最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

債務保証先が再生案件になり債務保証が原因で債務超過になった場合、民事再生法では否認できない

2018-01-25 06:45:26 | 日記
平成29(受)761  再生債権査定異議事件
平成29年11月16日  最高裁判所第一小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所

再生債務者が無償行為若しくはこれと同視すべき有償行為の時に債務超過であること又はその無償行為等により債務超過になることは,民事再生法127条3項に基づく否認権行使の要件ではない。

事実認定から見ましょう。
1(1)A社は平成26年8月29日,上告人との間で,B社の上告人に対する7億円の借入金債務を連帯 保証する旨の契約をした。
(2)B社は、平成27 年2月18日,再生手続開始の申立てをし,その後,再生手続開始の決定を受け た。
2 上告人が再生債権として届出をした本件連帯 保証契約に基づく連帯保証債務履行請求権につき,その額を0円と査定する旨の決 定がされた。


上告人は0円査定はないだろと請求権の確認の訴えを起こしたようです。

民事再生法127条3項の否認が再生債権者を害する行為の否認の 一類型であることなどから,再生債務者が無償行為若しくはこれと同視すべき有償 行為(以下「無償行為等」という。)の時に債務超過であること又はその無償行為 等により債務超過になることが同項に基づく否認権行使の要件である。

「3  再生債務者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、再生手続開始後、再生債務者財産のために否認することができる。」
確かにこの条文を見れば、対象外ですよね。

裁判所は、
民事再生法127条3項は,再生債務者が支払の停止等 があった後又はその前6月以内にした無償行為等を否認することができるものと し,同項に基づく否認権行使について,対象となる行為の内容及び時期を定めるところ,同項には,再生債務者が上記行為の時に債務超過であること又は上記行為に より債務超過になることを要件とすることをうかがわせる文言はない。・・・同項所定の要件に加えて,再生債務者がその否認の対象となる行為の時に債務 超過であること又はその行為により債務超過になることを要するものとすること は,同項の趣旨に沿うものとはいい難い。

事件名が平成29とあるので、1年以上の時間がたってから裁判になったのでしょうか。

結論
再生債務者が無償行為等の時に債務超過であること又はその無償行 為等により債務超過になることは,民事再生法127条3項に基づく否認権行使の 要件ではないと解するのが相当である。

第一小法廷判
裁判長裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚

いくらの連帯保証をしたのでしょうか。上告人としては、嵌められた気分でしょう。ただ、要件としては、厳し過ぎやしませんか?とはいっても、これは司法の責任ではなく立法の責任ですが。

雑すぎる判決文:選挙無効の裁判(民衆訴訟では訴えられない)

2018-01-22 09:52:29 | 日記
平成29(行ツ)67  選挙無効請求事件
平成29年10月31日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所
公職選挙法204条の選挙無効訴訟において,選挙人は,同法205条1項所定の選挙無効の原因として同法10条1項2号の規定の違憲を主張することができない。

なんだかよく分からない裁判です。

事実認定めいたところというか、概要というかは
本件訴訟は,選挙人が民衆訴訟(行政事件訴訟法5条)である公職選挙法204条の選挙無効訴訟として選挙人たる資格で提起した

公職選挙法204条の選挙無効訴訟において選挙人が同法205条1項所定の選挙無効の原因として同法10条1項2号の規定の違憲を主張することの可否とあります。
205条は選挙無効の訴え、204条は衆議院議員又は参議院議員の選挙の効力に関する訴訟です。

民衆訴訟とは、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する制度のようなので、誰でもできるという前提のようです。民事訴訟法第312条は、最高裁に控訴出来る範囲を示したものです。

想像するに、1票の格差に関する裁判でしょうか。民衆訴訟でやれば訴えられると思ったのですが、高裁で棄却されたようです。民衆訴訟は今回の裁判内容は該当しないというのが判決趣旨のようです。


最高裁では、全員一致で
選挙人が同条の選挙無効訴訟において同法205条1項所定の選挙無効の原因として本件規定の違憲を主張し得るものとはいえない。
となりました。手続きを取る方法がおかしいとしました。ただ2名が補足意見を出しています

木内道祥の裁判官の意見
本件選挙当時,投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったか否かの点において異なる意見を持つ。
林景一裁判官の意見
本件定数配分規定は合憲であったとする点で多数意見に同調するものであるが,幾つかの基本的な論点において趣を異にするところがある。

二人とも、許容範囲でしょう?という事のようです。

本来、1票の格差は裁判所で論じるべきではないとするのが私の個人的見解です。島根のような全県区もあれば、東京のようにわずかな面積で数人というような選挙区で対応していますが、これでは地方の問題は吸い上げることができません。
例えば、今問題になっている北朝鮮関係の問題ですが、人口が少ない日本海側の過疎県はこのような問題を訴えても、東京なの度の大都市に振り回されてまともな議論すらできないという状態はまずいのです。3倍ぐらいであれば許容すべきではないかと思っています。

それと、この判決文はないですよね。あまりにも雑すぎて、何が論じられているのか背景が全く分かりません。さらには、この文章を外国語に翻訳できるのでしょうか?この意味は、背景を共有しなくても理解できるように書く意思はあったのか、ということです。こういう文章は、法律家ではよくありますが、この特権階級意識の表れだと思えます。

裁判長裁判官 山崎敏充 悪文×
裁判官 岡部喜代子 今一つ
裁判官 木内道祥 まあまあ
裁判官 戸倉三郎 今一つ
裁判官 林 景一 まあまあ

はれの日の被害者さんへ

2018-01-21 15:52:39 | 日記
はれの日事件は酷かったですね。

過去にこのような判例があります。民事では取り戻せなくても、刑事事件としては立件できるかもしれません。
詐欺罪として被害届を出してください。
逃げた従業員さん、社長さん、誠意を持って対応しないと組織犯罪扱いになりますよ。

奨学金で生活保護減額は違法:福島地裁

2018-01-17 07:38:52 | 日記
時事通信の記事によると、以下の通りです。

福島市が奨学金を収入と認定し、生活保護費を減額されたことで精神的苦痛を受けたとして、市内の30代女性と高校生の長女が市に計100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、福島地裁であった。金沢秀樹裁判長は、処分は違法として、母娘に各5万円を支払うよう命じた。
 判決によると、市は2014年、高校1年だった長女の奨学金計9万円の全額を収入認定し、生活保護費を減額した。母親が審査請求し、厚生労働相が15年に減額処分を取り消した。
 金沢裁判長は「市は奨学金が収入認定除外の対象となるかどうか検討しておらず、裁量権を逸脱し違法」と指摘。「母親は経済的に深刻な不安を抱き、長女は努力して獲得した奨学金を事実上没収された」として、いずれも精神的損害を認めた。


東京新聞では以下の通りです。

 子どもの奨学金を収入とみなされ生活保護費が減額となった福島市の母子が、精神的苦痛を受けたとして市に100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福島地裁は16日、「生活保護の支給額から奨学金を差し引いた市の処分は違法」と判断、母子に慰謝料10万円を支払うよう命じた。
 原告は30代の女性と長女。金沢秀樹裁判長は判決理由で「市は奨学金を収入と認定すべきかどうか検討していない」と指摘。減額分が後に追加支給されたことなどを踏まえ、慰謝料は10万円が相当とした


地裁で判決文が公開されていないため何とも言えませんが、概ね妥当な感じがします。ただ、2014年高校1年生で、その後卒業したかどうかは記載されていませんが、削減されたまま卒業できたのであれば生活保護削減は妥当ということになりますね。
不正受給がかなりある制度なので、その一環として見せしめにしたかったのでしょうが、もう少し考えても良かったのではないかと思います。

税務署にタックスヘイブン利用だと吹っ掛けらた。逆転判決

2018-01-11 07:49:53 | 日記
平成28(行ヒ)224  法人税更正処分取消等請求事件
平成29年10月24日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  名古屋高等裁判所
1 内国法人に係る特定外国子会社等が行っていた地域統括業務は,それが地域企画,調達,財務,材料技術,人事,情報システム及び物流改善という多岐にわたる業務から成り,集中生産・相互補完体制を強化し,各拠点の事業運営の効率化やコスト低減を図ることを目的とするものであるなど判示の事実関係の下においては,租税特別措置法(平成21年法律第13号による改正前のもの)66条の6第3項にいう株式の保有に係る事業に含まれるとはいえない。
2 内国法人に係る特定外国子会社等につき,①対象地域内のグループ会社に対して行う地域企画,調達,財務,材料技術,人事,情報システム及び物流改善に係る地域統括業務の中の物流改善業務に関する売上高が収入金額の多くを占めていたこと,②所得金額(税引前当期利益)は保有株式の受取配当の占める割合が高かったものの,その配当収入の中には上記地域統括業務によって上記グループ会社全体に原価率が低減した結果生じた利益が相当程度反映されていたこと,③上記特定外国子会社等の現地事務所で勤務する従業員の多くが上記業務に従事し,その保有する有形固定資産の大半が上記業務に供されていたことなど判示の事情の下においては,上記地域統括業務が,租税特別措置法(平成21年法律第13号による改正前のもの)66条の6第3項及び4項にいう上記特定外国子会社等の主たる事業である。


どうやらこれのようです。

1 法人税の各確定申告をしたところ、改正前の租税特別措置法66条の6第1項により,シンガポール共和国の子会社であるAの課税対象留保金額に相当する金額が上告人の本件各事業年度の所得金額の計算上益金の額に算入されるなどとして,平成20年3月期の法人税の再更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分並びに平成21年3月期の法人税の再更正処分を受けた。
これを不服として取り消しを求めた。


いわゆるタックスヘイブンに子会社を作って、利益を留保して課税逃れをしたとみなされたようです。

(1) 措置法66条の6第1項は,同項各号に掲げる内国法人に係る外国関係会社(外国法人で,その発行済株式又は出資の総数又は総額のうちに内国法人等が有する直接及び間接保有の株式等の数の合計数又は合計額の占める割合が100分の50を超えるものをいう。

実質的な完全子会社状態にある企業が対象のようです。

本店又は主たる事務所の所在する国又は地域(以下「本店所在地国」という。)におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国関係会社(法人の所得に対して課される税が存在しない国若しくは地域に本店若しくは主たる事務所を有する外国関係会社,又はその各事業年度の所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の100分の25以下である外国関係会社をいう。

25%以下の出資した子会社が対象となります。この会社で出た利益は、日本国内の法人税に組み入れるという法律です。

(2) もっとも,措置法66条の6第4項は,
①同条3項に規定する特定外国子会社等(同条1項に規定する特定外国子会社等から株式等又は債券の保有,工業所有権その他の技術に関する権利等の提供等を主たる事業とするものを除いたもの。
②本店所在地国において,主たる事業を行うに
必要と認められる事務所,店舗,工場その他の固定施設を有し(実体基準),
③その事業の管理,支配及び運営を自ら行っているものである場合であって(管理支配基準),
④各事業年度においてその行う主たる事業が,卸売業,銀行業,信託業,
金融商品取引業,保険業,水運業又は航空運送業のいずれかに該当する場合には,その事業を主として当該特定外国子会社等に係る所定の関連者以外の者との間で行
っている場合に該当するとき


特許権の使用料で稼いでいるだけでなく、きちんと生産している会社が対象です。

これについての事実認定は、
1 ASEAN・台湾地域のグループ会社の保有株式を現物出資してAを設立した。
2 Aは,上告人の100%子会社であり,同18年4月1日から同19年3月31日まで及び同年4月1日から同20年3月31日までの各事業年度(以下,それぞれ「2007事業年度」,「2008事業年度」といい,併せて「A各事業年度」という。)において,ASEAN諸国等に存する子会社13社及び関連会社3社の株式を保有してい
た。
3 Aのシンガポールにおける所得に対する租税の負担割合は,2007事業年度では22.89%,2008事業年度では12.78%であった。
4 A各事業年度当時,地域企画,調達,財務,材料技術,人事,情報システム及び物流改善に係る地域統括に関する業務(以下,この業務を「地域統括業務」という。)のほか,持株(株主総会,配当処理等)に関する業務,プログラム設計業務及びBのための各種業務の代行業務を行っていた。
5 現地に在住する日本人の代表取締役と現地勤務の従業員三十数人で業務を遂行していたところ,従業員のうち20人以上は地域統括業務に,その余はプログラム設計業務及びBのための各種業務の代行業務に従事しており,持株に関する業務のみに従事している者はいなかった。


5が重要ですね。ちゃんと従業員がいてプログラム作成業務が過半数いたという事。

6 Aの収入金額のうち地域統括業務の中の物流改善業務に関する売上額は,2007事業年度において約4.9億シンガポールドル,2008事業年度において約6.1億シンガポールドルに上り,いずれも収入金額の約85%を占めていた。

最高裁は、実質的に売上も業務改善業務で稼いでいたと認めました。

7 Aは,A各事業年度当時,シンガポールにおいて株主総会及び取締役会を開催し,役員は同国において職務執行をしていた。また,Aは,本件現地事務所において会計帳簿を作成し,保管していた。

法的手続きとしても実態がありました。原審では税務署の判断を丸ごとそのまま認めていたようです。ちゃんと調査したのでしょうか???全く信じられません。

これについて最高裁は、
Aの行っていた地域統括業務は,相当の規模と実体を有するものであり,受取配当の所得金額に占める割合が高いことを踏まえても,事業活動として大きな比重を占めていたということができ,A各事業年度においては,地域統括業務が措置法66条の6第3項及び4項にいうAの主たる事業であったと認めるのが相当である。


当然すぎる判決ですね。ただ気に入らないのは、「訴訟の総費用は,これを400分し,その1を上告人の負担とし,その余を被上告人の負担とする。」です。全額税務署に払わせるべきです。

第三小法廷判決
裁判長裁判官 山崎敏充
裁判官 岡部喜代子
裁判官 木内道祥
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一


税金にかかわる裁判で、納税者側が勝つ例はほとんどありません。裁判費用がかかるのと、それにかかわる時間を考えれば税務署の言いなりになって裁判を諦めるのがほとんどです。
一方、税務署側は何のリスクも負わないのです。調査にかかわる費用もこれも税金、個人の自腹を切ることはありません。
となれば、裁判費用の一部は徴税対象と決定した個人に払わせるか何かしないとダメでしょう。

今一つ判決:ベネッセの個人情報漏えい事件差し戻し

2018-01-08 09:06:06 | 日記
平成28(受)1892  損害賠償請求事件
平成29年10月23日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  大阪高等裁判所

個人情報の漏えいを理由とする損害賠償請求訴訟における損害に関する原審の判断に審理不尽の違法があるとされた事例

プライバシー侵害に基づく慰謝料請求に関するベネッセ個人情報流出事件のようです。
原告側の団体のページ「ベネッセ個人情報漏洩事件 被害者の会」


事件の概要は、こちらが詳しいです。
2014年6月ごろより、ベネッセの顧客に、ベネッセのみに登録した個人情報を使って他社からダイレクトメールが届くようになり、ベネッセから個人情報が漏洩しているのではないかという問い合わせが急増した。
ベネッセは社内調査を行い、 7月9日、原田泳幸会長兼社長が記者会見し、「データベースの顧客情報が外部に持ち出され、最大約2070万件の情報が漏洩した可能性がある」と発表した[2]。流出した情報は、進研ゼミなどの顧客の情報であり、子供や保護者の氏名、住所、電話番号、性別、生年月日など。
7月19日、警視庁は、ベネッセのグループ企業、シンフォームに勤務していた派遣社員のエンジニアを逮捕。取り調べで情報を持ち出し、名簿業者に売却したことを認めた。

裁判所の事実認定を見ていきます。
(1) 上告人は,未成年者であるBの保護者であり,被上告人は,通信教育等を目的とする会社である。
(2) 被上告人が管理していたBの氏名,性別,生年月日,郵便番号,住所及び電話番号並びにBの保護者としての上告人の氏名といった上告人に係る個人情報(以下「本件個人情報」と総称する。)は,遅くとも平成26年6月下旬頃までに外部に漏えいした(以下「本件漏えい」という。)。
(3) 本件漏えいは,被上告人のシステムの開発,運用を行っていた会社の業務委託先の従業員であった者が,被上告人のデータベースから被上告人の顧客等に係る大量の個人情報を不正に持ち出したことによって生じたものであり,上記の者は,持ち出したこれらの個人情報の全部又は一部を複数の名簿業者に売却した。


私の甥っ子の所にも届きましたよ。

大阪高裁は、
本件漏えいによって,上告人が迷惑行為を受けているとか,財産的な損害を被ったなど,不快感や不安を超える損害を被ったことについての主張,立証がされていないから,上告人の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。

うちの場合にも実害がないのでほったらかしにしました。これが、従来の法律家の考えでしょう。

最高裁では、
本件個人情報は,上告人のプライバシーに係る情報として法的保護の対象となるというべきであるところ(最高裁平成14年(受)第1656号同15年9月12日第二小法廷判決・民集57巻8号973頁参照),上記事実関係によれば,本件漏えいによって,上告人は,そのプライバシーを侵害されたといえる。


ちょっと待ってくださいよ。先の根拠となっている判決は、中国の国家元首が日本に来て講演をやったときに、その講演に抗議した人の情報を提供ですよね。抗議した内容はともかくとして、治安維持と業務執行妨害に絡んだものであり(この判決自体おかしなもの)、これとダイレクトメールと同列に見て議論を尽くしていないというのはどうなんでしょうか。キーワードが同じというだけで差し戻ししたように見えてきます。
最高裁は、もう少し差し戻しをする理由を丁寧に説明する必要があります。

全員一致で差し戻しになりました。

第二小法廷
裁判長裁判官 小貫芳信 今一つ
裁判官 鬼丸かおる 今一つ
裁判官 山本庸幸 今一つ
裁判官 菅野博之 今一つ

障害者年金は障害者になったときに申請しないと、時効で払われないことがある

2018-01-06 11:07:25 | 日記
平成29(行ヒ)44  障害年金請求事件
平成29年10月17日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  札幌高等裁判所


厚生年金保険法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)47条に基づく障害年金の支分権(支払期月ごとに支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利)の消滅時効は,当該障害年金に係る裁定を受ける前であっても,厚生年金保険法36条所定の支払期が到来した時から進行する。


事実確認から見ましょう。
1 
1)厚生年金保険
の被保険者であった昭和45年6月,交通事故によ り左下腿を切断する傷害を負った。

おそらく2級身体障害者になってしまったのでしょう。結構重症ですよ。

2)平成23年6月,厚生年金保険法47条(昭和6 0年法律第34号による改正前のもの。以下同じ。)に基づく障害年金
の裁定及び その支給をそれぞれ請求した。

第四七条 障害厚生年金は、疾病にかかり、又は負傷し、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)につき初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において被保険者であつた者が、当該初診日から起算して一年六月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。以下同じ。)があるときは、その日とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にある場合に、その障害の程度に応じて、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。

障害者年金を受け取らずにずっと働いてきたのでしょう。

3)平成23年8月,上告人に 対し,受給権を取得した年月を昭和45年6月とする障害年金の裁定をする一方, 厚生年金保険法36条(平成2年2月1日より前については平成元年法律第86号 による改正前のもの。以下同じ。)所定の支払期から5年を経過した障害年金につ いてはその支給を受ける権利が時効により消滅しているとして支給しなかった。

その理由として、札幌地裁は
2 厚生年金保険法47条に基づく障害年金の支分権(支払期月ごとに支払うも のとされる保険給付の支給を受ける権利)は,5年間これを行わないときは時効に より消滅し(厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関 する法律附則4条会計法30条),その時効は,権利を行使することができる時 から進行する(会計法31条2項,民法166条1項)ところ,上記支分権は,厚 生年金保険法36条所定の支払期の到来により発生するものの,受給権者は,当該 障害年金に係る裁定を受ける前においてはその支給を受けることができない。

としました。会計法第三十一条2項は「金銭の給付を目的とする国の権利について、消滅時効の中断、停止その他の事項(前項に規定する事項を除く。)に関し、適用すべき他の法律の規定がないときは、民法の規定を準用する。国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。」とあるので、民法の規定に従うことになります。

最高裁はこれに対して
障害年金を受ける権利の発生要件やその支給時期,金額等については,厚生年金保険法に明確な規定が設けられており,裁定は,受給権者の請求に 基づいて上記発生要件の存否等を公権的に確認するものにすぎないのであって(最高裁平成3年(行ツ)第212号同7年11月7日第三小法廷判決・民集49巻9 号2829頁参照),受給権者は,裁定の請求をすることにより,同法の定めると ころに従った内容の裁定を受けて障害年金の支給を受けられることとなるのである から,裁定を受けていないことは,上記支分権の消滅時効の進行を妨げるものでは ないというべきである。

結論
消滅時効は,当該障害年金に係る裁定を受ける前であ っても,厚生年金保険法36条所定の支払期が到来した時から進行するものと解するのが相当である。

ここまで過去の判例と法があれば、時効は成立してしまいますね。

第三小法廷判決
裁判長裁判官 木内道祥
裁判官 岡部喜代子
裁判官 山崎敏充
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一

差し押さえ命令で金額確定後にも遅延損害金を決められる

2018-01-04 16:16:44 | 日記
平成28(許)46  債権差押命令申立て却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
平成29年10月10日  最高裁判所第三小法廷  決定  破棄自判  東京高等裁判所

債権差押命令の申立書に請求債権中の遅延損害金につき申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者が当該債権差押命令に基づく差押債権の取立てとして第三債務者から金員の支払を受けた場合,申立日の翌日以降の遅延損害金も上記金員の充当の対象となる。

裁判所の事実認定です。
(1) 抗告人は,平成28年1月12日,東京地方裁判所に対し,相手方を債務者,荒川区を第三債務者とし,請求債権及び差押債権を次のとおりとする債権差押命令の申立てをし,同月20日,前件差押命令が発せられた。遅延損害金及び執行費用合計117万9934円と相手方が荒川区から支払を受ける介護給付費等に係る債権のうち上記請求債権の金額に満つるまでの部分を差押債権と設定されました。
税金未納だったのでしょうか。
(2) 本件債務名義は,元金及びこれに対する支払済みまでの遅延損害金の支払を内容とするものであった。東京地方裁判所では,第三債務者が遅延損害金の額を計算する負担を負うことのないように,債権差押命令の申立書には,請求債権中の遅延損害金につき,申立日までの確定金額を記載させる取扱いをした。
事務事情は分かりませんが、荒川区の計算が手間取ったのでしょう。
前件差押命令の申立てにおいても,抗告人は,本件取扱いに従って,請求債権中の遅延損害金を上記申立ての日までの確定金額とした。
(3) 抗告人は,平成28年2月22日から同年3月31日までの間に,荒川区から,前件差押命令に基づく差押債権の取立てとして,4回にわたり,上記(1)請求債権相当額(本件取立金)の支払を受けた。
(4) 抗告人は,平成28年4月11日,原々審に対し,相手方を債務者,荒川区を第三債務者とし,請求債権及び差押債権を次のとおりとする債権差押命令の申立て(以下「本件申立て」という。)をした。

請求債権 最終支払日の翌日以降の遅延損害金及び執行費用合計1万6797円
差押債権 相手方が荒川区から支払を受ける介護給付費等に係る債権のうち上記請求債権の金額に満つるまでの部分


原審では、「前件申立日までの遅延損害金及び執行費用の各確定金額を記載した以上,前件申立日の翌日以降の遅延損害金は,本件取立金の充当の対象とはならないものと解すべきである。」として、一度請求金額が確定したんだから、それ以降の分はダメでしょうと言う事のようです。

最高裁は
金銭債権に対する強制執行は,本来債務者に弁済すれば足りた第三債務者に対して,差押えによって,債務者への弁済を禁じ,差押債権者への弁済又は供託をする等の義務を課すものであるから,手続上,第三債務者の負担にも配慮がされなければならない。

債務者自らが請求債権中の遅延損害金の金額を計算しなければ,差押債権者の取立てに応ずべき金額が分からないという事態が生ずることのないようにするための配慮として,合理性を有するものである(最高裁平成20年(受)第1134号同21年7月14日第三小法廷判決・民集63巻6号1227頁参照)。


自らが計算しなければ分からないというのもどうかと。これは、裁判所命令によって強制的に調査して、確定させなければならないと思うのですが。という趣旨で、決められた制度だと言っているようです。確かにその通りです。。
本件取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者は,債権差押命令に基づく差押債権の取立てに係る金員の充当の場面では,もはや第三債務者の負担に配慮をする必要がないのであるから,上記金員が支払済みまでの遅延損害金に充当されることについて合理的期待を有していると解するのが相当であり,債権者が本件取扱いに従って債権差押命令の申立てをしたからといって,直ちに申立日の翌日以降の遅延損害金を上記金員の充当の対象から除外すべき理由はない

そして結論、全員一致です。
本件取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者が当該債権差押命令に基づく差押債権の取立てとして第三債務者から金員の支払を受けた場合,申立日の翌日以降の遅延損害金も上記金員の充当の対象となると解するのが相当である。


だからこそ、確定させていいじゃないかという気がしますけど。よほど抗告人の態度が悪かった?裁判官の心証を悪くしたのでしょうか。債権者としては、ふざけんなというのも分かりますよ。払えなくなったのだから、差押えになったわけで。

第三小法廷決定

裁判長裁判官 山崎敏充 今一つ
裁判官 岡部喜代子 今一つ
裁判官 木内道祥 今一つ
裁判官 戸倉三郎 今一つ
裁判官 林 景一 今一つ