令和4(受)1293 地位確認等請求事件
令和5年7月20日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 名古屋高等裁判所
無期契約労働者と有期契約労働者との間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違の一部が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断に違法があるとされた事例
日経新聞の報道です。
定年再雇用、基本給格差「支給目的で検討」 最高裁初判断
原告は名古屋自動車学校(名古屋市)の元社員2人。2013〜14年に定年を迎え、嘱託職員として再雇用後も仕事内容などは定年前と変わらなかったが、月額約16万〜18万円だった基本給が4〜5割ほどに減った。訴訟では差額分の支払いを求めた。
当時の労働契約法20条は正社員と非正規社員の「不合理な待遇格差」を禁じ、同種の規定を盛り込んだパートタイム・有期雇用労働法が21年に全面施行された。訴訟では旧20条に照らし、正社員と再雇用者の基本給の差が不合理かどうかが争われた。
事実確認を見ていきます。
(1)ア 賃金は、月給制であり、基本給、役付手当等で構成されていた。このうち、基本給は一律給と功績給から成り、役付手当は主任以上の役職に就いている場合に支給するものとされていた。また、正職員に対しては、夏季及び年末の年2回、賞与を支給するものとされ、その額は、基本給に所定の掛け率を乗じて得た額に10段階の勤務評定分を加えた額とされていた。
イ 平成25年以降の5年間における基本給の平均額は、管理職以外の正職員のうち定の資格の取得から1年以上勤務した者については、月額14万円前後で推移していた。上記平均額は、上記の者のうち勤続年数が1年以上5年未満のものについては月額約11万2000円から約12万5000円までの間で推移していたが、勤続年数に応じて増加する傾向にあり、勤続年数が30年以上のものについては月額約16万7000円から約18万円までの間で推移していた。
勤続短期正職員については、1回当たり約17万4000円から約19万6000円までの間で推移していた。
自動車教習所の教員ですが意外と安いですね。
ア 上告人は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条1項2号所定の継続雇用制度を導入しており、定年退職する正職員のうち希望する者については、期間を1年間とする有期労働契約を締結し、これを更新して、原則として65歳まで再雇用することとしていた。
イ 上告人は、上記アの有期労働契約に基づき勤務する者の労働条件について、正職員に適用される就業規則等とは別に、嘱託規程を設けていた。嘱託規程においては、嘱託職員の賃金体系は勤務形態によりその都度決め、賃金額は経歴、年齢その他の実態を考慮して決める旨や、再雇用後は役職に就かない旨等が定められていた。
この法律は厄介なんですよ。当然65歳まで雇ってもらえると思い込んでいる、権利だとすら思いこんでいる人たちがいるんですね。ただでさえ日本の労働恵沢法では解雇には世界で一番厳しい解雇条件が付けられて、仕事ができないというだけでは解雇できず、刑事事件でも起こさない限り解雇できない状況です。
(3)ア 被上告人X1 は、昭和51年頃以降正職員として勤務し、主任の役職にあった平成25年7月12日、退職金の支給を受けて定年退職した。定年退職後再雇用され、同月13日から同30年7月9日までの間、嘱託職員として教習指導員の業務に従事した。
被上告人X2は、昭和55年以降正職員として勤務し、主任の役職にあった平成26年10月6日、退職金の支給を受けて定年退職した。被上告人X2は、定年退職後再雇用され、同月7日から令和元年9月30日までの間、嘱託職員として教習指導員の業務に従事した。
イ 被上告人X1の基本給は、定年退職時には月額18万1640円、その後は月額7万4677円、人X2の基本給は、定年退職時には月額16万7250円であったと
ころ、再雇用後の1年間は月額8万1700円、その後は月額7万2700円
被上告人らは、再雇用後、厚生年金保険法及び雇用保険法に基づき、原判決別紙1及び3の「厚生年金(報酬比例部分)」欄及び「高年齢雇用継続給付金」欄記載のとおり、老齢厚生年金及び高年齢雇用継続基本給付金を受給した。
(4)被上告人X1は、平成27年2月24日、上告人に対し、自身の嘱託職員としての賃金を含む労働条件の見直しを求める書面を送付し、同年7月18日までの間、この点に関し、上告人との間で書面によるやり取りを行った。
当然事前に確認したわけですよね。そうでなくても自動車教習所のような衰退産業で、雇用調整をしたいところでフルで定年前の金額を払えというのは酷というものでしょう。午前中だけ、午後だけの出勤ならまだしも。
最高裁は
労働契約法20条は、有期労働契約を締結している労働者と無期労働契約を締結している労働者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期労働契約を締結している労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものであり、両者の間の労働条件の相違が基本給や賞与の支給に係るものであったとしても、それが同条にいう不合理と認められるものに当たる場合はあり得るものと考えられる。
(2)ア 管理職以外の正職員のうち所定の資格の取得から1年以上勤務した者の基本給の額について、勤続年数による差異が大きいとまではいえないことからすると、正職員の基本給は、勤続年数に応じて額が定められる勤続給としての性質のみを有するということはできず、職務の内容に応じて額が定められる職務給としての性質をも有するものとみる余地がある。他方で、正職員については、長期雇用を前提として、役職に就き、昇進することが想定されていたところ・・・
おかしいでしょう、同一労働同一賃金を言うならば、年功給は明らかにおかしいでしょう。ただ長くいただけで給料が上がるんですよ。それこそ法の趣旨に遭いません。さらに、高齢路ドライバーによる事故も多発してますよね。それも無視ですか?
一部の者の勤続年数に応じた金額の推移から年功的性格を有するものであったとするにとどまり、他の性質の有無及び内容並びに支給の目的を検討せず、また、嘱託職員の基本給についても、その性質及び支給の目的を何ら検討していない。
何でそっちに合わせなきゃならんのか。
イ また、労使交渉に関する事情を労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮するに当たっては、労働条件に係る合意の有無や内容といった労使交渉の結果のみならず、その具体的な経緯をも勘案すべきものと解される。
その他ってのが厄介で、どの事情が該当するというのでしょうか?これはいくらでも拡大会社記できるトンデモ規定です。
(3)被上告人らに支給された嘱託職員一時金は、正職員の賞与と異なる基準によってではあるが、同時期に支給されていたものであり、正職員の賞与に代替するものと位置付けられていたということができるところ、原審は、賞与及び嘱託職員一時金の性質及び支給の目的を何ら検討していない。
その前に再雇用のときに納得して契約したんでしょ?それも一切無視なんですか?このときに労基署か何かに行くべきで、後出しじゃんけんを最高裁が認めるのですね。
第一小法廷判決全員一致
裁判長裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也
裁判官 安浪亮介
裁判官 岡 正晶
裁判官 堺 徹
トンデモ判決ですね
令和5年7月20日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 名古屋高等裁判所
無期契約労働者と有期契約労働者との間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違の一部が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断に違法があるとされた事例
日経新聞の報道です。
定年再雇用、基本給格差「支給目的で検討」 最高裁初判断
原告は名古屋自動車学校(名古屋市)の元社員2人。2013〜14年に定年を迎え、嘱託職員として再雇用後も仕事内容などは定年前と変わらなかったが、月額約16万〜18万円だった基本給が4〜5割ほどに減った。訴訟では差額分の支払いを求めた。
当時の労働契約法20条は正社員と非正規社員の「不合理な待遇格差」を禁じ、同種の規定を盛り込んだパートタイム・有期雇用労働法が21年に全面施行された。訴訟では旧20条に照らし、正社員と再雇用者の基本給の差が不合理かどうかが争われた。
事実確認を見ていきます。
(1)ア 賃金は、月給制であり、基本給、役付手当等で構成されていた。このうち、基本給は一律給と功績給から成り、役付手当は主任以上の役職に就いている場合に支給するものとされていた。また、正職員に対しては、夏季及び年末の年2回、賞与を支給するものとされ、その額は、基本給に所定の掛け率を乗じて得た額に10段階の勤務評定分を加えた額とされていた。
イ 平成25年以降の5年間における基本給の平均額は、管理職以外の正職員のうち定の資格の取得から1年以上勤務した者については、月額14万円前後で推移していた。上記平均額は、上記の者のうち勤続年数が1年以上5年未満のものについては月額約11万2000円から約12万5000円までの間で推移していたが、勤続年数に応じて増加する傾向にあり、勤続年数が30年以上のものについては月額約16万7000円から約18万円までの間で推移していた。
勤続短期正職員については、1回当たり約17万4000円から約19万6000円までの間で推移していた。
自動車教習所の教員ですが意外と安いですね。
ア 上告人は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条1項2号所定の継続雇用制度を導入しており、定年退職する正職員のうち希望する者については、期間を1年間とする有期労働契約を締結し、これを更新して、原則として65歳まで再雇用することとしていた。
イ 上告人は、上記アの有期労働契約に基づき勤務する者の労働条件について、正職員に適用される就業規則等とは別に、嘱託規程を設けていた。嘱託規程においては、嘱託職員の賃金体系は勤務形態によりその都度決め、賃金額は経歴、年齢その他の実態を考慮して決める旨や、再雇用後は役職に就かない旨等が定められていた。
この法律は厄介なんですよ。当然65歳まで雇ってもらえると思い込んでいる、権利だとすら思いこんでいる人たちがいるんですね。ただでさえ日本の労働恵沢法では解雇には世界で一番厳しい解雇条件が付けられて、仕事ができないというだけでは解雇できず、刑事事件でも起こさない限り解雇できない状況です。
(3)ア 被上告人X1 は、昭和51年頃以降正職員として勤務し、主任の役職にあった平成25年7月12日、退職金の支給を受けて定年退職した。定年退職後再雇用され、同月13日から同30年7月9日までの間、嘱託職員として教習指導員の業務に従事した。
被上告人X2は、昭和55年以降正職員として勤務し、主任の役職にあった平成26年10月6日、退職金の支給を受けて定年退職した。被上告人X2は、定年退職後再雇用され、同月7日から令和元年9月30日までの間、嘱託職員として教習指導員の業務に従事した。
イ 被上告人X1の基本給は、定年退職時には月額18万1640円、その後は月額7万4677円、人X2の基本給は、定年退職時には月額16万7250円であったと
ころ、再雇用後の1年間は月額8万1700円、その後は月額7万2700円
被上告人らは、再雇用後、厚生年金保険法及び雇用保険法に基づき、原判決別紙1及び3の「厚生年金(報酬比例部分)」欄及び「高年齢雇用継続給付金」欄記載のとおり、老齢厚生年金及び高年齢雇用継続基本給付金を受給した。
(4)被上告人X1は、平成27年2月24日、上告人に対し、自身の嘱託職員としての賃金を含む労働条件の見直しを求める書面を送付し、同年7月18日までの間、この点に関し、上告人との間で書面によるやり取りを行った。
当然事前に確認したわけですよね。そうでなくても自動車教習所のような衰退産業で、雇用調整をしたいところでフルで定年前の金額を払えというのは酷というものでしょう。午前中だけ、午後だけの出勤ならまだしも。
最高裁は
労働契約法20条は、有期労働契約を締結している労働者と無期労働契約を締結している労働者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期労働契約を締結している労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものであり、両者の間の労働条件の相違が基本給や賞与の支給に係るものであったとしても、それが同条にいう不合理と認められるものに当たる場合はあり得るものと考えられる。
(2)ア 管理職以外の正職員のうち所定の資格の取得から1年以上勤務した者の基本給の額について、勤続年数による差異が大きいとまではいえないことからすると、正職員の基本給は、勤続年数に応じて額が定められる勤続給としての性質のみを有するということはできず、職務の内容に応じて額が定められる職務給としての性質をも有するものとみる余地がある。他方で、正職員については、長期雇用を前提として、役職に就き、昇進することが想定されていたところ・・・
おかしいでしょう、同一労働同一賃金を言うならば、年功給は明らかにおかしいでしょう。ただ長くいただけで給料が上がるんですよ。それこそ法の趣旨に遭いません。さらに、高齢路ドライバーによる事故も多発してますよね。それも無視ですか?
一部の者の勤続年数に応じた金額の推移から年功的性格を有するものであったとするにとどまり、他の性質の有無及び内容並びに支給の目的を検討せず、また、嘱託職員の基本給についても、その性質及び支給の目的を何ら検討していない。
何でそっちに合わせなきゃならんのか。
イ また、労使交渉に関する事情を労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮するに当たっては、労働条件に係る合意の有無や内容といった労使交渉の結果のみならず、その具体的な経緯をも勘案すべきものと解される。
その他ってのが厄介で、どの事情が該当するというのでしょうか?これはいくらでも拡大会社記できるトンデモ規定です。
(3)被上告人らに支給された嘱託職員一時金は、正職員の賞与と異なる基準によってではあるが、同時期に支給されていたものであり、正職員の賞与に代替するものと位置付けられていたということができるところ、原審は、賞与及び嘱託職員一時金の性質及び支給の目的を何ら検討していない。
その前に再雇用のときに納得して契約したんでしょ?それも一切無視なんですか?このときに労基署か何かに行くべきで、後出しじゃんけんを最高裁が認めるのですね。
第一小法廷判決全員一致
裁判長裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也
裁判官 安浪亮介
裁判官 岡 正晶
裁判官 堺 徹
トンデモ判決ですね