最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

性転換手術をしていなければ戸籍の変更は認めない

2019-02-26 15:23:10 | 日記
平成30(ク)269  性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件
平成31年1月23日  最高裁判所第二小法廷  決定  棄却  広島高等裁判所  岡山支部

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号は,憲法13条,14条1項に違反しない

毎日新聞の報道です。
性別変更の手術条件を定めた法規定について合憲と判断した23日付の最高裁決定。「違憲の疑いがある」とした補足意見も踏まえ、審判を申し立てた人は「残念な気持ちだ」と受け止めつつ、今後の議論に期待した。他の性的マイノリティーの当事者も「社会の差別に目を向けるきっかけに」と訴えた。
 「体に対する違和感からではなく、社会からの偏見や差別を避けるために戸籍上の性別を変更しようとして、やむを得ずに手術を受ける当事者は多い」。トランスジェンダーの当事者で、若者支援に取り組む遠藤まめたさん(31)は明かす。今回の決定では、当事者に対する適切な対応を求めた補足意見に注目し「手術による体への負担などから性別変更していない当事者も少なくない。今回の決定が社会的な差別に目を向けるきっかけになってほしい」と話した。


殆どの人が関わることがない話なので、自分には関係ないと思っている人が多いと思いますが、ある統計では男性の40人に1人はその傾向があり、女性は若干その割合が多いと聞いたことがあります。なので、意外と身の周りにいるのかもしれません。私の身の回りにも複数名カミングアウトした人が何人かいます。

さて、本題に入ります。

裁判所では次のように述べています。
性同一性障害者につき性別の取扱いの変更の審判が認められるための要件として「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」を求める性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号の規定(以下「本件規定」という。)の下では,性同一性障害者が当該審判を受けることを望む場合には一般的には生殖腺除去手術を受けていなければならないこととなる。本件規定は,性同一性障害者一般に対して上記手術を受けること自体を強制するものではないが,性同一性障害者によっては,上記手術まで望まないのに当該審判を受けるためやむなく上記手術を受けることもあり得るところであって,その意思に反して身体への侵襲を受けない自由を制約する面もあることは否定できない。もっとも,本件規定は,当該審判を受けた者について変更前の性別の生殖機能により子が生まれることがあれば,親子関係等に関わる問題が生じ,社会に混乱を生じさせかねないことや,長きにわたって生物学的な性別に基づき男女の区別がされてきた中で急激な形での変化を避ける等の配慮に基づくものと解される。・・・現在の社会的状況等を総合的に較量すると,本件規定は,現時点では,憲法13条14条1項に違反するものとはいえない。

要するに、生殖組織を切除していないのに性の変更は認めないというものです。その理由は、別に手術を強制しているわけではないし、戸籍の変更を義務付けているわけではない。だから憲法違反には当たらないとしています。
ただ、人工子宮の技術が出来た場合については今後検討しなきゃならない事だけどね、とお茶を濁しています。

裁判官全員一致の意見でしたが、鬼丸かおる裁判官が意見を出しています。
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」という。)は,生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず,心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち,かつ,自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって,そのことについて2人以上の医師の診断が一致しているものを対象として,その法令上の性別の取扱いの特例について定めるものである。ここれは,性同一性障害者が,性別の違和に関する苦痛を感じるとともに,社会生活上様々な問題を抱えている状況にあることから,その治療の効果を高め,社会的な不利益を解消するために制定されたものと解される。

いわゆるLGBTの話を聞くと、いろんな形態があるようで一概には論じられないようです。自分は女なのに男の格好をさせられている、逆もしかり。それに我慢しきれずに体をいじったのがトランスジェンダーだそうです。同時にバイは男女ともに性的対象としている人もいます。一見すると分からないですが、当事者同士だと分かりあうと聞いたことがあります。こればかりはどういうものなのかは分かりません。

性別は,社会生活や人間関係における個人の属性の一つとして取り扱われているため,個人の人格的存在と密接不可分のものということができ,性同一性障害者にとって,特例法により性別の取扱いの変更の審判を受けられることは,切実ともいうべき重要な法的利益である。


法律がある以上権利として認められていますね。そこは同意です。

日本精神神経学会のガイドラインによれば・・・生殖腺を除去する性別適合手術を受けていない性同一性障害者としては,当該手術を望まない場合であっても,本件規定により,性別の取扱いの変更を希望してその審判を受けるためには当該手術を受けるほかに選択の余地がないことになる。


条文ではなく、医師のガイドラインで決まっているということを指摘しています。

2 性別適合手術による卵巣又は精巣の摘出は,それ自体身体への強度の侵襲である上,外科手術一般に共通することとして生命ないし身体に対する危険を伴うとともに,生殖機能の喪失という重大かつ不可逆的な結果をもたらす。このような手術を受けるか否かは,本来,その者の自由な意思に委ねられるものであり,この自由は,その意思に反して身体への侵襲を受けない自由として,憲法13条により保障されるものと解される。


法律ですらないガイドラインが強制力を産む根拠になるかということですね。

性別の取扱いの変更の審判を受けた者について変更前の性別の生殖機能により子が生まれることがあれば,親子関係等に関わる問題が生じ,社会に混乱を生じさせかねないことや,長きにわたって生物学的な性別に基づき男女の区別がされてきた中で急激な形での変化を避ける等の配慮に基づくものと解される。・・・性同一性障害者は,前記のとおり,生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず,心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち,自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であるから,

この辺りが納得できません。本人が「心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち」これはおかしいですね。私がこう感じているんだからという理由だけが根拠としてもいいということですか?実際に海外では心は女だと言い張っている生物的な男性が女性を強制性交をする事件もあります。つまり女装好きであるが、女性が好きという事例です。
性器を取り去りたいと思うくらい違和感を覚えている、かつ実行したというのが客観的証拠として見ていいのではないでしょうか。これを、7000人も申請してきたのでそろそろ見直してもいいのではないかという論拠ではおかしいでしょう。

3 世界的に見ても,性同一性障害者の法的な性別の取扱いの変更については,特例法の制定当時は,いわゆる生殖能力喪失を要件とする国が数多く見られたが,2014年(平成26年),世界保健機関等がこれを要件とすることに反対する旨の声明を発し,2017年(平成29年),欧州人権裁判所がこれを要件とすることが欧州人権条約に違反する旨の判決をするなどし,現在は,その要件を不要とする国も増えている。

よその国ではどうのということも、根拠にはなりません。ただその傾向があるというだけです。

第二小法廷
裁判長裁判官 三浦 守 妥当
裁判官 鬼丸かおる 訳分からん
裁判官 山本庸幸 妥当
裁判官 菅野博之 妥当

日本は江戸時代から若衆やらなんやらと同性愛についてはおおらかで、差別につながるようなことはありませんでした。実際に結婚に相当する関係にするために、養子縁組をする事もあります。そこまで結婚にこだわる意味が解りません。
当初は男性として女性を愛していたけど、男性の方がいいというバイもいます。その人から聞いた話ですが、日本にいる限りほっといてくれるので居心地がいいと。LGBT差別がどうのと言っているのは、むしろトランスジェンダーを利用した利権があるんだとも言っていました。ホルモン剤処方の問題からトイレの特別配慮から、多岐にわたるらしいです。
最高裁判事になるのは結構なお歳になってからとは思いますが、そういった現場も見ておいた方がよろしいかと。

保振に預けた資産は差し押さえできる

2019-02-23 10:02:19 | 日記
平成30(許)1  譲渡命令に対する執行抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
平成31年1月23日  最高裁判所第二小法廷  決定  破棄差戻  大阪高等裁判所

1 被相続人名義の口座に記録等がされている振替株式等の共同相続により債務者が承継した共有持分に対する差押命令は,当該振替株式等について債務者名義の口座に記録等がされていないとの一事をもって違法であるとはいえない
2 執行裁判所は,譲渡命令の申立てが振替株式等の共同相続により債務者が承継した共有持分についてのものであることから直ちに当該譲渡命令を発することができないとはいえない


ニュースでは出ていないので、判決文から見ていきます。
1 社債等振替法2条4項に規定する口座管理機関であるSMBC日興 証券株式会社が備える振替口座簿に開設した亡A名義の口座に記録された株式,投 資信託受益権及び投資口につき,亡Aの相続人である相手方ほか4名が共同相続 し,相手方がそれらの共有持分を有するとして,本 件持分に対する差押命令の申立てをし,本件差 押命令を得た。

どうやら相続関係らしいですね。いわゆる保振に預けっぱなしになっている株と投信を相続したのに、証券会社が共有する部分があるから返さないと拒否したので、遺族が差し押さえを申請しました。ここまでもめたのは、貸し株か何かしてたのでしょうか。

原審では
(1)執行裁判所は,債務者が差押命 令の対象となる振替社債等を有するか否かを振替口座簿の記録等により審査すべき であり,債務者以外の者の名義の口座に記録等がされた振替社債等に対する差押命 令を発することはできないと解される。
(2) 共同相続された振替社債等について,共同相続人全員の名義の口座に記録 等をすることはできるものの,共同相続人の1人の名義の口座にその共有持分の記 録等をすることはできず,当該共有持分についての譲渡命令が確定しても当該譲渡 命令による譲渡の効力を生じさせることができないから,執行裁判所は当該譲渡命 令を発することはできず,本件申立ては不適法である。


何か書き方が今ひとつでよくわかりにくいのですが、証券会社で開設された口座は誰がどれを引き継ぐというのは決まっていないので、手続きができないので差し押さえはできないと言っているのでしょうか。


最高裁は
(1)社債等振替法は,振替株式,振替投資信託受益権及び振替投資口についての権利の帰属は振替口座簿の記録等により 定まるものとしている(振替株式につき128条1項,振替投資信託受益権につき 121条において読み替えて準用する66条柱書き,振替投資口につき226条1 項)。・・・被相続人名義の口座に記録等がされている振替株式等が共同相続さ れた場合において,その共同相続により債務者が承継した共有持分に対する差押命 令は,当該振替株式等について債務者名義の口座に記録等がされていないとの一事 をもって違法であるということはできないと解するのが相当である。
(2) 共同相続された振替株式等につき共同相続人の1人の名義の口座にその共 有持分の記録等をすることができないからといって,当該共有持分についての譲渡 命令が確定した結果,当該譲渡命令による譲渡の効力が生じ得ないものとはいえない。



その通りだと思います。なんでこれが問題になったのか分からないくらいすっきりしています。

鬼丸かおる裁判官の補足意見
上記の振替方法を実現するためには,口座管理機関が共有 口座を開設することが必要になるが,振替株式等につきそのような取扱いが実際に は広く行われているようには思われない。また,共有口座の開設や債務者共有持分 についての譲渡命令が確定した後の振替の申請には,債務者以外の共同相続人全員 の協力を得る必要があることも否定し難く,その協力が得られなければ上記の振替 方法の実現には困難を伴うこととなる(なお,裁判所書記官が上記共同相続人全員 と共同で共有状態にある振替株式等の振替の申請を行うことの可否及びその法令上 の根拠の検討も必要であろう。)。

分からなくもないです。確かに、証券会社の保振は共同名義なるものはないですから。あくまでも個人の所得に関する制度になります。

譲渡命令が確定した場合にお いて当該譲渡命令が口座管理機関に送達された時に,差押債権者の債権及び執行費 用は執行裁判所の定めた譲渡価額で弁済されたとみなされる(民事執行規則150 条の7第6項において準用する民事執行法160条)から,上記のようなリスクは 結局のところ差押債権者が負わざるを得ないとの帰結となってしまう。差押禁止財 産として法定されていない振替株式等の差押えを行う差押債権者が換価に当たって 振替方法による制約によってリスクを負うことは,法令上想定されているとは思わ れないのであり

そうですかねぇ。不動産の共同所有の場合と何ら変わらないように思えますけど。所得計算は名義が確定するまで人数で按分すればいいわけで。類推適用できないわけじゃないでしょう。

裁判長裁判官 鬼丸かおる  まわりくどい
裁判官 山本庸幸 妥当
裁判官 菅野博之 妥当
裁判官 三浦 守 妥当

注目裁判 東京高裁 非正規駅売店員にも退職金認める

2019-02-20 21:07:53 | 日記
高裁の段階なので判決文は公開されていません。支援団体が公開する可能性がありますが、まずは速報レベルで共同通信の報道を引用します。

東京メトロの子会社「メトロコマース」の契約社員として、駅の売店で販売員をしていた女性4人が、正社員との間に不合理な待遇格差があるとして損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は20日、「長期間勤務した契約社員に退職金の支給を全く認めないのは不合理」として、請求の大半を棄却した一審東京地裁判決を変更、4人のうち2人に45万~49万円の退職金を支払うよう命じた。

同一労働、同一賃金は退職金まで及ぶべきかという疑問があります。どういう根拠でこの判決に至ったのか、おそらく最高裁まで行くでしょう。注目して判断を待ちたいと思います。


参考HP
非正規雇用の実態を理解していないメトロコマース不当判決
日経新聞 ドトール、非正規にも退職金 人手不足に対応
ホームレスにもなりかねない非正規の実態 メトロコマース事件から考え

警察が持つ不法逮捕の証拠を民事訴訟の証拠として出せ

2019-02-17 10:43:28 | 日記
平成30(許)7  文書提出命令申立てについてした決定に対する抗告審の取消決定等に対する許可抗告事件
平成31年1月22日  最高裁判所第三小法廷  決定  破棄差戻  大阪高等裁判所

1 刑訴法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書が民訴法220条1号所定の引用文書に該当し,当該文書の保管者による提出の拒否が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものであるときは,裁判所は,その提出を命ずることができる
2 捜査に関して作成された書類の写しが民訴法220条1号所定の引用文書又は同条3号所定の法律関係文書に該当し,当該写しを所持する都道府県による提出の拒否が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものであるときは,裁判所は,その提出を命ずることができる


ニュースが見つからないので、裁判所の事実確認を見ていきます。相変わらず、悪文なので文章をぶった切ります。

(1)抗告人が,大阪府警察の違法な捜査により傷害事件(以下「本件傷害事件」という。)の被疑者として逮捕されたなどとして,相手方に対し国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求める訴訟をおこした。警察に対して捜査資料の提出を要求した裁判です。
(2)抗告人は,平成27年1月に本件傷害事件の被疑者として逮捕された。その後,抗告人は,本件傷害事件について起訴され,有罪判決を受け,同判決は平成29年12月に確定した。本件各文書も,その元となる各文書(以下「本件各原本」という。)も,本件傷害事件の公判に提出されなかった。


逮捕されて有罪が確定したが、後に真犯人が現れて誤認逮捕だと分かったのでしょう。その裁判で出された元となる資料(裁判には出されなかった)を出しなさいという裁判です。

3 地裁では、民訴法220条1号所定の「当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき」訴えられた側は拒否できない規定があるのですが、刑訴法47条で作られた書類であり、3と4項の例外規定に該当するので出さなくてよいと判断しました。

これについて最高裁は、
(1)ア 刑訴法47条は,その本文において,「訴訟に関する書類は,公判の開廷前には,これを公にしてはならない。」と定め,そのただし書において,「公益上の必要その他の事由があって,相当と認められる場合は,この限りでない。」と定めている。・・・公にする目的,必要性の有無,程度,公にすることによる被告人,被疑者及び関係者の名誉,プライバシーの侵害,捜査や公判に及ぼす不当な影響等の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情を総合的に考慮してされるべきものであり,当該「訴訟に関する書類」を保管する者の合理的な裁量に委ねられているものと解すべきである。

要するに目的に応じて公開すべきである、ケースバイケースだと言っています。

イ 民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程度,当該文書が開示されることによる上記の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情に照らし,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであると認められるときは,裁判所は,当該文書の提出を命ずることができるものと解するのが相当である(最高裁平成15年(許)第40号同16年5月25日第三小法廷決定・民集58巻5号1135頁等参照)。

民事訴訟の当事者が,民訴法220条1号の規定に基づき,上記「訴訟に関する書類」に該当する文書の提出を求める場合においても,引用されたことにより当該文書自体が公開されないことによって保護される利益の全てが当然に放棄されたものとはいえないから,上記と同様に解すべきであり,当該文書が引用文書に該当する場合であって,その保管者が提出を拒否したことが,上記の諸般の事情に照らし,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであると認められるときは,裁判所は,当該文書の提出を命ずることができるものと解するのが相当である。


至極ごもっともです。

ウ 公判に提出されなかった,刑事事件の捜査に関して作成された書類の原本及びその写しは,いずれも刑訴法47条により原則的に公開が禁止される「訴訟に関する書類」に該当するところ,同法その他の法令において,当該原本を保管する者と異なる者が当該写しを保管する場合に,当該原本を保管する者のみが当該写しについて公にすることを相当と認めることができるか否かの判断をすることができる旨の規定は存しない。

そりゃ刑事事件は様々ですからね。

この場合には,上記の判断は,当該都道府県の合理的な裁量に委ねられているものと解すべきである。

エ 以上によれば,刑事事件の捜査に関して作成された書類の写しで,それ自体もその原本も公判に提出されなかったものを,その捜査を担当した都道府県警察を置く都道府県が所持し,当該写しについて引用文書又は法律関係文書に該当するとして文書提出命令の申立てがされた場合においては,当該原本を検察官が保管しているときであっても,当該写しが引用文書又は法律関係文書に該当し,かつ,当該都道府県が当該写しの提出を拒否したことが,前記イの諸般の事情に照らし,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであると認められるときは,裁判所は,当該写しの提出を命ずることができるものと解するのが相当である。


第三小法廷決定
裁判長裁判官 山崎敏充 当然
裁判官 岡部喜代子 当然
裁判官 戸倉三郎 当然
裁判官 林 景一 当然
裁判官 宮崎裕子 当然

そりゃそうですよね。誤認逮捕されて国家賠償を請求するのに重要証拠は警察にある状態で、その証拠開示が一切されないとなると被害者は一切救済されない事になりますよね。この状態だと大阪府警が不法逮捕の犯人隠避に加担していると思われても仕方ない、さらには裁判所まで犯人隠避に加担しますか!という状態です。これは改善されなければダメでしょう。

釈然としない 判決文が送達されないカルフォルニアの裁判所の決定は公序良俗に反する

2019-02-15 19:07:49 | 日記
平成29(受)2177  執行判決請求事件
平成31年1月18日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  大阪高等裁判所

訴訟当事者に判決の内容が了知されず又は了知する機会も実質的に与えられなかったことにより不服申立ての機会が与えられないまま確定した外国裁判所の判決に係る訴訟手続は民訴法118条3号にいう公の秩序に反する

たぶん、この記事のことを言っているのかなと思いますが、ニュースでは出てきませんでしたので、事実確認から見ていきます。

(1) カリフォルニア州の民事訴訟制度の下においては,判決は裁判所において登録され,原則として当事者の一方が他方に対し判決登録通知を送達することとされ,判決に対する控訴期間は遅くとも判決登録の日から180日を経過することにより満了するものとされている。
(2) 上告人らは,平成25年(2013年)3月,米国カリフォルニア州オレンジ郡上位裁判所(以下「本件外国裁判所」という。)に対し,被上告人外数名を被告として損害賠償を求める訴えを提起した。
(3) 被上告人は,弁護士を代理人に選任して応訴したが,訴訟手続の途中で同弁護士が本件外国裁判所の許可を得て辞任した。被上告人がその後の期日に出頭しなかったため,上告人らの申立てにより,手続の進行を怠ったことを理由とする欠席(デフォルト)の登録がされた。


Aを被告にアメリカで民意訴訟裁判を始めましたが、弁護士が裁判所の許可を得て辞任しました。Aはその裁判の上訴期限までに不服を申し立てられなかったので、欠席裁判になりました。欠席裁判は、訴えた人の主張を丸ごと認められてしまいます。

(4) 本件外国裁判所は,上告人らの申立てにより,平成27年(2015年)3月,被上告人に対し,約27万5500米国ドルの支払を命ぜられた。
(5) 上告人らの代理人弁護士は,平成27年(2015年)3月,被上告人に対し,本件外国判決に関し,判決書の写しを添付した判決登録通知を,誤った住所を宛先として普通郵便で発送した。上記通知が被上告人に届いたとはいえない。
(6) 被上告人は,本件外国判決の登録の日から180日の控訴期間内に控訴せず,その他の不服申立ても所定期間内にしなかったことから,本件外国判決は確定した。


Aは日本に帰国したのでしょう。外国の裁判なんか知ったことか!とやられてはたまらないので、Bは27万ドルの債権があることを確認のための訴えを起こしたようです。
その後裁判の相手方Bの弁護士が大ボケをかまします。この弁護士がAに送ったと思った判決文が、間違った住所に送られて届かなかったようです。そのせいで180日の控訴期間に間に合わず、27万ドル(2億8千万円)の支払いが命じられました。
地裁では、27万ドル払えとうのはダメと判決が出ました。
ちなみに、本来は裁判は本人訴訟主義ですので代理人(弁護士)をたてる義務はありません。実際は裁判所は嫌がりますけど。なので、代理人を事実上監視しなければなりません。

我が国の裁判制度を規律する法規範の内容となっており,民訴法118条3号にいう公の秩序の内容を成している。本件外国判決は被上告人に対する判決の送達がされないまま確定したから,その訴訟手続は同号にいう公の秩序に反する。

ん?二項の「二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。」ではなくて????


そこで最高裁は次のように判断しました。

(1)外国判決に係る訴訟手続が我が国の採用していない制度に基づくものを含むからといって,その一事をもって直ちに上記要件を満たさないということはできないが,それが我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものと認められる場合には,その外国判決に係る訴訟手続は,同条3号にいう公の秩序に反するというべきである(最高裁平成5年(オ)第1762号同9年7月11日第二小法廷判決・民集51巻6号2573頁参照)。
(2) 我が国の民訴法においては,判決書は当事者に送達しなければならないこととされ(255条),判決に対する不服申立ては判決書の送達を受けた日から所定の不変期間内に提起しなければならず,判決は上記期間の満了前には確定しないこととされている(116条,285条,313条)。そして,送達は,裁判所の職権によって,送達すべき書類を受送達者に交付するか,少なくとも所定の同居者等に交付し又は送達すべき場所に差し置くことが原則とされ,当事者の住所,居所その他送達をすべき場所が知れないなど上記の送達方法によることのできない事情のある場合に限り,公示送達等が例外的に許容されている(98条,101条,106条,107条,110条)。


要するに、日本の制度では裁判結果は必ず相手に伝えなければならいことが義務付けられているので、この件ではAに伝わっていなかったので、裁判は結審していないと同じ扱いだという主張です。
全員一致の判断でした。

第二小法廷
裁判長裁判官 鬼丸かおる 釈然としない
裁判官 山本庸幸 釈然としない
裁判官 菅野博之 釈然としない
裁判官 三浦 守  釈然としない

何か釈然としません。Aは弁護士を日本国内でも立てなかったのでしょうか?確かに弁護士にはきちんとしたのとアホなのと極端ですが、素人が全部やるよりはマシだと思います。
カルフォルニアでの裁判では、判決が出てから180日ですよね。半年間放置されて疑問に思わなかった?27万ドルの支出が絡んでいるんですよ。
日本でも、いつまでたっても判決が届かない、請求が来ないというのはおかしいと思わなかったのですかね。藪蛇だとしてしらばくれるつもりだったのでしょうか。
公序良俗を楯にしてAの不作為を問わないのは釈然としません。そもそもこれが公序良俗?

当然判決だが、雑すぎる判決文:強盗殺人事件

2019-02-12 07:22:56 | 日記
平成28(あ)543  詐欺未遂,強盗殺人,死体遺棄被告事件
平成30年12月21日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所


時事通信の報道です。
金融会社役員で資産家の霜見誠さん=当時(51)=夫妻を殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われ、一、二審で死刑とされた知人の元会社経営渡辺剛被告(49)の上告審判決で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は21日、被告側の上告を棄却した。死刑が確定する。
 鬼丸裁判長は「周到に準備された計画的な犯行で、殺意も強固。落ち度のない被害者2人の命を奪った結果は重大」と述べた。
 一、二審判決によると、渡辺被告は2012年12月、旅行名目で連れ出した霜見さんと妻美重さん=当時(48)=に車内で睡眠薬を飲ませ、首を絞めて殺害。財布などを奪い、遺体を埼玉県久喜市内に埋めた。



刑が重すぎるとして上訴したようですが、本判決文は極めて雑です。たった2枚の判決文で、事実認定を繰り返しているだけです。
判決内容は納得ですが、何ですかこれ?レベルです。

一応書いておきます。
憲法36条違反をいう点は,死刑制度が憲法の同規定に違反しない。・・・

約381万円相当の新幹線回数券50冊をだまし取ろうとしたが,未遂に終わったという強盗殺人,死体遺棄,詐欺未遂の事案である。量刑判断の中心となる強盗殺人の犯行は,クレジットカード等を強奪するために,夫妻を巧みに誘い出し,自動車内で夫妻に多量の睡眠薬を服用させて睡眠状態に陥らせ,夫妻の首にそれぞれロープを掛け,自動車の後部ドア枠上部に引っ掛けたフックにロープを通し,これを引っ張って夫妻を絞殺したというものであり,被告人は,あらかじめ,殺害に用いる自動車,睡眠薬,ロープ,フック等を準備したほか,死体を埋めるための土地を購入して穴を掘るなどしている。本件強盗殺人は,周到に準備された高度に計画的な犯行というほかなく,被告人の殺意も強固である。何ら落ち度のない被害者2名の生命を奪った結果は重大であり,遺族が峻烈な処罰感情を示しているのも当然である。・・・
被告人に前科がないことなど,被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,やむを得ないものとして,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。


本当に最高裁の判例公開の基準が分かりません。従来あったような強盗殺人事件と何が違うの?わざわざ判決文に書く内容とも思えないような感情論まで書かれてますよね。

第二小法廷
裁判長裁判官 鬼丸かおる 雑な判決文
裁判官 山本庸幸 雑な判決文
裁判官 菅野博之 雑な判決文
裁判官 三浦 守 雑な判決文

判決は妥当だと思いますが、何なのこれ?と言う雑な判決文でした。と言うか、最高裁で受理したことがおかしいんじゃないの?と思えますし、判例データベースに載せる内容とは思えません。

トンデモ判決 弁護士の職権で郵便転送先開示請求は認められない

2019-02-11 09:55:32 | 日記
平成29(受)1793  損害賠償請求事件
平成30年12月21日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  名古屋高等裁判所

弁護士法23条の2第2項に基づく照会をした弁護士会が,その相手方に対し,当該照会に対する報告をする義務があることの確認を求める訴えは,確認の利益を欠くものとして不適法である。

日本弁護士連合会愛知弁護士会は怒ってます。

新聞報道がないので、弁護士会のHPから想像すると以下の通りになります。
Aさんが詐欺事件に遭ったが、加害者Bと示談に至った。ところがBは示談金も払わずに行方不明になった。
このままBが逃げ切るとAさんは泣き寝入りになるので、Aさんの弁護士は職権で郵便転送手続きをしている新しい住所を教えなさいと手続きをしました。これに対して、たぶん個人情報保護法を楯に開示拒否をしたものと思います。そこで、弁護士が仕事にならんから開示しなさいと郵便事業会社を訴えたようです。

原審は、弁護士会の請求を認めましたが、最高裁でひっくり返りました。
裁判所は
本件確認請求が認容されれば,上告人が報告義務を任意に履行することが期待できること,上告人は,認容判決に従って報告をすれば,第三者から当該報告が違法であるとして損害賠償を請求されたとしても,違法性がないことを理由にこれを拒むことができること,被上告人は,本件確認請求が棄却されれば本件照会と同一事項について再度の照会をしないと明言していることからすれば,本件照会についての報告義務の存否に関する紛争は,判決によって収束する可能性が高いと認められる。

はぁ???たしかにたまに住民票を職権で取り寄せて、マスコミに売り飛ばす事件がありますが、まさかそれを言ってるのではないですよね。言うに事欠いて、「上告人が報告義務を任意に履行することが期待できる」はないでしょう。

弁護士法23条の2第2項に基づく照会の制度は,弁護士の職務の公共性に鑑み,公務所のみならず広く公私の団体に対して広範な事項の報告を求めることができるものとして設けられたことなどからすれば,弁護士会に23条照会の相手方に対して報告を求める私法上の権利を付与したものとはいえず,

3項 「但し、報告を求められた公務所等は、報告しないことに正当な事由がある場合はそれを疎明してこれを拒絶することができる。」
これの正当な理由に該当しないとでもいうのでしょうか?

本件確認請求を認容する判決がされれば上告人が報告義務を任意に履行することが期待できることなどの原審の指摘する事情は,いずれも判決の効力と異なる事実上の影響にすぎず,上記の判断を左右するものではない。
本来は詐欺事件で刑事告訴になっておかしくない事例ですよね。その犯人を隠匿するのでしょうか?正当性がないとする根拠がどうもわかりません。

結論
23条照会をした弁護士会が,その相手方に対し,当該照会に対する報告をする義務があることの確認を求める訴えは,確認の利益を欠くものとして不適法であるというべきである。

第二小法廷判決
裁判長裁判官 菅野博之 トンデモ
裁判官 鬼丸かおる トンデモ
裁判官 山本庸幸 トンデモ
裁判官 三浦 守 トンデモ


前にも似たような事件で開示請求が拒否されたのがあったと思いますが、こういう輩が郵便で転送手続きをしているとも思えませんし、住民票を正しい住所に移すとも思えません。現実的ではないとは思いますが、手続きとしてやらなければならないでしょう。
現実的には、探偵なりを雇わなければならないと思いますが、その費用は数百万はかかるでしょう。下手すると被害者Aさんは泣き寝入りを強いられるのです。強制執行もその費用はAさんが払わなければならないとなると・・・正義はどこにあるのでしょうか。

1票の格差は2倍以内は許容範囲 その3

2019-02-09 13:56:15 | 日記
検討に入ります。

平成26年選挙前に設置された衆議院議長の諮問機関である選挙制度調査会において,衆議院選挙制度に関する検討が重ねられ,平成27年大法廷判決の言渡し後に,小選挙区選出議員の定数を6削減するとともに,投票価値の較差を是正するための新たな議席配分方式として,各都道府県の人口に比例した配分方式の一つであるアダムズ方式を採用すること等を内容とする答申がされ,これを受けて制定された平成28年改正法は,これと同内容の規定を設けた上で,アダムズ方式による各都道府県への定数配分を平成32年以降10年ごとに行われる国勢調査の結果に基づいて行うこととし,その5年後に行われる国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍以上となったときは同較差が2倍未満となるように各都道府県内の選挙区割りの改定を行うことを定めたものである。

悪文ですね。90文字以上になるときは分割しましょうと中学校で教わらなかったのでしょうか。少なくともうちの職場でこんなだらだらした文を書いたらぶっ飛ばされます。
要するに、平成26年の選挙について翌年裁判になり、国政選挙のデータを根拠にアダムズ方式で平成28年に変更したようです。国勢調査は10年に一度なので、次回は平成32年になります。

平成27年国勢調査の結果による人口の最大較差において1対1.956,本件選挙当日の選挙人数の最大較差においても1対1.979に縮小され,選挙人数の最も少ない選挙区を基準として較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなくなったというのである。・・・本件選挙当時においては,新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができる。


ここは重要です。2倍以内に収まったのです。

結論
本件選挙当時において,本件区割規定の定める本件選挙区割りは,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず,本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。

何で2倍以内なら妥当なのかの論拠は示されていません。

裁判官鬼丸かおる,同山本庸幸の各反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官林景一,同宮崎裕子の各意見がある。

裁判官林景一の意見
(1)本件選挙における最大較差は,それをわずか0.15下回っただけの1.979倍であったのに,本件選挙につき合憲状態にあると宣言することは,投票価値の平等という観点から考えた場合,素直に理解しにくいからである。
「2倍と言う基準は仕方ないけど、それでもほとんど2倍ではないか。違憲ギリギリでしょう。」というのが納得いかないようです。

1人1票の原則とは,国民1人1人が1票を投じることができるというだけではなく,各1票の価値が,財産,地位等によって差別されてはならないという投票価値の平等原則に通ずるものであり,その差別の禁止は,居住地による差別をも含んでおり,これは厳格に考えるべきものであるという点を補足したい。

裁判官林景一は、住む地域によって一人1票から2票の差があるではないかと言うところを指摘しています。
この点全く私は同意できません。その1で書いたように、地方自治ならわかりますが、国防や自然災害の問題を考えれば、田舎が有利になるのは仕方のないことではないでしょうか。
それに実質2倍でありおかしいと言っていますが、スピード違反で60キロ制限を61キロだから許せと言っているようなもので、ここはこの基準と定めなければどうしようもないのです。百歩譲って一人1票の原則を貫くとしたら、全ての選挙区を無くして全国区にするしか無くなります。全く現実的ではありません。

加えて
地理的,歴史的,社会的といった,選挙制度の構築に当たって国会が考慮することのある他の諸要素は,それ自体が憲法上の要求でない以上,投票価値の平等原則の下位に立つものであり,よほど合理的な理由がない限り,そしてそのことが明確に説明されない限り,投票価値の平等が優先的に尊重されなければならないと考える。
もはや、はぁ?としか言いようがないレベルです。どこに「地理的,歴史的,社会的といった,選挙制度の構築に当たって国会が考慮することのある他の諸要素は,それ自体が憲法上の要求でない」と解釈するべき根拠があるのでしょうか?書いてないというだけの話で、検討してはならないというのは過剰です。


すなわち最大較差で1.1倍相当に制限する区割制度を構築しようとしていることが一つの参考にはなろう。もっとも,英国では,①全てが小選挙区で争われる下院の議席総数が,我が国衆議院の小選挙区議席総数の2倍以上の600議席(改正後)あり,②その600議席は,島嶼部の例外4議席を除いて,まず連合王国を構成するイングランド,スコットランド,ウェールズ,北アイルランドという四つの地域に人口比例的に配分され,このうち,イングランドに配分される約500議席については,更にその下にある九つの地域にやはり人口比例的に再配分される。つまり,単純化していえば,600近い議席を12の配分基盤に配分することとなり,各配分基盤は18ないし81もの選挙区を有するため,選挙区間の偏差調整についての柔軟性がかなりあるといえる。英国については,こうした事情もあることから,我が国にはあまり参考にならないという見方もあり得ようが,逆に,まさにそうした点も含めて参考になる

先ほどの論拠から言えば、1.1倍であっても不平等ですよね。ここでよそではこうだからと言うのはどうなんですか?隣のだれだれちゃんが買ってもらったから、私も買ってよと言うのと大差ないです。ここまで来ると裁判官と言うより政治家の発現ですね。転身されたらいかがでしょうか。

第二の根拠として
平成28年改正法及び平成29年改正法に基づく選挙制度について,実質上,いわば包括的な「お墨付き」を与えるものであると受け止められる可能性が高いことである。しかも,その判定の効果は,アダムズ方式による定数配分が実際に行われると見込まれる平成34年まではもちろんのこと,その次の国勢調査後までの約15年間は優に持続する(すなわち,人口動態がどうあれ,その間の衆議院選挙における選挙区割りは全て合憲状態であるとみなされる)可能性がある。
因縁つけてますね。国勢調査は10年に一度ですよ。国政選挙に先んじて行われるわけではないのです。


裁判官宮崎裕子の意見

1 前掲最
高裁昭和51年4月14日大法廷判決以降の累次の大法廷判決は,憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれること(すなわち,人口比例)を最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているが,それ以外の要素(すなわち,人口比例以外の要素)も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されるという解釈を示してきた。・・・平成23年大法廷判決は,この解釈を踏まえて,旧区割基準において1人別枠方式による定数配分を行う理由,すなわち,人口比例の配分により定数の急激かつ大幅な減少を受ける人口の少ない県に配慮すること(以下「人口少数県への配慮」という。)の合理性は失われたから,旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分は,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判断し,・・・最大較差が2倍未満であっても,その定数配分が憲法の投票価値の平等の要求に反する状態ではないと認めることはできないというべきである。
私の価値観とはだいぶ違いますが、林景一裁判官よりは説明の筋は通っています。

(1)附則基準の内容は,新区画審設置法3条に定められている基準の内容とは異なり,都道府県への定数配分において人口比例基準を採用していない。
(2)1人別枠方式を含む旧区割基準による定数配分の結果であるこの改正前小選挙区定数を含む本件選挙区割りが,人口少数県への配慮という合理性のない要素を考慮したことの影響をどの程度残しているかが問題となる。
人口少数県への配慮という要素に合理性がない以上,人口の少ない県により多い配分をすべく人口の多い都道府県への配分を減らすことにも合理性はない。
人口の多い都道府県の定数を増加させる方向の改正が平成23年大法廷判決以降の法改正によってされたことはない。


我が国の現行憲法上は,衆議院議員は国民の代表であって都道府県等の地域の代表ではなく,衆議院には解散制度が設けられていることを考えるならば,衆議院議員の選挙は,常に,民意を可能な限り的確に反映できるような形で行われるべきであり,憲法の投票価値の平等の要求が選挙制度上合理的に担保されてこそ,その選挙結果は民意を反映したものという大義も立つというべきである。この点も含めて,投票価値の平等は最も重要かつ基本的な憲法上の要求であることについては疑問の余地はないが,投票価値の平等が,各投票が選挙の結果に及ぼす影響力が数字的に完全に同一であることまで要求するものと考えることができないことは,前掲最高裁昭和51年4月14日大法廷判決が判示しているとおりである。
こういわれると、一瞬そうかなと思ってしまうくらいきちんとした説明です。この要約だとそんな感じはありますが、興味ある人は原文を読んでみてください。


裁判官鬼丸かおるの反対意見
本件区割規定は憲法に違反しており,本件選挙についてその違法を宣言することが相当であると考える。
真正面から憲法違反であると言っています。

2憲法は,14条1項においてすべて国民は法の下に平等であると定め,15条1項,3項,44条ただし書の各規定により選挙権の平等及び選挙権の内容すなわち各選挙人の投票価値の平等も要求している。

法の下の平等には異論はないのですが、どこに一人1票の原則と読めるのでしょうか?地域間の平等と読んでもおかしくないような気がしますが。

衆議院は,その権能,議員の任期及び解散制度の存在等に鑑み,適正に国民の意思を集約し,反映されていることが求められる。そうであるからこそ,憲法は,1対1に近い投票価値の平等を保障しており,これが最も重要かつ基本的な基準となるのである。・・・憲法の保障する1対1に近い投票価値の平等は重要かつ基本的な基準であるから,議員の定数配分及び選挙区の区割りを定めるに当たっては,それ以外の要素は上記基準に反しない程度の合理性を有するものに限り考慮することができるのであって,憲法の保障する1対1に近い投票価値の平等を超えて約2倍の較差を認めることになるような考慮要素等が国会に認められる裁量であると解することは困難であると考える。その詳細は以下のとおりであり,この結果,私は,本件区割規定は憲法に違反すると考えるものである。・・・人口の多寡という要素のみを特に考慮して1人1票に近い投票価値の平等を損なうことを,憲法は許容していないというべきである。
鬼丸裁判官も一人1票に近づけろと。理想論としては分かりますけどね。技術的に可能ならやってますがな。全部全国区にしますか?それこそ大規模資金が必要になり、地方の声が吸い上げられなくなりますよ。

更に
本件選挙に関する投票価値の平等の要求に反する状態の是正に係る合理的期間の始期は,同判決の言渡しがされた日である平成23年3月23日と解する。
同日以降,本件選挙実施までに既に6年6か月が過ぎており,立法府が司法の判断の趣旨を踏まえ,投票価値の平等の実現に向けて真摯に行動していれば,上記の期間内に憲法の投票価値の平等の要求するところに沿った1対1に近い定数配分及び選挙区割りへの是正を行うことは十分可能であったものであり,憲法上要求される合理的期間は経過したというべきである。

この点はぐうの音も出ません。さっさとやれよと思いながら私も見ていました。政治家が次は自分が当選するように線を引きたがるのが原因で、国家のために働く感覚がない職業政治家の体たらくとしか言いようがないです。


裁判官山本庸幸の反対意見
1 投票価値の平等は唯一かつ絶対的基準
いくら憲法前文で平等を謳ったから知って、どの基準で平等であるべき鎌では言ってないでしょ。拡大解釈です。

2 2割超の較差のある選挙制度は違憲無効
一度判決が出れば、それ以降同様の事をやれば違憲と言いたくなるのは分かりますが、ではどのようにして選挙区割りをするのでしょうか?違憲状態の国会が決めたことも認めないんですよね。これ以降グダグダ書いていますが、これは法律家が書く内容と言うより、政治家のアジ演説です。御自分で立候補されたらいかがでしょうか。

大法廷
裁判長裁判官 大谷直人
裁判官 岡部喜代子
裁判官 鬼丸かおる
裁判官 山本庸幸 酷すぎ、政治家になれよ
裁判官 山崎敏充
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 菅野博之
裁判官 山口 厚
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一  酷すぎ、政治家になれよ
裁判官 宮崎裕子
裁判官 深山卓也
裁判官 三浦 守

全員トンデモですが、裁判官 山本庸幸 と裁判官 林 景一は御自分が裁判官であることを逸脱しているように思えます。

1票の格差は2倍以内は許容範囲 その2

2019-02-03 15:44:11 | 日記

事実認定を見ていきます。

1 平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙が行われた。
2 
(1)この選挙で小選挙区比例代表並立制が導入された。
(2)選挙区区割りについては、の区画審設置法3条は,
①1項において,上記の改定案を作成するに当たっては,各選挙区の人口 の均衡を 図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数 が2以上とならないようにすることとし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的 に考慮して合理的に行わなければならないと定めてある。
②2項におい て,各都道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県の人口を小選挙区基準除数 (その除数で各都道府県の人口を除して得た数(1未満の端数が生じたときは,こ れを1に切り上げるものとする。)の合計数が衆議院小選挙区選出議員の定数に相 当する数と合致することとなる除数をいう。)で除して得た数(1未満の端数が生 じたときは,これを1に切り上げるものとする。)とするとし(いわゆるアダムズ 方式)
③3項において,下記の同法4条2項の規定による勧告に係る改定案の作 成に当たっては,各都道府県の区域内の衆議院小選挙区選出議員の選挙区の数は変 更しないものとすると定めている。
3条は,①1項におい て,上記の改定案を作成するに当たっては,各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙 区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とな らないようにすることを基本とし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮 して合理的に行わなければならないものと定めるとともに,②2項において,各都 道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ1を配当することとしている。
(3)平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙の小選挙区選挙は,同14年に成立した公職選挙法の一部を改正する法 律(平成14年法律第95号)により改定された選挙区割り(以下「旧選挙区割 り」という。)の下で施行されたものであり,選挙当日における選挙区間の選挙人 数の最大較差は1対2.304で裁判になり、国の敗訴が決まった。
(4)裁判結果を受けて、平成24年11月16日,旧区画審設置 法3条2項の削除及びいわゆる0増5減を内容とする公職選挙法及び区画審設置法の一部を改正する法律案が平成24年改正法として成立した。
(5) 平成25年改正法の成立の前後を通じて,国会においては,今後の人口異 動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態とならないようにするため の制度の見直しについて,総定数の削減の要否等を含め,引き続き検討が続けら れ,平成26年6月19日の衆議院議院運営委員会における議決により,衆議院選 挙制度に関する調査,検討等を行うため,衆議院に有識者により構成される議長の 諮問機関として衆議院選挙制度に関する調査会が設置された。・・・10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口に 基づき行うものとし,その5年後に行われる国勢調査の結果,選挙区間の人口の較 差が2倍以上の選挙区が生じたときは,各都道府県への議席配分の変更は行わず, 区画審において上記の較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行 うものとした。
(7) 選挙制度調査会の前記答申を受けて,平成28年5月20日,衆議院議員 の定数を475人から10削減して465人にした。各都道府県への定数配分の方式としてアダムズ方式を採 用すること等を内容とする衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一 部を改正する法律(平成28年改正法)が成立した。・・・平成28年改正法は,アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更が 行われるまでの投票価値の較差是正のための措置として,附則により,小選挙区選 出議員の定数を6削減することを前提として,区画審において平成27年に行われ た国勢調査(以下「平成27年国勢調査」という。)の結果に基づく選挙区割りの 改定案の作成及び勧告を行うこととした。
(8) 平成29年9月28日に衆議院が解散され・・・本件選挙当日における選挙区間の 選挙人数の較差は,選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙 区(東京都第13区)との間で1対1.979であり,選挙人数が最も少ない選挙 区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかった。
3(1) 憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば投票価値の平等を要求してい るものと解される。他方,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の 基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との 関連において調和的に実現されるべきものである。
憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを 最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが,それ 以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているもの と解されるのであって・・・・



議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを 最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきである
ここ重要です。事実認定ですよね。なんですかこの勝手な解釈は!さらっとしかも事実認定にぶっこみますか????この文章の直前の
投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との 関連において調和的に実現されるべきものである。
ここの文章と矛盾していませんか?いつの間に確定事項として勝手に言ってるのでしょうか。