の東京国税局長による一部取消し後の増額更正処分の一部を更に取り消す減額更正処分をした。


相続税は本当に高すぎます。相続税がない国もあるのに、日本では3代目にはすってんてんになるような税率です。私はこれが日本の産業を弱くする原因だと思っています。非上場の中堅企業が維持できなくなってしまうんですよね。

①A社株式については,A社が財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17国税庁長官通達。以下「評価通達」という。)にいう大会社(その株式の原則的な評価方法は類似業種比準方式とされている。)であることを前提に,例外的に純資産価額方式等により評価すべきものとされている株式保有特定会社に当たるか否かが争われ,
②B社株式については,純資産価額方式で評価することを前提に,B社が保有しているA社株式の価額を踏まえた価額が争われた。


親子会社なんですね。子会社の評価を親会社と同様にやったようです。

(5)本件相続に係る遺産分割申立事件について,平成26年1月16日,東京家庭裁判所において調停(以下「本件調停」という。)が成立し,被上告人は,本件各株式につき各銘柄の7分の6を取得した。
(7)被上告人は,平成26年5月16日,江東東税務署長に対し,本件調停の成立を理由として,課税価格を9億6080万5000円,納付すべき税額を4億4199万0400円として,相続税法32条1号の規定による更正の請求をした。


相続が争族になった挙句、相続した金額の半分を持って行かれたのですね。

(8)江東東税務署長は,平26年11月に請求のうち株式の価額の減額を求める部分は,本件申告における株式の価額に係る評価の誤りの是正を求めた。
同法35条3項1号に基づき,課税価格を49億0410万9000円,納付すべき税額を23億2567万1800円とする増額更正処分(以下「本件更正処分」といい,本件通知処分と併せて「本件更正処分等」という。)をした。


計算間違いですよと税務署が言ってきたようです。納税額が4億円から22億円へ?これ破産しますがな。

①同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(その者が当該相続等により取得した財産の価額の合計額)に相当する金額の合計額から基礎控除額を控除した金額を当該被相続人の民法所定の相続人が同法900条及び901条の規定による相続分に応じて取得したものとした場合における各取得金額に所定の税率を乗じて計算した金額の合計額である相続税の総額を算出した上で(相続税法16条),
②これに,各相続人等に係る課税価格が当該財産を取得した全ての者に係る課税価格の合計額のうちに占める割合(以下「取得割合」という。)を乗ずることにより各相続人等に係る相続税額を算出するものとされている(同法17条)。


(1)10月以内に行わなければならないものとされているところ(相続税法27条1項),遺産の全部又は一部が分割されていないときは,課税の遅滞を防止するなどの観点から,分割されていない財産については各共同相続人又は包括受遺者が民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算して申告をするものとされている(相続税法55条)。
(2)相続税法32条1号及び35条3項1号は,同法55条に基づく申告の後に遺産分割が行われて各相続人の取得財産が変動したという相続税特有の後発的事由が生じた場合において,更正の請求及び更正について規定する国税通則法23条1項及び24条の特則として,同法所定の期間制限にかかわらず,遺産分割後の一定の期間内に限り,上記後発的事由により上記申告に係る相続税額等が過大となったとして更正の請求をすること及び当該請求に基づき更正がされた場合には他の相続人の相続税額等に生じた上記後発的事由による変動の限度で更正をすることができることとしたものである。


そこが争点なんですかね。何かおかしくないですか?そもそもA社とB社の株の評価ですよね。他は延滞金の問題であって。

(3)処分を取り消す判決が確定した場合には,その拘束力(行政事件訴訟法33条1項)により,処分をした行政庁等は,その事件につき当該判決における主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断に従って行動すべき義務を負うこととなるが,上記拘束力によっても,行政庁が法令上の根拠を欠く行動を義務付けられるものではないから,その義務の内容は,当該行政庁がそれを行う法令上の権限があるものに限られるものと解される。

上記の場合においては,当該判決の個々の財産の価額や評価方法に関する判断部分について拘束力が生ずるか否かを論ずるまでもなく,課税庁は,国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後に相続税法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をするに際し,
当該判決の拘束力によって当該判決に示された個々の財産の価額や評価方法を用いて税額等を計算すべき義務を負うことはないものというべきである。

ん?では、誰が評価するのでしょうか?規則で決まっているとはいっても、請求書を出すのは税務署ですよね。

(4)江東東税務署長は,本件更正処分をするに際し,前件判決に示された本件各株式の価額や評価方法を用いて税額等の計算をすべきものとはいえず,本件申告における本件各株式の価額を基礎として課税価格及び相続税額を計算することとなるから,本件更正処分は適法である。

なんかアクロバティックな論証ですね。

第一小法廷判決全員一致
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚

評価方法が争われたんじゃないのでしょうか?総額いくらってことは分かっても、個別では判断しないというのはどういうことでしょうか?確かに、例えば土地と建物を別で評価しても通常一体化しているから、個別で出すのと一体化したのでは評価が違うとするのでしょうか?釈然としませんね。これは司法の無責任としか言いようがありません。

第三者を騙して補助金詐欺。騙した人は有罪。だが雑過ぎて何のことか分からない判決文

2021-09-03 11:55:53 | 日記
令和2(あ)1528  詐欺被告事件
令和3年6月23日  最高裁判所第三小法廷  決定  棄却  高松高等裁判所
人を欺いて補助金等又は間接補助金等の交付を受けた旨の事実について詐欺罪で公訴が提起された場合において,当該行為が補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律29条1項違反の罪に該当するときに,刑法246条1項を適用することの可否

前回は無茶苦茶長かったのに、また1枚の判決です。

主 文
本件上告を棄却する。
当審における未決勾留日数中140日を本刑に算入する。
理 由
弁護人鈴木敏彦の上告趣意は,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,被告人が人を欺いて補助金等又は間接補助金等(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律2条1項,4項)の交付を受けた旨の事実について詐欺罪で公訴が提起された場合,被告人の当該行為が同法29条1項違反の罪に該当するとしても,裁判所は当該事実について刑法246条1項を適用することができると
解するのが相当である。これと同旨の原判断は,正当として是認できる。よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。


相変わらずなんのこっちゃ分かりませんね。
自分が直接詐欺行為をしたのではなく、誰かAさんとしておきましょうか。Aさんを騙してその人に補助金を不正に入手したようです。詐欺をは働いたのはAさんであって、持ち掛けた人は無罪だという主張のようです。
これについて、一案悪いのは持ちかけた人でしょ?というのが最高裁の判断でした。
この結論について不満はないですが、もう少しわかりやすい判決文であるべきじゃないですかね。相変わらず司法の傲慢さを感じます。

第三小法廷決定
裁判長裁判官 宇賀克也
裁判官 戸倉三郎
裁判官 宮崎裕子
裁判官 林 道晴
裁判官 長嶺安政

夫婦別姓裁判 5 草野耕一の反対意見

2021-09-01 14:02:59 | 日記
私は,多数意見とは異なり,本件各規定は憲法24条に違反するといわざるを得ないがゆえに,原決定はこれを破棄し,抗告人らの婚姻届の受理を命ずるべきであると考える。

これを拡大解釈と言わずして、なんと言いましょうか。念のため
第二十四条
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。


夫婦で姓を統一については一言も触れていませんし、その匂いもしません。

1 婚姻及び家族に関する法制度を定めた法律の規定が憲法13条14条1項に違反しない場合に,更に憲法24条に適合するものとして是認されるか否かは,当該法制度の趣旨や同制度を採用することにより生ずる影響につき検討し,当該規定が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き,国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合に当たるか否かという観点から判断すべきものとするのが相当である(平成27年大法廷判決)。

幸福の追求は何やってもいいもんじゃないでしょう。姓を統一することが身分差別?

(1)選択的夫婦別氏制の導入によって向上する国民の福利について
婚姻に伴い戸籍上の氏を改めても社会生活上は旧姓の継続使用が可能である場面が拡大してきているものの,旧姓を使用し得る機会にはおのずから限度がある以上,二つの氏の使い分け又は併用を余儀なくされることになり,そのこと自体の煩わしさや自己の氏名に対するアイデンティティの希薄化がもたらす福利の減少は避け難い。


その根拠は?声のでかい人が目立つからと言って、全体の意見ではありませんよ。裁判所の裁判官が、きちんとした根拠に基づかないで判決文に反対意見であっても書かないように。


選択的夫婦別氏制の導入によって減少する国民の福利について
ア 婚姻当事者の福利に及ぼす影響
婚姻当事者にとって,夫婦で同一の氏を称することにより家族の一体感を共有することは福利の向上をもたらす可能性が高い。したがって,選択的夫婦別氏制を導入したとしても夫婦同氏を選択する夫婦も少なからず輩出されるはずであり,夫婦別氏を選択するのは,氏を同じくすることによってもたらされる福利の向上よりも上記 で指摘したところの福利の減少の方が大きいと考える夫婦だけであろう。

イ 子の福利に及ぼす影響
むしろ問題となるのは,夫婦別氏を選択した夫婦の間に生まれる子の福利である。なぜならば,子は,親とは別の人格を有する法主体であるにもかかわらず,親が別氏とすることを選択したことによって生ずる帰結を自らの同意なく受け入れなければならない存在だからである。そして,親の一方が氏を異にすることが,子にとって家族の一体感の減少など一定の福利の減少をもたらすことは否定し難い事実であろう。


この意見に賛成ですが、これも想像の域を出ませんね。と、社会調査にも具体的事件にも触れず、こうあるべきだと言ってます。到底納得させるだけの論拠に乏しいというしかありません。こんなのがしばらく続きます。

3 以上によれば,選択的夫婦別氏制を導入することによって向上する国民の福利は,同制度を導入することによって減少する国民の福利よりもはるかに大きいことが明白であり,かつ,減少するいかなる福利も人権又はこれに準ずる利益とはいえない。そうである以上,選択的夫婦別氏制を導入しないことは,余りにも個人の尊厳をないがしろにする所為であり,もはや国会の立法裁量の範囲を超えるほどに合理性を欠いている。

はぁ?戸籍法や民放は立法以外誰がやれと?
以前からこの裁判官の意見は宇宙人レベルだと思っていましたが、ここまで酷いとさっさと辞めてもらうしかありません。リーガルマインド全く無し。地裁であっても裁判官であってはいけない人物です。

草野耕一 わけ分からん