最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

弁護士の職権による情報請求を拒否した場合の弁護士への損害賠償はない

2016-11-18 18:56:29 | 日記

平成27(受)1036  損害賠償請求事件
平成28年10月18日  最高裁判所第三小法廷  判決  その他  名古屋高等裁判所

これは、何で弁護士会が出て来たのか分からない事件です。
判決文によると、弁護士が受任した詐欺事件がありました。結局、当事者同士で和解になったのですが、中々払って貰えないため強制執行をする事になりました。その手続きについて弁護士法23条の2に基づいてある会社の行方を捜すために、日本郵便に転居先を教えるように要求しました。ところが、日本郵便はそれは守秘義務であるとして、弁護士の要求を拒否しました。
それについて、弁護士会は日本郵便が法律に基づいた対応をしなかったとして、損害賠償を請求した事件です。

これについて、裁判所は弁護士法23条の2について以下のように判断しました。

23条照会の制度は,弁護士が受任している事件を処理するために必要な事実の調査等をすることを容易にするために設けられたものである。


この点についてはごもっともです。

弁護士会が23条照会の権限を付与されているのは飽くまで制度の適正な運用を図るためにすぎないのであって,23条照会に対する報告を受けることについて弁護士会が法律上保護される利益を有するものとは解されない。したがって,23条照会に対する報告を拒絶する行為が,23条照会をした弁護士会の法律上保護される利益を侵害するものとして当該弁護士会に対する不法行為を構成することはないというべきである。

23条によって弁護士は利益を得るものではないというものらしいですね。ふーんです。確かにプラスの利益にはなりませんが、少なくとも業務妨害のように思えますね。とはいうものの、

23条照会を受けた公務所又は公私の団体は,正当な理由がない限り,照会された事項について報告をすべきものと解されるのであり,

郵便局はちゃんと報告しろよというようです。
さて正当な理由というのはなんでしょうか。

この点、あるブログではこのように述べています。

かかる場合に,住民票を見りゃあいいじゃんという話はありますが,金を払わずにバックレる人が住民票なんか移しますかいな。
 とは言え,そんな人でも郵便物がきちんと届かないと困りますから,郵便局に転居届は出す場合も多いわけです。なので,Aさんの代理人弁護士はそこに目を付けたわけです。


本気で逃げる奴は転居届すら出しませんがな。

裁判所は続けます。
転居届に係る情報は,信書の秘密ないし通信の秘密には該当しないものの,郵便法8条2項にいう「郵便物に関して知り得た他人の秘密」に該当し,上告人はこれに関し守秘義務を負っている。この場合,23条照会に対する報告義務の趣旨からすれば上記報告義務に対して郵便法上の守秘義務が常に優先すると解すべき根拠はない。

郵便局は郵便法8条2項を盾にしたわけですね。誰が、誰に郵便物を送ったか、中身についても死ぬまで黙ってろという趣旨ですが、これって転居先を含むとしてませんよね。この辺りはどうなのかなという気がします。
引越をした人なら経験があると思いますが、郵便窓口で勝手に紙に書いて出すだけです。ネットでもできますが、問題はここです。誰がやってもOKで本人確認はないのです。これだけいい加減に扱っているのに守秘義務の対象なんでしょうか?なぜかその点は触れていません。

木内裁判官は以下のように述べます。
原審が,照会が実効性を持つ利益の侵害により無形損害が生ずることを認めるのは,23条照会に対する報告義務に実効性を持たせるためであると解される。しかし,不法行為に基づく損害賠償制度は,被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し,加害者にこれを賠償させることにより,被害者が被った不利益を補塡して,不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり,


この辺は素晴らしく明確です。この論拠なら、依頼人が損害賠償を請求したら通ったかも知れませんね。弁護士は代理人ですから、損害賠償の対象外という事のようです。
もともと金だせ!という形式の訴えではありますが、郵便局の拒否は許さんという判決を得るための裁判でしょうから、これで良かったのかもしれません。

第三小法廷判決
裁判長裁判官 木内道祥
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大谷剛彦
裁判官 大橋正春
裁判官 山崎敏充

公務員に入墨があるかどうかを調査することは違法か?違法ではない

2016-11-12 17:22:18 | 日記
この裁判は橋下弁護士が市長時代に大阪市職員を対象に入墨を入れているかどうかの調査を行ったことに対して、職員がプライバシーを侵害する行為であるとしたと主張しました。
この裁判について、残念ながら最高裁のHPで判決文は公開されていません。

時事通信の報道入れ墨調査「適法」確定=拒否の大阪市職員敗訴―最高裁
大阪市が行った入れ墨の有無を確認する調査を拒否し、懲戒処分を受けた職員2人が処分の取り消しを求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(小貫芳信裁判長)は9日付の決定で職員側の上告を退けた。取り消しを認めない二審判決が確定した。
大阪市は2012年、市職員の入れ墨が社会問題化しているとして、全職員を対象に調査を実施。拒否した2人は職務命令違反で戒告とされ、「プライバシーの侵害で憲法に違反する」として提訴した。


産経新聞の報道 橋下市長主導の職員調査 二審は適法「差別情報に当たらず」 大阪高裁判断
橋下徹大阪市長の主導で実施された市職員への入れ墨調査が適法だったかどうかが争われた2件の訴訟の控訴審判決が15日、大阪高裁であった。山田知司(ともじ)裁判長は「目的も手段も正当だった」と述べ、調査自体と回答を拒んだ職員2人への懲戒処分をそれぞれ違法とした1審大阪地裁判決を取り消し、市側の全面勝訴を言い渡した。
 判決理由で山田裁判長は、「職員の入れ墨が市民の目に触れないよう、人事配置上の判断材料にするために行われた調査で、目的は正当だった」と指摘。
 昨年12月の1審判決は入れ墨情報について、市条例が収集を禁じた差別情報に当たるとして調査を違法としたが、山田裁判長は「入れ墨を理由に、社会的に不当な差別が広く行われているという証拠はない」と判断。入れ墨のデザインには触れず、有無、部位、大きさのみを尋ねる手法も「プライバシーの観点からも相当で思想、信条、宗教を制限するものでもない」として適法と認めた。
 そのうえで回答を拒否した職員について「再三の指導にも従わず、職場の秩序を乱したのは明らかだ」として、市の懲戒処分に違法性はないと結論づけた。
 入れ墨調査は平成24年2月、児童施設の職員が入所児童に入れ墨を見せたとの報道を受け、橋下市長の意向で同年5月に実施された。



児童施設で刺青を見せて脅すのは、ヤクザかチンピラのやる事でしょう。少なくとも、公務員がそういう行動をしてはいけません。
なお入墨は自分で入れることについては違法ではありませんが、体の中に異物を入れる行為として医師法違反です。日本の近世以降は、犯罪者に刺青を施して要注意人物と分かるようにするという風習はありました。またごく一部のヤクザにもそういう風習はありましたが、両者とも反社会的行動をする者がする事であり、更生中ならいざ知らず社会人がする事ではありません。
現に今も普通に刺青を施した者を公衆浴場では禁止していることがあり、一般的なことです。
1審、2審でなぜか、大阪市側が敗訴となりましたが、最高裁ではまともな判断が出ました。

しかしどのようなロジックで違法ではないとしたのか不明なのが残念です。
なお今回の裁判官は、珍しく第二小法廷でした。第二小法廷にしては極めてマトモな判断でした
おそらく以下の裁判官。

第二小法廷
寺田逸郎
小貫芳信
鬼丸かおる
山本庸幸
菅野博之