令和4(あ)1460 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
令和6年7月16日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
不正に入手した暗号資産NEMの秘密鍵で署名した上でNEMの移転行為に係るトランザクション情報をNEMのネットワークに送信した行為が刑法246条の2にいう「虚偽の情報」を与えたものとされた事例
報道がないので判決文から書いていきます。
1 原判決が是認する第1審判決の認定及び記録によれば、被告人が収受した暗号資産(仮想通貨)であるNEMは、氏名不詳者が、不正に入手したA株式会社(以下「A社」という。)のNEMの秘密鍵を用いて、A社の管理するNEMアドレスから氏名不詳者らの管理するNEMアドレスに移転させたNEM(以下「本件NEM」という。)の一部であったと認められる(以下、本件NEMの移転行為を「本件移転行為」という。)。そして、NEMの取引においては、取引日時、取引数量、送受信アドレス等の取引に必要な情報(以下「トランザクション情報」という。)を、送信元のNEMアドレスに紐づけられている秘密鍵で署名した上でNEMのネットワークに送信すると、NEMのネットワークを構成するいずれか一つのNISノード(サーバ)が、送信元のNEMアドレスに紐づけられている公開鍵で、署名が秘密鍵によってなされたものであるかを検証し、トランザクション情報の整合性を機械的に確認して、トランザクションを承認し、こうして承認されたトランザクションが、他の承認されたトランザククションとともにまとめて一つのブロックとして生成され、これが順次積み重なりブロックチェーンに組み込まれ、最初のブロックから最新のブロックまで一連のブロックチェーンの情報をNEMのネットワーク全体が共有することで、書換えが事実上困難になり、取引が確定するというのである。
相変わらずダラダラと何が言いたいのかよく分からん糞な文章です。
A社は仮想通貨NEMの取引を扱う会社である。
NEMは所有権の移転をNEMアドレスで管理している。
取引の前後はNEMアドレスで記録される。
送信元のNEMアドレスに紐づけられている公開鍵で検証できる。
取引はNEM全体で記録されるので、書き換えができない。
こう書けばわかりやすいのに、なんでわざわざ長ったらしいことを書くのか分かりません。
訴えの内容は、
2 氏名不詳者が不正に入手した秘密鍵を用いて本件移転行為に係るトランザクション情報をNEMのネットワークに送信した行為は、刑法246条の2にいう「虚偽の情報」を与えたことにならず、本件移転行為は電子計算機使用詐欺罪に該当しないから、本件NEMは、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律2条2項1号にいう「犯罪行為により得た財産」に当たらず、被告人には、令和4年法律第97号による改正前の組織的犯罪処罰法11条違反の罪(以下「犯罪収益等収受罪」という。)は成立しないと主張する。
これもよく分かりません。A社は秘密鍵で空けられたことを知らなかったのか?も書かれていません。おそらく取引はすべて記録に残るから分かるはずだということなんでしょうか。それで、A社は盗まれたNEMをしっかり管理してなかったということで、組織犯罪扱いされたということのようです。
3 NEMのネットワークに参加している者は、自らの管理するNEMアドレスに紐づけられている秘密鍵で署名しなければ、トランザクションがNISノードに承認されることも、ブロックチェーンに組み込まれることもなく、NEMの取引を行うことができないのであるから、秘密鍵で署名した上でトランザクション情報をNEMのネットワークに送信することは、正規に秘密鍵を保有する者によるNEMの取引であることの確認のために求められるものといえる。
どうもそういう事らしいですね。
このような事情の下では、氏名不詳者が、不正に入手したA社のNEMの秘密鍵で署名した上で本件移転行為に係るトランザクション情報をNEMのネットワークに送信した行為は、正規に秘密鍵を保有するA社がNEMの取引をするものであるとの「虚偽の情報」をNEMのネットワークを構成するNISノードに与えたものというべきである。
虚偽の情報を確認することなく送信したのは犯罪に加担したと言っているようです。
刑訴法414条、396条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
裁判官今崎幸彦と裁判官今崎幸彦の補足意見
NEM等の暗号資産は、資金決済に関する法律上、不特定の者に対して決済手段として使用でき、かつ不特定の者との間で売買、交換を行うことができるような財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるものと定義されている。本件当時においても、ブロックチェーンや公開鍵暗号等の技術を用いた数多くの暗号資産が発行されており、秘密鍵による排他的支配可能性を前提に、資産等としての利用が急速に拡大し、幅広く取引の対象とされそのための市場が形成されていたということができる。
ピコ秒単位で売り買いがなされるので、人手では無理です。
こうしたNEM等の暗号資産が社会経済において果たしている役割や重要性等に照らし、資金決済に関する法律等は、暗号資産のネットワークに参加している暗号資産交換業者に対し、暗号資産交換業者を介して取引を行う利用者保護のための規制を設け、また、本件後ではあるが、金融商品取引法は、令和元年法律第28号による改正により、暗号資産の不公正取引を規制し、暗号資産のネットワークに参加している者らの権利のより直接的な保護を図っている。正規の秘密鍵保有者でない者が不正に入手した秘密鍵で署名した上で、当該秘密鍵が紐づいているアドレスから他のアドレスにNEM等の暗号資産を移転させた場合、正規の秘密鍵保有者が暗号資産を移転させた者に対し、少なくとも不当利得や不法行為等を理由とした民事上の請求を行うことができることについても大方の異論のないところであろう。
本来の所有者ではない人が売った、しかもNEMをA社が管理していたのだからA社は民事上責任を負うべきだ。としています。この点は納得です。
「虚偽の情報」該当性は、こうしたNEMの利用実態、ひいてはNEM等の暗号資産が社会経済において果たしている役割や重要性等の観点からの考察抜きに判断することはできないのであって、システム単体としての仕組みや働き等からロジカルに演繹されるものではない。
ここなんですよね。虚偽情報かどうかとどうやったら分かるのか?という問題です。
不正に入手したA社の秘密鍵で署名した上で、当該秘密鍵が紐づいているA社の管理するNEMアドレスから氏名不詳者らの管理するNEMアドレスにNEMを移転させる旨の本件移転行為に係るトランザクション情報をNEMのネットワークに送信した。
A社が管理する秘密鍵がとられたとなると重過失になりますね。
NEMのシステムに対する社会の信頼は、正規の秘密鍵保有者が秘密鍵の管理を通じてNEMを排他的に支配することができることによって確保される。正規の秘密鍵保有者以外の者が不正な方法で秘密鍵を入手し、これで署名することは、正規の秘密鍵保有者のNEMに対する排他的支配を害し、NEMのシステムに対する社会の信頼を損なう。こうした観点も踏まえれば、不正に入手した秘密鍵で署名した上で本件移転行為に係るトランザクション情報をNEMのネットワークに送信した行為は、正規の秘密鍵保有者であるという意味での主体を偽ったトランザクション情報をNEMのネットワークを構成するNISノードに与えた行為と評することができるのであり、電子計算機に「虚偽の情報」を与える行為にほかならない。
これも何をいっているのか分かりません。もっとわかりやすく書けよ。
1 秘密鍵は秘密に管理されているから信頼される
2 不正な方法で秘密鍵を手に入れてA社で管理するシステムを使った場合、電子計算機に「虚偽の情報」を与える。
ん?トートロジーじゃないですか。書くなら、「偽鍵でシステムに入り込んで情報を入力され、A社が管理するシステムを経由して取引が成立したことは、犯罪行為を助長した」とでも書けばわかりやすいのに。
裁判長裁判官 林 道晴
裁判官 宇賀克也
裁判官 渡 惠理子
裁判官 今崎幸彦
今回の判決文は分かってないで書いてるんじゃないかなと思わせますね。
ハッキングされたまではA社は被害者だけど、A社のシステムを使って取引された。これはシステムを提供したのと同じだから組織犯罪・・・政策的にはそうでもしないと雑なシステム管理のまま放置されると事件が増えるから、刑事事件にするいうのは分からないでもないですが、組織犯罪の成立要件を満たしているのでしょうか?