令和5(受)287 認知請求事件
令和6年6月21日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所
嫡出でない子は、生物学的な女性に自己の精子で当該子を懐胎させた者に対し、その者の法令の規定の適用の前提となる性別にかかわらず、認知を求めることができる
時事通信の報道です
子の認知請求、6月判決=親が性別変更後に誕生―最高裁
性同一性障害で男性から性別変更した40代女性が、変更前の凍結精子を用いて女性パートナーとの間にもうけた次女から親子関係の認知を求められた訴訟の上告審弁論が31日、最高裁第2小法廷(尾島明裁判長)で開かれた。女性、次女側双方が意見を述べ結審。判決期日は6月21日に指定された。
弁論は二審の結論変更に必要な手続きで、親子関係を否定した東京高裁の判断が見直される可能性がある。生物学上の父が性別変更後に子をもうけたケースで、最高裁が親子関係の成否を判断するのは初めて。
次女の代理人弁護士は「認められなければ、子(次女)は親に対して扶養請求権、相続権などさまざまな権利を行使できないことになる」と主張。女性も「(次女側の請求を)認めることを求める」と述べた。
NHKの報道です
性別変更後に凍結精子で生まれた子と親子関係認める 最高裁
21日の判決で最高裁判所第2小法廷の尾島明裁判長は「親子に関する法制度は血縁上の関係を基礎に置き、法的な関係があるかどうかは子どもの福祉に深く関わる。仮に血縁上の関係があるのに親権者となれないならば、子どもは養育を受けたり相続人となったりすることができない」と指摘しました。
その上で、裁判官4人全員の意見として「戸籍上の性別にかかわらず父親としての認知を求めることができる」という初めての判断を示し、性別変更後に生まれた次女との親子関係を認めました。
今後の親子関係や性別に関する議論に影響を与える可能性があります。
これは法の不備というところでしょうか。こういう問題を起こさせないためにも、性別変更したら直ちに凍結精子はは生きずべきですし、性自認だけで性別変更も認めるべきではありませんでした。最高裁判決令和2(ク)993 性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件の判決が招いた結果です。トンデモ判決工事なしで性別変更可1で詳しく書きました。
では事実認定から見ていきます
1(1)被上告人は自己の精子を凍結保存した。
(2)被上告人は、平成▲年、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項に基づく性別の取扱いの変更の審判を受け、法令の規定の適用の前提となる性別を男性から女性へと変更した。
(3)上告人の母は、被上告人の同意の下で上記精子を用いた生殖補助医療により懐胎し、令和▲年▲月▲日に上告人を出産した。上告人は、上告人の母の嫡出でない子である。
分かりにくいので解説します。上告人は元男、上告人は元男の子供です。子どもは婚外子です。
(4)被上告人は、▲年▲月、Aに上告人に係る胎児認知の届出をしたが、被上告人の法的性別が女性であることなどを理由に当該届出は不受理とされた。
同性婚は認められておりませんので、私生児ということになります。なので、元男に親として登録したいと役所に行ったところ、書類受付を拒否されました。
最高裁の判断は
民法その他の法令には、認知の訴えに基づき子との間に法律上の父子関係が形成されることとなる父の法的性別についての規定はないところ、平成16年に特例法が施行されるまで、法律上の父となり得る者の性別が例外なく男性であることにつき疑義が生ずる状況にはなかった。・・・上告人との間に血縁上の父子関係を有しているものの、その法的性別が女性である被上告人に対し、上告人が認知を求めることができるか否かが問題となっている。
それはそうです。訴えられた内容だけ判断していますけど、極端な話自分のクローンを作った場合、親は誰になるのかのこともかかわってきますよ。その辺は充分に考慮入れてます?判決がその後の判断に大きく影響しますからね。
生物学的な男性が生物学的な女性に自己の精子で子を懐胎させることによって血縁上の父子関係が生ずるという点は、当該男性の法的性別が男性であるか女性であるかということによって異なるものではない。
早速でたらめ論法が出ました。だとしたら、預かっている冷凍精子を誰かのものと間違えた場合、勝手に売り飛ばした場合、これが考慮されていません。
実親子関係の存否は子の福祉に深く関わるものであり、父に対する認知の訴えは、子の福祉及び利益等のため、強制的に法律上の父子関係を形成するものであると解される。
心理的な親と生物的な親をごっちゃにしてませんか?法的親子関係、つまり扶養義務を果たさせるだけの親子関係ですか?
これまで子の認知について、生物学的要するに近親婚を避ける目的は議論された試しがありません。今回もそんな感じです。
特例法3条1項3号は、性別の取扱いの変更の審判をするための要件として「現に未成年の子がいないこと。」と規定しているが、特例法制定時の「現に子がいないこと。」という規定を平成20年法律第70号により改正したものであり、改正後の同号は、主として未成年の子の福祉に対する配慮に基づくものということができる。
確かに胎児でも厚生労働省の通知によって、妊娠満22週未満は人間として扱われませんので、精子は受精すらしていない状態なのでこの条件はクリアします。ですが、釈然としませんね。元男が女であるという自認するようになった。でも自分の子供が欲しい。これはあり得ますが、だからといって自分の精子で人工授精でというのは釈然としません。
その者の法的性別が女性であることを理由に妨げられると解すると、かえって、当該子の福祉に反し、看過し難い結果となることは上記のとおりである。
あれ?法的手続きで養子になることは可能なはずですよ。生物学的に親と認めるかどうかはこれまで最高裁では判断していません。この福祉を重視するのであれば、養子であることは何の不利があるのでしょうか?
結論
嫡出でない子は、生物学的な女性に自己の精子で当該子を懐胎させた者に対し、その者の法的性別にかかわらず、認知を求めることができると解するのが相当である。
論理に飛躍がありますね。
裁判官三浦守の補足意見
特例法3条1項4号は、性別の取扱いの変更の審判の要件として「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」と規定している。この規定は、最高裁令和2年(ク)第993号同5年10月25日大法廷決定・民集77巻7号1792頁により違憲無効であるとの判断が示されたものであるが、もともと、性別変更審判を受けた者について変更前の性別の生殖機能により子が生まれることがあれば、親子関係等に関わる問題が生じ、社会に混乱を生じさせかねないこと等の配慮に基づくものと解される。・・・同号は、性別変更審判前に凍結保存した精子の使用を含め、性別変更審判後に生殖補助医療の利用により子が生まれる可能性を否定していないことが明らかであり、上記大法廷決定にかかわらず、同号の存在が、法的性別が女性であることを理由として認知の訴えに基づく法律上の父子関係の形成を妨げる根拠となるものとは解されない。
ならば生物学的に証明されていることが絶対条件だとすべきじゃないですかね。今後の判決もこれに倣うべきです。
他方で、実親子関係に関する法制が身分法秩序の根幹に関わるものであって、生命倫理、子の利益、家族の在り方等について様々な議論があることから、上記法整備には一定の時間を要することもやむを得ない面がある。しかし、法整備の必要性が認識される状況にありながら20年を超える年月が経過する中で既に現実が先行するに至っている。具体的な事件における事実関係を踏まえ、現行法の適切な解釈に基づく法律判断を行って事件を解決することは、裁判所の責務である。
ということは、そもそも立法府がやってこなかったのが責任だし、今回は暫定提起に判断しておくっていう言い訳ですね。
裁判官尾島明の補足意見
特例法の制定時から、
①特例法の施行前に生まれた嫡出でない子について、男性から女性に性別の取扱いの変更をした者が認知をし、又は上記の子がその者に認知を請求する可能性、
②本件がそうであるように、性別の取扱いの変更前に精子を凍結保存した者が同変更後にその精子を用いた生殖補助医療により子をもうけた場合にその子の認知が問題になる可能性があったのであり、
特例法の立案に関与した者もごく例外的にはそのような事態があり得ることは認識していたことがうかがわれる。
この意見はすっきりしますね。男のときにあっちこっちで子供を作っておいて、やっぱり女だったわと性転換を認められたとします。その申請が通った後に、子ども認知することもあり得ますよね。そうすると法律がし分科する可能性があります。この危険性を言ってます。
残存する生殖能力により生物学的な父として子をもうける可能性も、極めてまれなことであると考えられるが、生じてきている。
希な事じゃないと思いますよ。むしろ、性自認によって性別変更可能と判断が出たわけですから、ますますこの可能性が高くなります。
1 民法の実親子に関する法制は、血縁上の親子関係を基礎に置いているというのが、当審の判例(最高裁平成16年(受)第1748号同18年9月4日第二小法廷判決・民集60巻7号2563頁、最高裁平成18年(許)第47号同19年3月23日第二小法廷決定・民集61巻2号619頁参照)であって、本判決の法廷意見がその民法の基本法制の原則に反するということはない。
上告人のような子による認知の訴えが認められると子の成長や発達に特段の問題が生ずるということを具体的に示す報告等が存在することはうかがわれず、その認知を認めることによって子の福祉に対する弊害が生ずるということは困難である。
子供の将来のことなんぞ分かりませんから、それはその通りでしょう。ただ子の福祉とはどこまでを考えるべきなのか、この議論がないのが気になりますね。
その訴えを認めないこととし、法的性別の取扱いを男性から女性へと変更した血縁上の父が親権者・監護者となる可能性、その父又は父方の親族から扶養を受けられる可能性及びその父又は父方の親族の財産を相続する可能性を子から一律に奪うことが子の福祉に反することは明らかである。
これはおかしくないですか?元男も自分の子として認めろと言ってるわけで、養子縁組でも可能ですよ。
3 未成年の子がいないことを性別の取扱いの変更の審判をするための要件としているのであるが、これは飽くまでも同審判時における要件であって、同審判確定後に未成年の子との間で親子関係が生ずることが3号規定ないし3号規定の趣旨・目的によって直ちに制限されるものとは解されない。
なぜ「解すされない」とするのか説明がありません。
「現に子がいないこと。」を要件としていた平成20年法律第70号による改正前の3号規定は、「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」を要件とする4号規定と共に、「法的性別が女性である法律上の父」や「法的性別が男性である法律上の母」が生じて法律上の父母という属性と男性、女性という法的性別との間に不一致が生ずると家族秩序に混乱を生じさせるおそれがあるとして、上記不一致の発生を抑止することをその趣旨・目的としていたものと解される。
逆読みすると、今は子供がいないけど将来子供ができることを排除しないということですよね。これって死文化って言いませんか?
4 本件は、被上告人と上告人の母とが子をもうけることを目的として生殖補助医療を受けたという事案であって、本判決は、上記の問題について一定の結論をとることを前提にするものではない。
これは意見じゃ駄目ですよ、判決文に載らなきゃ。
裁判長裁判官 尾島 明
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美
なんかパッとしませんね。本当の論点は子の福祉だというのであれば、嫡出非嫡出の区別をしてはならないという判決は出ています。なので、その点は全く論点違いでしょう。生物学的つながりを根拠にするのであればまだマシですが、思いっきり条文を死文化します。何かすっきりしませんね。仮に、これが元男が嫌がっていたのに勝手に子供を産んだとなると、これはどうなりますの?それでも嫡出子にするんですか?この判断だとそうなりますよ。
令和6年6月21日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所
嫡出でない子は、生物学的な女性に自己の精子で当該子を懐胎させた者に対し、その者の法令の規定の適用の前提となる性別にかかわらず、認知を求めることができる
時事通信の報道です
子の認知請求、6月判決=親が性別変更後に誕生―最高裁
性同一性障害で男性から性別変更した40代女性が、変更前の凍結精子を用いて女性パートナーとの間にもうけた次女から親子関係の認知を求められた訴訟の上告審弁論が31日、最高裁第2小法廷(尾島明裁判長)で開かれた。女性、次女側双方が意見を述べ結審。判決期日は6月21日に指定された。
弁論は二審の結論変更に必要な手続きで、親子関係を否定した東京高裁の判断が見直される可能性がある。生物学上の父が性別変更後に子をもうけたケースで、最高裁が親子関係の成否を判断するのは初めて。
次女の代理人弁護士は「認められなければ、子(次女)は親に対して扶養請求権、相続権などさまざまな権利を行使できないことになる」と主張。女性も「(次女側の請求を)認めることを求める」と述べた。
NHKの報道です
性別変更後に凍結精子で生まれた子と親子関係認める 最高裁
21日の判決で最高裁判所第2小法廷の尾島明裁判長は「親子に関する法制度は血縁上の関係を基礎に置き、法的な関係があるかどうかは子どもの福祉に深く関わる。仮に血縁上の関係があるのに親権者となれないならば、子どもは養育を受けたり相続人となったりすることができない」と指摘しました。
その上で、裁判官4人全員の意見として「戸籍上の性別にかかわらず父親としての認知を求めることができる」という初めての判断を示し、性別変更後に生まれた次女との親子関係を認めました。
今後の親子関係や性別に関する議論に影響を与える可能性があります。
これは法の不備というところでしょうか。こういう問題を起こさせないためにも、性別変更したら直ちに凍結精子はは生きずべきですし、性自認だけで性別変更も認めるべきではありませんでした。最高裁判決令和2(ク)993 性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件の判決が招いた結果です。トンデモ判決工事なしで性別変更可1で詳しく書きました。
では事実認定から見ていきます
1(1)被上告人は自己の精子を凍結保存した。
(2)被上告人は、平成▲年、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項に基づく性別の取扱いの変更の審判を受け、法令の規定の適用の前提となる性別を男性から女性へと変更した。
(3)上告人の母は、被上告人の同意の下で上記精子を用いた生殖補助医療により懐胎し、令和▲年▲月▲日に上告人を出産した。上告人は、上告人の母の嫡出でない子である。
分かりにくいので解説します。上告人は元男、上告人は元男の子供です。子どもは婚外子です。
(4)被上告人は、▲年▲月、Aに上告人に係る胎児認知の届出をしたが、被上告人の法的性別が女性であることなどを理由に当該届出は不受理とされた。
同性婚は認められておりませんので、私生児ということになります。なので、元男に親として登録したいと役所に行ったところ、書類受付を拒否されました。
最高裁の判断は
民法その他の法令には、認知の訴えに基づき子との間に法律上の父子関係が形成されることとなる父の法的性別についての規定はないところ、平成16年に特例法が施行されるまで、法律上の父となり得る者の性別が例外なく男性であることにつき疑義が生ずる状況にはなかった。・・・上告人との間に血縁上の父子関係を有しているものの、その法的性別が女性である被上告人に対し、上告人が認知を求めることができるか否かが問題となっている。
それはそうです。訴えられた内容だけ判断していますけど、極端な話自分のクローンを作った場合、親は誰になるのかのこともかかわってきますよ。その辺は充分に考慮入れてます?判決がその後の判断に大きく影響しますからね。
生物学的な男性が生物学的な女性に自己の精子で子を懐胎させることによって血縁上の父子関係が生ずるという点は、当該男性の法的性別が男性であるか女性であるかということによって異なるものではない。
早速でたらめ論法が出ました。だとしたら、預かっている冷凍精子を誰かのものと間違えた場合、勝手に売り飛ばした場合、これが考慮されていません。
実親子関係の存否は子の福祉に深く関わるものであり、父に対する認知の訴えは、子の福祉及び利益等のため、強制的に法律上の父子関係を形成するものであると解される。
心理的な親と生物的な親をごっちゃにしてませんか?法的親子関係、つまり扶養義務を果たさせるだけの親子関係ですか?
これまで子の認知について、生物学的要するに近親婚を避ける目的は議論された試しがありません。今回もそんな感じです。
特例法3条1項3号は、性別の取扱いの変更の審判をするための要件として「現に未成年の子がいないこと。」と規定しているが、特例法制定時の「現に子がいないこと。」という規定を平成20年法律第70号により改正したものであり、改正後の同号は、主として未成年の子の福祉に対する配慮に基づくものということができる。
確かに胎児でも厚生労働省の通知によって、妊娠満22週未満は人間として扱われませんので、精子は受精すらしていない状態なのでこの条件はクリアします。ですが、釈然としませんね。元男が女であるという自認するようになった。でも自分の子供が欲しい。これはあり得ますが、だからといって自分の精子で人工授精でというのは釈然としません。
その者の法的性別が女性であることを理由に妨げられると解すると、かえって、当該子の福祉に反し、看過し難い結果となることは上記のとおりである。
あれ?法的手続きで養子になることは可能なはずですよ。生物学的に親と認めるかどうかはこれまで最高裁では判断していません。この福祉を重視するのであれば、養子であることは何の不利があるのでしょうか?
結論
嫡出でない子は、生物学的な女性に自己の精子で当該子を懐胎させた者に対し、その者の法的性別にかかわらず、認知を求めることができると解するのが相当である。
論理に飛躍がありますね。
裁判官三浦守の補足意見
特例法3条1項4号は、性別の取扱いの変更の審判の要件として「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」と規定している。この規定は、最高裁令和2年(ク)第993号同5年10月25日大法廷決定・民集77巻7号1792頁により違憲無効であるとの判断が示されたものであるが、もともと、性別変更審判を受けた者について変更前の性別の生殖機能により子が生まれることがあれば、親子関係等に関わる問題が生じ、社会に混乱を生じさせかねないこと等の配慮に基づくものと解される。・・・同号は、性別変更審判前に凍結保存した精子の使用を含め、性別変更審判後に生殖補助医療の利用により子が生まれる可能性を否定していないことが明らかであり、上記大法廷決定にかかわらず、同号の存在が、法的性別が女性であることを理由として認知の訴えに基づく法律上の父子関係の形成を妨げる根拠となるものとは解されない。
ならば生物学的に証明されていることが絶対条件だとすべきじゃないですかね。今後の判決もこれに倣うべきです。
他方で、実親子関係に関する法制が身分法秩序の根幹に関わるものであって、生命倫理、子の利益、家族の在り方等について様々な議論があることから、上記法整備には一定の時間を要することもやむを得ない面がある。しかし、法整備の必要性が認識される状況にありながら20年を超える年月が経過する中で既に現実が先行するに至っている。具体的な事件における事実関係を踏まえ、現行法の適切な解釈に基づく法律判断を行って事件を解決することは、裁判所の責務である。
ということは、そもそも立法府がやってこなかったのが責任だし、今回は暫定提起に判断しておくっていう言い訳ですね。
裁判官尾島明の補足意見
特例法の制定時から、
①特例法の施行前に生まれた嫡出でない子について、男性から女性に性別の取扱いの変更をした者が認知をし、又は上記の子がその者に認知を請求する可能性、
②本件がそうであるように、性別の取扱いの変更前に精子を凍結保存した者が同変更後にその精子を用いた生殖補助医療により子をもうけた場合にその子の認知が問題になる可能性があったのであり、
特例法の立案に関与した者もごく例外的にはそのような事態があり得ることは認識していたことがうかがわれる。
この意見はすっきりしますね。男のときにあっちこっちで子供を作っておいて、やっぱり女だったわと性転換を認められたとします。その申請が通った後に、子ども認知することもあり得ますよね。そうすると法律がし分科する可能性があります。この危険性を言ってます。
残存する生殖能力により生物学的な父として子をもうける可能性も、極めてまれなことであると考えられるが、生じてきている。
希な事じゃないと思いますよ。むしろ、性自認によって性別変更可能と判断が出たわけですから、ますますこの可能性が高くなります。
1 民法の実親子に関する法制は、血縁上の親子関係を基礎に置いているというのが、当審の判例(最高裁平成16年(受)第1748号同18年9月4日第二小法廷判決・民集60巻7号2563頁、最高裁平成18年(許)第47号同19年3月23日第二小法廷決定・民集61巻2号619頁参照)であって、本判決の法廷意見がその民法の基本法制の原則に反するということはない。
上告人のような子による認知の訴えが認められると子の成長や発達に特段の問題が生ずるということを具体的に示す報告等が存在することはうかがわれず、その認知を認めることによって子の福祉に対する弊害が生ずるということは困難である。
子供の将来のことなんぞ分かりませんから、それはその通りでしょう。ただ子の福祉とはどこまでを考えるべきなのか、この議論がないのが気になりますね。
その訴えを認めないこととし、法的性別の取扱いを男性から女性へと変更した血縁上の父が親権者・監護者となる可能性、その父又は父方の親族から扶養を受けられる可能性及びその父又は父方の親族の財産を相続する可能性を子から一律に奪うことが子の福祉に反することは明らかである。
これはおかしくないですか?元男も自分の子として認めろと言ってるわけで、養子縁組でも可能ですよ。
3 未成年の子がいないことを性別の取扱いの変更の審判をするための要件としているのであるが、これは飽くまでも同審判時における要件であって、同審判確定後に未成年の子との間で親子関係が生ずることが3号規定ないし3号規定の趣旨・目的によって直ちに制限されるものとは解されない。
なぜ「解すされない」とするのか説明がありません。
「現に子がいないこと。」を要件としていた平成20年法律第70号による改正前の3号規定は、「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」を要件とする4号規定と共に、「法的性別が女性である法律上の父」や「法的性別が男性である法律上の母」が生じて法律上の父母という属性と男性、女性という法的性別との間に不一致が生ずると家族秩序に混乱を生じさせるおそれがあるとして、上記不一致の発生を抑止することをその趣旨・目的としていたものと解される。
逆読みすると、今は子供がいないけど将来子供ができることを排除しないということですよね。これって死文化って言いませんか?
4 本件は、被上告人と上告人の母とが子をもうけることを目的として生殖補助医療を受けたという事案であって、本判決は、上記の問題について一定の結論をとることを前提にするものではない。
これは意見じゃ駄目ですよ、判決文に載らなきゃ。
裁判長裁判官 尾島 明
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美
なんかパッとしませんね。本当の論点は子の福祉だというのであれば、嫡出非嫡出の区別をしてはならないという判決は出ています。なので、その点は全く論点違いでしょう。生物学的つながりを根拠にするのであればまだマシですが、思いっきり条文を死文化します。何かすっきりしませんね。仮に、これが元男が嫌がっていたのに勝手に子供を産んだとなると、これはどうなりますの?それでも嫡出子にするんですか?この判断だとそうなりますよ。