最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

悪文極まりない判決文:土地課税、昔家を建てるときに審査したはずなのでそれに従え

2018-07-28 06:56:15 | 日記
平成28(行ヒ)406  固定資産評価審査決定取消請求事件
平成30年7月17日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄差戻  大阪高等裁判所


土地の固定資産評価について,当該土地に接する街路が建築基準法42条1項3号所定の道路に該当する旨の市長の判定があること等を理由に上記街路が同号所定の道路に該当することを前提とする登録価格の決定を適法とした原審の判断に違法があるとされた事例


Aさんが土地評価で、市長から出された金額は高すぎると申し立てたところ却下されました。それを不服として行政裁判になりました。

地方税法349条1項は,土地に対して課する基準年度の固定資産税の 課税標準を規定して、市町村長が決定しなければなりません。
その時に基準になるのが、固定資産評価基準に照らし合わせて決めることになっています。
その中で、建築基準法43条1項本文は,建築物の 敷地は道路に2m以上接しなければならないとし,同法42条が道路の定義を定め ています。

事実認定です
1 Aさんが持っている土地は、駐車場として利用されて いる一団の土地である。
2 ある道が42条道路に該当するか否かについて判定の依頼があ ったときは,これを調査した上で判定(以下「道路判定」という。)をし,建築指 導課は,道路判定の内容を道路縦覧図に表示している。本件街路が所在する区域について同法第3章の規定が適 用されるに至った昭和25年11月23日時点で,本件街路が幅員4m以上の道と して存在したことが必要である。
3 市長は,本件登録価格を決定するため,市街地宅地評価法により本件各土地 の価額を算出したところ,その他の街路である本件街路の路線価を付設するに当た り,細街路等補正率表及び通路等補正率表所定の補正率を用いた補正をしなかっ た。
4 Aは,平成21年5月25日,本件委員会に対し,本件登録価格を不服とし て審査の申出をしたが,本件委員会は,同24年1月6日付けで,同申出を棄却す る旨の本件各決定をした。
5 市は,本件街路が昭和25年11月23日時点で道として存在したとし ても,その幅員は4m以上ではなかったから,本件各土地の価額については,本件 街路が3号道路に該当しないことを前提に算出されるべきであると主張している。

原審では
昭和25年11月23日時点で本件街路の幅員がどの程度であったかは明らかで ないものの,本件道路判定は相応の根拠の下に本件街路が3号道路に該当する旨の 判定をしたものであって,その結果,建築確認等は,これを前提として行われるこ ととなるから,本件各土地が42条道路に接しないとして建築確認を受けることが できないためにその上に建築物を建築することができない事態となる可能性はな い。したがって,本件街路が3号道路に該当することを前提とする本件登録価格の 決定は適法である。

結構こういう事が街中でもあるのですよ。道として人が通らなくなって草ぼうぼうになり、境界線が分からなくなっていつの間にか占有していることが。そうでなくても、裁判物件になっているものの中には、明らかに他人の土地に勝手にビルを建ててしまったり。工事のときに気づかなかったのかと不思議に思う事があります。

最高裁では次のように判断しました。
(1) 本件各決定は,本件登録価格の決定に違法はないとして,これに係る上告人の審査の申出を棄却したものであるところ,土地の基準年度に係る賦課期日にお ける登録価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合には,同期日におけ る当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず, その登録価格の決定は違法となるものというべきである

悪文極まりないですね。学校からやり直してこいと言いたくなるレベルです。これは他の言語に翻訳できますか?

(2) 42条道路に接しない土地の上に建築物を建築することについては,建築 基準法43条1項本文所定の接道義務に違反するものとして,建築主事又は指定確 認検査機関の建築確認(同法6条,6条の2)を 原則として受けることができず,これを受けるためには,特定行政庁の許可(同法 43条1項ただし書)を受けること等が必要となる。

要するに、だいぶ前に違法かどうか調べるはずだったよね、申請が通ったのだから違法じゃないでしょうと言いたいようです。

結論は
したがって,本件街路が3号道路に該当するための要件を満たすか否かは明らかでないとしながら,本件道路判定がされていること等を理由に,建築確認を受けることができないために本件各土地上に建築物を建築することができない事態となる可能性はないとして,本件街路が3号道路に該当することを前提とする本件登録価格の決定は適法であるとした原審の判断には,固定資産の評価等に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。



まあ、全体として流れは良いとしても、これは法令解釈違反でしょうかね。事実誤認と言った方が良い事例のような気がします。
さらに、今回の判決の読みにくさ、本当に法律文章の悪いところが出まくっている判決文す。誰のための判決文なのか彼らは考え直すべきです。

裁判長裁判官 林 景一 判決文をきちんとかけ
裁判官 岡部喜代子 判決文をきちんとかけ
裁判官 山崎敏充 判決文をきちんとかけ
裁判官 戸倉三郎 判決文をきちんとかけ
裁判官 宮崎裕子  判決文をきちんとかけ

状況証拠のみの強盗殺人、高裁の無罪が逆転

2018-07-22 07:55:57 | 日記
平成29(あ)837  強盗殺人被告事件
平成30年7月13日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  広島高等裁判所  松江支部


被告人を殺人及び窃盗の犯人と認めて有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

毎日新聞の報道です。

鳥取県米子市で2009年、ホテル支配人を殺害したとして強盗殺人罪に問われた同市の無職、石田美実被告(61)の上告審判決で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は13日、逆転無罪を言い渡した2審・広島高裁松江支部判決(17年3月)を破棄し、審理を同高裁に差し戻した。小法廷は「2審判決は間接証拠の総合評価を欠き、1審判決の不合理さを具体的に示していない」と指摘した。



事実認定は以下の通りです。
(1) 本件の犯人は,本件事務所から少なくとも二百数十枚の千円札を含む約2 6万8000円の現金を奪取したと認められるところ,被告人は,本件発生から約 12時間後,ATMから自己名義の預金口座に230枚の千円札を入金している。
(2) 本件は,当日午後9時34分頃から午後10時12分頃の数分前までの間 に発生したと認められる。
(3) 本件事務所は,1階部分に客室専用駐車場が設けられていないほかは,建 物の外側から見て他の客室と特段の違いはない上,その位置関係や本件ホテルの施 錠状況等に照らし,本件ホテルの内部構造を知らない者にとっては,本件ホテルの 建物内で最もアクセスしにくい場所であった。
(4) 以上に加え,①被告人が本件直後に県外へ移動し,妻や交際相手との音信 を絶ち,警察官からの出頭要請を無視していたという一連の行動は,本件による検 挙を恐れての逃走と評価でき,②被告人以外の本件ホテルの従業員が本件犯行を行った可能性は認められないという事実関係が同時に存在する。


一審では裁判員裁判によって、有罪となりましたが、二審で逆転無罪判決となりました。最高裁では、二審の高裁で一審を覆す合理的根拠がないとしました。

最高裁は
(1)被告人が本件発生の約1 2時間後にATMから自己名義の預金口座に230枚の千円札を入金した事実及び 本件犯人が本件事務所から少なくとも二百数十枚の千円札を含む現金約26万80 00円を奪取した事実を認定した点は不合理といえない。
(2)「被告人には本件犯行に及ぶ 機会があった」と認定した第1審判決の認定が不合理とはいえないとしつつ,その 事実のみで被告人が犯人であると推認できないことは明らかであるとしている。



結論
第1審判決の説示を分断して個別 に検討するのみで,情況証拠によって認められる一定の推認力を有する間接事実の 総合評価という観点からの検討を欠いており,第1審判決の事実認定が論理則,経 験則等に照らして不合理であることを十分に示したものと評価することはできな い。第1審判決に事実誤認があるとした原判断には刑訴法382条の解釈適用を誤 った違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであって,原判決を 破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

物証がなく状況証拠で強盗殺人が認定されました。状況証拠で殺人が認定されるのか?の疑問ですが、過去の判例で認められているようです。
となると、今回の裁判は高裁が裁かれた裁判と言ったところでしょうか。素人目には疑問に思えるところがありますが、毒殺などがあれば状況証拠しか残らないケースしかないので、こうせざるを得ないのでしょう。


裁判長裁判官 鬼丸かおる
裁判官 山本庸幸
裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守

証人の名前を被告弁護士に伝えないのは違憲ではない

2018-07-14 08:37:31 | 日記
平成30(し)170  検察官による証人等の氏名等の開示に係る措置に関する裁定決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
平成30年7月3日  最高裁判所第二小法廷  決定  棄却  大阪高等裁判所



ニュースで検索しても出てこないので想像するしかありません。
ある外国人Aが日本で犯罪を犯しました。その犯罪を知っていたBさんがいました。
Bさんは検察側の証人として呼ばれますが、AとBさんは顔なじみでした。Bさんは、証言するけど親族に影響が出るので自分が誰だかわからないようにしてほしい刑訴法299条の4に基づいて求めました。
AとAの弁護人はそれでは信ぴょう性がないと、名前を明らかにしろと要求してきました。刑訴法299条の5では、被告人又は弁護人は,検察官のと った措置に不服があるとき,裁判所に対して裁定請求をすることができるとし,3 項において,裁判所は,裁定請求について決定をするとき,検察官の意見を聴かな ければならないとし,4項において,裁判所の決定に不服があるとき,即時抗告を することができます。

まあ法の不備があったようです。

裁判所は
検察官は,被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれ があるときには,条件付与等措置も代替開示措置もとることができない。

刑訴法299条の4,299条の 5は,被告人の証人審問権を侵害するものではなく,憲法37条2項前段に違反しないというべきである。

他にも過去の判例から同様の判決が出ていることから、名前をAの弁護士にも非開示になりました。

裁判長裁判官  山本庸幸
裁判官 鬼丸かおる
裁判官 菅野博之

妥当な判断だと思いますね。過去の判例がなかったとしても、証人を守るためにはAの弁護士にもいってはいけないでしょう。職業倫理上守秘義務はあるとはいえ、何かの拍子に弁護士経由でばれることもあるでしょうし、最近の弁護士の事件を見ると酷いですからね。証言内容から誰が証人になっているのかもわかってしまうでしょう。

雑感:オウム死刑について

2018-07-09 07:44:22 | 日記
1995年(平成7年)3月20日に、オウムサリン事件から22年、この事件を全く知らない世代がかなり増えるくらい時間が過ぎました。
この間に死刑制度廃止運動と揺れ戻しと言ったり来たりありました。

死刑ではないですが、光市母子殺害事件では被害者の家族が被告に質問する機会が得られるきっかけが作られ、ようやく被害者よりも加害者に目が行くようになりました。しかし現前として加害者の方が人権が保護されているのです。実に非道い話です。
今回の松本智津夫死刑執行には、オウム事件東者の会の高橋さんが立ち合せろと要求していたようですが、結局制度化されませんでした。被害者家族からすれば、非常に残念です。

死刑反対者は、加害者に対する復讐だ、残虐だ、裁判に誤りが入る可能性があるなど言っています。しかもそれが弁護士会の会長が、会の名前を使って会長声明として出しているのです。実におかしな話ではないですか。

1 死刑制度は、日本国民が民主的な方法で国会議員を選んで定めた方法に従っているだけです。もしそれをしないのであれば、むしろその方が問題です。
2 残虐だと言う意見については、死刑と終身刑とどちらの方が残虐だというのでしょうか?ノルウェー連続テロ事件のブレイビク受刑囚は77人殺しておいて23年で出てきます。十分体を動かせる年齢で、再び犯罪を起こさないとも限りません。人は誰でも矯正教育できるという思い込みというか幻想というか、もはやお花畑レベルです。
何でEU圏内で死刑を復活させないのだという不満を抑えるために、駐日欧州連合(EU)代表部およびEU加盟国の駐日大使ならびにアイスランド、ノルウェー、スイスの駐日大使は声明を出しているようですが、全く持って余計なお世話です。
キリスト教文化圏ですから、「汝裁くことなかれ」の聖書の価値観の押し付けなのでしょうが、上から目線の態度には実に不快です。
3 裁判に誤りがある可能性があるとする見解については、これを某県の弁護士会会長がぬけぬけと言っているのです。ならば裁判をやめてしまえばいいではないですか。法律の存在意義を根底からぶっ潰すようなことを平気で言いだす弁護士のレベルの低さに驚きを隠せません。

こんな死刑反対論を弁護士会のHPに載せる、誰も反対しない、こんな弁護士会には弁護士法に基づく技能研鑽や自浄機能なんぞ期待できません。もし弁護士に依頼することがあっても、今回の件でも死刑反対を言いだしている県の弁護士会所属者には依頼したくないものです・

強姦及び強制わいせつの犯行の様子を隠し撮りは「犯罪行為の用に供した物」になる

2018-07-03 17:17:26 | 日記
平成29(あ)530  強姦未遂,強姦,強制わいせつ被告事件
平成30年6月26日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  福岡高等裁判所  宮崎支部


被告人が強姦及び強制わいせつの犯行の様子を隠し撮りした各デジタルビデオカセットが刑法19条1項2号にいう「犯罪行為の用に供した物」に当たるとされた事例

Biglobeの報道では
2審・福岡高裁宮崎支部判決によると、強姦ごうかん罪などに問われた宮崎市の元マッサージ店経営、土屋和朗かずあき被告(48)は2010〜13年、マッサージ店を訪れた客ら女性5人を店内で襲い、そのうち4人に対する犯行を隠し撮りした。
 被告の逮捕後もテープは押収されず、弁護人が被害者に「告訴を取り下げればテープを処分する」と提案したことが公判で判明。裁判所がテープを差し押さえていた。刑法は凶器など犯行に使われたものを没収できると定めるが、弁護側は「被告が合意の上の行為だと証明するために撮影し、犯行に使われたものではない」と没収対象にはならないと主張した。



鬼畜ですね。マッサージ業界そのものへの影響も大きかったでしょう。
弁護士自治を考える会でも相当お怒りです。これはもはや弁護活動ではなく、共犯と言っていいレベルではないでしょうか。

判決文は一枚のみです。理由の部分はこの個所です。

被告人は,本件 強姦1件及び強制わいせつ3件の犯行の様子を被害者に気付かれないように撮影し デジタルビデオカセット4本(以下「本件デジタルビデオカセット」という。)に 録画したところ,被告人がこのような隠し撮りをしたのは,被害者にそれぞれその 犯行の様子を撮影録画したことを知らせて,捜査機関に被告人の処罰を求めること を断念させ,刑事責任の追及を免れようとしたためであると認められる。以上の事 実関係によれば,本件デジタルビデオカセットは,刑法19条1項2号にいう「犯 罪行為の用に供した物」に該当し,これを没収することができると解するのが相当 である。
したがって,刑法19条1項2号,2項本文により,本件デジタルビデオカセッ トを没収する旨の言渡しをした第1審判決を是認した原判断は,正当である。 よって,刑訴法414条386条1項3号刑法21条により,裁判官全員一 致の意見で,主文のとおり決定する。

第一小法廷
裁判長裁判官 小池 裕
裁判官 池上政幸
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也


当たり前すぎる判決でした。この交渉に当たった弁護士は懲戒処分になったのでしょうかとしtらべてみたら、マッサージ店強姦ビデオ撮影事件 宮崎県弁護士会がひどい判断お咎めなしでした。これはどう見ても共犯じゃないですか?刑事告訴はできなかったのでしょうか。宮崎県弁護士会そのものを懲戒することができないのが非常に残念です。せめてこの弁護士の名前と登録番号を晒すことができればいいのですが。
弁護士自治が悪用された典型例でした。

トンデモ判決:定年過ぎた人を再雇用するとき、給与格差は配置転換があるかどうかで判断

2018-07-01 13:00:31 | 日記
平成29(受)442  地位確認等請求事件
平成30年6月1日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  東京高等裁判所

 1 有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは,労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮されることとなる事情に当たる
2 有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かについての判断の方法
3 無期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給する一方で有期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給せずに歩合給を支給するという労働条件の相違が,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例


これは前回の記事の裁判と一連のものようです。


事実確認をしていきます。
1)被告は輸送会社で、有期雇用と無期雇用の2種類の従業員を雇用している。
2)無期雇用の従業員については
 (ア) 基本給は,原則として月給とし,在籍給及び年齢給で構成する。
 (イ) 乗務員に対し,その職種(乗務するバラ車の種類をいう。以下同じ。)に応じた以下の係数を当該乗務員の月稼働額に乗じた額を,能率給として支給する。
 (ウ) 職種により,職務給を支払う。その月額は,以下のとおりとする。
 (エ) 従業員規則所定の休日を除いて全ての日に出勤した者に精勤手当を支払う。その額は月額5000円とする。
 (オ) 1か月間無事故であった乗務員に対して無事故手当を支払う。その額は月額5000円とする。
 (カ) 従業員に対して住宅手当を支払う。その額は月額1万円とする。
 (キ) 従業員に対して家族手当を支払う。その月額は,配偶者について5000円,子1人について5000円(2人まで)とする。
 (ク) 役付者(班長又は組長をいう。以下同じ。)に対して役付手当を支払う。その月額は,班長が3000円,組長が1500円とする。
 (ケ) 従業員に対し,時間外労働等を命じた場合,超勤手当を支給する。
 (コ) 従業員に対して通勤手当を支給する。その月額は,公共交通機関の1か月定期代相当額とし,4万円を限度とする。
 (サ) 従業員の賞与については,別に定めるところによる。
 (シ) 3年以上勤務して退職した乗務員には,退職金を支給する。
従業員の定年を満60歳、全日本建設運輸連帯労働組合関東支部(以下「本件組合」という。)との間において,平成16年9月17日,年間賞与を基本給の5か月分とする内容の労使協定を締結した。

2有期雇用の従業員は
定年退職した後に有期労働契約を締結して被上告人に勤務する従業員(以下「嘱託社員」という。)に適用される就業規則として,嘱託社員就業規則(以下「嘱託社員規則」という。)を定めている。嘱託乗務員の賃金(年収)は,定年退職前の79%程度である。
 ア 採用対象者 60歳定年に達した正社員で,再雇用を希望する者
 イ 契約期間 1年以内の期間を定めて再雇用する。
 ウ 賃金
  ① 基本賃金 月額12万5000円
  ② 歩合給 12tバラ車 月稼働額×12%
    15tバラ車 月稼働額×10%
   バラ車トレーラー 月稼働額×7%
  ③ 無事故手当 月額5000円
  ④ 調整給 老齢厚生年金の報酬比例部分の支給が開始されるまでの間において月額2万円を支給する。
  ⑤ 通勤手当 公共交通機関の1か月分の定期代(ただし,4万円を上限とする。)
  ⑥ 時間外手当 時間外勤務等について,労働基準法所定の割増賃金を支給する。
  ⑦ 賞与,退職金 支給しない。
 エ 契約の更新 更新の最終期限は,満65歳に達した後の9月末日又は3月末日のいずれか早い日とする。
本件組合は,上記団体交渉において,被上告人に対し,定年退職者を定年退職前と同額の賃金で再雇用すること等を要求したが,被上告人は,これに応じなかった。


やっている仕事は定年前と後では同じなんだから平等に扱えとの主張です。

原審では
事業主は,高年齢者雇用安定法により,60歳を超えた高年齢者の雇用確保措置義務付けられており,定年退職した高年齢者の継続雇用に伴う賃金コストの無制限な増大を回避する必要があること等を考慮すると,定年退職後の継続雇用における賃金を定年退職時より引き下げること自体が不合理であるとはいえない。

これについて最高裁は、
審の上記判断のうち,精勤手当及び超勤手当(時間外手当)を除く本件各賃金項目に係る労働条件の相違が労働契約法20条に違反しないとした部分は結論において是認することができるが,上記各手当に係る労働条件の相違が同条に違反しないとした部分は是認することができない。

被上告人における嘱託乗務員及び正社員は,その業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度に違いはなく,業務の都合により配置転換等を命じられることがある点でも違いはないから,両者は,職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲(以下,併せて「職務内容及び変更範囲」という。)において相違はない。


配置転換があるとなれば、差をつける根拠が無くなりますね。その一方で、

また,労働者の賃金に関する労働条件の在り方については,基本的には,団体交渉等による労使自治に委ねられるべき部分が大きいということもできる

この点は「はぁ?」ですね。ならば、法律は要らない事になります。

更に最高裁は続けます。

これらの事情を総合考慮すると,嘱託乗務員と正社員との職務内容及び変更範囲が同一であるといった事情を踏まえても,正社員に対して能率給及び職務給を支給する一方で,嘱託乗務員に対して能率給及び職務給を支給せずに歩合給を支給するという労働条件の相違は,不合理であると評価することができるものとはいえないから,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないと解するのが相当である。

このように多数の店舗を持っている企業であればそうかもしれませんが、これを基準にしろと?

嘱託乗務員に対して住宅手当及び家族手当が支給されないことについて

被上告人における正社員には,嘱託乗務員と異なり,幅広い世代の労働者が存在し得るところ,そのような正社員について住宅費及び家族を扶養するための生活費を補助することには相応の理由があるということができる。他方において,嘱託乗務員は,正社員として勤続した後に定年退職した者であり,老齢厚生年金の支給を受けることが予定され,その報酬比例部分の支給が開始されるまでは被上告人から調整給を支給されることとなっているものである。


これって企業が労働者に対して正当な労働の対価というより、祝い金的側面を言ってますよね。なラバ最初から支払うことの合理性が問われませんか?

嘱託乗務員に対して役付手当が支給されないことについて
役付手当が年功給,勤続給的性格のものである旨主張しているところ,被上告人における役付手当は,その支給要件及び内容に照らせば,正社員の中から指定された役付者であることに対して支給されるものであるということができ,


当然でしょう。定年で約付から全部はずされ、それが条件で再雇用なのですから当たり前です。

上告人らに精勤手当を支給しないことは労働契約法20条に違反するものである。また,被上告人が,本件組合との団体交渉において,嘱託乗務員の労働条件の改善を求められていたという経緯に鑑みても,被上告人が,嘱託乗務員に精勤手当を支給しないという違法な取扱いをしたことについては,過失があったというべきである

それってどうなんです?何でもかんでも問題だと言っておけばいい事になりますよね。これってまともな経営が出来なくなりますよ。

第二小法廷
全員一致です。
裁判長裁判官 山本庸幸
裁判官 鬼丸かおる
裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守


これは法律にのっとって判断すればそうなんでしょうけど、正直言ってこの手の裁判があるたびに思うのですが、労働三法の最近の動きは企業を潰して海外移転を図れと言っているのか?と思うくらいです。
一度従業員を雇用すると、もう従業員を解雇できない状態です。定年退職ですらも、年齢差別成る主張をしてきている団体もあるので、今度は会社が解雇するための手続きを簡略化するいつ要があります。そうでもしないと、人を雇わない様に企業は努力するだけです。
これが全員一致というのは正直納得いきません。当然補足意見があるべきだと思います。企業の健全な運営をさせていくのに、60歳以上の従業員を再雇用するのは重荷にしかならなくなります。
最高裁判事だといかに恵まれているのか分かっていないようですし、雇用主の辛さを理解しようとしていませんね。