最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

弁護士会の懲戒に限界?「局部切断」被害者への懲戒請求に対して事実上の「門前払い」

2017-05-31 08:04:08 | 日記
弁護士が浮気をして事務員に手を出して、事務員の夫がそれに憤慨し、弁護士の性器を切り取った事件がありました。さくらフィナンシャルニュースによると、W田正弁護士への懲戒請求に対して事実上の「門前払い」決定で棄却になったようです。
事件の詳細は、週刊現代のHPに掲載されています。
妻側(元事務員)の嘘が原因だったとはいえ、倫理上かなり問題がある事をこの弁護士はしていたのです。その棄却理由の詳細は掲載されていないので分かりませんが、この決定に疑問を持たざるを得ません。
得てして、身内の不祥事には弱いものですが、この件もその様にしか思えません。
日弁連の職務基本規程では、
(名誉と信用)
第六条
弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高めるように努める

とあります。

弁護士法にも懲戒に関する章があります。
第一章 弁護士の使命及び職務
(弁護士の使命)
第一条  弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする


泣けてきますね。
局部を切られた上に実名報道を受けて社会的制裁を受けているとはいえ、元は自らの不法行為により起きた事件です。これらの規程にも抵触しないと判断したのです。果たしてこの判断は妥当なのでしょうか?具体的な規定がないから、罪刑法定主義の観点から無罪とでもいうのでしょうか?
日弁連は最近政治的な発言ばかりしていますが、本来はこのような事件を起こさせない、起こした場合の懲戒をしっかりやる事が目的のはずです。少なくとも一般の感覚からすれば、かなりオカシイ判断です。

窃盗冤罪事件:そもそも金があったとする証拠を証言のみでいいのか

2017-05-26 15:00:53 | 日記
平成27(あ)63  窃盗被告事件
平成29年3月10日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  広島高等裁判所

朝日新聞の報道では、こんな感じです。窃盗罪問われた元中国放送アナに逆転無罪判決 最高裁

 広島市内の銀行内に置き忘れてあった封筒から現金約6万7千円を抜き取ったとして、窃盗罪に問われた元中国放送アナウンサー煙石博(えんせきひろし)さん(70)の上告審判決で、最高裁第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)は10日、懲役1年執行猶予3年とした一、二審判決を破棄し、無罪を言い渡した。
 煙石さんは2012年、銀行で女性が記帳台に置き忘れた封筒から現金を盗んだとして逮捕、起訴された。煙石さんは一貫して無罪を主張。一、二審判決は、封筒に現金があったという女性の証言と、防犯カメラの映像で記帳台に近づいたのは煙石さんだけだったことから、有罪とした。
 第二小法廷は、一、二審判決について「封筒内に現金があったことを前提とし、窃盗をしていない可能性を強く示す客観的事情を軽視した」と批判。防犯カメラの映像では煙石さんが封筒を手に取った場面が確認できないことや、女性の証言の信用性が高いとは言えないことなどから、「一、二審判決は不合理で、犯罪の証明が十分ではない」と結論づけた。
 判決後に東京都内で会見した煙石さんは、笑顔を見せつつも「本当に突然降りかかってきた。私だけの問題ではない。悔しい思いがいっぱいですが、普通の生活に早く戻れれば」と話した。
 最高検は「主張が認められなかったのは遺憾だが、最高裁の判断なので真摯(しんし)に受け止めたい」との談話を出した。
 最高裁によると、07年以降で、一、二審とも有罪とした判決を最高裁が破棄し、差し戻さずに無罪としたのは煙石さんで10人目という。(千葉雄高、久保田侑暉)

煙石博さんの無罪を勝ちとる会


これは事実認定のみが争われた事件のようです。
防犯カメラにすべて写っていたのですね。なのになぜ証言が決め手となったのか。このブログの趣旨に反しますが、検察官しっかりしてよという感じです。

まず状況からいきます。
1 客の女性Aが銀行内の記帳台の上に置いていた現金6万6600円及び振込用紙2枚在中の封筒1通 を窃取した。
2 (1)本件前日の夜,手持ちの封筒の中に振込用紙2枚とともに現金6万6600円を入れたとするB(Aの母 親)の証言,及び,本件当日の朝,出掛ける前に,本件封筒の中に現金が入ってい ることを確認したとするAの証言の各信用性を肯定して,Aが本件封筒を記帳台上 に置き忘れた時点でその中に現金6万6600円が在中していたとの事実を認定。
3 (2)本件支店に設置された防犯カメラの映像によれば,Aが本件封筒を置き忘 - 2 - れてから,本件支店の行員が記帳台上に置き忘れられた本件封筒(現金の在中して いないもの)を発見するまでの間に,本件封筒から現金を抜き取ることが可能であ ったのは,Aと同じ記帳台を利用した被告人しかいない。

検察はこれで起訴したというだけで無茶苦茶です。お金が入っていると母親が言った。盗んだ現場が撮影されていない。はぁ?ですね。
裁判所の認定です。
1 毎秒1コマとはいえ顧客の動きは全て撮影されている。
2 Aは確かに置き忘れている。
3 Aは店内で知り合いと談笑している。
4 被告人の退店後,本件支店の行員が,本件記帳台上に置かれた本件封筒を 発見したが,その時点で,本件封筒内には,三つ折りにされた振込用紙2枚のみが 在中しており,現金は在中していなかった。


盗んだ現場が撮影されているわけじゃないんですよ。
裁判所は以下のように判断しました。

本件支店内の被告人の様子は,防犯カメラによってほとんど漏れなく記録されている。被告人が1回目に本件記帳台を離れる際,本件記帳台の上面から何かを 取り上げたように見えるものの,それが記入済みの払戻請求書や預金通帳ではな く,本件封筒であるとは確認できない。
本件封筒には,三つ折りの振込用紙2枚が在中していたところ,これを残し て現金(Bの証言を前提とすれば紙幣12枚と硬貨2枚)のみを抜き取るには,複 数の動作が必要であり,相応の時間を要すると考えられる。本件支店内に設置され た防犯カメラは,毎秒1コマを記録する目の粗いものであり,かつ,被告人がAT M機の前に立っている時間帯については,背後からの映像しかないものの,被告人 がそのような動作をしているように見える場面は存在しない。
本件封筒に入れたとす る現金の出所については,個人で自由に使えるお金の中から出したと述べるのみ で,それ以上に具体的な証言をしておらず,何らの裏付け立証もされていない。
結論
A及びBの各証言は高い信用性を有す るとまではいえないのであって,そのような証拠に依拠して,Aが本件記帳台上に 本件封筒を置き忘れた時点で本件封筒の中に現金6万6600円が在中していたと の事実を認定し,これを動かし難い前提として,被告人以外には現金を抜き取る機 会のあった者がいなかったことを理由に被告人を有罪と判断した第1審判決及びこ れを是認した原判決の判断は,被告人が本件封筒を窃取したとの認定を妨げる方向 に強く働く客観的事情を無視あるいは不当に軽視した点において,論理則,経験則 等に照らして不合理なものといわざるを得ない。


なぜ一審で有罪が出たのか不思議なくらいです。

検察官野口元郎 公判出席  トンデモ

今回の裁判官 第二小法廷判決
裁判長裁判官 鬼丸かおる
裁判官 小貫芳信
裁判官 山本庸幸
裁判官 菅野博之

裁判員候補3人に1人欠席

2017-05-21 07:00:24 | 日記
時事通信の報道ではこんな感じです。

裁判員候補3人に1人欠席=審理日数増、雇用情勢影響-制度開始から8年・最高裁
 21日に制度開始から8年を迎えた裁判員制度で、選任手続きに呼び出された候補者の出席率は昨年、64.8%に低下し、3人に1人が欠席する状況となっていることが最高裁のまとめで分かった。「審理予定日数や非正規雇用者の増加などが影響している可能性が高い」とする民間機関の分析を受け、最高裁は対策を検討する。
 裁判員候補者は選挙人名簿から無作為で抽出され、さらに対象事件ごとにくじで選ばれた人が選任手続きに呼び出される。「70歳以上」や「重要な仕事」など正当な理由があれば辞退できる。
 最高裁によると、正当な理由を告げて手続きの当日までに辞退した候補者は、2009年の制度開始時は53.1%だったが、16年は64.7%に増加した。選任手続きへの出席率は83.9%から64.8%に落ち込んだ。
 こうした事態を受け、最高裁は出席率低下などの原因分析を初めて民間のコンサルタント会社に依頼。5000人を対象に今年1~2月に行ったアンケート調査と各種統計データを基に検証した。
 その結果、09年に3.4日だった平均審理予定日数は16年には6.1日に増えており、長引けば辞退率などが高くなる傾向が判明。アンケートで正規雇用者よりも参加意欲が低調だった非正規雇用者の増加の影響も「否定できない」とされた。呼び出し状を再送するなどの対策を取っている地裁では、出席率が高い傾向も明らかになった。
(2017/05/20-17:15)

段々こうなってきましたか。
しかし、最高裁は反省しませんね。そもそも裁判員制度の趣旨はなんだったか、すっかり抜けています。
最高裁の感覚がおかしいから、一般人参加によって裁判を行うというものだったはず。ところが、裁判官の職業病というべきか、思考停止になって相応刑で済ませようとします。
例えば、永山基準、あれをいつまで後生大事に取っておくのでしょうか?一般人はあれがおかしいと判断したはずですが、最高裁で見事にひっくり返しました。
これでは、仕事を休んでまで行こうとは思いません。
あなた方最高裁がおかしいのです。制度趣旨を理解していない最高裁裁判官が問題なのです。

審議やり直し、残業手当なのか夜間割増賃金なのか

2017-05-20 07:01:22 | 日記
平成27年(受)第1998号 賃金請求事件
平成29年2月28日 第三小法廷判決


珍しくこの事件にかかわった弁護士がブログで伝えています。
最高裁で弁論~残業代を控除する仕組み(脱法行為)~国際自動車事件



これだけでは良く分からないのでいくつか探してみましたが、弁護士事務所のサイトでは例えばこれのように、企業側に立った見解は見つかりませんでした。

kmタクシー 国際自動車の残業代問題、最高裁→高裁へ差し戻し 「引き分け、再戦だ」と運転手側

kmブランドで知られるタクシー業界大手「国際自動車」(東京)の運転手14人が、残業代など1900万円の支払いをめぐって会社側と争っている裁判。最高裁判所第三小法廷(大谷剛彦裁判長)は2月28日、1審2審判決を破棄し、東京高等裁判所に審理を差し戻した。【BuzzFeed Japan / 渡辺一樹】

1審・2審は運転手側の勝訴で、判決は1人あたり約100万円を支払うよう会社側に命じていた。その考え方は、次のようなものだった。
国際自動車の賃金規則は、時間外手当等を形式上支給している。しかし、歩合給の計算をするときに、時間外手当等と同額だけ歩合給を減額している。これでは、時間外手当が支払われないのと同じで、こうした契約は時間外労働の割増賃金を定めた労働基準法37条の趣旨に反し、公序良俗違反(民法90条)で無効だ。→ その分の残業代支払いを命じる。
ところが最高裁は、このルールについて、当然に公序良俗違反とまではいえないと判断。労基法37条上の問題がある可能性はあるが、議論が十分でないので、審理をやり直すべきだとした。
「勝訴でも敗訴でもない」と運転手側
判決後、運転手側の弁護団は厚生労働省で記者会見した。指宿昭一弁護士は今回の判決について「勝訴でも敗訴でもない、引き分け、ドロー」と評価。次のように語った。
「労基法37条は極めて重要なルールで、これをすり抜けるような賃金規則が認められるわけがない。最高裁のメッセージは、公序良俗違反ということで大なたを振るうのではなく、労基法37条に基づいてもうちょっと緻密な判断をしてくれという事だと思います。我々は最高裁から、新たな宿題を出されたと思っています」
弁護団によると、国際自動車はすでに、今回問題となっている賃金ルールを変更しているという。しかし、これと似たようなルールを採用しているタクシー・トラック会社は少なくないと、指宿弁護士は指摘する。
国際自動車の残業代問題については、同様の裁判が他にも3件起きていて、今回の最高裁判決はそれらにも影響すると見られる。
「最高裁は訴えを棄却したわけではない。これは、もう一度大きな戦いの場が与えられたということだ」と、指宿弁護士は語っていた。

では、裁判所の事実認定を見ていきましょう。
上告人の就業規則の一部であるタクシー乗務員賃金規則(以下「本件賃金 規則」という。)は,本採用されているタクシー乗務員の賃金につき,おおむね次 のとおり定めていた。
ア 基本給として,1乗務(15時間30分)当たり1万2500円を支給する。
イ 服務手当(タクシーに乗務せずに勤務した場合の賃金)として,タクシーに 乗務しないことにつき従業員に責任のない場合は1時間当たり1200円,責任の ある場合は1時間当たり1000円を支給する。
ウ(ア) 割増金及び歩合給を求めるための対象額(以下「対象額A」という。) を,次のとおり算出する。 対象額A=(所定内揚高-所定内基礎控除額)×0.53+(公出揚高-公出基 礎控除額)×0.62
 (イ) 所定内基礎控除額は,所定就労日の1乗務の控除額(平日は原則として2 万9000円,土曜日は1万6300円,日曜祝日は1万3200円)に,平日, 土曜日及び日曜祝日の各乗務日数を乗じた額とする。また,公出基礎控除額は,公 出(所定乗務日数を超える出勤)の1乗務の控除額(平日は原則として2万410 0円,土曜日は1万1300円,日曜祝日は8200円)を用いて,所定内基礎控 除額と同様に算出した額とする。

エ 深夜手当は,次の①と②の合計額とする。
 ① {(基本給+服務手当)÷(出勤日数×15.5時間)}×0.25×深夜労 働時間
 ②(対象額A÷総労働時間)×0.25×深夜労働時間
オ 残業手当は,次の①と②の合計額とする。
 ① {(基本給+服務手当)÷(出勤日数×15.5時間)}×1.25×残業時 間
 ②(対象額A÷総労働時間)×0.25×残業時間
カ(ア) 公出手当のうち,法定外休日(労働基準法において使用者が労働者に付 与することが義務付けられている休日以外の労働契約に定められた休日)労働分 は,次の①と②の合計額とする。  ① {(基本給+服務手当)÷(出勤日数×15.5時間)}×0.25×休日労 働時間
 ②(対象額A÷総労働時間)×0.25×休日労働時間
(イ) 公出手当のうち,法定休日労働分は,次の①と②の合計額とする。 ① {(基本給+服務手当)÷(出勤日数×15.5時間)}×0.35×休日労 働時間 ②(対象額A÷総労働時間)×0.35×休日労働時間 キ 歩合給(1)は,次のとおりとする(以下,この定めを「本件規定」とい う。)。なお,本件賃金規則には,従前支給していた賞与に代えて支払う賃金とし て,歩合給(2)が定められている。 対象額A-{割増金(深夜手当,残業手当及び公出手当の合計)+交通費}
ク なお,本件賃金規則は平成22年4月に改定されたものであるところ,同改 定前の本件賃金規則においては,所定内基礎控除額の基準となる1乗務の控除額 が,平日は原則として3万5000円,土曜日は2万2200円,日曜祝日は1万 8800円とされるとともに,公出基礎控除額の基準となる1乗務の控除額が,平 日は原則として2万9200円,土曜日は1万6400円,日曜祝日は1万300 0円とされていた。また,上記エからカまでの各計算式において「基本給+服務手 当」とされている部分がいずれも「基本給+安全手当+服務手当」とされていたほ か,賞与が支給されていたために上記キの歩合給(2)に相当する定めはなく,「歩 合給」として,上記キの歩合給(1)と同様の定めがあった。


これについて、労働者側は

本件規定は,歩合給の計算に当たり,対象額Aから割増金 及び交通費に相当する額を控除するものとしている。これによれば,割増金と交通 費の合計額が対象額Aを上回る場合を別にして,揚高が同額である限り,時間外労 働等をしていた場合もしていなかった場合も乗務員に支払われる賃金は同額になる から,本件規定は,労働基準法37条の規制を潜脱するものである。同条の規定は 強行法規であり,これに反する合意は当然に無効となる上,同条の規定に違反した 者には刑事罰が科せられることからすれば,本件規定のうち,歩合給の計算に当た り対象額Aから割増金に相当する額を控除している部分は,同条の趣旨に反し,ひ いては公序良俗に反するものとして無効である。

確かに運転手側の主張もわかります。夜勤としての支払いか、残業としての支払いか、ですが、安い方になるように設定してあります。これでは、夜勤する場合の割増賃金制度の趣旨を反する労働協約なので無効だとする訴えです。

原審では、法定外 休日労働に係る公出手当が含まれているので問題はないとしましたが、最高裁では反論が出ました。
(1)ア 労働基準法37条は,時間外,休日及び深夜の割増賃金の支払義務を定 めているところ,割増賃金の算定方法は,同条並びに政令及び厚生労働省令に具体的に定められてい る。これを下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまり、この通り支払えとしているわけではない。労働基準法37条等に定めら れた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討すべきである。
だから、当該定めが当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し, 無効であると解することはできないというべきである。
イ 通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別 することができるか否か,また,そのような判別をすることができる場合に,本件 賃金規則に基づいて割増賃金として支払われた金額が労働基準法37条等に定めら れた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かについて審理判断するこ となく,被上告人らの未払賃金の請求を一部認容すべきとしたものである。そうす ると,原審の判断には,割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った結果,上記の点 について審理を尽くさなかった違法があるといわざるを得ない。
(2) なお,原審は,本件規定のうち法内時間外労働や法定外休日労働に係る部 分を含む割増金の控除部分全体が無効となるとしており,本件賃金規則における賃 金の定めについて検討するに当たり,時間外労働等のうち法内時間外労働や法定外 休日労働に当たる部分とそれ以外の部分とを区別していない。
結論は、原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。 そして,被上告人らに支払われるべき未払賃金の有無及び額等について更に審理を 尽くさせるため,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。


今回の裁判官 第三小法廷
裁判長裁判官 大谷剛彦
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大橋正春
裁判官 木内道祥
裁判官 山崎敏充

何とも歯切れが悪い判決ですね。確かに、原告が訴えている公序良俗というには無理があるように思います。それはOKですが、しかし議論を尽くしていないというにはどうなんでしょうか。最高裁で白黒しっかりつけることは不可能なんでしょうかね。原審の判決文を読めないので何とも言えませんが、言葉尻をとらえて書いているような感じもしなくもないような・・・

書評:黒い巨塔 最高裁判所

2017-05-16 12:31:44 | 日記
1年ほど前に出版された本ですが、ようやく読めました。
プロの法律家も結構興味があるようで、福岡弁護士会のHPでも紹介がありました。

第2回城山三郎賞受賞作家で、元裁判官が書いたものです。
小説としての出来はともかく、おそらく裁判所の中はこんなものなのかもしれません。佐藤優氏の著作を読むと、外務省でも似たような感じのようです。どこの省庁でも似たようなのかもしれませんが、法務省とくに裁判所でこのような状況は決して望ましいことではありません。
権力闘争の挙句に、トンデモな裁判官が最高裁の判事に就任という悪夢は見たくありません。実際にはあるのかもしれませんが。
こういう状態を避けるためにも、なぜこの人が最高裁判事のふさわしいかを公聴会にはかる制度が是非とも必要な事と思います。


黒い巨塔


商標登録は除斥期間後に抗弁として無効の抗弁を主張でき無いが、権利の乱用で対抗できる

2017-05-12 16:49:19 | 日記
平成27年(受)第1876号 不正競争防止法による差止等請求本訴,商標権侵害行為差止等請求
反訴事件 平成29年2月28日 第三小法廷判決


商標法第4条第1項第10号違反を理由とする登録商標の無効審判請求の除斥期間(5年)を経過した場合であっても、自己の商品等表示として周知の商標との関係では、同号に該当することを理由として、商標権違反の請求に対して権利濫用の抗弁を主張可能であるとの判決を下しました。商標法第47条の除斥期間経過後であっても、商標法第39条が準用する特許法第104条の3第1項の抗弁あるいは権利濫用の抗弁を主張することができるかについては、かねてから議論のあるところでしたが、この度の最高裁判決により、前者は否定されるものの、後者の主張が可能であることが明示されました。

裁判所の事実関係を見ましょう
1 ある会社甲が、平成6年11月1日,A社との間で日本国内における独占的 な販売代理店契約を締結し,以後,被上告人使用商標を使用して本件湯沸器の販売 を行っている。

2 別の会社乙が平成14年頃,知人を介して本件湯沸 器の存在を知り,平成15年秋頃から被上告人との間で販売代理店契約の締結の交 渉を開始した。そして,上告人設立後の同年12月20日,上告人と被上告人との 間で販売代理店契約が締結された。
3 甲社と乙社との間に紛争が生じ,平成18年6月に提起され た上告人の被上告人に対する損害賠償請求訴訟において,平成19年5月25日, 上記アの販売代理店契約が同日現在において存在しないことの確認等を内容とする 訴訟上の和解が成立した。
4 乙社は、甲社に対して3の訴訟提起に先立つ平成17年1月25日,「エマ ックス」の文字を標準文字で横書きして成る商標につき,指定商品を商標法施行令 別表第11類「家庭用電気瞬間湯沸器,その他の家庭用電熱用品類」とする商標登 録出願をし,同出願につき,同年9月16日,商標権の設定登録がされた(登録第 4895484号。以下,この商標を「平成17年登録商標」という。)。
5 乙社は、平成22年3月23日,別紙記載の商標につき,指定商品を上記 アと同じくする商標登録出願をし,同出願につき,同年11月5日,商標権の設定 登録がされた(登録第5366316号。以下,この商標と平成17年登録商標を 併せて「本件各登録商標」といい,本件各登録商標に係る各商標権を「本件各商標 権」という。)。

何だか骨肉の争いになったようですね。アメリカのA社が持っているブランドを乙社が日本で独占的に使用できる権利を締結して、当時は仲間だった乙にも売らせてやるよという契約をしたようです。
ところが、何らかの問題があってそのブランドを使わせない事態になったようで、結局和解しましたが、腹の虫がおさまらない乙社は似たような商標を登録しました。

6 平成21年7月,甲社の乙社に対する不正競争防止法に基づく差止 等請求訴訟が提起され,その控訴審において,平成23年7月8日,上告人が「エ マックス」という商品名を使用しないことを誓約することなどを内容とする訴訟上 の和解が成立した。
しかし,乙社は,その後も,甲社の使用商標と同一の商標を使用して本件湯 沸器の販売を継続している。


これに対して甲社は、そっくりなものを出されたのではかなわない。不正競争防止法違反だと訴え、結局和解しましたが、乙社はまだ販売を続けたのです。

これについて最高裁は
(1) 不正競争防止法2条1項1号

甲社はこれまで日本全国で展示販売を行い、また業界新聞にもその商標を使ってきた事実があるが、それほど多額とは言えないとしました。

上告人代表者が知人を介して本件湯沸器の存在を知り被 上告人との間で販売代理店契約の締結の交渉を開始したことを考慮したとしても, これらの事情から直ちに,被上告人使用商標が日本国内の広範囲にわたって取引者 等の間に知られるようになったということはできない。
したがって,被上告人による本件湯沸器の具体的な販売状況等について十分に審 理することなく,原審摘示の事情のみをもって直ちに,被上告人使用商標が不正競 争防止法2条1項1号にいう「需要者の間に広く認識されている」商標に当たると して,上告人が被上告人使用商標と同一の商標を使用する行為につき同号該当性を 認めた原審の判断には,法令の適用を誤った違法があるというべきである。


(2) 商標法4条1項10号

平成17年登録商標については,商標 権の設定登録の日から,被上告人が本件訴訟において同号該当性の主張をした前記 2(5)の弁論準備手続期日までに,同号該当を理由とする商標登録の無効審判が請 求されないまま5年を経過している。
商標登録の無効審判が請求されることなく除斥期間が経過し たときは,商標登録がされたことにより生じた既存の継続的な状態を保護するため に,商標登録の有効性を争い得ないものとしたことにあると解される(最高裁平成 15年(行ヒ)第353号同17年7月11日第二小法廷判決・裁判集民事217 号317頁参照)。


権利の上に眠るもの、これを保護せずの原則ですね。


商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求 されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後であっても,当該商標登 録が不正競争の目的で受けたものであるか否かにかかわらず,商標権侵害訴訟の相 手方は,その登録商標が自己の業務に係る商品等を表示するものとして当該商標登 録の出願時において需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標 であるために同号に該当することを理由として,自己に対する商標権の行使が権利 の濫用に当たることを抗弁として主張することが許されると解するのが相当である。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

裁判官山崎敏充の補足意見
権利の濫用の有無は,当該事案に表れた諸般の事情を総合的に考慮して判断され るべきものであって,このことは,商標権の行使について権利の濫用の有無が争わ れる場合であっても異なるものではない。もっとも,商標権は,発明や著作などの 創作行為がなくても取得できる権利であることなどから,その行使が権利の濫用に 当たるとされた事例はこれまでに少なからずみられるところであり,こうした事例 の中から,権利の濫用と判断される場合をある程度類型化して捉えることは可能で あろう。法廷意見において,商標法4条1項10号に違反して商標登録がされた場 合に,その登録商標と同一又は類似の商標につき自己の業務に係る商品等を表示す るものとしての同号の周知性を有している者に対して商標権を行使することにつ き,特段の事情がない限り権利の濫用に当たるとされているのも,権利の濫用と判 断される場合の一つの類型化された事例を示すものとして位置付けることができよ う。・・・中略・・・その2度目の訴訟では,上告人の商標使用行為が 不正競争防止法2条1項1号に該当する旨の第1審判決を経て,控訴審において, 上告人が「エマックス」という商品名を使用しないことを誓約する旨の訴訟上の和 解が成立している。このような上告人と被上告人との関係や過去における訴訟の経 緯等の事情は,上告人による商標権の行使が権利の濫用に当たるか否かを判断する について有意の関連を有するものであり,

そうですよね。和解しているのにまた何度も蒸し返して嫌がらせと思えるような販売を行っているので、あながち権利の乱用だと言い切るのはどうかと思います。


今回の裁判官 第三小法廷
裁判長裁判官 大橋正春
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大谷剛彦
裁判官 木内道祥
裁判官 山崎敏充  すばらしい

商標権が争われた件で、5年も放置したのだからそれは暗に認めたのと同じだよね。それを今更言い出すのは権利の乱用とするのはどうなのかと。4年ならどうなのか、時効制度がないにもかかわらずこの論拠に行ってしまうのは若干乱暴な気がします。
しかし、まあよくここまで大暴れしたもんだと思います。

市指示で作った私道は相続税の減額措置の対象になる

2017-05-05 15:44:39 | 日記
平成28年(行ヒ)第169号 相続税更正及び加算税賦課決定取消請求事件
平成29年2月28日 第三小法廷判決

TKCのローライブラリーによると、次のように解説しています。

共同相続人である上告人らが、相続財産である土地の一部につき、財産評価基本通達の24に定める私道供用宅地として相続税の申告をしたところ、相模原税務署長から、これを貸家建付地として評価すべきであるとしてそれぞれ更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けたため,被上告人(国)を相手に、本件各処分(更正処分については申告額を超える部分)の取消しを求めた上告審の事案において、本件各歩道状空地の相続税に係る財産の評価につき、建築基準法等の法令による制約がある土地でないことや、所有者が市の指導を受け入れつつ開発行為を行うことが適切であると考えて選択した結果として設置された私道であることのみを理由として、具体的に検討することなく、減額をする必要がないとした原審の判断には、相続税法22条の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決を破棄し、本件各歩道状空地につき、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。

難しい事書いてありますね。
1 相続人が、相続した土地の一部を財産評価基本通達の24に定める私道供用宅地として申告しました。
是によれば、評価額の30%に下げられることになります。

2 ところが、相模原税務署長から,これを貸家建付地として評価すべきであるとしてそれぞれ更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下,これらを併せて「本件各処分」という。)を受けました。
他人に貸しているのだから、それはダメよという事のようです。

3 相続人たちは、本件相模原土地及び本件大和土地並びに本件相模原共同住宅3棟及び本件大和共同住宅8棟を取得しました。
4 相模原土地には,インターロッキング舗装が施された幅員2mの歩道状空地(以下「本件相模原歩道状空地」という。)が存在する。しかも、被相続人が平成14年11月に相模原市長から都市計画法所定の開発行為の許可を受けて本件相模原共同住宅を建築した際に,相模原市開発行為等指導要綱を踏まえた市の指導によって,市道に接する形で整備しました。
5 同様に大和土地には,インターロッキング舗装が施された幅員2mの歩道状空地(以下「本件大和歩道状空地」という。)が存在する。本件大和歩道状空地は,被相続人が平成14年11月及び同15年6月に大和市長から都市計画法所定の開発行為の許可を受けて本件大和共同住宅を建築した際に,大和市の「都市計画法施行令第25条第2号ただし書の運用基準」を踏まえた市の指導によって,市道に接する形で整備された。
6 外観上,車道脇の歩道として本件各共同住宅の居住者等以外の第三者も利用することが可能な状態となっている。なお,本件各歩道状空地は,いずれも遅くとも平成25年4月以降,近隣の小学校の通学路として指定され,児童らが通学に利用している。

こうなれば当然私有地でありながら、公共性の高い土地、まさに道路と言ってよい状態ですね。

7 ところが、本件各歩道状空地につき,いずれも私道供用宅地に該当せず,本件各共同住宅の敷地(貸家建付地)として評価すべきであるとして,本件各処分をしました。

原審と二審は以下のように判断しました。
①建物敷地の接道義務を満たすために建築基準法上の道路とされるものは,道路内の建築制限(同法44条)や私道の変更等の制限(同法45条)などの制約があるのに対し,
②所有者が事実上一般の通行の用に供しているものは,特段の事情のない限り,私道を廃止して通常の宅地として利用することも可能であるから,評価通達24にいう私道とは,その利用に①のような制約があるものを指すと解するのが相当である。

要するに、容積率など私道と主張する範囲も計算に入れてるよね、他人に売ることだってできるよね、だからダメだと判断しました。
これに対して最高裁は、次のように述べています。


(1) 相続税法22条は,相続により取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における時価による旨を定めているところ,ここにいう時価とは,課税時期である被相続人の死亡時における当該財産の客観的交換価値をいうものと解される。そして,私道の用に供されている宅地については,それが第三者の通行の用に供され,所有者が自己の意思によって自由に使用,収益又は処分をすることに制約が存在することにより,その客観的交換価値が低下する場合に,そのような制約のない宅地と比較して,相続税に係る財産の評価において減額されるべきものということができる。
そのような宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は,私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず,当該宅地の位置関係,形状等や道路としての利用状況,これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし,当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か,また,その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があるというべきである。


相続したときすでにその辺の小学生が通学路に使っている実態があったし、後から付け足したものではない。ちゃんと実態を見ましょうよという事のようです。

(2) これを本件についてみると,本件各歩道状空地は,車道に沿って幅員2mの歩道としてインターロッキング舗装が施されたもので,いずれも相応の面積がある上に,本件各共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていることがうかがわれる。また,本件各歩道状空地は,いずれも本件各共同住宅を建築する際,都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために,市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり,本件各共同住宅が存在する限りにおいて,上告人らが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難い。

しかも道幅もそれなりにあるし、住人以外も遣っているし、そもそも市からの指示で作れと言われたのだから、そう簡単に転用できないよね。
ということで、全員一致で申請通り30%まで評価を下げなさいと判決が出ました。

今回の裁判官
第三小法廷
裁判長裁判官 山崎敏充
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大谷剛彦
裁判官 大橋正春
裁判官 木内道祥

すっきりとした判断でした。むしろ原審がなんでそんな判断を出したのかの方が疑問です。
しかも、市の指示で一般人が通るとなれば、ここで起きた事故は市が管理者責任を持ってくれるんですよねと言いたくなります。