最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

勤務先から受けた債務免除はボーナスか?

2015-10-12 17:09:26 | 日記
平成26年(行ヒ)第167号 納税告知処分等取消請求事件
平成27年10月8日 第一小法廷判決

青果物その他の農産物及びその加工品の買付けを主たる事業とする権利能力のない社団、多分法人格のない農協のようなもの、サークルだったのかもしれません。面倒なのでB組合とでもしておきましょう。Aさんは、このB組合の理事を14年、理事長を16年を勤めていました。理事のころからB組合から借入れましたが、返せる当てがなく一度利子の減免を受けています。ところが借金が膨れ上がり、55億円にもなってしまいました。個人で55億円では通常は返せる金額ではないですね。
B組合は、Aの嫁さんとの共同名義の物件を売却し7億円回収、48億円については債務放棄としました。その債務放棄は、ボーナスであるとして所得税を払うべきかどうかが争われました。

まずは、Aは個人であり法人ではない事。さらに、AはB組合の理事であったこと。
この2点からして、普通の人が金融機関から借入て債務免除となるものではない条件がそろいます。

① 資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合の意義
所得税基本通達 36-17 は,「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」にその債務免除益を各種所得の金額の計算上,収入金額又は総収入金額に算入しないこととしています。
その成立要件は、所得税法第9条1項10号及び同法施行令26条に規定する「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」である場合としています。


これらの点について地裁ではこのように見ました。
のAに対する貸付金は元本の弁済のめどの立たない不良債権であったところ,平成17年債務免除益に本件旧通達の適用があるとの判断が所轄税務署長により示された後にAの資産の増加がなかった状況の下で本件債務免除がされたことからすると,本件債務免除の主たる理由はAの資力の喪失により弁済が著しく困難であることが明らかになったためであると認めるのが相当であり,Aが被上告人の役員であったことが理由であったと認めることはできない。
したがって,本件債務免除益は,これを役員の役務の対価とみることは相当ではなく,所得税法28条1項にいう給与等に該当するということはできないから,本件債務免除益について被上告人に源泉徴収義務はないというべきである。


それに対して、最高裁は次のように判断しました。
自己の計算又は危険において独立して行われる業務等から生ずるものではなく,雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供した労務又は役務の対価として受ける給付をいうものと解される(最高裁昭和52年(行ツ)第12号同56年4月24日第二小法廷判決・民集35巻3号672頁,最高裁平成16年(行ヒ)第141号同17年1月25日第三小法廷判決・民集59巻1号64頁参照)。そして,同項にいう賞与又は賞与の性質を有する給与とは,上記の給付のうち功労への報償等の観点をも考慮して臨時的に付与される給付であって,その給付には金銭のみならず金銭以外の物や経済的な利益も含まれると解される。

特に以下の文が重要です。

多額の金員の貸付けを繰り返し行ったのは,同人が被上告人の理事長及び専務理事の地位にある者としてその職務を行っていたことによるものとみるのが相当であり,



おっしゃる通りです。理事ということは、会社で言うところの取締役です。その立場にある人間が、55億円の貸し付けを継続するか否かを知らないはずもなく関与しているはず、例え知らなかったとしても善管注意義務があるので容赦できません。
とは言うものの、債務免除する以上所得税の課税とするには無理があります。
ですが、この組合はこんな金額になるまで放置していたこと、しかも借りた本人が理事長までやるというのはとんでもないというのが裁判所の本当の趣旨ではないかと思います。なぜならば、所得税の徴収義務は組合が負うからです。おそらくこの金額から言ったら22億円ぐらいの現金を組合が用意しなければならないわけですね。所得税という名を借りた制裁金と見たほうが分かり易そうです。
若干大岡裁きの感もないわけでもないです。



第一小法廷
裁判長裁判官 櫻井龍子
裁判官 山浦善樹
裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 小池裕

東京地裁 キリスト教徒の教師国歌演奏を拒否に減給処分は行き過ぎか?

2015-10-09 07:54:34 | 日記
今回は最高裁ではなく東京地裁の段階です。判決文が公開されていないようなので、読売新聞から記事を転用します。


 東京都内の区立小学校の卒業式で2010年、君が代のピアノ伴奏を拒否し、減給の懲戒処分を受けた元音楽教諭の女性(65)が、都に処分の取り消しなどを求めた訴訟で、東京地裁は8日、取り消しを命じる判決を言い渡した。
 清水響裁判長は「減給は重すぎて裁量権を逸脱しており違法だ」と述べた。
 判決によると、元音楽教諭は10年3月、校長から伴奏を命じられたが、キリスト教徒であることを理由に拒否。13年2月に減給1か月の懲戒処分とされた。
 訴訟で元音楽教諭は、伴奏命令は憲法が保障した信教の自由に反すると主張したが、判決は「音楽教諭に期待される職務で合憲」と判断。一方、懲戒処分がそれまでに4回にとどまっていたことや、式の進行に支障がなかったことなどを理由に、減給は重すぎるとした。
 中井敬三・都教育長の話「誠に遺憾。内容を確認して対応する」



論点は想像するに2つでしょう。
まず、キリスト教を信じる原告が国家を伴奏することは、思想良心の自由(日本国憲法第19条)を侵害するか。これは明らかに侵害しないでしょう。生地にもあるように裁判官はそう判断しました。実際、キリスト教の教義の中に反するような要素は全くないと言っていいでしょう。
次の論点として、この減給処分が重すぎるかという論点ですが、過去に4回同様の行為で職務放棄を理由に懲戒処分を受けている事実があります。民間企業では、職務放棄で懲戒処分3回で懲戒解雇になるのは当たり前です。労働契約法16条では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」としていますが、職務命令を拒否した場合はこれに該当するでしょう。解雇ですらこれですから、減給が重すぎるという理由にはなりません。
公務員法でも、28条1項勤務実績が良くない場合として免職が可能になっています。4回もの懲戒は充分これに該当すると思います。

区の教育委員会の判断は減給に留めたのは、むしろ甘すぎの感じがあります。それを、地裁は行き過ぎであると区の教育委員会が下した減給処分を無効としました。これは明らかにおかしな決定です。

今回の裁判官
東京地裁 清水響裁判長

灯篭の石を使って抵抗した人を警察官が射殺。違法性はあるか?

2015-10-08 06:58:18 | 日記
報道があってから約4日ほど待ってみましたが、判例のデータベースには記載されていません。どういう基準でやっているのか不思議です。裁判は公開が原則なのだから全部の裁判について公開すべきでしょう。

さて、話題に戻ります。

NHKのニュースによると以下の通りです。

9年前、栃木県で警察官に拳銃で撃たれて死亡した中国人の元研修生の遺族が県に賠償を求めた裁判で、最高裁判所は2日までに上告を退ける決定を出し、遺族の訴えを退けた判決が確定しました。
平成18年6月、栃木県栃木市で、職務質問を受けて逃げようとした中国人の元研修生の男性が警察官に拳銃で撃たれ、死亡しました。
元研修生の遺族は、警察官の職務を超えた違法な行為だとして賠償を求め、2審の東京高等裁判所は栃木県に1000万円余りの支払いを命じる判決を言い渡しました。しかし、最高裁判所は、去年1月、「灯篭の石を使って抵抗され命の危険を感じたという警察官の証言には一定の合理性がある」として改めて審理するよう命じ、東京高裁は、去年9月、今度は遺族の訴えを退けました。
これを不服として遺族側が上告していましたが、最高裁判所第2小法廷の山本庸幸裁判長は、2日までに上告を退ける決定を出し、遺族の訴えを退けた判決が確定しました。
拳銃を発砲した警察官は、遺族の請求による「付審判」に基づく刑事裁判で特別公務員暴行陵虐致死の罪に問われましたが、正当防衛が認められ、無罪が確定しています。


中国人研修生と言っても、人民解放軍の元軍人らしいです。そうでもなければ、石灯籠を振り回わすなんて言うことはできないでしょう。
まあ、これでも拳銃の使用は違法だというのであれば、警察官は仕事をするなというところでしょうか。

第二小法廷の割には、まともな判断でした。
データベースには乗っていないので、裁判官名は分かりませんが、恐らく以下の人たちです。

千葉 勝美
小貫 芳信
鬼丸 かおる
山本 庸幸

自分が持っている会社が債務超過になったにもかかわらず顧客勧誘行為したのは、組織犯罪になるのか?

2015-10-05 12:54:30 | 日記
平成27(あ)177  組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
平成27年9月15日  最高裁判所第三小法廷  決定  棄却  東京高等裁判所

Aという会社が債務超過となり、Bというリゾート施設が運営できる状態ではなくなりました。被告はA社のオーナーだったのですが、Bリゾート施設の責任者Cに勧誘活動を続けろと命じました。判決文にはA社が破産したかどうかまでは書いてありませんが、少なくとも宿泊ポイントは還元できる状況ではない状態のようです。この状態で、Cに勧誘を続けろと指示したのは詐欺の組織犯罪であると告訴されました。

ここでの論点は、勧誘活動は会社の経営努力なのか詐欺行為なのか、オーナーの指示は組織犯罪の行為になるのかになります。

判決では、詐欺行為は会社で行っているので団体であることは疑いない。B施設の勧誘を行うことは、A社の利益になる、と判断しています。この点は、実に明快で疑いの余地はないでしょう。
問題は、詐欺行為になるか否かになります。

判決文は以下のように述べます。

被告人はもとより,Cを始めとするAの主要な構成員にあっては,遅くとも平成21年9月上旬の時点で,Aが実質的な破綻状態にあり,集めた預託金等を返還する能力がないことを認識したにもかかわらず,それ以降も,上記ア記載の組織による営業活動として,B倶楽部の施設利用預託金及び施設利用料の名目で金銭を集める行為を継続したというのである。上記時点以降,上記営業活動は,客観的にはすべて「人を欺いて財物を交付」させる行為に当たることとなるから,そのような行為を実行することを目的として成り立っている上記組織は,「詐欺罪に当たる行為を実行するための組織」に当たることになったというべきである。上記組織が,元々は詐欺罪に当たる行為を実行するための組織でなかったからといって,また,上記組織の中に詐欺行為に加担している認識のない営業員や電話勧誘員がいたからといって,別異に解すべき理由はない。


債務超過になっている状態で、営業活動、特に会員権などの将来にかかわる権利を売るというのは詐欺行為であると判断したようです。

単なる赤字経営ではないですからね。債務超過は、経営の観点から見てもよほどのことがない限り清算すべき状態です。となれば、この判断は妥当でしょうね。
一方、個人にも法人格否認の法理が適応されるということのようです。
赤字となったら、無理しないで会社をたたむ判断も重要という教訓のようです。


今回の裁判官 第三小法廷
裁判長裁判官 木内道祥
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大谷剛彦
裁判官 大橋正春
裁判官 山崎敏充