最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

罹災証明のミス、支援金返せ

2021-07-27 07:39:19 | 日記
令和2(行ヒ)133  被災者生活再建支援金支給決定取消処分取消請求本訴,不当利得返還請求反訴,不当利得返還請求事件
令和3年6月4日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所
 被災者生活再建支援法に基づき被災者生活再建支援金の支給決定をした被災者生活再建支援法人が支給要件の認定に誤りがあることを理由として当該決定を取り消すことができるとされた事例

時事通信の報道です。
判決によると、仙台市は震災後、同市太白区にある9棟のマンションのうち1棟を支援金支給対象外の「一部損壊」と判定。しかし、住人の要望を受けた再調査で「大規模半壊」に変更され、2011年9月以降に支援金が支給された。
 他の8棟が大規模半壊と認定されなかったため、市は改めて調査。一部損壊が適正と見直され、支援金支給を担当する都道府県センターが13年4月、住人に返還を請求した。
 小法廷は、マンションの被害程度は客観的に一部損壊にとどまり、「支給決定は認定に誤りがあった」と指摘。住人の負担感は小さくないものの、返還が認められなければ被災者間の公平性が確保されず、支援金制度自体への国民の信頼を害するとし、返還が妥当と結論付けた。


では、事実関係から見ていきます。

(1)支援法2条2号は,この法律において,「被災世帯」とは,政令で定める自然災害(同条1号)により被害を受けた世帯であって,同条2号イからニまでに掲げるものをいう旨定義している。
(2)ア 被災者生活再建支援法施行令4条1項(令和2年政令第341号による改正前のもの)は,支援法5条の委任を受けて,支援金(支援法3条2項各号に定める額等に係るものを除く。)の支給の申請は,所定の日までに,当該世帯が被災世帯であることを証する書面等を添えて,申請書を提出してしなければならない旨規定する。本件各支給決定の当時,市町村が交付する罹災証明書は,上記書面に当たるものと扱われていた。
イ 仙台市のり災証明等取扱要領(平成16年3月25日助役決裁)は,罹災証明書は,地震,風水害その他これらに類する災害による住家の被害について,その事実が確認できる場合に限り,その被害の程度を証明するものとして交付する旨定めていた。

そのための被害を証明するものは自治体で出すことになっているから、そこで証明をもらって自分で申請してねという趣旨です。

ウ 判断基準は
① 住家の被害の程度は,全壊,大規模半壊,半壊及び半壊に至らない(以下「一部損壊」という。)の4区分とし,地震による被害については,部位別損害割合の合計が40%以上50%未満の場合を大規模半壊,20%以上40%未満の場合を半壊,20%未満の場合を一部損壊とする,
② 集合住宅は,原則として1棟全体で判定し,その判定結果をもって各住戸の被害として認定する,
③ 地震による被害の調査は,原則として外観目視調査により実施する
旨定めていた。


建築学会だか分かりませんが、そういうところでどこを細かく見ろという指針があるのでしょう。とはいっても、実際には外壁を壊してみないと分からない部分もありますし、人が最終判断する以上、客観化するのは難しいところでしょう。

仙台市は、その方針として
ア 支援法4条1項は,都道府県は,支援金の支給に関する事務の全部を支援法人に委託することができる旨規定する。
イ 上告人は,支援法人の指定を受け,宮城県から上記事務の全部の委託を受けている公益財団法人である。


市職員ではやり切れませんね。
(5)ア 本件マンションの管理組合からの申請により,平成23年5月11日,前記調査票を用いる方法により本件マンションの被災状況を調査し,部位別損害割合の合計が16%であり一部損壊に該当すると認定した。a区長は,この認定に基づき,同月27日付けで,本件世帯主らを含む本件マンションの住民に対
し,東日本大震災による本件マンションの被害の程度が一部損壊である旨の罹災証明書を交付した。
イ 共用部分の階段底部と梁の接合部分に剥離が認められるとして,部位別損害割合の合計が46%であり大規模半壊に該当すると認定した。a区長は,この認定に基づき,同月30日付けで,本件世帯主らに対し,東日本大震災による本件マンションの被害の程度が大規模半壊である旨の罹災証明書(以下「本件証明書」という。)を交付した。
(6)上記申請に係る本件各支援金(37万5000円~150万円)を支給する旨の本件各支給決定をし,その後これを支給した。


ここまではきちんと手続きをとっているように思えます。

(7)ア a区は,同月22日に本件マンションを調査した一級建築士から,梁にひび割れは存在せず,本件調査で認めた剥離による構造耐力上の影響はほとんどないことが明らかである旨の報告を受けた。
イ そこで,a区は,平成23年12月15日,職権により,前記調査票を用いる方法により本件マンションの被災状況を調査した結果,部位別損害割合の合計が16%にとどまることが確認されたため,一部損壊に該当すると認定した。a区長は,この認定に基づき,本件マンションの住民を対象とする説明会を開催した上,平成24年2月10日付けで,本件世帯主らに対し,東日本大震災による本件マンションの被害の程度が一部損壊である旨の罹災証明書を交付した。
(7)上告人は,平成25年4月26日付けで,本件世帯主らに対し,本件各世帯が大規模半壊世帯に該当するとの認定に誤りがあることを理由に,本件各支給決定を取り消す旨の本件各取消決定をした。


一度大規模破壊と診断されて支給されましたが、調査した建築士から躯体はそれほど壊れてないとの診断を出され、大規模からから小規模破壊に変更され支給金額の取り消しになりました。これは他の被災者と不平等になるから、返しなさいと市が訴えました。

最高裁は
(1)支援法2条2号イからハまで所定の全壊等か同号ニ所定の大規模半壊に当たるかの別と,一人のみの世帯か否かの別,及び居住する住宅を建設,購入,補修又は賃借する場合の定額加算により一律に定まるのであって(本件各世帯については37万5000円~150万円と定められた。),実際の損失額や今後の住宅の建替えや補修等に必要となる額に応じて支援金の額が決定されるものではない

この書き方だと支援法2条のように思えますが、3条に金額が記載されています。

(2)a区長が交付した本件証明書の認定に誤りがあったことにある。この誤りについては,罹災証明書の交付が市町村の自治事務(地方自治法2条8項)に属すると解されることや本件の事実経過,当時の多数の被災状況等に照らせば,上告人と本件世帯主らのいずれか一方の責めに帰すべき事由によって生じたものであるということはできない。・・・本件証明書の内容が変更されるリスクを上告人が負担すべきということはできない。

どうなんですかね。第一義的に区長が責任を取るべきじゃないですか?むしろ、区長が支援法人と一級建築士に請求すべきだと思いますが。

イ 本件各支給決定の効果を維持することによって生ずる不利益を更に検討すると,その効果を維持した場合には,支援金の支給に関し,東日本大震災により被害を受けた極めて多数の世帯の間において,公平性が確保されないこととなる。このような結果を許容することは,支援金に係る制度の適正な運用ひいては当該制度それ自体に対する国民の信頼を害することとなる。

そっちを優先します?詐欺を働いたわけでもなく、自治体がボケをかましたのですから、そっちが原因でしょう。

さらに,支援金の支給には迅速性が求められるところ,本件のような誤った支給決定の効果を維持するとした場合には,今後,市町村において,自然災害による被害の認定をして罹災証明書を交付するに当たり,その認定を誤らないようにするため,過度に慎重かつ詳細な調査,認定を行うことを促すことにもなりかねず,かえって支援金の支給の迅速性が害されるおそれがある。

緊急事態に対応するためには、多少の間違いはあるもんだ。詳細な調査をやれば支援が遅れるから、大雑把になるのは我慢しろよということでしょうか。


(4)以上に加え,本件各支給決定を取り消すまでの期間が不当に長期に及んでいるともいい難いことをも併せ考慮すると,前記瑕疵を有する本件各支給決定については,その効果を維持することによって生ずる不利益がこれを取り消すことによって生ずる不利益と比較して重大であり,その取消しを正当化するに足りる公益上の必要があると認められる。
したがって,上告人は,本件各世帯が大規模半壊世帯に該当するとの認定に誤りがあることを理由として,本件各支給決定を取り消すことができるというべきである。


第二小法廷判決全員一致です
裁判長裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

煮え切りませんね。緊急避難の原則モドキとでも言いたいのでしょうか。ならばそう書きましょうよ。
しかしですね、どこで間違いが起こったのか全く原因が明らかになっていませんよね。最初の支援法人の調査が悪かったのか、一級建築士の書類の書き方が悪かったのか、市役所の担当者のミスなのか。なぜここを明らかにしないのでしょうか。そこから過失割合を出すべきじゃないですかね。給料をもらっている、ギャラを貰っている以上プロとしての仕事をしなさいよ。またそれを求めなさいよ。

しかし、1世帯高くて350万円の支援金、低くて100万円程度ならさっさと返還しておけばよかったのに。

外国裁判所の懲罰的賠償には応じる必要はない:釈然としませんな

2021-07-19 17:49:01 | 日記
令和2(受)170  執行判決請求,民訴法260条2項の申立て事件
令和3年5月25日  最高裁判所第三小法廷  判決  その他  大阪高等裁判所
 民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合,その弁済が上記部分に係る債権に充当されたものとして執行判決をすることはできない

事実認定から見ていきます。

(1)ホンダヤインコーポレイテッドは,被上告人X1及び同X2によって設立されたカリフォルニア州所在の会社である。
(2)被上告人らは,平成25年(2013年)3月,上告人が被上告人会社のビジネスモデル,企業秘密等を領得したなどと主張して,上告人外数名に対して損害賠償を求める訴えをカリフォルニア州オレンジ郡上位裁判所に提起した。・・・見せしめと制裁のためにカリフォルニア州民法典の定める懲罰的損害賠償として9万米国ドル及びこれに対する上記割合による利息を被上告人らに支払うよう命ずる判決を言い渡し,本件外国判決は,その後確定した。
(3)被上告人らは,同年12月,本件転付命令に基づき,13万4873.96米国ドルの弁済(以下「本件弁済」という。)を受けた。


一応賠償金は払ったようですが、懲罰的賠償分については払わずにいるようです。この部分の未払金+年利10%を払えと訴えました。

これに最高裁は
(1)民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分(以下「懲罰的損害賠償部分」という。)が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合,その弁済が上記外国裁判所の強制執行手続においてされたものであっても,これが懲罰的損害賠償部分に係る債権に充当されたものとして上記判決についての執行判決をすることはできないというべきである。

要するに外国の裁判所での賠償金は払えと命じるのはいいが、懲罰部分は日本の公序良俗に反するという理由のようです。

(2)カリフォルニア州民法典の定める懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じたものであり,民訴法118条3号の要件を具備しないというべきであるから(最高裁平成5年(オ)第1762号同9年7月11日第二小法廷判決・民集51巻6号2573頁参照),本件弁済が本件懲罰的損害賠償部分に係る債権に充当されたものとして本件外国判決についての執行判決をすることはできない。

見事なまでにこの判例と同じです。最高裁まで何が争われたのかよく分かりません

第2 上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てについて
別紙「仮執行の原状回復及び損害賠償を命ずる裁判の申立書」第2の1記載のとおりであり,被上告人らは,これを争わない。上記事実関係によれば,上告人は,令和元年10月31日,被上告人らに対し,原判決に付された仮執行の宣言に基づき,2242万4347円を給付したものというべきである。

裁判官全員一致の意見
裁判長裁判官 戸倉三郎
裁判官 宮崎裕子
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴

どうなんですかね、どうも釈然としません。純粋に法律論からすれば、各国によって法律は違うし裁判管轄権は違います。だから、外国の法律に従った賠償命令について日本で100%の効力を有しないというのは分からなくはないのですが。ならば、全面的に海外裁判所の要求は知るか!と突っぱねるなら筋は通ります。
しかし、今回の裁判も引用されている裁判も懲罰的賠償は公序良俗に反するというのは分かりません。日本でも普通に罰金制度はありますし、事情によっては減免あるいは満額と幅があります。
それに、石綿の事件のように善意の第三者とはどう見ても言えないむしろ未必の故意と言ってもいいくらい酷い放置でした。それでも、懲罰的賠償はないのです。つまり日本の民事はやったもん勝ち、逃げたもん勝ちを推奨しているのと変わりません。

石綿訴訟 その4 結論は妥当だが

2021-07-18 17:44:22 | 日記
第2 被告国に対する国家賠償請求について
(2) 安衛法は,職場における労働者の安全と健康の確保等を目的として(1条),事業者は,労働者の健康障害の防止等のために必要な措置を講じなければならないものとしているのであって(22条等),事業者が講ずべき具体的措置を労働省令(平成11年法律第160号による改正後は厚生労働省令)に委任している(27条1項)。・・・安衛法は,労働者に健康障害を生ずるおそれのある物等について,人体に及ぼす作用,貯蔵又は取扱い上の注意等を表示しなければならないとしている(57条)ところ,この表示の記載方法についても,上記と同様に,できる限り速やかに,技術の進歩や最新の医学的知見等に適合したものとなるように指導監督すべきである。このことは,本件掲示義務規定に基づく掲示の記載方法に関する指導監督についても同様である。

要するにやることやらずにいたじゃないかと言っています。

(3)ア 建設業労働者のじん肺症発生件数が昭和40年代後半から急増し,その後も,建設業労働者のじん肺症及びじん肺合併症発生件数又は石綿関連疾患の発生件数が高い水準にあったことからも裏付けられる。


随分前から言われていたよね、何でやらんかったの?という感じでしょうか。

イ また,前記の事実関係等によれば,昭和33年3月頃には,石綿肺に関する医学的知見が確立し,昭和47年には,石綿粉じんにばく露することと肺がん及び中皮腫の発症との関連性並びに肺がん及び中皮腫が潜伏期間の長い遅発性の疾患であることが明らかとなっていた。

もはや未必の故意と言ってもいいくらいの放置です。

(4)イ 前記のとおり,昭和50年の安衛令及び安衛則の改正により,石綿等が健康障害を生ずるおそれのある物として,安衛法57条に基づく表示義務の対象となったところ,同条の定める表示事項の一つである「人体に及ぼす作用」は,その物の危険性が正確に伝わり,必要な手当てや治療が速やかに判明するように,症状や障害を可能な限り具体的に特定して記載すべきであると解され,抽象的に健康障害を生ずるおそれがある旨を記載するのでは足りないというべきである。

単に危険だというだけじゃ駄目だ、さっさと手を打つべきだったと言っています。

結論
(5)本件における以上の事情を総合すると,労働大臣は,石綿に係る規制を強化する昭和50年の改正後の特化則が一部を除き施行された同年10月1日には,安衛法に基づく規制権限を行使して,通達を発出するなどして,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として,石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること並びに石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを示すように指導監督するとともに,安衛法に基づく省令制定権限を行使して,事業者に対し,屋内建設現場において上記各作業に労働者を従事させる場合に呼吸用保護具を使用させることを義務付けるべきであったのであり,同日以降,労働大臣が安衛法に基づく上記の各権限を行使しなかったことは,屋内建設現場における建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した労働者との関係において,安衛法の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,著しく合理性を欠くものであって,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。

こういうところが法律家の傲慢さが見え隠れする文章で嫌なんですが、文章を切りましょうよ。しかも、「適用上違法」である、じゃなくて「要件を満たしている」とかそういう文章にしませんかね。これじゃ敗訴に見えます。判例は法律家のものだけじゃないんですよ。

裁判官全員一致の意見
第一小法廷判決
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚

ああだこうだといってますが、昭和20年代から危険が言われ、40年代には科学的に危険と証明されたにもかかわらず、企業はそんな商品を作り続け作業員に対策をとれとも説明もろくにせず、国も放置していたという点からすれば、この判決は妥当だとは思います。
しかし、このどうしようもない文章は何とかならんもんですか。

さらにいうと、懲罰的な意味の賠償金を命令できないもんですか。
補足意見で、「ここまでの放置はないだろ。」の趣旨があってもよさそうです。

石綿訴訟 その3 原審の要旨 矛盾があります

2021-07-17 09:54:02 | 日記
(1)被告国に対する国家賠償請求について
ア 昭和50年当時,建設現場は,石綿粉じんにばく露する危険性の高い作業環境にあった。
・・・被告国による当時の石綿粉じん対策は,不十分なものであったが,被告国は,当時,建設現場における石綿粉じんの実態を把握しておらず,建設現場において石綿粉じんにばく露することにより,建設作業従事者に広範かつ重大な危険が生じていると認識していなかった。・・・昭和50年の特化則の改正により,建設現場における石綿粉じんの主要発散源とされていた石綿吹付け作業を原則として禁止し,従来の呼吸用保護具の備付け義務に加えて,特定化学物質等作業主任者による作業の指揮や保護具の使用状況の監視により,呼吸用保護具の着用をより一層確保するなど,当面採り得る対策を講ずるなどした被告国の判断には,相応の合理性が認められる。これらを考慮すると,昭和55年12月31日以前の被告国の安衛法に基づく規制権限の不行使は,許容される限度を超えて著しく不合理なものとはいえず国家賠償法1条1項の適用上違法ということはできない。


ここは私も同意します。むしろこれは以前から危険が言われていたのに、何もしてこなかった立法府の責任でしょう。法では裁けません。

イ ,昭和56年1月1日以降,被告国の安衛法に基づく規制権限の不行使は国家賠償法1条1項の適用上違法であり,その後も,建設現場では,石綿粉じんにばく露するおそれのある状況が継続していたから,平成7年3月31日までの間,上記の違法な状態は継続していた。・・・被告国は,遅くとも昭和56年1月1日の時点で,安衛法27条に基づき,特化則を改正するなどして,事業者に対して,屋根を有し周囲の半分以上が外壁に囲まれ屋内作業場と評価し得る建設現場の内部(以下「屋内建設現場」という。)において,石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業(その内容につき平成7年改正後の特化則38条の9第1項参照)及びその周囲における作業に労働者を従事させる場合には,呼吸用保護具を使用させることを義務付けるべきであった。

それ以前に、施工業者や業界で率先して啓もう活動をすべきだったんじゃないでしょうか。そっちの不作為の方が問題だと思います。

.安衛法57条の定める労働者に健康障害を生ずるおそれのある物に関する表示において,同条の定める表示事項の一つである「人体に及ぼす作用」は,必要な手当てや治療が速やかに判明するように症状や障害を可能な限り具体的に特定して表示すべきであり・・・被告国がこれを行わなかったことは,著しく合理性を欠く。.

法律としてはそうあるべきですね。

ウ 被告国は,昭和56年1月1日の時点で,安衛法59条に基づく規制権限・・・,上記作業を行う際には規格に適合した防じんマスクを必ず着用する必要があることを含めるように指導監督すべきであった。被告国がこれを行わなかったことは,著しく合理性を欠く。

確かに「法」だけではなく、規則や政令で規制できましたから、国会をわざわざ通すだけでなく規制はできたはずです。

ウ 被告国は,平成7年に安衛令,安衛則及び特化則を改正し,一部を除き同年4月1日から施行した。この改正により,①アモサイト,クロシドライト及びこれらをその重量の1%を超えて含有する製剤その他の物の製造等が禁止され,・・・平成7年4月1日以降,被告国の規制権限の不行使を国家賠償法1条1項の適用上違法ということはできない。

法規制を出したのだから、これ以降は完全に企業側の責任ですよということのようです。

エ 安衛法22条,57条及び59条に基づく規制権限の保護の対象者は,安衛法2条2号において定義された労働者であり,被告国は,当該労働者と認められない者との関係では,上記規制権限を行使する職務上の法的義務を負担しない。したがって,当該労働者と認められないいわゆる一人親方及び個人事業主等との関係では,被告国の上記規制権限の不行使は違法とはならず,被告国は規制権限の不行使による責任を負わない。

一人親方は自己責任よと言ってます。それは当然ですね。管理者であり労働者ですから。管理者としての地位を重視しました。

(2)被告建材メーカーらに対する不法行為に基づく損害賠償請求について
民法719条1項後段は,因果関係以外の不法行為の要件を備えた複数の加害者が,いずれも,それのみで他人の権利又は法律上保護される利益を侵害する結果を惹起し得る行為を行ったが,

刑法の共同謀議に近いですが、ここで当てはめると複数の企業が石綿を使った商品で健康被害を出したことは、製造した複数の企業が連帯責任を負って賠償しろということになります。

各加害者の行為が,経験則上,それのみで生じた損害との間の因果関係を推定し得る程度に具体的な危険を惹起するものであることを主張立証する必要があると解される。そして,被告建材メーカーらの製造販売した建材が出荷されても,本件被災者らが作業をする建設現場に到達しなければ,本件被災者らとの関係で,被告建材メーカーらの行為が具体的な損害発生の危険を惹起したとはいえない。

問屋に危険を伝えても現場作業員に伝わっていなければ全く意味はありませんので、その通りでしょう。

自らの加害行為を原因とする石綿粉じんへのばく露よりもばく露量が大きいことを証明したとしても,民法719条1項後段の推定を覆せないとすると,明らかに衡平を失するというべきである。そこで,上記の本件被災大工らに係る石綿粉じんのばく露量全体との関係で,本件ボード三種を製造販売した企業らの集団的寄与度を定め,これに応じた割合的責任の範囲内で,同項後段を適用して,被告エーアンドエーマテリアルらに連帯責任を負担させるのが相当である。

これは当然でしょう。

イ 加害者として特定された複数の者の行為がいずれもそれのみで他人の権利又は法律上保護される利益を侵害する結果を惹起し得るものでない場合には,全ての加害者が特定され,他に加害者が存在しないことが立証されなければ,損害全体についての因果関係の推定の基礎が欠け,民法719条1項後段を類推適用する前提を欠くものと解される。

連帯責任の範囲ですよね。他に石綿製品の製造をやっていた会社がない事を証明しなければなりません。若干悪魔の証明に近いものがありますが。

被告エーアンドエーマテリアルらが製造販売した本件ボード三種が上記の本件被災大工らが作業をする建設現場に到達したことは認められるものの,この被告エーアンドエーマテリアルらの行為が,それのみで上記の本件被災大工らに中皮腫以外の石綿関連疾患を発症させるものであったとは認められず,他に加害者となり得る者が存在することも明らかであるから,被告エーアンドエーマテリアルらは,同項後段の類推適用によって損害賠償責任を負うということはできない。

はぁ?石綿の製品が現場に持ち込まれて、使われていたわけですよね。他に加害者=石綿製造の会社があることは明らかだから、1社にのみ責任を負わせるわけには行かないとするのは分かりますが、丸ごと0?やり得ですか?

被告エーアンドエーマテリアルらは,民法709条に基づき,各被告の損害発生に対する寄与度に応じた割合による分割責任を負うと解するのが相当である。そして,中皮腫以外の石綿関連疾患にり患した本件被災大工らについて,本件ボード三種を直接取り扱ったことによる石綿粉じんのばく露量は,各自の石綿粉じんのばく露量全体のうち3分の1程度にとどまること,・・・被告エーアンドエーマテリアルらは,上記の本件被災大工らに対し,原判決別紙2「主文一覧表」の各被告についての「認容額」欄記載の金額の損害賠償責任を負う。

もう少し書き方に注意して書くべきですね。賠償責任の新たなる計算方法の提案になるのではないでしょうか。

ウ 石綿含有建材の製造販売をする者は,建物の工事において,上記のように一旦使用された石綿含有建材に後から作業をする者に対しては,警告表示義務を負わないと解すべきである。したがって,原告らのうち別紙一覧表3記載の者らの被告エーアンドエーマテリアルら,被告大建工業及び被告ノザワに対する請求並びに原告らのうち別紙一覧表5記載の者らの被告ノザワに対する請求は理由がない。

ここは納得できませんね。昭和30年代から石綿は危険ですよと言われつつ、製造し続けてきたわけです。少なくとも昭和56年の法規制以降は廃棄の事までも明示する義務はあってしかるべきじゃないでしょうか。

エ 石綿を含有する吹付け材を製造販売する企業
被告太平洋セメントは,石綿含有吹付けロックウールに関し,建材だけが流通することは想定せず,販売先の系列化を図り,自社の石綿含有吹付けロックウールの施工の安全性を確保する態勢を採っていたのであって,このことを通じて元請建設業者の側に安全配慮義務の履行の契機となる情報は伝達されていたものと評価され,上記警告義務の違反があったとは認められない。したがって,原告らのうち別紙一覧表4記載の者らの被告太平洋セメントに対する請求は理由がない。


評価されるべき証拠は提示されたのでしょうか?系列化されていたからといって、小売店からの説明が必ずしもあったとは思えません。もう少し丁寧に描てもらいたいところです。

オ 被告ノザワは,長期間にわたり,石綿を含有するモルタル混和剤「テーリング」を製造販売していた。株式会社ノザワ技術研究所作成の平成元年9月付け報告書(以下「ノザワ技研報告書」という。)によれば,同社において,同年8月,テーリングを使用した左官作業における石綿粉じん濃度を測定したところ,作業環境における石綿粉じん濃度は最大でも0.065本/㏄,個人ばく露濃度の最大値は0.035本/㏄であって,テーリングから生ずる石綿粉じんは,ごく僅かなものであった。上記の測定の際,舟(混練作業用の容器)とスコップを用いて混練が行われ,電動かくはん機は用いられていなかったが,測定の際にあえて一般的でない作業方法が用いられたとはいい難いから,上記の測定結果が信用できないものとはいえず,他にこれに代わる測定結果もない

発病するのに石綿の飛散量について閾値が不明なんですよね。この辺りは矛盾していませんか?

国家の基本は家庭から:最高裁判事を辞めさせましょう

2021-07-09 17:23:15 | 日記

実子誘拐ビジネスの闇
出版社へのリンクです

この2つの記事に関する本です
連れ去り親から親権を奪還した判決
高裁で逆転:連れ去り親から親権を奪還した判決

きちんと法整備をしない政治が主たる原因ではありますが、どうでもいい意見は書くのにこの件では補足意見すら出しません。
いまだにやらないハーグ条約対応の法整備

これ以降も最高裁は本当に訳の分からない判決を出し続けています。

トンデモ判決:養父母は養子の面会交流権が制限=事実上権利はないに等しい
第一小法廷裁判官全員一致の意見
池上政幸、小池 裕、 木澤克之、山口 厚深山卓也

トンデモ論旨 子の引渡仮処分
第三小法廷全員一致
木内道祥 、岡部喜代子、山崎敏充、 戸倉三郎、林 景一

このリンクは張られている裁判官は、まだ最高裁判所裁判官の国民審査で落とすチャンスがあります。


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石綿訴訟 その2作業状況と関連法令

2021-07-05 21:47:08 | 日記
(1)石綿及び石綿含有建材の概要
我が国の年間石綿輸入量は,高度経済成長期に急増し,昭和36年に10万t,昭和44年に20万tをそれぞれ超え,昭和49年に35万2110tに達し,その後も20万t以上で推移し,昭和63年に32万0393tとなったが,平成元年以降は減少を続け,平成6年に20万t,平成12年に10万tをそれぞれ下回り,平成16年に8186t,平成17年に110tとなり,平成18年以降はゼロとなった。我が国に輸入された石綿の約7割は建設現場で使用された。


H17年まで建材として輸入されていたとは驚きです。これは行政の不作為ですね。

(2)建設作業における石綿粉じんの発散
木造建物の建築工事において,石綿含有スレートボード等の石綿含有建材を切断する際に,石綿粉じんが発散した。また,左官がモルタルを作る際に,石綿又は石綿を含有する混和剤を加えてかくはんすることにより,石綿粉じんが発散した。設備工事においても,電工や配管工が石綿を含有するボードに穴を開ける際に,石綿粉じんが発散するおそれがあった。
(3)電動工具の普及状況
電動丸のこ,電動ドリル等の電動工具で建材を加工する場合,手工具で加工する場合に比して多量の粉じんが発散する。


どのくらい多く飛ぶのか論証がないのは問題ですね。

(4)防じんマスクの着用状況
昭和60年頃の建設現場では,吹付け工や一部のはつり工を除き,大半の労働者は防じんマスクを着用しておらず,昭和50年頃も同様であった。


(6)石綿関連疾患の概要
石綿関連疾患には,石綿肺,肺がん,中皮腫,びまん性胸膜肥厚等がある。石綿肺は,石綿粉じんを大量に吸入することによって発生する疾患であり,じん肺の一種である。
(7)石綿関連疾患に関する医学的知見の集積状況等
イ セリコフらは,1964年(昭和39年),米国の医学誌において
ウ 労働省労働基準局長は,昭和46年1月5日付けで
オ 労働省労働衛生研究所の松下秀鶴及び河合清之は,昭和46年,
カ セリコフらは,1972年(昭和47年),・・・

1964年から危険性は労働省は把握していたようです。当然、一般人にもニュースの形で報道されているはずですが、その記載はありません。

サ WHOが1989年(平成元年)に発表した「石綿の職業ばく露限界」と題する報告書では,それ以下ではがんが起こらないという石綿ばく露の閾値が存在するという実質的証拠はないなどとされている。

難しい表現を使っていますが、少量だから問題ないということではなく、わずかでも発症する可能性を書いています。

(8)建設業労働者のじん肺症及びじん肺合併症発生件数等
記録が残るっ範囲で70-700件で200件以下になることが平成に入るまで続いたとあります。

(10)関係法令の概要等
昭和22年に公布された労働基準法(一部を除き同年11月1日施行。以下,昭和47年法律第57号による改正前の労働基準法を「旧労基法」という。)では,使用者は,粉じん等による危害を防止するために必要な措置を講じなければならない・・・


平成ではなく昭和22年の段階で既にこういう法律があったのですね。

(ウ)昭和46年4月28日,旧労基法の規定に基づき,及び旧労基法を実施するため,特定化学物質等障害予防規則(同年労働省令第11号。以下「旧特化則」という。一部を除き同年5月1日施行)を制定した。旧特化則では,石綿は第二類物質とされ(2条2号,別表第2),第二類物質に係る作業に関し,次の内容の規定が設けられた。

基準が高められていたのですね。にもかかわらず、輸入は止められていなかったとは書いておりません。この後、22ページまで延々と関連法律が羅列されています。