最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

妥当判断:厚木基地の騒音問題訴えの資格なしの判決

2017-01-28 14:09:29 | 日記
平成27(受)2309  損害賠償等請求事件
平成28年12月8日  最高裁判所第一小法廷  判決  その他  東京高等裁判所


平成28年10月に上訴した時の報道しかありません。産経新聞社の報道では
厚木基地騒音訴訟結審、最高裁が12月8日に判決 住民側「差し止め判決を」

沖縄タイムスでは、わすかこれだけの報道です。

第4次厚木基地騒音訴訟で、最高裁は上告審弁論を開き、判決を12月8日に言い渡すことを決めた。

まず何が争われたのかの整理をしましょう。
日米安保条約に基づいて、厚木基地に米軍の海軍と空軍の練習場がある。その騒音がやかましいく、精神的に苦痛であるから差し止めと国家賠償を請求したものです。
原審では一部差し止めを命ずる判決が出たようですが、これに対して国側が控訴したようです。

これに対して、最高裁は以下のように述べます。
1)このような請求権が将来の給付の訴えを 提起することのできる請求権としての適格を有しないものであることは,当裁判所 の判例とするところである(最高裁昭和51年(オ)第395号同56年12月1 6日大法廷判決・民集35巻10号1369頁,最高裁昭和62年(オ)第58号 平成5年2月25日第一小法廷判決・民集47巻2号643頁,最高裁昭和63年 (オ)第611号平成5年2月25日第一小法廷判決・裁判集民事167号359 頁,最高裁平成18年(受)第882号同19年5月29日第三小法廷判決・裁判 集民事224号391頁)。

2)厚木海軍飛行場において離着陸する米海軍及び海上自衛隊の 各航空機の発する騒音等により精神的又は身体的被害等を被っていることを理由と する被上告人らの上告人に対する損害賠償請求権のうち事実審の口頭弁論終結の日 の翌日以降の分については,その性質上,将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものというべきである。


原告側が、どの法令に違反しているかで訴えたのかが記載がないためなんとも言えませんが、そもそも、随分前に確定した判決から照らし合わせて、訴えの資格がないと言っているわけですね。見事なまでに切れ味の良い判決でした。

第一小法廷
裁判長裁判官 小池 裕
裁判官 櫻井龍子
裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 木澤克之

確かに厚木基地の周りは住宅が密集して、飛行場の延長線上にも家が沢山あります。ある意味、沖縄の基地周辺と似たようなものがあります。
とはいっても、元々田んぼだったところを日本が経済成長してきて、このあたりまでも住宅地になった経緯があります。航空機の騒音がやかましいのは分かりますが、車で国道16号を走ってみればわかりますが、窓を閉めていればそれほどではありません。
それに高度に政治的な事は裁判所は立ち入らない原則があります。今回はまともな判決が出てよかったと思います。

国会議員の皆さんにお願いです

2017-01-22 09:10:16 | 日記
昨年末は、1月中に衆議院選挙があると噂されていましたが、この調子だと今年度中に選挙はなさそうです。
となると、最高裁審判も延期されるわけです。
さらにいうと、場合によっては最高裁審判を受けずに定年退職する裁判官が出てきます。また、ながい間審判を受けず定年退職寸前で審判を受ける事にもつながります。
最高裁裁判官の選考課程の公開と、公聴会の実施、毎回全員最高裁審判を受けるように、制度変更をお願いいたします・

暴力団が会社経由の不動産取引したのを電磁的公正証書原本不実記録罪にできるか

2017-01-15 08:21:35 | 日記
平成26(あ)1197  電磁的公正証書原本不実記録,同供用被告事件
平成28年12月5日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所

土地について売買契約を登記原因とする所有権移転登記等の申請をして当該登記等をさせた行為につき電磁的公正証書原本不実記録罪が成立しないとされた事例

先ずは事実確認をします。
1 被告人は,A社の代表取締役であるが,指定暴力団松葉会岡一家総長Bが不動産の所有者等になることを隠蔽するため不実の登記をしようと企てた。
2 所有権が売主DからA社に移転した旨の内容虚偽の登記申請をするとともに,残りの1筆につき,売買予約を原因として,権利者をA社とする内容虚偽の所有権移転請求権仮登記の申請をして,いずれも虚偽の申立てをした。
3 真実の買主はBであるのに,同年7月19日,A社を名目上の買主として,売主E(以下,売主Dと併せて「本件売主ら」という。)との間で上記原野の売買契約を締結した。
4 内容虚偽の登記申請をして,虚偽の申立てをし,そのころ,情を知らない登記官をして,登記簿の磁気ディスクにその旨不実の記録をさせ,即時,これを同所に備え付けさせて,公正証書の原本としての用に供した。

暴力団は暴対法により、銀行口座も不動産の契約もできなくなっています。そこで、暴力団がダミー会社を作ってそれを使って取引を行い規制を逃れようとしています。今回の事件もその流れのようです。
実際交渉にあたったのはCではありましたが、金の出所は暴力団構成員Bであり、実態は暴力団の取引でした。

これについて検察側は、この一連の取引は「電磁的公正証書原本不実記録罪」及「同供用罪」として起訴しました。

しかし、不動産はA社名義に変更になったところが重要です。この点から最高裁は以下のように述べています。

本件各土地の所有権が本件各売買を原因としてA社に移転したことなどを内容とする本件各登記は,当該不動産に係る民事実体法上の物権変動の過程を忠実に反映したものであるから,これに係る申請が虚偽の申立てであるとはいえず,また,当該登記が不実の記録であるともいえない。

確かに、個人名義にしたわけではなく、事実に反しているわけではないのが重要です。

本件各土地の所有権が本件売主らからBに直接移転した旨の認定を前提に,本件各登記の申請を虚偽の申立てであるとし,また,本件各登記が不実の記録に当たるとして第1審判決を破棄し,本件公訴事実第1及び第2について被告人を有罪とした原判決には,事実を誤認して法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであって,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

ということで、原審は有罪としましたが最高裁ではこの件については全員一致で無罪としました。


最高裁判所第一小法廷 
裁判長裁判官 大谷直人
裁判官 櫻井龍子
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之


確かに、純粋に電磁的公正証書原本不実記録罪か否かだけの論点であれば、最高裁の言うことは納得です。ですが、法人格否認の法理が一切議論されていないのが疑問です。検察は法人格の否認の法理を持ち出そうとしたのでしょうか。
この部分だけを以て、最高裁が法の正義というのはいささか勇み足の感が否めません。

最高裁判事に山口厚氏と林景一氏を起用

2017-01-13 14:06:05 | 日記
最高裁判所の櫻井龍子判事(第一小法廷)と大橋正春判事(第三小法廷)が定年退職になり、入れ替わり人事が発表されました。

NHKの報道が最も早いようです。

弁護士で早稲田大学大学院教授の山口厚氏と、元駐イギリス大使の林景一氏を起用するようです。

しかし、アメリカではごく当然の事としてやられていますが、なぜ公聴会を開かないのでしょうか。別にこの2人が気に入らないと言ってるのではありません。なぜこの人が適任であるのか、事前に社会一般の目にさらすべきです。
この人事がとんでもないものだとした場合、われわれ国民はとんでもない判断が出た後でしか、辞めさせることができません。その上、とんでもない判決がそれ以降の判決に影響するのです。裁判員裁判を全面否定したとんでも裁判を思い出してください。
法務省のどこのどなたが決めているのか分かりませんが、それを提案した人の名前と経歴も公表してもらいたいものです。

大学非常勤の雇止めは有効か

2017-01-04 08:36:43 | 日記
平成27(受)589  労働契約上の地位確認等請求事件
平成28年12月1日  最高裁判所第一小法廷  その他  福岡高等裁判所

結構重要な裁判なのに、報道はあまりないようです。穿ってみると、報道機関にも大きくかかわる内容だからでしょうか。報道しない自由??

朝日新聞の報道では以下の通りです。
九州女子短大(北九州市)に雇われた元講師の女性が、1年で不当に雇い止めをされたとして、運営する学校法人「福原学園」に雇用の継続などを求めた訴訟の上告審判決が1日、最高裁第一小法廷(大谷直人裁判長)であった。二審・福岡高裁判決のうち、雇い止めは不当だとして2年分の未払い賃金の支払いを命じた部分が確定・・・・

その他、労働新聞でも取り上げられていますが、なぜか記事が途中で切れています。もっと、特集として大きく扱ってもいい内容だと思うのですが。

弁護士の間では、さすがに話題になっているようです。大学側の事情はこちらが参考になりそうです。

では、読みにくい判決から事実関係を書いていきましょう。

ある人が大学の非常勤講師として、H23年4月1日からH24年3月31日までの契約で雇われることになりました。
「その契約は、3年を限度に更新することがある。この場合において,契約職員は在職中の勤務成績が良好であることを要するものとする。」と定められていました。解雇や雇止めに関するルールについては厚生労働省で以下のように述べています。1年契約のパートも3年以上連続して契約更新されたら、正規職員として雇えというものです。
殆どの大学では、非常勤講師を大量に抱え事務職もパート職員が3割を超えているのが現状です。かと言って、正規では雇うだけの財政がある大学はそれほどないでしょう。
そして、3年以上成績がよければ契約期間のない職員、すなわち専任講師になるという契約でした。
大学側は、平成24年3月19日,被上告人に対し,同月31日をもって本件労働契約を終了する旨を通知しました。2年で非常勤契約終了を言い渡されたのです。

なお、この大学では平成18年度から同23年度までの6年間に新規採用された助教以上の契約職員のうち,同年度末時点において3年を超えて勤務していた者は10名であり,そのうち8名についての労働契約は3年目の契約期間の満了後に期間の定めのないものとなった。80%が専任講師採用という事ですね。

原審では、採用当初の3年の契約期間に対する上告人の認識や契約職員の更新の実態等に照らせば,上記3年は試用期間であり,特段の事情のない限り,無期労働契約に移行するとの期待に客観的な合理性があるものというべきである。


これに対して最高裁は、以下のように述べます。
採用当初の3年の契約期間に対する上告人の認識や契約職員の更新の実態等に照らせば,上記3年は試用期間であり,特段の事情のない限り,無期労働契約に移行するとの期待に客観的な合理性があるものというべきである。
3年の更新限度期間の満了後に労働契約が期間の定めのないものとならなかった契約職員も複数に上っていたことに照らせば,本件労働契約が期間の定めのないものとなるか否かは,被上告人の勤務成績を考慮して行う上告人の判断に委ねられているものというべきであり,本件労働契約が3年の更新限度期間の満了時に当然に無期労働契約となることを内容とするものであったと解することはできない。・・・・以上によれば,本件労働契約は,平成26年4月1日から期間の定めのないものとなったとはいえず,同年3月31日をもって終了したというべきである。


全員一致の判断でした。
第一小法廷
裁判長裁判官 大谷直人
裁判官 櫻井龍子
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之

素晴らしくまともな判断だと思います。

この判断に、櫻井龍子の補足意見があります。
本件においては,無期労働契約を締結する前に3年を上限とする1年更新の有期労働契約期間を設けるという雇用形態が採られているところ,被上告人が講師として勤務していたのは大学の新設学科であり(原判決の引用する1審判決参照),同学科において学生獲得の将来見通しが必ずしも明確ではなかったとうかがわれることや,教員という仕事の性格上,その能力,資質等の判定にはある程度長期間が必要であることを考慮すると,このような雇用形態を採用することには一定の合理性が認められる。

これについては、文科省によって正規の教員を何人以上、何人以下採用しなさいと通達があるはずです。単なる経営判断ではないですね。
さらに、大学の教員の成績は基本的に論文数で決まり、授業内容や学生の向上とは無関係になってます。特に問題を起こさなければ、資質に問題ないと思われるのが通常です。

続いて
どのような業種,業態,職種についても正社員採用の際にこのような雇用形態が合理性を有するといえるかについては,議論の余地のあるところではなかろうか。


全くその通りです。誰でもできる単純作業からその人でなければできない仕事、かつ正規では雇うのは負担があるというような場合まで、労働にはかなり幅があるはずですが、それを一括して同等に扱えという法そのものが破綻しています。

あっちこっちで大学非常勤の雇止めで裁判が起きていますが、正直言ってどうなの?という気がします。大学側は正直言ってかなり・・・なところで定員を維持することがかなり難しい大学、教員もそこをはずされると他では採用されそうもない・・・というようなケースがあると聞きます。また、テニュアになってからサボりまくりというのもあるようなので、大学教員については通常の労働関係とは違った取り決めが必要だと思います。