最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

議論不足判決:CG化した児童ポルノ元データが古いものでも違法

2020-01-31 08:16:54 | 日記
平成29(あ)242  児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
令和2年1月27日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  東京高等裁判所
1 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)2条3項にいう「児童ポルノ」の意義
2 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)7条5項の児童ポルノ製造罪の成立と児童ポルノに描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることの要否


日経新聞の報道です
女児写真からわいせつCG 最高裁、児童ポルノと判断
写真を参考にCG(コンピューターグラフィックス)で描いた女児の裸の画像は児童ポルノにあたるのか――。こうした点が争われた刑事裁判の上告審で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は29日までに、実在する児童の写真を素材にしたわいせつなCGは児童ポルノに該当するとの判断を示した。
写真を参考にして女児の裸のCGを作成、販売したとして児童ポルノ禁止法違反の罪に問われたのは、グラフィックデザイナーの高橋証被告(59)。CGが児童ポルノとして摘発された初のケースだった。
同法は実在する18歳未満の児童が描かれた画像などを規制対象としており、裁判ではCGが「実在の女児」を描いたものといえるかが主な争点となった。
2017年1月の二審・東京高裁判決は、起訴された34点のCGのうち一部を無罪とした一方、3点については実在する女児の裸の写真を素材にして作成したものだと認定。この3点は児童ポルノにあたるとして、罰金30万円を言い渡した。第1小法廷も27日付の決定でこの判断を支持し、被告の上告を棄却した。
3点のCGの素材となった写真は1980年代に出版された写真集に掲載されたもので、女児はCG作成時点では既に「児童」ではなくなっていた。弁護側は、描かれた人物が作成時点で18歳未満でなければ児童ポルノに該当しないとも主張したが、同小法廷は描かれた人物がその時点で18歳未満である必要はないとして退けた。


個人的には気持ち悪いとしか言いようがありません。とは言え、違法かどうかの判断ですので、個人的感想はこれ以上はやめておきます。

最高裁はいきなり、法令の解釈について述べます。
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条1項は,「児童」とは,18歳に満たない者をいうとしているところ,同条3項にいう「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,同項各号のいずれかに掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい,実在しない児童の姿態を描写したものは含まないものと解すべきである。

事実認定です。
a 被告人は,昭和57年から同59年にかけて初版本が出版された写真集に掲載された写真3点の画像データ(以下,上記写真3点又はそれらの画像データを「本件各写真」という。)を素材とし,画像編集ソフトを用いて,コンピュータグラフィックスである画像データ3点(以下「本件各CG」という。)を作成した。

b 本件各写真は,実在する18歳未満の者が衣服を全く身に着けていない状態で寝転ぶなどしている姿態を撮影したものであり,本件各CGは,本件各写真に表現された児童の姿態を描写したものであったというのである。

被告人が本件各CGを含むファイルを記憶,蔵置させたハードディスクが児童ポルノであり,本件行為が児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たるとした第1審判決を是認した原判断は正当である。

ちょっと待ってください。2019-11-17 の記事、ロリコン画像データを印刷したら児童ポルノ法違反と似てますね。このときは、電磁媒体も駄目よという結論でした。このときは、実写だったので話は簡単でした。今回は当時18歳未満であること、さらにCGで加工しているものも含まれるかという論点になりませんか?

結論です。
同項の児童ポルノ製造罪が成立するためには,同条4項に掲げる行為の目的で,同法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した物を製造すれば足り,当該物に描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることを要しないというべきである。

全員一致で有罪でした。
第一小法廷
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚

裁判官山口厚の補足意見です。
児童ポルノ法2条3項に定める児童ポルノであるためには,視覚により認識することができる方法で描写されたものが,実在する児童の同項各号所定の姿態であれば足りる。児童ポルノ法7条が規制する児童ポルノの製造行為は,児童の心身に有害な影響を与えるものとして処罰の対象とされているものであるが,実在する児童の性的な姿態を記録化すること自体が性的搾取であるのみならず,このように記録化された性的な姿態が他人の目にさらされることによって,更なる性的搾取が生じ得ることとなる。児童ポルノ製造罪は,このような性的搾取の対象とされないという利益の侵害を処罰の直接の根拠としており,上記利益は,描写された児童本人が児童である間にだけ認められるものではなく,本人がたとえ18歳になったとしても,引き続き,同等の保護に値するものである。

ようわかりません。これって補足意見でわざわざ言うことですか?ほかの裁判官と意見が違います?とりあえず一言言っておかなければのレベルにしか思えませんが。元画像が作られたのが18歳未満なので、幼児性愛者の興奮をさせないという立法趣旨から、これは違法ですよというのは分ります。
でもCG加工を施したものの違法性が全く論じられてないのが気になります。これが大幅に加工されたCGだったらどうなのでしょうか?程度の問題ではなく、元データの問題になるのでしょうか?極端な話、肉筆で写真のような絵(超リアリズム派)を描くこともあり得ます。この場合、実際のモデルがいるかどうかが論点になるのでしょうか?なんか釈然としませんね。


時代錯誤:婚姻費用は離婚が成立しても請求権あり

2020-01-30 21:16:31 | 日記
平成31(許)1  婚姻費用分担審判に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
令和2年1月23日  最高裁判所第一小法廷  決定  破棄差戻  札幌高等裁判所
婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても,これにより婚姻費用分担請求権は消滅しない

裁判所の事実認定を見ていきます。
(1) 妻である抗告人は,平成30年5月,夫である相手方に対し,婚姻費用分 担調停の申立てをした。
(2) 抗告人と相手方との間では,平成30年7月,離婚の調停が成立した。同 調停においては,財産分与に関する合意はされず,いわゆる清算条項も定められな かった。
 (3) 上記(1)の婚姻費用分担調停事件は,上記(2)の離婚調停成立の日と同日, 不成立により終了したため,上記(1)の申立ての時に婚姻費用分担審判の申立て (以下「本件申立て」という。)があったものとみなされて(家事事件手続法27 2条4項),審判に移行した。


おそらくですが、離婚前提で別居しました。専業主婦だった妻は稼ぎがないために、婚姻費用を請求しました。
調停開始2か月後に離婚が決定しましたが、財産分与は不成立でした。そこで、未払い分の婚姻費用を払えと訴えました。婚姻費用とは、別居中の夫婦の間で,夫婦や未成熟子の生活費などの婚姻生活を維持するために必要な一切の費用を言います。
この婚姻費用はどうかと思いますよ。合わないからと別居を始めて、働きもしないで相手から金を寄越せはないでしょう。別居した時点で既に婚姻関係は破たんしているわけで、その別居期間もよこせはヤクザですよ。これは専業主婦(夫)を間接的に推奨する制度なのですぐにでも止めるべきですね。
ちなみに、養育費は別ですよ。

本題に戻ります。
原審は、
抗告人の相手方に対する婚姻費用分担請求 権は消滅したから,離婚時までの婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法であ るとして,これを却下した。・・・そして,当事者間 で財産分与に関する合意がされず,清算条項も定められなかったときには,離婚に より,婚姻費用分担請求権は消滅する。


ごもっとも。ところが、最高裁はひっくり返しました。
民法760条に基づく婚姻費用分担請求権は,夫婦の協議のほか,家事事件手続 法別表第2の2の項所定の婚姻費用の分担に関する処分についての家庭裁判所の審 判により,その具体的な分担額が形成決定されるものである(最高裁昭和37年 (ク)第243号同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁参 照)。

家事審判法九条一項乙類三号に規定する婚姻費用分担に関する処 分は、民法七六〇条を承けて、婚姻から生ずる費用の分担額を具体的に形成決定し、 その給付を命ずる裁判であつて、家庭裁判所は夫婦の資産、収入その他一切の事情 を考慮して、後見的立場から、合目的の見地に立つて、裁量権を行使して、その具 体的分担額を決定するもので、その性質は非訟事件の裁判であり、純然たる訴訟事 件の裁判ではない。従つて、公開の法廷における対審及び判決によつてなされる必 要はなく、右家事審判法の規定に従つてした本件審判は何ら右憲法の規定に反する ものではない。しかして、過去の婚姻費用の分担を命じ得ないとする所論は、原決 定の単なる法令違反を主張するにすぎないから、特別抗告の適法な理由とならない のみならず、家庭裁判所が婚姻費用の分担額を決定するに当り、過去に遡つて、そ の額を形成決定することが許されない理由はなく、所論の如く将来に対する婚姻費 用の分担のみを命じ得るに過ぎないと解すべき何らの根拠はない。

時代を感じさせますね。これは昭和37年50年以上前の話です。まだ家電製品がほとんどなく、主婦がいてはじめて家庭が成り立っているような時代でした。今はどうです?男女雇用機会だの共同参画だのと社会に出るのが当たり前になっています。こんな化石のような判例を、もう一度出す理由はあります?
裁判所は女性は家庭で働くべきだと間接的に言っているようなものですよ。

したがって,婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても,これに より婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえない。・・・裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

はぁ?誰も現実の社会参画の話をしないの?

第一小法廷決定
裁判長裁判官 深山卓也 時代錯誤
裁判官 池上政幸 時代錯誤
裁判官 小池 裕 時代錯誤
裁判官 木澤克之 時代錯誤
裁判官 山口 厚 時代錯誤

ちなみに不法行為で、例えば浮気して出て行っても婚姻費用は請求権あるんですよ。ここは事情を加味するか、婚姻費用制度そのものはなくすべきじゃないですか?丸のまま払えってのはどう見てもおかし過ぎます。

再び裁判員制度を無視する判決

2020-01-29 19:37:39 | 日記
NHKの報道です
NHKの報道です。
淡路島男女5人殺害事件 死刑判決取り消し無期懲役 大阪高裁

兵庫県洲本市の平野達彦被告(45)は平成27年3月、自宅近くに住んでいた二家族の男女5人をナイフで刺して殺害したとして殺人などの罪に問われました。
1審の裁判員裁判は「被告は長期間の向精神薬の服用による精神障害があったものの犯行には大きな影響がなかった」とした精神鑑定の結果を踏まえ、完全な責任能力があったと判断し、死刑を言い渡していました。
被告側が控訴して行われた27日の2審の判決で、大阪高等裁判所の村山浩昭裁判長は「1審段階までの精神鑑定は薬物の使用をやめたあとも妄想などの症状が続いていることを説明できず信用できない」と指摘しました。
そして2審で新たに行われた精神鑑定が被告には「妄想性障害」があり、犯行に大きな影響を与えたとしたことを踏まえ「犯行当時、責任能力が著しく低下した心神耗弱の状態だった」と判断して1審の死刑を取り消し、無期懲役を言い渡しました。


産経新聞の報道です
平野被告に対しては起訴前と起訴後の2度にわたり精神鑑定が行われており、最大の争点は刑事責任能力。検察側は論告で「鑑定した2人の医師はいずれも犯行時の精神状況は正常だったと証言した」と指摘。事件前にサバイバルナイフを購入したり、殺人罪の量刑をインターネットで調べたりしていたことを挙げ、「犯行には計画性があり、合理的な判断に基づいて行われた」と強調した。

1審で責任能力ありと認めていますが、高裁で心神耗弱になっています。どうしてこのようなウルトラC的な判決になったのでしょうか。
判決を出したのは村山浩昭裁判長です

女子高生にAV強要の男の弁護士に戒告処分

2020-01-28 19:25:19 | 日記
産経新聞の報道です。

産経新聞にしては理解しにくいので要約してみます。
この弁護士はAVビデオ制作会社の顧問弁護士でした。このAV会社が女子高生に出演させようとしたら嫌がったようです。そこで会社は準備にかかった美容院代などの金を払えと迫ったようです。
これを弁護士が知ったにもかかわらず、「こういったことはやってはいけませんよ」と教えなかったのです。
AV会社は「うちには弁護士がついてるんだ、言うこと聞け」と迫りました。

顧問弁護士として「法的助言をする」という義務を果たさなかったということで、懲戒になったようです。
記事には以下のように書かれています。
菅谷弁護士は「(男の行為が)職業安定法上の有害業務に該当するかどうか思いを致すことが現実的に困難だった」と弁明したが、懲戒委は「(同法の)有害業務の概念について知らなかったことは弁解の余地がない」と断じた。一方で「法的知見を提供し、違法行為を助長した証拠はない」として、戒告とした。

通常、女子高生と言えば18歳未満ですよね。その労働についてAVとなれば、かなり違法行為に近いことが予想されますよね。
年齢を確認しなかったのでしょうか?法律を知らなかったって言い訳をそのまま信じたのでしょうか?
へーとしか言いようがありません。
ということで、「法的知見を提供し、違法行為を助長した証拠はない」と、そそのかした訳じゃないということで減刑になったようです。

話はちょっとずれますが、顧問弁護士というのは、月額いくらで契約します。3万円とは激安です。こういったところだと15万以上はとるもんじゃないでしょうか。

弁護士懲戒分析検索センター

微妙判決 取り調べの録音録画を根拠に公判を短縮できない

2020-01-27 20:56:50 | 日記
平成29(あ)2073  詐欺,窃盗,詐欺未遂被告事件
令和2年1月23日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所
犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した第1審判決を控訴裁判所が何ら事実の取調べをすることなく破棄し有罪の自判をすることと刑訴法400条ただし書

マスコミでの報道がないので事実関係から確認していきます。
1 
(1)平成27年5月とする窃盗1件,詐欺1件,詐欺未遂3件については被告人を有罪とし,懲役2年6月,4年間執行猶予に処した。
(2)平成28年6月28日付け起訴状記載の各公訴事実(詐欺3件。以下「本件公訴事実」という。)については無罪を言い渡した。
手口はいずれも家電量販店において,
(1) 不正に入手したAを被保険者とする健康保険被保険者証及びA名義のクレジットカードを使用してAになりすましてクレジット機能付きポイントカードをだまし取ろうと考え,入会申込端末を使用して,氏名入力画面に「A」と入力するなどし,カード発行手続業務等の業務委託を受けている会社の社員に対し,Aになりすまし,Aを被保険者とする健康保険被保険者証及びA名義のクレジットカードを提出するなどして,クレジット機能付きポイントカードの交付を申し込み,同ポイントカード1枚の交付を受け,
(2) 上記家電量販店店員に対し,Aになりすまし,上記ポイントカードを提示して財布2個等4点の購入を申し込み,その交付を受け,
(3) 同店店員に対し,Aになりすまし,上記ポイントカードを提示してゲーム機1個の購入を申し込み,その交付を受け,それぞれだまし取った


随分せこい事件ですね。

2 原判決は,全ての事実について犯人ではないから無罪であるとする被告人の主張を排斥し,本件公訴事実について,第1審判決は,被告人の犯人性を推認させ,又はその推認力を補強する間接事実の推認力や第1審関係証拠の証明力の評価を誤った上,これらを分断的に評価し,適切な総合評価を行わなかった結果,被告人が犯人であったとするには合理的な疑いが残るとの結論を導いたもの

小難しいことを書いていますが、被告は犯人は自分じゃないと主張しているが、証拠がある。判決の一部で無罪になった事件について証拠とされたものは証拠能力が乏しいと裁判所が誤認している。という趣旨のようです。高裁では、この理由に基づいて判決を破棄しました。

被告人に対し,無罪を言い渡した場合に,控訴審において自ら何ら事実の取調べをすることなく,訴訟記録及び第1審裁判所において取り調べた証拠のみによって,直ちに公訴事実の存在を確定し有罪の判決をすることは,刑訴法400条ただし書の許さないところとするのが最高裁判例(昭和26年(あ)第2436号同31年7月18日大法廷判決・刑集10巻7号1147頁,昭和27年(あ)第5877号同31年9月26日大法廷判決・刑集10巻9号1391頁。以下,両者を併せて「本件判例」という。)であると言及しつつ,同条ただし書に関する本件判例の解釈は,今日においては,その正当性に疑問があるとした。

要するに高裁でちゃんと取り調べをしないで、地裁の審議で取り上げられた証拠だけで判断したのは駄目でしょうという訴えのようです。刑事訴訟法400条の但し書きも
「但し、控訴裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び控訴裁判所において取り調べた証拠によって、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。」
と明らかに調べなおす必要がない場合、調べようがない場合を除いては例外的にやっていいよというレベルです。

3 昭和31年7月18日大法廷判決は,事件が控訴審に係属しても被告人は,憲法31条37条等の保障する権利は有しており,
昭和31年の判決は、裁判を受ける権利と矛盾してませんよというものです平成29(あ)2073  詐欺,窃盗,詐欺未遂被告事件
令和2年1月23日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所
犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した第1審判決を控訴裁判所が何ら事実の取調べをすることなく破棄し有罪の自判をすることと刑訴法400条ただし書

「本件の如く,第1審判決が被告人の犯罪事実の存在を確定せず無罪を言渡した場合に,控訴裁判所が第1審判決を破棄し,訴訟記録並びに第1審裁判所において取り調べた証拠のみによって,直ちに被告事件について犯罪事実の存在を確定し有罪の判決をすることは,被告人の前記憲法上の権利を害し,直接審理主義,口頭弁論主義の原則を害することになるから,かかる場合には刑訴400条但書の規定によることは許されないものと解さなければならない。」として原判決を破棄し,事件を第1審裁判所に差し戻した。そして,上記昭和31年9月26日大法廷判決も同旨の判断をした。

それで今回も過去の判例に従って判断したとしています。

原判決は,判例変更をすべき理由として,刑訴法の仕組み及び運用が大きく変わり,第1審において厳選された証拠に基づく審理がされ,控訴審において第1審判決の認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に指摘できる場合に限って事実誤認で破棄されること,起訴前国選弁護制度や取調べの録音録画の実施により被告人が黙秘権を行使することも多くなっていること,本件判例に抵触しないために検察官から請求された証拠を調べるとすると,取調べの必要性も第1審の弁論終結前に取調べを請求できなかったやむを得ない事由も認められない証拠を採用することになること等を挙げ,

取り調べ方法も、取り調べの録音録画があるのだから、そもそも従前の判例に従う必要がなくなったではないかと言っています。

殊に第1審において,犯罪事実の存否及び量刑を決する上で必要な範囲で充実した審理・判断を行い,公判中心主義の理念に基づき,刑事裁判の基本原則である直接主義・口頭主義を実質化しようとするものであって,同じく直接主義・口頭主義の理念から導かれる本件判例の正当性を失わせるものとはいえない。そうすると,本件判例は,原判決の挙げる上記の諸事情を踏まえても,いまなおこれを変更すべきものとは認められない。

なんかよく分かりませんね。裁判は公判でちゃんとやらなければならず、取り調べの録音録画は公判の代替にはならないよと言っているようです。
私は、刑事裁判を最初から最後まで見たことはないので実際どんなものなのか分かりません。取り調べでの録音録画と同じことを法廷で再度やるのですか?単に反論の機会を求めたとこだけでもいいんじゃないでしょうか。
こういっては何ですが、こういう事件の場合はそれほど裁判に時間はかかりませんが、かなり複雑かつ大きな事件の場合は1審で5年近くかかるものもあります。最近はかなり早くなったとはいえ、こういうところで迅速化してもいいんじゃないでしょうか。今回の判断はもっと効率を考えてもいいんじゃないでしょうか。

第一小法廷
裁判長裁判官 山口 厚 微妙
裁判官 池上政幸 微妙
裁判官 小池 裕 微妙
裁判官 木澤克之 微妙
裁判官 深山卓也 微妙

心神喪失とは何だろう:相模原やまゆり事件

2020-01-26 14:58:32 | 日記
先日、相模原障害者殺人事件の被告が弁護士解任を求めました。

以下、TBSの報道です。
神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で45人を殺傷した植松聖被告が、22日朝、JNNの面会取材に応じ、「弁護人を解任したいと思っている」などと話しました。
 22日朝、拘置所でおよそ30分間の面会取材に応じた植松被告(30)は、「1人で裁判を受けたい」「弁護人を解任したいと思っています」と話しました。弁護側は、植松被告が薬物の影響で精神に障害があったなどとして責任能力を争っていますが、植松被告は、「弁護人の考えと私の考えは正反対で、心神喪失という主張ではない」と、解任したいと思った理由を説明しました。


私も素人ながら、あれは確信犯だろうなと思います。いくら大麻でラリパッパになっていたとしてもですよ、20人殺したのは相当執念深く覚悟をしてやっています。また、刃物は脂がつくと切れません。肉の調理をやったことがあればすぐにわかるでしょう。南京大虐殺で千人斬りなんて言うのは絶対あり得ません。3人ぐらいで脂で斬れなくなり、5人以上となるとほぼ確実に刃が折れるそうです。
つまり代わりの刃物を複数持って、かつ職員に見つからないように時間帯と場所を選び、20人刃物で殺すということは、殺害の準備は相当入念にやっているはずです。

弁護士としては、職務上無罪に持ち込みたいのでしょう。医者が重症患者を診て、そいつがどれだけ極悪人であろうと命を救うようなものです。法の正義を判断するのは裁判官であり、弁護士はとりあえず言ってみるといったところでしょうか。
とは言え、本人が拒否してるにもかかわらず、勝手に審理が進むというのはどうなんでしょうか。先にこのブログで、「よくわからん大阪高裁:寝屋川中学生殺人事件の被告の控訴取り下げは「無効」」の記事でも同様の事を書きました。
最高裁までいって判断を受けるのは、義務ではありません。検察が上告しない限り、被告の意思によって一審で止めることもできます本人の意思とは関係なく裁判を行うのは、それこそ人権侵害ではないかという気がしてきませんか?

大阪地裁 上告忘れられ服役、弁護士に賠償命令

2020-01-25 12:12:37 | 日記
毎日新聞の報道です。

覚せい剤取締法違反罪で有罪となった男性が、弁護人が上告手続きを怠ったため服役を余儀なくされたとして、大阪弁護士会所属の男性弁護士に500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は24日、40万円の支払いを命じた。石上興一裁判官は「弁護人が上告を失念したとみられる」と指摘した。
判決によると、男性は覚醒剤を持っていたとして2014年に起訴された。無罪を主張したが、大阪地裁は15年に懲役3年の判決を言い渡し、大阪高裁も16年に控訴を棄却した。男性は弁護人に最高裁への上告を依頼したが、期限までに申立書が提出されず、実刑が確定。刑務所に服役し、既に出所した。


どっちもどっちな事件です。これまでの判例なら、初犯でかつ単に所持していただけで、販売目的でなければ実刑を受けることはまずないみたいです。まあ、この判例自体もどうかと思いますが。
原告は、高裁で実刑判決を受けたわけですね。となると、販売目的か前科があるかの可能性があります。
それを見ていた弁護士は、これ以上は争っても無駄でしょ?と思ったのかもしれません。忘れてたのでしょうか、それとも被告が納得したと思い込んでいたのでしょうか。よほど、弁護士も嫌だったのでしょう。
とは言え、依頼を受けて契約関係にあるのであれば、そりゃ上告を言われたらやらなきゃならんでしょう。
依頼放置は、1か月ぐらいの業務停止命令が普通ですから、これは弁護士の名前を明らかにするのが新聞社の務めのように思えるのですが、元記事には書いてありません。

依頼人は、弁護士会に懲戒請求するのでしょうか?

弁護士懲戒処分建策センター

大津の園児死傷事故、判決延期

2020-01-16 18:43:51 | 日記
何だか訳分からないことになっています。

朝日新聞の報道です。
 大津市の滋賀県道交差点で昨年5月、右折車と直進車が衝突し、巻き添えで保育園児ら16人が死傷した事故で、大津地裁(大西直樹裁判長)は16日、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)などの罪に問われた無職新立(しんたて)文子被告(53)の判決言い渡しを延期した。次回期日は未定。
被告は昨年8~9月、出会い系サイトで知り合った男性をLINEで脅したなどとして、脅迫やストーカー規制法違反などの罪でも10月に起訴され、公判で併合して審理されていた。被告はいずれの起訴内容も認め、検察側が禁錮5年6カ月を求刑して昨年12月に結審していた。


交通事故とストーカー事件はどういう関係にあったのか、時系列でみていきます。
2019年5月8日 信号無視を行った被告が対向車と衝突し、対向車が園児と保母を死傷させました。
2019年5月17日  右折車の女起訴
2019年5月24日 直進車の女性を書類送検
2019年7月17日 右折車運転手、起訴内容認める
2019年9月30日 園児死傷事故の女逮捕=ストーカー容疑など
時事通信の報道によると
新立容疑者は、5月に大津市の交差点で起きた保育園児ら16人の死傷事故で、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)罪に問われ公判中。起訴後、保釈されていた。
 逮捕容疑は8月27日、出会い系サイトで知り合った滋賀県内の男性公務員(49)のスマートフォンにラインで「LINEのやり取り全て見せる それで終わり」などと数回送信したほか、勤務先に電話をかけて脅したなどの疑い。


全く別な事件ですよね。なんで同じ裁判で行われていたのでしょうか?何か関連性あります?訳わかりません。どういう法的根拠で一括裁判になったのでしょうか。
しかも、事前協議で裁判官と検察官と弁護士でまとめてやるかどうかを決めているはずです。にもかかわらず、判決の場になってごねることを許す事態になっています。これはどうなんですか?
もっとも、高裁に行ったら審議不十分で審議やり直しを命じられるでしょうけど、あまりにも司法関係者が杜撰な感じに思えます。

7000万円着服の56歳弁護士を除名処分

2020-01-11 13:24:19 | 日記
最高裁裁判官の件ではないですが、司法関係の低レベルな事件が起きました。

7000万円着服の56歳弁護士を除名処分 3年間資格喪失 愛知県弁護士会
 愛知県弁護士会は10日、県内に住む女性から計7000万円を着服し、弁護士の品位を損ねたとして「SIJ法律事務所」(名古屋市中区)の柳田潤一弁護士(56)を8日付で除名処分にしたと発表した。最も重い懲戒処分で、弁護士資格を3年間失う。
弁護士会によると、柳田弁護士は被害に遭った女性の親族の会社の代理人を務めており、女性は預金保全のため2011年10月、柳田弁護士の預金口座に現金7000万円を預けた。柳田弁護士は12年3月1日までに全額を引き出し、別の複数の会社に金を渡したという。15年以降、返還を求めたが応じず、女性は16年10月に着服を知った。17年10月には名古屋地裁で損害賠償訴訟を起こされたが、現在までに1280万円しか返還していないという。17年9月に懲戒請求が出されていた。
 柳田弁護士は弁護士会の調査に着服を認め、「全て他に充ててしまった」などと話しているという。16年にも依頼者から預かった現金計約7300万円を流用したなどとして、業務停止6カ月の懲戒処分を受けている。


神妙にうつむいている弁護士会の人達の写真が出ていますが、自分の事務所の職員がやらかしたように見えてしまうのには一瞬笑ってしまいました。
ちなみに横領事件として、刑事事件で有罪判決が出て刑期を終えるのは、どのくらいなのでしょう。少なくとも3年間はかかるでしょうね。
さて、一度除名になった弁護士はどうなるかというと、元いた弁護士会に復帰するには再審査が必要になります。そこで、ほとんど入会拒否にあいます。入会拒否というのは、弁護士活動ができないことを意味しておりますので、愛知県での営業は不可能になるとのことでした。
となると、よその県で申請しなければならないのですが、弁護士が少ない県だったりすると入れてしまうのかなという心配も残ります。

しかし、こういった分かりやすい刑事事件を起こしたような弁護士であれば懲戒は可能ですが、実質的に犯罪者に逃亡を加担したような、事実上の捜査妨害をするような弁護士は、懲戒の対象にならないのでしょうか。

依頼する前にチェックしましょう。
弁護士懲戒処分検索センター

当然判決:債務超過の合資会社の社員死亡、借金も引き継ぎなさい

2020-01-07 18:20:49 | 日記
平成30(受)1551  遺留分減殺請求事件
令和元年12月24日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄差戻  名古屋高等裁判所

合資会社を退社した無限責任社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を超える場合には,定款に別段の定めがあるなどの特段の事情のない限り,当該社員は,当該会社に対してその超過額を支払わなければならない

よくある相続争いのようです。権利を欲しがるのであれば、義務も負えというものですが、さていかに。

裁判所の認定は以下の通りです。
1 Aさんは合資会社の無限責任社員として経営をしていたそうです。
平成23年11月,後見開始の審判を受けたことによって本件会社を退社した。
2 本件会社は,上記の退社当時,債務超過の状態にあった。
無限責任社員は,退社により当該会社に対して金員支払債務を負うことはないと判断して,Aの本件会社に対する金員支払債務を考慮することなく被上告人の遺留分の侵害額を算定し,被上告人の請求を一部認容するとともに,上告人の相殺の抗弁を認めるなどしてその余の請求を棄却した。


何かおかしいですね。無限責任社員は、個人で責任をどこまでも負うものです。それを相殺して相続?

最高裁では
(1) 無限責任社員が合資会社を退社した場合には,退社の時における当該会社の財産の状況に従って当該社員と当該会社との間の計算がされ(会社法611条2項),その結果,当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を下回るときには,当該社員は,その持分の払戻しを受けることができる(同条1項)。
上記計算がされた結果,当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を超えるときには,定款に別段の定めがあるなどの特段の事情のない限り,当該社員は,当該会社に対してその超過額を支払わなければならないと解するのが相当である。
(2) 前記事実関係によれば,無限責任社員であるAが本件会社を退社した当時,本件会社は債務超過の状態にあったというのであるから,退社時における計算がされた結果,Aが負担すべき損失の額がAの出資の価額を超える場合には,上記特段の事情のない限り,Aは,本件会社に対してその超過額の支払債務を負うことになる。


裁判長裁判官 林 景一
裁判官 戸倉三郎
裁判官 宮崎裕子
裁判官 宇賀克也

造り酒屋か何かですかねぇ。兄ちゃんばっかりずるいとでもいうところでしょうか。無限責任社員の立法趣旨からすれば、当然の判断です。しかし、たかが170万円そこそこの金額で最高裁まで行って敗訴ですから、まったく元が取れな語ったでしょう。
それにしてもこれが何で最高裁まで争われたのでしょうか。というか、地裁でオカシイと判断されるべきで、法文解釈にすらなりえない話だと思います。
もしかして、ロースクール出の人ですかね。