最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

当然判決 無償化除外、二審も「適法」=朝鮮学校卒業生らの控訴棄却―福岡高裁

2020-10-31 07:56:23 | 日記
時事通信の報道です。
朝鮮学校を高校授業料無償化の対象から除外したのは違法として、九州朝鮮中高級学校(北九州市)の卒業生ら68人が国に1人当たり11万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が30日、福岡高裁であった。矢尾渉裁判長は一審福岡地裁小倉支部同様、除外を「適法」と判断、原告側の控訴を棄却した。原告側は上告する方針。
 矢尾裁判長は、公安調査庁が朝鮮学校と朝鮮総連との密接な関係を指摘したことに触れ、「教育について、朝鮮総連から『不当な支配』を受けている合理的疑念がある」と述べた。

参考サイトです
朝鮮学校無償化裁判を支援する会

朝鮮学校の教育課程は日本の学校制度(6334制)に準じて幼稚班・初級学校・中級学校・高級学校・大学校が設置されています。日本の法律上、これらの教育施設は全て私立学校法に基づく各種学校(学校教育に類する教育を行うもので、所定の要件を満たす教育施設)であり、教育基本法6条・学校教育法1条に基づいた「法律に定める学校」には該当しません。

つまり小学校、中学校、高校、大学ですらないのです。調理専門学校や理髪師専門学校と同じ扱いです。どうしてこれが無償化すべき対象なのでしょうか?おそらく手を変え品を変え、延々と訴訟を繰り返すでしょう。そもそも裁判自体を受理しない方針にする必要があります。

法律論はそこまでとして、教えられている内容がこれまた酷いのです。朝鮮語、歴史については延々と反日を教え、捏造された被害・差別を教えています。また、この学校には朝鮮学校問題に係る在日スパイ被疑事件があり、破防法で解散命令を出していいくらいの団体です。

大阪弁護士会の弁護士を逮捕

2020-10-28 06:48:58 | 日記
産経新聞の報道です。

吉村容疑者は大阪弁護士会の会派口座から約1980万円を横領したとして9月に弁護士会から退会命令の懲戒処分を受けた際、このような趣旨の説明をしたという。
 大阪弁護士会ではこのほか、成年後見人を務めた高齢男性の遺産約4200万円を相続人に渡さず着服したとして、70代の男性弁護士が6月に大阪府警に逮捕された。7月には京都地検が、依頼人から預かった約1800万円を着服したとして、40代の男性弁護士を逮捕。昨年11月にも、民事訴訟の和解金180万円を着服した60代の男性弁護士が府警に逮捕された。逮捕はされていないが、同種事案で懲戒処分を受けた弁護士もいる。


弁護士の供給過剰なのか、弁護士の横領を目にするようになりました。
「懲戒処分を受けた弁護士もいる」とお茶を濁されていますが、依頼するときはこういう弁護士は避けたいものです。

アルバイトと正規従業員の仕事の差は何か

2020-10-23 21:14:59 | 日記
令和1(受)1055  地位確認等請求事件
令和2年10月13日  最高裁判所第三小法廷  判決  その他  大阪高等裁判所
無期契約労働者に対して賞与を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例

朝日新聞の報道です。
正社員とは「責任に一定の違い」 最高裁、賞与認めず
非正社員と正社員の待遇格差をめぐる2件の裁判で、最高裁第三小法廷が13日、それぞれ判決を言い渡した。原告側は正社員と同じ仕事なのに賞与(ボーナス)や退職金がないのはおかしいと訴えたが、最高裁はいずれも「不合理とまで評価できない」と判断。一部の支給を認めた高裁判決を一転させた。対象となった職場の事例に限った判断だが、退職金・ボーナスの支給を認めない結論が確定した。
 通勤手当など「諸手当」の支給を認めた2018年の最高裁判決に続き、退職金・ボーナスの支給の是非が問われた訴訟だった。
・・・
第三小法廷(林景一裁判長)は、原告らと売店の正社員の仕事は「おおむね共通する」としつつ、正社員には、欠勤などでいない販売員に代わって働く役目や、複数の売店を統括するエリアマネジャーに就くこともあったと指摘。仕事や責任に一定の違いがある上、登用試験で正社員になる道もあったと述べた。
 さらに同社の退職金には「正社員としての職務を遂行しうる人材の確保」を図る目的があるとして、労働条件に差を付けることは「不合理といえない」と判断。正社員の退職金の25%にあたる賠償を命じた東京高裁判決を変更し、住宅手当などの支給を認めた部分だけを維持した。


産経も朝日もほぼ同じ論調で報道していたので、引用はこれだけにしておきます。

裁判所の認定から見ます。
1 本件は,第1審被告と期間の定めのある労働契約を締結して勤務していた第1審原告が,期間の定めのない労働契約を締結している正職員と第1審原告との間で,賞与,業務外の疾病による欠勤中の賃金等に相違があったことは労働契約法20条に違反するものであったとして,第1審被告に対し,不法行為に基づき,上記相違に係る賃金に相当する額等の損害賠償を求める事案である。

ありていに言うと、同じ仕事をしているパート・アルバイトと正社員を区別するなという立法趣旨です。となると、今回の裁判では同じ仕事をしているかどうかが争点になります。

(1)ア 第1審被告は,大阪医科大学,同大学附属病院等を運営している学校法人であり,平成28年4月1日,学校法人大阪薬科大学と合併した。
イ 第1審原告は,平成25年1月29日,第1審被告との間で契約期間を同年3月31日までとする有期労働契約を締結し,アルバイト職員として勤務した。・・・契約期間を1年として上記契約を3度にわたって更新し,平成28年3月31日をもって退職した。


この制度は本当に困ったもんですよ。3年以上連続して雇用すると、正規従業員として雇わなければならない義務が生じますが、働きたい側は家庭の事情で長時間働けない、雇う側はフルで雇うほど仕事を回せない、あるいは専門性がない仕事ををして貰うのに正規従業員ではコスト高になるという問題があります。個人的には、この制度は止めて欲しいんですけどね。

(2)ア 第1審原告が在籍した当時,第1審被告には,事務系の職員として正職員,契約職員,アルバイト職員及び嘱託職員が存在したが,このうち無期労働契約を締結している職員は正職員のみであった。また,正職員と契約職員は月給制,嘱託職員は月給制又は年俸制であった。これに対し,アルバイト職員は時給制であり,このうち正職員と同一の所定労働時間である者の数は4割程度であり,短時間勤務の者の方が多かった。

でも、パートか正規かそこで働くときに選択の余地はあったはずですよね。そこで働かないという選択肢も。

イ 第1審原告が在籍した当時,規則等に基づき,正職員には,基本給,賞与,年末年始及び創立記念日の休日における賃金,年次有給休暇(正職員就業規則の定める日数),夏期特別有給休暇,私傷病による欠勤中の賃金並びに附属病院の医療費補助措置が支給又は付与されていた。正職員給与規則上,基本給は,採用時の正職員の職種,年齢,学歴,職歴等をしんしゃくして決定するものとされ,勤務成績を踏まえ勤務年数に応じて昇給するものとされていた。

アルバイト職員就業内規が適用されていた。アルバイト職員就業内規に基づき,アルバイト職員には,時給制による賃金の支給及び労働基準法所定の年次有給休暇の付与がされていたが,賞与,年末年始及び創立記念日の休日における賃金,その余の年次有給休暇,夏期特別有給休暇,私傷病による欠勤中の賃金並びに附属病院の医療費補助措置は支給又は付与されていなかった。アルバイト職員就業内規上,賃金は,職種の変更等があった場合に時給単価を変更するものとされ,昇給の定めはなかった。


規則そのものが2つあり待遇が全く違うようです。

(3)ア 正職員は,本件大学や附属病院等のあらゆる業務に携わり,その業務の内容は,配置先によって異なるものの,総務,学務,病院事務等多岐に及んでいた。正職員が配置されている部署においては,定型的で簡便な作業等ではない業務が大半を占め,中には法人全体に影響を及ぼすような重要な施策も含まれ,業務に伴う責任は大きいものであった。
アルバイト職員は,アルバイト職員就業内規上,雇用期間を1年以内とし,更新する場合はあるものの,その上限は5年と定められており,その業務の内容は,定型的で簡便な作業が中心であった。

業務の内容の難度や責任の程度は,高いものから順に,正職員,嘱託職員,契約職員,アルバイト職員とされていた。

イ 第1審被告においては,アルバイト職員から契約職員,契約職員から正職員への試験による登用制度が設けられていた。前者については,アルバイト職員のうち,1年以上の勤続年数があり,所属長の推薦を受けた者が受験資格を有するものとされ,受験資格を有する者のうち3~5割程度の者が受験していた。


私立大学だからできる技ですね。公務員としての採用になりますので、国公立の学校ではこういう訳には行きません。これは国公立で訴えられたらどうするのでしょうね。受験の年齢制限もありますし。

(4)ア 正職員のうち3名は教室事務員以外の業務に従事したことはなかったところ,正職員が配置されていた教室では,学内の英文学術誌の編集事務や広報作業,病理解剖に関する遺族等への対応や部門間の連携を要する業務又は毒劇物等の試薬の管理業務等が存在しており,第1審被告が,アルバイト職員ではなく,正職員を配置する必要があると判断していたものであった。

非正規だからやらせられない仕事があるとしているのに、実際には非正規と同じ仕事しかしたことがない人がいると言ってますね。

賃金は時給950円であった。同契約は,同年4月以降に3度にわたって更新され,その際,時給単価が若干増額されることがあった。もっとも,具体的な職務の内容に特段の変更はなく,その業務の内容は,所属する教授や教員,研究補助員のスケジュール管理や日程調整,電話や来客等の対応,教授の研究発表の際の資料作成や準備,教授が外出する際の随行,教室内における各種事務(教員の増減員の手続,郵便物の仕分けや発送,研究補助員の勤務表の作成や提出,給与明細書の配布,駐車券の申請等),教室の経理,備品管理,清掃やごみの処理,出納の管理等であった。

バイトには遺族との対応みたいなことではなく、本当に簡単な作業のみをやらせていたようです。

(5)ア 第1審原告の平成25年4月から同26年3月までの賃金の平均月額は14万9170円であり,同期間を全てフルタイムで勤務したとすると,その賃金は月額15~16万円程度であった。これに対し,平成25年4月に新規採用された正職員の初任給は19万2570円であり,第1審原告と同正職員との間における賃金(基本給)には2割程度の相違があった。

2割の違いですか。2割増しだからと言って、遺族の世話もしろと言われても私なら断りますね。

イ 第1審被告においては,正職員に対し,年2回の賞与が支給されていた。平成26年度では,夏期が基本給2.1か月分+2万3000円,冬期が同2.5か月分+2万4000円,・・・アルバイト職員には賞与は支給されていなかった。

そもそも賞与の存在っておかしいと思うんですよ。年俸制で雇われている人は、賞与も含め月にならして支給されます。前払いか後払いかの違いで、誤解を与える以上は賞与制度は徐々になくすべきじゃないかなと思います。

ウ 第1審被告においては,正職員が私傷病で欠勤した場合,正職員休職規程により,6か月間は給料月額の全額が支払われ,同経過後は休職が命ぜられた上で休職給として標準給与の2割が支払われていた。これに対し,アルバイト職員には欠勤中の補償や休職制度は存在しなかった。

これらについて最高裁は次のように判断しました。

(1) 賞与について
ア 労働契約法20条は,有期労働契約を締結した労働者と無期労働契約を締結した労働者の労働条件の格差が問題となっていた。
イ(ア) 第1審被告の正職員に対する賞与は,正職員給与規則において必要と認めたときに支給すると定められているのみ・・・正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から,正職員に対して賞与を支給することとしたものといえる。


それってどうなんですか?半期決算ごとに利益の一部を還元するのが賞与でしょう。定着させる目的と言い切ってしまうのは、そういう目的もない訳じゃないレベルだと思いますが。

両者の職務の内容に一定の相違があったことは否定できない。また,教室事務員である正職員については,正職員就業規則上人事異動を命ぜられる可能性があったのに対し,アルバイト職員については,原則として業務命令によって配置転換されることはなく,人事異動は例外的かつ個別的な事情により行われていたものであり,・・・一定の相違があったことも否定できない。

おそらくこの表現だと教室ごとに科研費か何か当たったときに雇われるのであって、予算がなくなれば終了というもののようです。そうなると教室の代表である教授が事実上上司になることになりそうです。

(ウ) そうすると,第1審被告の正職員に対する賞与の性質やこれを支給する目的を踏まえて,教室事務員である正職員とアルバイト職員の職務の内容等を考慮すれば,正職員に対する賞与の支給額がおおむね通年で基本給の4.6か月分であり,・・・アルバイト職員である第1審原告に対する年間の支給額が平成25年4月に新規採用された正職員の基本給及び賞与の合計額と比較して55%程度の水準にとどまることをしんしゃくしても,教室事務員である正職員と第1審原告との間に賞与に係る労働条件の相違があることは,不合理であるとまで評価することができるものとはいえない。

当然ですね。

(2) 私傷病による欠勤中の賃金について
正職員が長期にわたり継続して就労し,又は将来にわたって継続して就労することが期待されることに照らし,正職員の生活保障を図るとともに,その雇用を維持し確保するという目的によるものと解される。


これも無理やり感がありますね。遺族と対応するストレスフルな業務だからじゃないですか?

さらに,教室事務員である正職員が,極めて少数にとどまり,他の大多数の正職員と職務の内容及び変更の範囲を異にするに至っていたことについては,教室事務員の業務の内容や人員配置の見直し等に起因する事情が存在したほか,職種を変更するための試験による登用制度が設けられていたという事情が存在するものである。・・・原告は,勤務開始後2年余りで欠勤扱いとなり,欠勤期間を含む在籍期間も3年余りにとどまり,その勤続期間が相当の長期間に及んでいたとはいい難く,第1審原告の有期労働契約が当然に更新され契約期間が継続する状況にあったことをうかがわせる事情も見当たらない。

これも結論はその通り。説明のプロセスがやや無理やり感がありますが。

裁判官全員一致の意見
裁判長裁判官 宮崎裕子
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴

正規従業員とアルバイトの業務内容は全然違いますよ。賞与や私傷病による欠勤中の賃金については、もう少し丁寧な議論があってもしかるべきだったのではないでしょうか。
これ以外の支給、例えば家族手当とか家賃手当はどう説明しますの?この辺りがすっ飛ばされているのは、どうなんだろうという気がします。

家裁調査の結果を匿名にして論文にするのは、プライバシーの問題にならない

2020-10-20 21:14:27 | 日記
令和1(受)877  損害賠償請求事件
令和2年10月9日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  東京高等裁判所
少年保護事件を題材として家庭裁判所調査官が執筆した論文を雑誌及び書籍において公表した行為がプライバシーの侵害として不法行為法上違法とはいえないとされた事例

この事件はニュースとしてマスコミには扱われなかったようです。

1 家庭裁判所調査官であった上告人Y1は,被上告人に対する少年保護事件を題材とした論文を精神医学関係者向けの雑誌及び書籍に掲載して公表した。本件は,被上告人が,この公表等によりプライバシーを侵害されたなどと主張して,上告人Y1,上記雑誌の出版社である上告人アークメディア及び上記書籍の出版社である上告人金剛出版に対し,不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。

家裁調査官でしかできない生データに触れていたのですね。おそらく精神科医や犯罪社会学も喉から手が出るほど欲しい情報だと思います。

(1)ア 被上告人(当時17歳)は,平成N年,ナイフをリュックサックの中に入れて持ち歩いたという非行事実に係る銃砲刀剣類所持等取締法違反保護事件について東京家庭裁判所に送致された。本件保護事件は,平成N+1年 月,不処分により終了した。被上告人は,先天的な発達障害の一種であるアスペルガー症候群を有するとの診断を受けていた。

イ 東京家庭裁判所の家庭裁判所調査官であった上告人Y1は,本件保護事件の調査を担当し,被上告人や父親からの聞き取り調査等を行った。なお,上告人Y1は,臨床心理士の資格を有し,発達障害に関する学会発表等の活動もしており,裁判所の研修機関が編集する専門誌において,広汎性発達障害に関する論文を発表したこともあった。


犯罪自体は微罪ですね。誰かを刺そうとして振り回していたわけではなく、たぶん不審者として警察官が職務質問で発覚した犯罪でしょう。

(2)ア 上告人アークメディアは,その発行に係る臨床精神医学に関する月刊誌(以下「本件月刊誌」という。)において,本件疾患の症例報告に関する公募論文の特集を行うこととし,平成N+1年 月末を締切りとして論文を公募した。・・・本件疾患に対する正しい理解を広めることにあった。本件月刊誌は,精神医学の臨床や研究に関与する医療関係者等を読者と想定して市販されている専門誌であった。

一般に売られているが、その辺の週刊誌ではなく医者やカウンセラーが読む専門雑誌ですよね。

イ 上告人Y1は,大阪家庭裁判所において勤務していたが,同月頃,本件月刊誌の編集委員長である大学教授から上記公募論文の執筆を勧められ,社会の関心を集めつつあった本件疾患の特性が非行事例でどのように現れるのか,司法機関の枠組みの中でどのように本件疾患を有する者に関わることが有効であるのかを明らかにするという目的で,本件保護事件を題材とした論文を執筆し,上記の公募に応募した。

学術的かつ実務的であって、興味本位の週刊誌レベルの話ではないと認定しています。

ウ 上告人アークメディアは,本件論文を採用し,これを平成N+1年 月発行の本件月刊誌に掲載した。。被上告人は,本件公表の当時,19歳であった。
本件論文において取り上げた「少年」が容易に特定されることがないように,対象少年の氏名や住所等の記載を省略しており,本件論文には,対象少年やその関係者を直接特定した記載部分はなく,対象少年や父親の年齢等を記載した箇所はあるものの,本件保護事件が係属した時期など,本件論文に記載された事実関係の時期を特定した記載部分もなかった。


学術論文は検証可能性と同時に被験者のプライバシーを徹底的に守らなければなりません。名前を出すときは必ず当事者の同意を取ることに倫理上なっています。

上告人Y1は,本件論文の執筆に当たり,症例の事実それ自体を加工すると本件疾患の症例報告としての学術的意義が弱まることを懸念し,本件疾患の診断基準に合致するエピソードをそのまま記載していた。また,本件論文には,対象少年の家庭環境や生育歴に関して具体的な記載がされ,学校生活における具体的な出来事も複数記載されていたことから,これらを知る者が,本件論文を読んだ場合には,その知識と照合することによって対象少年を被上告人と同定し得る可能性はあった

ここは難しいところです。

一般的に,患者の具体的な症状のほか,家族歴,既往歴,生育・生活歴,現病歴,治療経過,考察等を必須事項として正確に記載することが求められていた。

これは学術論文としては検証可能性が求められるところなので、なるべく正確に書かなければなりません。研究者としては当然求められる範囲です。

(4) 上告人Y1は,平成N+2年 月までに家庭裁判所調査官を退官し,同年月,大学の心理学部教授に就任した。
(5) 上告人金剛出版は,平成N+4年 月,本件論文を含め,上告人Y1がそれまでに発表した論文を1冊にまとめた書籍を出版した。


多分博士号の申請として出版した可能性があります。

(6)上告人Y1は,あらかじめ被上告人の了承を得た上,本件疾患を克服して社会適応を勝ち取った例として被上告人に関するエッセイを執筆し,平成N+9年 月,これを心理学関係の雑誌に公表したこともあった。

この少年は探し当てて元調査官=教授と会い、通常の生活ができるようになったことをエッセイにしていたということは、かなり仲がよく上手く行っていたようです。

イ 被上告人は,上告人Y1に対し,平成N+10年 月,本件書籍を出版したことに抗議し,これを絶版とすることを求める電子メールを送信し,この頃以降,上告人Y1の法的責任を追及するようになり,平成27年8月,本件訴訟を提起した。

ところがその翌年、自分のことが書かれていると激怒して抗議したようです。アスペルガー障害については全体の文脈を理解できないので、その瞬間瞬間で物を見るのでほんのちょっとした行き違いが猛烈な侮辱を受けたと勘違いするようです。身の回りにいますが、本当に会話も慎重にしないと変なところでキレるので非常に厄介です。

そこで最高裁は、
(1) プライバシーの侵害については,その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し,前者が後者に優越する場合に不法行為が成立するものと解される(最高裁平成元年(オ)第1649号同6年2月8日第三小法廷判決・民集48巻2号149頁,最高裁平成12年(受)第1335号同15年3月14日第二小法廷判決・民集57巻3号229頁)。

(2)ア 少年法は,少年審判を非公開とし(22条2項),審判に付された少年本人を推知させる記事等を出版物に掲載することを禁止しており(61条),少年審判規則7条1項及び2項は,少年の付添人以外の者は,同条1項に定める場合を除き,少年保護事件の記録等を閲覧又は謄写することができないと定めている。これらの規定は,少年の健全な育成を期するため(同法1条),少年に非行があったこと等が公開されることによって少年の改善更生や社会復帰に悪影響が及ぶことのないように配慮したものである。

私個人としては少年法は廃止すべきだと思っていますが、それを脇において一応少年の発達に期待するのでフルで刑法を適応するのは止めておきましょうという趣旨ですよね。ただ問題はアスペルガー障害は違うのです。人によってかなり程度の差はありますが、障害であるが故に社会上問題となる行為であると文脈から認識できないのです。つまり普通に生活していて、通常なら学べることを彼らは学べず、全てのことにIf・・・,then・・・で学ばなければならないのです。
例えば他人の表情が読めないので、他人が楽しいのか嫌がっているのか判断できず、自分の興味だけで、感情だけで行動するのです。ですから、こういう顔をしているときは悲しんでいる、こういう時は怒っていると一つ一つ学習していかなければならないのです。
それなりに他人と喧嘩せずにいられるようになるには時間と努力が必要であり、かなり難しい事、奇跡的なのです。だから、学術的に価値があるのです。
同時に障害であることから少年法の趣旨の成長を期待するということ自体は、彼らにはかなり無理があるのです。

家庭裁判所調査官は,裁判所の命令により,少年の要保護性や改善更生の方法を明らかにするため,少年,保護者又は関係人の行状,経歴,素質,環境等について,医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的智識を活用して調査を行う(同法8条2項,9条)のであって,その調査内容は,少年等のプライバシーに属する情報を多く含んでいるのであるから,これを対外的に公表することは原則として予定されていないものというべきである。

かなりの守秘義務が課されていますよね、他人の家庭の中を覗き込む以上は。

イ 他方において,本件掲載誌における論文特集の趣旨は,本件疾患の臨床知識を共有することをもって,研究活動の促進を図るとともに,本件疾患に対する正しい理解を広めることにあったところ,上告人Y1は,このような論文特集のための公募に応じ,本件保護事件を題材とした本件論文を執筆したものである。・・・本件各公表の目的は重要な公益を図ることにあったということができる。/span>

この案件はかなり社会的要請があった案件だと思います。

本件論文に記載された事実関係を知る者の範囲は限定されており,本件論文が医療関係者や研究者等を読者とする専門誌や専門書籍に掲載するという方法で公表されたことからすると,本件論文の読者が対象少年を被上告人と同定し,そのことから被上告人に具体的被害が生ずるといった事態が起こる可能性は相当低かったものというべきである。

専門書や論文でも今や普通にネット公開される時代なので、この部分はどうかなという疑問はありますが、よほど大きな事件でもない限り個人を特定できないでしょう。ましてや不起訴処分になるような案件であれば。

結論
したがって,本件各公表が被上告人のプライバシーを侵害したものとして不法行為法上違法であるということはできない。

当然ですね。
ここで終わるかと思いきや、裁判官草野耕一の意見
1 プライバシー情報を知り得たのは,ひとえに同上告人が少年法に基づき本件保護事件を調査する権限を担当裁判官から与えられた結果に他ならない。そうである以上,上告人Y1が本件プライバシー情報を学術目的等に利用し得る場合があるとしても,被上告人の改善更生という同法の趣旨に抵触する態様で本件プライバシー情報を利用することは許されないというべきである。本件は,この点において,一般のプライバシー侵害案件に使われる判断枠組みだけでは適切な評価を行い得ない事案である。

週刊誌が芸能人のプライバシーを暴くのと違って、公務員であり職務上知り得た秘密なので、通常のプライバシーの問題とは違う判断をすべきだと言っています。

2 本件プライバシー情報の中には,被上告人が幼年時代に経験した深刻な出来事等も含まれており,多感な時期にあった当時の被上告人が本件公表の事実を知ったならば,いかほどの精神的苦痛を受けたか,そして,そのことが被上告人の改善更生にいかほどの悪影響を及ぼしたか,これらのことに思いを致すと,おそれにも似た感慨を抱かざるを得ない。

私はこの点については大いに疑問を感じます。彼らは自分の興味本位で行動しますので、他人が嫌がっているかどうかを理解する能力はかなり乏しいです。自分が正当なことを言っているのに、おかしな因縁をつけているぐらいの感覚なのです。

3 被上告人は,上告人Y1による自発的な告知により本件再公表の事実を知ったものであり,本件再公表によってプライバシー侵害の結果が現実化したということができないことは,本件公表と同じであるから,本件再公表の違法性を判断するまでもなく,本件再公表は被上告人に対する不法行為には当たらないというべきである。

これは納得です。

裁判長裁判官 岡村和美 当然
裁判官 菅野博之 当然
裁判官 三浦 守 当然
裁判官 草野耕一 当然

これが禁止されたら、次に似たような事件が起こったとき何の参考事例もなく、毎回手探りで対処しなければなりません。賠償請求が認められる=今後同様の論文を公表できないとなれば、社会的に非常に困ったことになります。当然すぎる判断です。

非正規職員のボーナスと退職金

2020-10-13 17:05:10 | 日記
非正規職員のボーナスと退職金を正規職員と同じにしろと訴えた裁判が最高裁で結審しました。

朝日新聞
アルバイト秘書に賞与なし「不合理とまで言えず」最高裁
 原告は50代女性。薬理学教室で2013年1月から2年余り、フルタイム(時給制)で教授らの日程管理や来客対応などをした。同じ仕事をする正職員の秘書に支給されるボーナスがないことや本給の格差などは労働条件の不合理な違いを禁じた労働契約法20条(18年6月成立のパートタイム・有期雇用労働法に移行)に反するとして、15年8月に提訴。差額賃金など1175万円を求めた。・・・・

・・・・これに対し19年2月の高裁判決は、「ボーナスには働いたこと自体への功労の趣旨もある」と判断。長期雇用を前提としない月給制の契約職員には正職員の8割にあたる額を支給していたことに言及し、少なくとも6割を払わなければ「労働条件の不合理な違い」にあたるとした。


退職金求めた元契約社員の訴え退ける 最高裁が初判断
原告は、東京メトロ売店で7年から13年にわたって働いた66~73歳の女性4人。売店で同じ仕事をしていた正社員に支給される退職金や住宅手当がないことなどは、労働条件の不合理な違いを禁じた労働契約法20条(2018年6月成立のパートタイム・有期雇用労働法に移行)に反するとして14年5月に提訴し、差額賃金として計4560万円を求めた。・・・
・・・第三小法廷は、高裁が認めた住宅手当などについて判断を確定させた一方、退職金は重要な論点として原告と同社双方の上告を受理した。
 今年9月の弁論で原告側は「退職金を正社員の4分の1でいいとしたのは不当」、同社側は「退職金は賃金の後払いとして積み立てられたもので功労報償ではない」とそれぞれ主張していた。


この判決のせいかこういう状態になっていますので、落ち着いてから詳細を検討していきます。


罪の重さより罰金の重い方を選べ

2020-10-10 14:28:08 | 日記
平成30(あ)845  建造物侵入,埼玉県迷惑行為防止条例違反被告事件
令和2年10月1日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所

数罪が科刑上一罪の関係にある場合において,各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり,軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときの罰金刑の多額

新聞報道がないので、事実確認からしていきます。

被告人が,共犯者と共謀の上,盗撮用の小型カメラを設置する目的で,パチンコ店の女子トイレ内に,共犯者において侵入した上,用便中の女性の姿態を同所に設置した小型カメラで撮影し,もって公共の場所において,人を著しく羞恥させ,かつ,人に不安を覚えさせるような卑わいな行為をしたという事案であり,建造物侵入罪埼玉県迷惑行為防止条例2条4項(盗撮)違反の罪(同条例12条2項1号)が成立し,両罪は刑法54条1項後段の牽連犯の関係にある。

エロビデオに販売する気だったのでしょうか。あれはヤラセだと思ってましたが、本気でやる人がいるんですね。

第1審判決は,建造物侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金であり,埼玉県迷惑行為防止条例違反の罪の法定刑は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金であるから,最高裁昭和22年(れ)第222号同23年4月8日第一小法廷判決・刑集2巻4号307頁(以下「昭和23年判例」という。)によれば,被告人に対する処断は,各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪である建造物侵入罪の法定刑によることになり,罰金刑の多額は10万円となるとの判断を示し,これによると罰金刑の選択は相当でないとして被告人に懲役2月,3年間執行猶予の判決を宣告し(検察官の求刑は罰金40万円),原判決も上記判断を是認して被告人の控訴を棄却した。

日本の刑事裁判では、一連の事件の内最も重い刑罰を科すという原則になっています。以前に、幼稚園児を跳ね飛ばして殺した事件は、直前にストーカーもやっていたのですが、なぜかこの論拠でまとめて裁判になったことがあります。流石にあれには納得できませんでしたが。
今回の件は、一連のものとして考えて良さそうです。

所論は,原判決は,罰金刑の多額が10万円となるとした点において,名古屋高等裁判所金沢支部平成25年(う)第65号同26年3月18日判決・高等裁判所刑事裁判速報集平成26年140頁(以下「金沢支部判決」という。)と相反する判断をしているというのである。

引用している金沢支部の判決文が出てきません。どういう事なんでしょうか??

軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときは,罰金刑の多額は軽い罪のそれによるべきものと解するのが相当であるとして,処断刑の罰金刑の多額は30万円となると判示している。

金沢支部の判決はこういう趣旨なんだそうです。

数罪が科刑上一罪の関係にある場合において,各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり,軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときは,刑法54条1項の規定の趣旨等に鑑み,罰金刑の多額は軽い罪のそれによるべきものと解するのが相当である。

選ぶべきは罰金額が多い方であって、つみのおもさではないと。え?罰金刑の場合は軽い方を選べと?
法制度上、罪の重さと罰金が連動していないということそのものが問題ですが・・・まあ、被告人にダメージの大きい方を与えるというのは分かりますが・・・
まあ仕方ないというレベルでしょうか。

裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚

これは弁護士の勝利というか、よくぞこんなマニアックな判決、少なくとも裁判所のHPにすら掲載されない判決を見つけ出しましたよ。
これは律法の怠慢ですね。というか、罰金刑の場合は刑罰の重い方とかではなく、積み重ねるのでもいいのではないかと思います。

先に2人で暴行、後からたまたま来た人も暴行3人とも共謀罪

2020-10-04 13:33:24 | 日記
令和1(あ)1751  傷害,強盗,窃盗被告事件
令和2年9月30日  最高裁判所第二小法廷  決定  棄却  東京高等裁判所

 1 他の者が先行して被害者に暴行を加え,これと同一の機会に,後行者が途中から共謀加担したが,被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたとは認められない場合と刑法207条
2 他の者が先行して被害者に暴行を加え,これと同一の機会に,後行者が途中から共謀加担したが,被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたとは認められない場合において,後行者の加えた暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有しないときに,刑法207条を適用することの可否


結構凄い事件だったようですが、マスコミの報道はないようです。ただの粗暴犯扱いでしょうか。

事実認定から見ていきます。
(1) A及びBは,被害者に対し暴行を加えることを共謀した上,平成29年12月12日午後9時23分頃,被害者のいるマンションの部屋に突入し,被害者に対し,カッターナイフで右側頭部及び左頬部を切り付け,多数回にわたり,顔面,腹部等を拳で殴り,足で蹴るなどの暴行を加えた。
(2) 被告人は,Aら突入の約5分後,自らも同部屋に踏み込んだ。被告人は,被害者がAらから激しい暴行を受けて血まみれになっている状況を目にして,Aらに加勢しようと考え,台所にあった包丁を取り出し,その刃先を被害者の顔面に向けた。この時点で,被告人は被害者に暴行を加えることについてAらと暗黙のうちに共謀を遂げた。


殺す気はなかったようですね。ただかなり後遺症と傷跡が残りそうです。ここで重要なのは、後からたまたま来たCが犯行に参加したことです。

(3) 被告人が共謀加担した前後にわたる一連の前記暴行の結果,被害者は,全治まで約1か月間を要する右第六肋骨骨折,全治まで約2週間を要する右側頭部切創,左頬部切創,左大腿部刺創,右小指切創,上口唇切創の傷害を負った。これらの傷害のうち,右側頭部切創及び左頬部切創については,被告人の共謀加担前のAらの暴行により,左大腿部刺創及び右小指切創については,共謀成立後の暴行により生じたものであるが,右第六肋骨骨折及び上口唇切創については,いずれの段階の暴行により生じたのか不明である。なお,被告人が加えた暴行は,右第六肋骨骨折の傷害を生じさせ得る危険性があったと認められるが,上口唇切創の傷害を生じさせ得る危険性があったとは認められない

誰がやったか分からない傷が残っているということですね。

同時傷害の特例を定めた刑法207条は,二人以上が暴行を加えた事案においては,生じた傷害の原因となった暴行を特定することが困難な場合が多いことなどに鑑み,共犯関係が立証されない場合であっても,例外的に共犯の例によることとしている。
今回はそれに該当しますね。

すなわち,同一の機会に行われたものであることを証明した場合,各行為者は,自己の関与した暴行がその傷害を生じさせていないことを立証しない限り,傷害についての責任を免れない(最高裁平成27年(あ)第703号同28年3月24日第三小法廷決定・刑集70巻3号1頁参照)。

そりゃ連帯責任でしょう。ただでさえ、交通事故ですら救護義務違反があるのですから、かなりの状態になっている被害者を放置するどころか殴ってろっ骨を折っています。

途中から行為者間に共謀が成立していた事実が認められるからといって,同条が適用できなくなるとする理由はなく,むしろ同条を適用しないとすれば,不合理であって,共謀関係が認められないときとの均衡も失するというべきである。したがって,他の者が先行して被害者に暴行を加え,これと同一の機会に,後行者が途中から共謀加担したが,被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたものとまでは認められない場合であっても,その傷害を生じさせた者を知ることができないときは,同条の適用により後行者は当該傷害についての責任を免れないと解するのが相当である。

裁判官全員一致の意見でした。
第二小法廷決定
裁判長裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

当然ですね。