平成29(あ)242 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
令和2年1月27日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 東京高等裁判所
1 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)2条3項にいう「児童ポルノ」の意義
2 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)7条5項の児童ポルノ製造罪の成立と児童ポルノに描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることの要否
日経新聞の報道です
女児写真からわいせつCG 最高裁、児童ポルノと判断
写真を参考にCG(コンピューターグラフィックス)で描いた女児の裸の画像は児童ポルノにあたるのか――。こうした点が争われた刑事裁判の上告審で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は29日までに、実在する児童の写真を素材にしたわいせつなCGは児童ポルノに該当するとの判断を示した。
写真を参考にして女児の裸のCGを作成、販売したとして児童ポルノ禁止法違反の罪に問われたのは、グラフィックデザイナーの高橋証被告(59)。CGが児童ポルノとして摘発された初のケースだった。
同法は実在する18歳未満の児童が描かれた画像などを規制対象としており、裁判ではCGが「実在の女児」を描いたものといえるかが主な争点となった。
2017年1月の二審・東京高裁判決は、起訴された34点のCGのうち一部を無罪とした一方、3点については実在する女児の裸の写真を素材にして作成したものだと認定。この3点は児童ポルノにあたるとして、罰金30万円を言い渡した。第1小法廷も27日付の決定でこの判断を支持し、被告の上告を棄却した。
3点のCGの素材となった写真は1980年代に出版された写真集に掲載されたもので、女児はCG作成時点では既に「児童」ではなくなっていた。弁護側は、描かれた人物が作成時点で18歳未満でなければ児童ポルノに該当しないとも主張したが、同小法廷は描かれた人物がその時点で18歳未満である必要はないとして退けた。
個人的には気持ち悪いとしか言いようがありません。とは言え、違法かどうかの判断ですので、個人的感想はこれ以上はやめておきます。
最高裁はいきなり、法令の解釈について述べます。
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条1項は,「児童」とは,18歳に満たない者をいうとしているところ,同条3項にいう「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,同項各号のいずれかに掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい,実在しない児童の姿態を描写したものは含まないものと解すべきである。
事実認定です。
a 被告人は,昭和57年から同59年にかけて初版本が出版された写真集に掲載された写真3点の画像データ(以下,上記写真3点又はそれらの画像データを「本件各写真」という。)を素材とし,画像編集ソフトを用いて,コンピュータグラフィックスである画像データ3点(以下「本件各CG」という。)を作成した。
b 本件各写真は,実在する18歳未満の者が衣服を全く身に着けていない状態で寝転ぶなどしている姿態を撮影したものであり,本件各CGは,本件各写真に表現された児童の姿態を描写したものであったというのである。
被告人が本件各CGを含むファイルを記憶,蔵置させたハードディスクが児童ポルノであり,本件行為が児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たるとした第1審判決を是認した原判断は正当である。
ちょっと待ってください。2019-11-17 の記事、ロリコン画像データを印刷したら児童ポルノ法違反と似てますね。このときは、電磁媒体も駄目よという結論でした。このときは、実写だったので話は簡単でした。今回は当時18歳未満であること、さらにCGで加工しているものも含まれるかという論点になりませんか?
結論です。
同項の児童ポルノ製造罪が成立するためには,同条4項に掲げる行為の目的で,同法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した物を製造すれば足り,当該物に描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることを要しないというべきである。
全員一致で有罪でした。
第一小法廷
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
裁判官山口厚の補足意見です。
児童ポルノ法2条3項に定める児童ポルノであるためには,視覚により認識することができる方法で描写されたものが,実在する児童の同項各号所定の姿態であれば足りる。児童ポルノ法7条が規制する児童ポルノの製造行為は,児童の心身に有害な影響を与えるものとして処罰の対象とされているものであるが,実在する児童の性的な姿態を記録化すること自体が性的搾取であるのみならず,このように記録化された性的な姿態が他人の目にさらされることによって,更なる性的搾取が生じ得ることとなる。児童ポルノ製造罪は,このような性的搾取の対象とされないという利益の侵害を処罰の直接の根拠としており,上記利益は,描写された児童本人が児童である間にだけ認められるものではなく,本人がたとえ18歳になったとしても,引き続き,同等の保護に値するものである。
ようわかりません。これって補足意見でわざわざ言うことですか?ほかの裁判官と意見が違います?とりあえず一言言っておかなければのレベルにしか思えませんが。元画像が作られたのが18歳未満なので、幼児性愛者の興奮をさせないという立法趣旨から、これは違法ですよというのは分ります。
でもCG加工を施したものの違法性が全く論じられてないのが気になります。これが大幅に加工されたCGだったらどうなのでしょうか?程度の問題ではなく、元データの問題になるのでしょうか?極端な話、肉筆で写真のような絵(超リアリズム派)を描くこともあり得ます。この場合、実際のモデルがいるかどうかが論点になるのでしょうか?なんか釈然としませんね。
令和2年1月27日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 東京高等裁判所
1 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)2条3項にいう「児童ポルノ」の意義
2 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)7条5項の児童ポルノ製造罪の成立と児童ポルノに描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることの要否
日経新聞の報道です
女児写真からわいせつCG 最高裁、児童ポルノと判断
写真を参考にCG(コンピューターグラフィックス)で描いた女児の裸の画像は児童ポルノにあたるのか――。こうした点が争われた刑事裁判の上告審で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は29日までに、実在する児童の写真を素材にしたわいせつなCGは児童ポルノに該当するとの判断を示した。
写真を参考にして女児の裸のCGを作成、販売したとして児童ポルノ禁止法違反の罪に問われたのは、グラフィックデザイナーの高橋証被告(59)。CGが児童ポルノとして摘発された初のケースだった。
同法は実在する18歳未満の児童が描かれた画像などを規制対象としており、裁判ではCGが「実在の女児」を描いたものといえるかが主な争点となった。
2017年1月の二審・東京高裁判決は、起訴された34点のCGのうち一部を無罪とした一方、3点については実在する女児の裸の写真を素材にして作成したものだと認定。この3点は児童ポルノにあたるとして、罰金30万円を言い渡した。第1小法廷も27日付の決定でこの判断を支持し、被告の上告を棄却した。
3点のCGの素材となった写真は1980年代に出版された写真集に掲載されたもので、女児はCG作成時点では既に「児童」ではなくなっていた。弁護側は、描かれた人物が作成時点で18歳未満でなければ児童ポルノに該当しないとも主張したが、同小法廷は描かれた人物がその時点で18歳未満である必要はないとして退けた。
個人的には気持ち悪いとしか言いようがありません。とは言え、違法かどうかの判断ですので、個人的感想はこれ以上はやめておきます。
最高裁はいきなり、法令の解釈について述べます。
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条1項は,「児童」とは,18歳に満たない者をいうとしているところ,同条3項にいう「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,同項各号のいずれかに掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい,実在しない児童の姿態を描写したものは含まないものと解すべきである。
事実認定です。
a 被告人は,昭和57年から同59年にかけて初版本が出版された写真集に掲載された写真3点の画像データ(以下,上記写真3点又はそれらの画像データを「本件各写真」という。)を素材とし,画像編集ソフトを用いて,コンピュータグラフィックスである画像データ3点(以下「本件各CG」という。)を作成した。
b 本件各写真は,実在する18歳未満の者が衣服を全く身に着けていない状態で寝転ぶなどしている姿態を撮影したものであり,本件各CGは,本件各写真に表現された児童の姿態を描写したものであったというのである。
被告人が本件各CGを含むファイルを記憶,蔵置させたハードディスクが児童ポルノであり,本件行為が児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たるとした第1審判決を是認した原判断は正当である。
ちょっと待ってください。2019-11-17 の記事、ロリコン画像データを印刷したら児童ポルノ法違反と似てますね。このときは、電磁媒体も駄目よという結論でした。このときは、実写だったので話は簡単でした。今回は当時18歳未満であること、さらにCGで加工しているものも含まれるかという論点になりませんか?
結論です。
同項の児童ポルノ製造罪が成立するためには,同条4項に掲げる行為の目的で,同法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した物を製造すれば足り,当該物に描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることを要しないというべきである。
全員一致で有罪でした。
第一小法廷
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
裁判官山口厚の補足意見です。
児童ポルノ法2条3項に定める児童ポルノであるためには,視覚により認識することができる方法で描写されたものが,実在する児童の同項各号所定の姿態であれば足りる。児童ポルノ法7条が規制する児童ポルノの製造行為は,児童の心身に有害な影響を与えるものとして処罰の対象とされているものであるが,実在する児童の性的な姿態を記録化すること自体が性的搾取であるのみならず,このように記録化された性的な姿態が他人の目にさらされることによって,更なる性的搾取が生じ得ることとなる。児童ポルノ製造罪は,このような性的搾取の対象とされないという利益の侵害を処罰の直接の根拠としており,上記利益は,描写された児童本人が児童である間にだけ認められるものではなく,本人がたとえ18歳になったとしても,引き続き,同等の保護に値するものである。
ようわかりません。これって補足意見でわざわざ言うことですか?ほかの裁判官と意見が違います?とりあえず一言言っておかなければのレベルにしか思えませんが。元画像が作られたのが18歳未満なので、幼児性愛者の興奮をさせないという立法趣旨から、これは違法ですよというのは分ります。
でもCG加工を施したものの違法性が全く論じられてないのが気になります。これが大幅に加工されたCGだったらどうなのでしょうか?程度の問題ではなく、元データの問題になるのでしょうか?極端な話、肉筆で写真のような絵(超リアリズム派)を描くこともあり得ます。この場合、実際のモデルがいるかどうかが論点になるのでしょうか?なんか釈然としませんね。