最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

マンションの競売、すぐに取り下げ持ち主に戻る。その間の管理費共益費は時効にならない。

2020-09-29 15:35:56 | 日記
平成31(受)310  管理費等反訴請求事件
令和2年9月18日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  東京高等裁判所

 区分所有法所定の先取特権を有する債権者の配当要求により配当要求債権に時効中断効が生ずるためには,民事執行法181条1項各号に掲げる文書により上記債権者が上記先取特権を有することが不動産競売手続において証明されれば足りる

千葉市内のマンションの団地管理組合法人である上告人が,第1審判決別紙1物件目録記載の本件マンションの専有部分を担保不動産競売によって取得した被上告人に対し,上記競売前に本件建物部分の共有者であった者が滞納していた管理費,修繕積立金,専用倉庫維持費等及びこれらに対する遅延損害金の支払義務は建物の区分所有等に関する法律66条で準用される区分所有法8条に基づき被上告人に承継されたとして,上記管理費等及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める事案である。


随分前の裁判で、マンションの管理費について時効があるとする規則があった記憶があります。競売が長引けば長引くほど管理費は高くなり、かつ資産価値は減ります。ますます売れなくなり法的処理が進まなくなりますから、そうでもしないとどうしようもありません。

平成29年法律第44号による改正前の民法169条に基づき,上記管理費等のうち支払期限から5年を経過したものに係る債権は時効消滅した旨主張しているのに対し,上告人は,上記債権の一部について本件被承継人による債務の承認がされた後,本件建物部分の本件被承継人の共有持分についての強制競売の手続において,上記債権のうち第1審判決別紙2滞納管理費等明細書の番号24から94までの「管理費」欄,「修繕積立金」欄及び「専用倉庫維持費」欄記載の各金員に係る債権等について,区分所有法66条で準用される区分所有法7条1項の先取
特権を有するとして,民事執行法51条1項に基づいて配当要求をし,これにより,本件配当要求債権について消滅時効の中断の効力が生じている旨主張して争っている。


そりゃ競売で買った方とすれば、時効分がある前提で買いますよね。

(1) マンションの規約は,本件マンションの団地建物所有者は,上告人に対し,管理費,修繕積立金,専用倉庫維持費等について,毎月27日までに翌月分を支払うべきものとし,これらに対する各支払期限の翌日から日歩4銭の割合による遅延損害金を支払うべきものと定めている。

管理費を払えという規約はきちんと形式をととのえて成立していると認定しています。

(2) 平成23年4月,本件強制競売の開始決定がされ,上告人は,同年6月,本件配当要求をした。
(3) 本件強制競売の申立ては,平成23年7月に取り下げられた。


所有者は何かの借金を返さなかったので、裁判になり強制売却が決まりましたが、いくらかお金を払ったのでしょう。

(4) 本件被承継人は,被上告人が本件建物部分を取得した時点において,第1審判決別紙2滞納管理費等明細書記載のとおり,上記(1)の管理費等を滞納していた。
(5) 被上告人は,本件訴訟において,本件配当要求債権等について消滅時効を援用した。


所有者は裁判にかかっていた部分の期間は払う義務はないと言い張っているようです。そこで裁判所は、

区分所有法7条1項の先取特権は,優先権の順位及び効力については,一般の先取特権である共益費用の先取特権(民法306条1号)とみなされるところ(区分所有法7条2項),区分所有法7条1項の先取特権を有する債権者が不動産競売手続において民事執行法51条1項(同法188条で準用される場合を含む。)に基づく配当要求をする行為は,上記債権者が自ら担保不動産競売の申立てをする場合と同様,上記先取特権を行使して能動的に権利の実現をしようとするものである。

一体1か月いくらの支払い義務があったのでしょう?これだけ払えないと主張するからには、相当大きな物件ですよね。

不動産競売手続において区分所有法66条で準用される区分所有法7条1項の先取特権を有する債権者が配当要求をしたことにより,上記配当要求における配当要求債権について,差押え(平成29年法律第44号による改正前の民法147条2号)に準ずるものとして消滅時効の中断の効力が生ずるためには,法定文書により上記債権者が上記先取特権を有することが上記手続において証明されれば足り,債務者が上記配当要求債権についての配当異議の申出等をすることなく配当等が実施されるに至ったことを要しないと解するのが相当である。

当然そうなりますね。法的に管理組合が修繕費等を優先的に受け取る権利があるので、時効はあり得ないでしょうということになります。むしろ、区分所有法7条の規定を使うのは権利の濫用ということになりますかね。

裁判長裁判官 岡村和美
裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一

トンデモ判決 入れ墨は医師法違反ではない

2020-09-24 18:15:46 | 日記
平成30(あ)1790  医師法違反被告事件
令和2年9月16日  最高裁判所第二小法廷  決定  棄却  大阪高等裁判所

 1 医師法17条にいう「医業」の内容となる医行為の意義
2 医師法17条にいう「医業」の内容となる医行為に当たるか否かの判断方法
3 医師でない彫り師によるタトゥー施術行為が,医師法17条にいう「医業」の内容となる医行為に当たらないとされた事例


まず、この要約文からして気に食わないです。タトゥーではありません、入れ墨あるいは刺青です。カタカナにしてごまかすようなことを最高裁はやってはいけません。しっかり日本語を使いなさい。

まずは入れ墨について、江戸時代では犯罪人に対して入れ墨をしていました。明治以降、ヤクザが入れる傾向にありましたが、GHQにより一度禁止された時期があるようです。それでも真っ当な一般人がやることではありません。実際に、温泉など公衆浴場では入れ墨は入場禁止になっています。これは現在の公序良俗の範囲だと思います。

日経新聞の記事を見てみます。
第2小法廷は、有資格を条件とした医療行為について「医師が行わなければ保健衛生上、危害が生じる恐れがある行為」とする基準を示した。「方法や作用だけではなく、目的、相手との関係、実情や社会の受け止め」などに基づいて線引きをすべきだとも指摘した。
タトゥーの施術は「美術の知識・技能が必要で、歴史的にも無免許の彫師が行ってきた実情がある」とし、「社会通念に照らして医療行為とは認めがたい」と結論づけた。裁判官3人全員一致の意見。


体の中に器具つかって異物を入れる事は、自分でやる以外は原則禁止です。厳密には、看護師が注射をする行為も本来は医師法違反です。だから大学病院では医師が注射を行い、看護師は一切注射を打つことはありません。

所論は上記通りで、体の中に入れる行為は医師法の範囲で
(1)高度の医学的知識及び技能を具有した医師により医療及び保健指導が実施されることを担保する(2条6条9条等)とともに,無資格者による医業を禁止している(17条)。
医行為とは,医療及び保健指導に属する行為のうち,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいうと解するのが相当である。


(2)医師法17条は,医師に医行為を独占させるという方法によって保健衛生上の危険を防止しようとする規定であるから,医師が独占して行うことの可否や当否等を判断するため,当該行為の実情や社会における受け止め方等をも考慮する必要がある。
そうすると,ある行為が医行為に当たるか否かについては,当該行為の方法や作用のみならず,その目的,行為者と相手方との関係,当該行為が行われる際の具体的な状況,実情や社会における受け止め方等をも考慮した上で,社会通念に照らして判断するのが相当である。


公序良俗に反するかどうかということになりますね。

タトゥー施術行為は,医学とは異質の美術等に関する知識及び技能を要する行為であって,医師免許取得過程等でこれらの知識及び技能を習得することは予定されておらず,歴史的にも,長年にわたり医師免許を有しない彫り師が行ってきた実情があり,医師が独占して行う事態は想定し難い。このような事情の下では,被告人の行為は,社会通念に照らして,医療及び保健指導に属する行為であるとは認め難く,医行為には当たらないというべきである。

はぁ?ヤクザもんが脅しに使うための入れ墨が美術?

裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。今回の裁判官は全員アホですね。

裁判官草野耕一の補足意見
医師法17条の解釈に関する法廷意見の結論を換言すれば,医業とは「医療及び保健指導に属する行為」であって,かつ,「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為)」を業として行うことである。法廷意見は医師法の制度趣旨をしんしゃくすることによってこの結論を導き出したのであるが,「保健衛生上危険な行為」を業として行うことだけで医業たり得ると解する者がいることも事実である。

医師免許取得過程等でタトゥー施術行為に必要とされる知識及び技能を習得することは予定されておらず,タトゥー施術行為の歴史に照らして考えてもタトゥー施術行為を業として行う医師が近い将来において輩出されるとは考え難い。したがって,医療関連性を要件としない解釈をとれば,我が国においてタトゥー施術行為を業として行う者は消失する可能性が高い。しかしながら,タトゥーを身体に施すことは古来我が国の習俗として行われてきたことである。もとよりこれを反道徳的な自傷行為と考える者もおり,同時に,一部の反社会的勢力が自らの存在を誇示するための手段としてタトゥーを利用してきたことも事実である。


ここまで書いておきながら

タトゥーに美術的価値や一定の信条ないし情念を象徴する意義を認める者もおり,さらに,昨今では,海外のスポーツ選手等の中にタトゥーを好む者がいることなどに触発されて新たにタトゥーの施術を求める者も少なくない。

何だそりゃ!海外は海外であり、日本は日本です。海外ではやっているから日本も認める?隣の〇〇ちゃんがゲーム買ってもらったからうちも買ってよ的な・・・アホかと。

施術の内容や方法等によっては傷害罪が成立し得る。

取ってつけたように書いてますが、この裁判官は馬鹿ですね。

久しぶりに裁判官の浮世離れとウルトラスーパー飛躍に呆れかえりました。唯一救いは医師法違反ではないというだけです。

第二小法廷決定

裁判長裁判官 草野耕一  どアホ
裁判官 菅野博之  アホ
裁判官 岡村和美 アホ

あんたらの孫が全身入れ墨してもOKなのか?
こうなると入れ墨の調査をした大阪市はどうなるんですかね。

損害賠償と代金未払金の相殺はできる

2020-09-20 17:09:52 | 日記
平成30(受)2064  請負代金請求本訴,建物瑕疵修補等請求反訴事件
令和2年9月11日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  広島高等裁判所

 請負代金債権と瑕疵修補に代わる損害賠償債権の一方を本訴請求債権とし,他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴が係属中に,上記本訴請求債権を自働債権とし,上記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは許される

報道がないので認定内容から見ていきます。

(1) 被上告人は,平成25年9月,建築物の設計,施工等を営む上告人との間で,請負代金額を750万円として自宅建物の増築工事の請負契約を締結した。被上告人は,その後,同年11月までの間に,上告人に対し,上記工事の追加変更工事を発注した。
(2) 上告人は,平成25年12月までに,上記増築工事及び追加変更工事を完成させ,完成した自宅建物の増築部分を被上告人に引き渡した。
(3) 本件請負契約に基づく請負代金の額は829万1756円である。他方,上記増築部分には瑕疵が存在し,これにより被上告人が被った損害の額は266万9956円である。
(4) 上告人は,平成26年3月,本件本訴を提起し,被上告人は,同年6月,本件反訴を提起した。上告人は,同年8月8日の第1審口頭弁論期日において,被上告人に対し,本訴請求に係る請負代金債権を自働債権とし,反訴請求に係る瑕疵修補に代わる損害賠償債権を受働債権として,対当額で相殺する旨の意思表示をし(,これを反訴請求についての抗弁として主張した。


被上告人は発注者、上告人は建築会社です。契約書では750万円なのに829万になったあげく、できそこないを寄越されたので損害が266万円になった。そこで大モメになったのでしょう、翌年3月に裁判になりました。もうこの会社に払いたくないから不足分は払わない、会社側は払えとやったようです。よほど感情的におかしいことになったのでしょう。
ちなみに裁判費用は、弁護士費用を入れるとかなりいくと思いますよ。勝手な予想ですが、266万円どころか倍ぐらいかかると思います。

一審では未払の損害金と被害の266万円の一部祖相殺して払いなさいと判決が出ました。
これに対して最高裁は、

請負契約における注文者の請負代金支払義務と請負人の目的物引渡義務とは対価的牽連関係に立つものであるところ,瑕疵ある目的物の引渡しを受けた注文者が請負人に対して取得する瑕疵修補に代わる損害賠償債権は,上記の法律関係を前提とするものであって,実質的,経済的には,請負代金を減額し,請負契約の当事者が相互に負う義務につきその間に等価関係をもたらす機能を有するものである。しかも,請負人の注文者に対する請負代金債権と注文者の請負人に対する瑕疵修補に代わる損害賠償債権は,同一の原因関係に基づく金銭債権である。

ごめんなさいの代金は値引きになってるよね。

上記のような請負代金債権と瑕疵修補に代わる損害賠償債権の関係に鑑みると,上記両債権の一方を本訴請求債権とし,他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴が係属している場合に,本訴原告から,反訴において,上記本訴請求債権を自働債権とし,上記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁が主張されたときは,上記相殺による清算的調整を図るべき要請が強いものといえる。

本訴に反訴で同じ案件についてなのだから相殺すべきじゃないですか?と言ってます。

本訴と反訴の弁論を分離すると,上記本訴請求債権の存否等に係る判断に矛盾抵触が生ずるおそれがあり,また,審理の重複によって訴訟上の不経済が生ずるため,このようなときには,両者の弁論を分離することは許されないというべきである。そして,本訴及び反訴が併合して審理判断される限り,上記相殺の抗弁について判断をしても,上記のおそれ等はないのであるから,上記相殺の抗弁を主張することは,重複起訴を禁じた民訴法142条の趣旨に反するものとはいえない。

重複起訴禁止は、裁判所に係属する事件について当事者は、さらに訴えを提起することができないとする民事訴訟法上の原則で、裁判が増えると被告と裁判所が何度も手間がかかるので、やるならまとめてやってねという原則のようです。この原則がなければ延々と嫌がらせが可能になりますからね。

請負契約に基づく請負代金債権と同契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権の一方を本訴請求債権とし,他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴が係属中に,本訴原告が,反訴において,上記本訴請求債権を自働債権とし,上記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは許されると解するのが相当である。

要するに、反訴に反訴を重ねることになりかねないけどこの場合は仕方ないでしょうと言っています。

請負代金債権を自働債権として瑕疵修補に代わる損害賠償債権と相殺する旨の意思表示をした場合,注文者は,請負人に対する相殺後の請負残代金債務について,相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負うと解される(最高裁平成5年(オ)第2187号,同9年(オ)第749号同年7月15日第三小法廷判決・民集51巻6号2581頁参照)。

最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 三浦 守
裁判官 菅野博之
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

普通この金額ならば弁護士同士で話し合い、少なくとも調停で終わらせる案件ですよ。よほど感情的にこじれたのですね。

トンデモ判決 熊谷6人殺害、無期確定へ 一審死刑のペルー人被告

2020-09-11 08:08:14 | 日記
判決文は公開されていません。酷い事件でした。

時事通信の報道です
一審さいたま地裁は18年3月、被告が統合失調症だったと認めた上で、「残された正常な精神機能に基づき、金品入手という目的に沿った行動を取った」と完全責任能力を認定。「6人もの生命が奪われた結果は極めて重大」として死刑とした。
 これに対し、二審東京高裁は19年12月、被告は統合失調症の悪化で「スーツの男が危害を加えるため追っている」との妄想を抱いていたと指摘。被害者を「追跡者」とみなして殺害した可能性があったなどとして心神耗弱状態だったと判断し、無期懲役に減刑した。
 検察側は上告を断念し、弁護側が心神喪失で無罪として上告していた。裁判員裁判の死刑判決が高裁で無期懲役となり、最高裁で確定するのは6件目。



私は全面的に一審を支持します。どう見ても判断能力があります。
まず、死体を隠している。殺害道具を事前の準備している。
さらに、取材していた人の話では法廷で被告は「今更生き返るわけじゃないだろ」と言っていたらしいです。
どう見ても心神喪失ではありませんし、計画的犯行です。
第1小法廷 全員トンデモです。×をつけましょう。

山口厚裁判長
池上 政幸
小池 裕
深山 卓也

案の定破産、違約金契約は破産管財人に召し上げられない

2020-09-10 20:59:48 | 日記
平成31(受)61  請負代金請求事件
令和2年9月8日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  福岡高等裁判所

請負人である破産者の支払停止前に締結された請負契約に基づく注文者の破産者に対する違約金債権の取得が,破産法72条2項2号にいう「前に生じた原因」に基づく場合に当たり,上記違約金債権を自働債権とする相殺が許されるとされた事例

説明が難しいせいか、結構重要な案件なのに新聞報道はありませんでしたので、事実確認から見ていきます。

(1) Aさんと株式会社西建設(破産会社)は,平成27年9 月から平成28年4月までの間に,Aさんを注文者,破産会社を請負人として,別 紙請負契約目録記載アからエまでの各請負契約を締結した。

判決文の下の方に工事の一覧が出ていますが、総額2億円ぐらいのヤード建設工事です。

(2) 本件各契約には,要旨次の各定めがある。
ア 注文者は,請負人の責めに帰すべき事由により工期内に工事が完成しないと きは,契約を解除することができる。
イ 上記アの定めにより契約が解除された場合においては,請負人は,報酬額の 10分の1に相当する額を違約金として支払わなければならない。

(3) 破産会社は,本件各契約のうち本件契約ウの工事については平成28年6 月10日までに完成させたが,本件契約ア,イ及びエの工事については,同月15日,上告人に対し,資金繰りに窮 して続行が困難である旨相談し,上告人から,工事続行不能届を提出するよう指示 された。


期限内にどうやっても間に合わない事態になってしまったので、「できません」という書類を出せとAさんが要求したようです。破産の正式手続きをする前のいわばインサイダー情報みたいなものでしょうか。ただ、破産手続きを知り得たかどうかは分かりません。

(4) 破産会社の支払の停止を知った上告人は,平成28年6月20日までに, 破産会社に対し,本件各未完成契約について,本件条項に基づき解除する旨の意思 表示をした。これにより,上告人は,本件各未完成契約における本件条項に基づく 各違約金債権小計2198万6532円及 びその他の債権75万1142円の合計2273万7674円を取得した。また, 破産会社は,同日までに,本件契約アからウまでに基づく各報酬債権合計2268万6429円を取得した。

2億円で2000万円そこそこしか戻ってないのでは、かなりの損失です。

(5) 破産会社は,平成28年6月23日,破産手続開始の決定を受け,被上告 人が破産管財人に選任された。

破たんしたので弁護士Bが管財人になったようです。

(6) 上告人は,平成28年8月5日,被上告人に対し,上記(4)の本件各違約金 債権等合計2273万7674円を自働債権,本件各報酬債権合計2268万64 29円を受働債権として対当額で相殺する旨の意思表示をした。

弁護士は「破産になったので、そもそもこれ以上の返金は認めませんよ。すでに渡した分も債権ですからね。」と言ってきたようです。そりゃ1億8千万弱を泣いてくれと言われたんじゃ、そりゃふざけるなとなりますね。

(1) 破産法は,破産債権についての債権者間の公平・平等な扱いを基本原則と する破産手続の趣旨が没却されることのないよう,72条1項3号本文において, 破産者に対して債務を負担する者において支払の停止があったことを知って破産者 に対して破産債権を取得した場合にこれを自働債権とする相殺を禁止する
すでに渡した分も計算して配当しますから!と宣言された状態です。

(2)ア 本件各違約金債権は,上告人が破産会社の支払の停止があったことを知 った後に本件条項に基づいて本件各未完成契約を解除したことによって現実に取得 するに至ったものであるから,破産法72条1項3号に規定する破産債権に該当す る。
イ もっとも,本件各違約金債権は,いずれも,破産会社の支払の停止の前に上 告人と破産会社との間で締結された本件各未完成契約に基づくものである。


裁判所は、その返金された分も本来的には破産法の範囲内でいう管財人が管理するべき財産だと言ってます。でも、これは破産手続き前にきちんと契約して返金しますよと契約してるよね。

本件各違約金債権の取得は,破産法72条2項2号に掲げる「支払 の停止があったことを破産者に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた 原因」に基づく場合に当たり,本件各違約金債権を自働債権,本件各報酬債権を受 働債権とする相殺は,自働債権と受働債権とが同一の請負契約に基づくものである か否かにかかわらず,許されるというべきである。

別にインサイダーでもないんだし、発注した時点で契約してたんだから、その契約に基づいて先に返された分は許してやれよという判決でした。

第三小法廷判
裁判長裁判官 林 景一
裁判官 戸倉三郎
裁判官 宮崎裕子
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴

組合の前の総会は無効なのに次の総会開催 次の総会は無効

2020-09-07 08:55:28 | 日記
平成31(受)558  総会決議無効確認等請求事件
令和2年9月3日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻  広島高等裁判所
事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しの訴えに,同選挙が取り消されるべきことを理由として後任理事等を選出する後行選挙の効力を争う訴えが併合されている場合は,特段の事情がない限り,先行選挙の取消しの訴えの利益は消滅しない

報道が出てこないので、事実確認から見ていきます。

被上告人は中小企業等協同組合法に基づき設立された事業協同組合であり,上告人は被上告人の組合員である。
①平成28年5月16日に行われた被上告人の役員選挙について,同法54条において準用する会社法831条1項1号に基づき,その取消しを求めるとともに,
②上記選挙中の理事の選出に関する部分を取り消す旨の判決の確定を条件に,平成30年5月28日に行われた被上告人の役員選挙の不存在確認を求める事案である。


分かりにくいかもしれませんが、会社と組合は違います。会社は営利追及社団法人という定義があります。組合法でいう場合は
第一条 この法律は、中小規模の商業、工業、鉱業、運送業、サービス業その他の事業を行う者、勤労者その他の者が相互扶助の精神に基き協同して事業を行うために必要な組織について定め、これらの者の公正な経済活動の機会を確保し、もつてその自主的な経済活動を促進し、且つ、その経済的地位の向上を図ることを目的とする。
とあるので、基本的には配当金を出さず業界の健全性を確保するための法人です。

そこで組合法では
第五十四条 総会の決議の不存在若しくは無効の確認又は取消しの訴えについては、会社法第八百三十条、第八百三十一条、第八百三十四条(第十六号及び第十七号に係る部分に限る。)、第八百三十五条第一項、第八百三十六条第一項及び第三項、第八百三十七条、第八百三十八条並びに第八百四十六条(株主総会の決議の不存在若しくは無効の確認又は取消しの訴え)の規定(監査権限限定組合にあつては、監査役に係る部分を除く。)を準用する。
手続きは会社法に従うこととしました。

(1)平成28年5月16日に開催された被上告人の通常総会において,理事を選出する原判決別紙選挙目録記載1の選挙及び監事を選出する同目録記載2の選挙が行われた。

通常の定時株主総会に相当します。

(2)理事会がした招集決定に基づき,同理事会で選出された代表理事である理事長が招集して,平成30年5月28日,被上告人の通常総会が開催された。同総会においては,本件選挙1及び2で選出された理事及び監事全員が任期の満了により退任したとして,理事を選出する原判決別紙選挙目録記載3の選挙及び監事を選出する同目録記載4の選挙が行われた。

任期満了で理事と監事の選挙は、会社で言うと取締役と監査役の選任選挙である株主総会に相当します。

(3) 上告人は,平成28年8月12日,本件選挙1及び2の各取消しを求める訴えを提起し(以下,この訴えに係る請求を「本件各取消請求」という。),平成30年7月26日,本件選挙1が取り消されるべきものであることを理由とする本件選挙3及び4の各不存在確認請求(以下「本件各不存在確認請求」という。)を追加した。

(1)がそもそもおかしいという訴えのようです。

(1) 事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えの係属中に,後行の選挙が行われ,新たに理事又は監事が選出された場合であっても,理事を選出する先行の選挙を取り消す旨の判決が確定したときは,先行の選挙は初めから無効であったものとみなされるのであるから,その選挙で選出された理事によって構成される理事会がした招集決定に基づき同理事会で選出された代表理事が招集した総会において行われた新たに理事又は監事を選出する後行の選挙は,いわゆる全員出席総会においてされたなどの特段の事情がない限り,瑕疵があるものといわざるを得ない(最高裁昭和60年(オ)第1529号平成2年4月17日第三小法廷判決・民集44巻3号526頁,最高裁平成10年(オ)第1183号同11年3月25日第一小法廷判決・民集53巻3号580頁参照)。

当然あるとは思っていましたが、似たような裁判があるのですね。

事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えに,同選挙が取り消されるべきものであることを理由として後任理事又は監事を選出する後行の選挙の効力を争う訴えが併合されている場合には,上記特段の事情がない限り,先行の選挙の取消しを求める訴えの利益は消滅しないものと解するのが相当である。

株式会社は民間だからなのでしょうけど、政治関係はそうはいきませんね。一票の格差で選挙無効にはならないと。この二重基準はどうなんだろうと思いますが。

本件選挙1を取り消す旨の判決が確定し,本件選挙4に瑕疵があることになれば,本件選挙2で選出された監事が現在も監事としての権利義務を有することになり得るため(中小企業等協同組合法36条の2),依然として本件選挙2の取消しを求める実益があるのであるから,本件選挙4の瑕疵の有無が判断されていない現時点で本件選挙2の取消しを求める訴えの利益が消滅したとはいえない。

第三十六条の二 役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。


第一小法廷裁判官全員一致でした。

裁判長裁判官 小池 裕  妥当
裁判官 池上政幸  妥当
裁判官 木澤克之  妥当
裁判官 山口 厚  妥当
裁判官 深山卓也 妥当

この間に合った取引は、有効になるのでしょうか?重要な案件は理事監事が決めますからね。既に裁判沙汰になっているので、取引先は善意の第三者とはいかないでしょうし。その辺は実務的にはどうするのかなと心配になってきます。
中小企業の社長が、名誉職を巡って大喧嘩なのかなぁと勝手に想像しながら読んでみました。しかし、この組合は事実上の許認可権があるような団体なのでしょうか?法律論からすれば、手続きは妥当かとは思いますが収拾つくのでしょうか。


判決と関係ないのですが、第一小法廷には女性裁判官がいないのですね。