令和1(行ツ)179 要指導医薬品指定差止請求事件
令和3年3月18日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律36条の6第1項及び3項は,憲法22条1項に違反しない
薬事日報の記事
薬剤師による対面販売が義務づけられている「要指導医薬品」をめぐり、インターネット販売大手の楽天が国に対面販売規制の撤廃を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は18日、規制を合憲とし、1審、2審に続き楽天の上告を棄却した。これにより、楽天の敗訴が確定した。 要指導医薬品は、医療用から一般用に転用したスイッチOTC医薬品。医薬品医療機器等法に基づき原則3年間は一般用医薬品として販売することの可否を行うため、インターネットでの販売は行えない。
ドラビスオンライン
小池裁判長はまず、憲法22条1項に関して、職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形をとるとして、薬事法は保健衛生の向上を図ることを目的にしており、目的が公共の福祉に合致することが明らかとした。
その上で、安全性の評価が確定していないものであるところ、「その販売又は授与をする際に、薬剤師が、あらかじめ、要指導医薬品を使用しようとする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況等を確認しなければならないこととして使用者に関する最大限の情報を収集した上で、適切な指導を行うとともに指導内容の理解を確実に確認する必要があるとすることには、相応の合理性があるというべきである」とし、対面規制の合理性を認めた。
日本ネット経済新聞
業界関係者は、「一般用医薬品のネット販売が解禁となり、そのまま処方薬のネット販売まで解禁されては困ると急ごしらえで作ったのが、要指導医薬品だった。要指導医薬品のネット販売の規制を維持することで、処方薬のネット販売規制も維持できる。デジタル化の流れに逆行した判決だ」と見ている。
事実確認から見ていきます。
1 医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(36条の6第1項及び3
は,薬局開設者又は店舗販売業者において,要指導医薬品(法4条5項3号)の販売又は授与をする場合には,薬剤師に対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を行わせなければならず,これができないときは要指導医薬品の販売又は授与をしてはならない旨を定めている。
そうなっていますが、その辺のドラッグストアではどうなってます?みなさん薬剤師にいちいち聞きますか?基礎疾患があって、飲み合わせが切実な問題となっている人であれば、質問することはあるでしょうが、普通やらないですよね。やった方がいいとは思いますよ。でも質問してまともに返ってきたことは私の経験ではありません。
本件各規定は憲法22条1項に違反するなどと主張して,被上告人を相手に,要指導医薬品として指定された製剤の一部につき,上記方法による医薬品の販売をすることができる権利ないし地位を有することの確認等を求める事案である。
いわゆる職業選択の自由で争ったようです。××じゃねぇの?って思いますね。今は法制度が変わりましたが、以前に酒類販売の免許制度がありました。同じロジックで訴えて見事に敗訴になりました。このロジックでやるか?!と。
(1)要指導医薬品及び一般用医薬品は,いずれも,その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって,薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものをいうとされている。
(2)店舗販売業者等が,一般用医薬品を販売し,又は授与する場合には,一般用医薬品中の区分に応じ,薬剤師に必要な情報を提供させなければならないときがある(36条の10)ものの,情報を提供するに当たり,対面によりしなければならないとはされていない。
対面で説明は義務ではないですよね。処方箋の説明だって紙で渡されてハイ終了ですよ。
(1) Rakuten Direct株式会社は,一般用医薬品等を店舗において販売し,又は授与する業務について法26条1項による許可を受けた店舗販売業者であって,薬事法に本件各規定を加えること等を定める薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律(平成25年法律第103号)1条が施行された平成26年6月12日より前からインターネットを通じて医薬品の販売をしていた事業者であった。
スイッチOTCについては,原則として,その製造販売の承認の際,法79条1項に基づき,承認の条件として当該承認を受けた者に対し製造販売後の安全性に関する調査(以下「製造販売後調査」という。)を実施する義務を課す取扱いがされており,その期間は原則として3年間である。
ダイレクトOTCについては,原則として,法14条の4第1項1号に規定する新医薬品として再審査の対象とする取扱いがされており,その再審査のための調査期間として指定される期間は,既に製造販売の承認を与えられている医薬品との相違の程度に応じ,通常4~8年間である。
(3) 一般用医薬品に該当する医薬品の品目数は,平成28年5月30日時点で1万0374品目である。これに対し,要指導医薬品に該当する医薬品の販売開始後の品目数は,平成26年6月12日時点で劇薬である5品目を含めて20品目であり,その後,おおむね14~23品目の範囲内で推移している。
ほの僅かということになりますね。
1 所論は,要指導医薬品について薬剤師の対面による販売又は授与を義務付ける本件各規定を合憲とした原判決には,憲法22条1項の解釈の誤りがあるというものである。
これについて
2(1) 憲法22条1項は,狭義における職業選択の自由のみならず,職業活動の自由も保障しているところ,職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形をとるため,その同項適合性を一律に論ずることはできず,その適合性は,具体的な規制措置について,規制の目的,必要性,内容,これによって制限される職業の自由の性質,内容及び制限の程度を検討し,これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない
そりゃそうですよ。職業選択は誰かに制約されるというものではありませんという意味でしかないですよ。この主張をするのであれば、弁護士資格がないのに弁護士活動をさせろと言っているのと同じレベルの要求でしょう。
(2)ア 法は,医薬品等の品質,有効性及び安全性の確保並びにその使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うこと等により,保健衛生の向上を図ることを目的とする(1条)。
イ そして,要指導医薬品は,医師又は歯科医師によって選択されるものではなく,需要者の選択により使用されることが目的とされているもの・・・医薬品としての安全性の評価が確定していないものである・・・要指導医薬品を使用しようとする者の年齢,他の薬剤又は医薬品の使用の状況等を確認しなければならないこととして使用者に関する最大限の情報を収集した上で,適切な指導を行うとともに指導内容の理解を確実に確認する必要があるとすることには,相応の合理性があるというべきである。
法律の趣旨はそうなりますね。
本件各規定は,対面による情報提供及び指導においては,直接のやり取りや会話の中で,その反応,雰囲気,状況等を踏まえた柔軟な対応をすることにより,説明し又は強調すべき点について,理解を確実に確認することが可能となる一方で,電話やメールなど対面以外の方法による情報提供及び指導においては,音声や文面等によるやり取りにならざるを得ないなど,理解を確実に確認する点において直接の対面に劣るという評価を前提とするものと解されるところ,当該評価が不合理であるということはできない。
さすがにここはいただけません。喋り方がどうだとか、これって医師がやるべき話ですよネ。しかも、先ほどらい何度も書きましたが、こちらから要求しなければ薬局で何ら説明されることはありませんし、説明を求めても説明書を読んでくださいレベルです。これって役に立ってます?法律で書かれていることを要求するのであれば、理解しましたとサインか判子を貰うレベルでしょう。そうなってませんよね。
ウ 一般用医薬品等のうち薬剤師の対面による販売又は授与が義務付けられているのは,法4条5項3号所定の要指導医薬品のみであるところ,その市場規模は,要指導医薬品と一般用医薬品を合わせたもののうち,1%に満たない僅かな程度にとどまっており,毒薬及び劇薬以外のものは,一定の期間内に一般用医薬品として販売することの可否の評価を行い,問題がなければ一般用医薬品に移行することとされているのであって,本件各規定による規制の期間も限定されている。
ん?これって根拠になってます?文脈と関係ない気がしますが。
エ 以上検討した本件各規定による規制の目的,必要性,内容,これによって制限される職業の自由の性質,内容及び制限の程度に照らすと,本件各規定による規制に必要性と合理性があるとした判断が,立法府の合理的裁量の範囲を超えるものであるということはできない。
薬剤師の仕事に免許制でOKだと思います。でも、問われているのはそこなんですか?
裁判官全員一致の意見でした。
裁判長裁判官 小池 裕 今一つ
裁判官 池上政幸 今一つ
裁判官 木澤克之 今一つ
裁判官 山口 厚 今一つ
裁判官 深山卓也 今一つ
薬剤師の仕事は仕事でOK だと思います。本当の論点は、通販で売っていいかどうかですよね。通常の販売店では薬剤師がいますが、法律の趣旨通りに機能してません。
処方箋ですら紙で渡されたもので終了ですから、対面で様子を見て相談に乗るとする規定は死文化しています。ここをもっと直接的に争点にできなかったのでしょうか。
武漢ウィルスで電話あるいはTV会議システムで処方箋を出してもらえる状態であるにも関わらず、ここを強調しても何ら意味がない、少なくとも時代に逆行している判断だと思います。
他にやりようがなかったんでしょうか。
令和3年3月18日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律36条の6第1項及び3項は,憲法22条1項に違反しない
薬事日報の記事
薬剤師による対面販売が義務づけられている「要指導医薬品」をめぐり、インターネット販売大手の楽天が国に対面販売規制の撤廃を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は18日、規制を合憲とし、1審、2審に続き楽天の上告を棄却した。これにより、楽天の敗訴が確定した。 要指導医薬品は、医療用から一般用に転用したスイッチOTC医薬品。医薬品医療機器等法に基づき原則3年間は一般用医薬品として販売することの可否を行うため、インターネットでの販売は行えない。
ドラビスオンライン
小池裁判長はまず、憲法22条1項に関して、職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形をとるとして、薬事法は保健衛生の向上を図ることを目的にしており、目的が公共の福祉に合致することが明らかとした。
その上で、安全性の評価が確定していないものであるところ、「その販売又は授与をする際に、薬剤師が、あらかじめ、要指導医薬品を使用しようとする者の年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況等を確認しなければならないこととして使用者に関する最大限の情報を収集した上で、適切な指導を行うとともに指導内容の理解を確実に確認する必要があるとすることには、相応の合理性があるというべきである」とし、対面規制の合理性を認めた。
日本ネット経済新聞
業界関係者は、「一般用医薬品のネット販売が解禁となり、そのまま処方薬のネット販売まで解禁されては困ると急ごしらえで作ったのが、要指導医薬品だった。要指導医薬品のネット販売の規制を維持することで、処方薬のネット販売規制も維持できる。デジタル化の流れに逆行した判決だ」と見ている。
事実確認から見ていきます。
1 医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(36条の6第1項及び3
は,薬局開設者又は店舗販売業者において,要指導医薬品(法4条5項3号)の販売又は授与をする場合には,薬剤師に対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を行わせなければならず,これができないときは要指導医薬品の販売又は授与をしてはならない旨を定めている。
そうなっていますが、その辺のドラッグストアではどうなってます?みなさん薬剤師にいちいち聞きますか?基礎疾患があって、飲み合わせが切実な問題となっている人であれば、質問することはあるでしょうが、普通やらないですよね。やった方がいいとは思いますよ。でも質問してまともに返ってきたことは私の経験ではありません。
本件各規定は憲法22条1項に違反するなどと主張して,被上告人を相手に,要指導医薬品として指定された製剤の一部につき,上記方法による医薬品の販売をすることができる権利ないし地位を有することの確認等を求める事案である。
いわゆる職業選択の自由で争ったようです。××じゃねぇの?って思いますね。今は法制度が変わりましたが、以前に酒類販売の免許制度がありました。同じロジックで訴えて見事に敗訴になりました。このロジックでやるか?!と。
(1)要指導医薬品及び一般用医薬品は,いずれも,その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって,薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものをいうとされている。
(2)店舗販売業者等が,一般用医薬品を販売し,又は授与する場合には,一般用医薬品中の区分に応じ,薬剤師に必要な情報を提供させなければならないときがある(36条の10)ものの,情報を提供するに当たり,対面によりしなければならないとはされていない。
対面で説明は義務ではないですよね。処方箋の説明だって紙で渡されてハイ終了ですよ。
(1) Rakuten Direct株式会社は,一般用医薬品等を店舗において販売し,又は授与する業務について法26条1項による許可を受けた店舗販売業者であって,薬事法に本件各規定を加えること等を定める薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律(平成25年法律第103号)1条が施行された平成26年6月12日より前からインターネットを通じて医薬品の販売をしていた事業者であった。
スイッチOTCについては,原則として,その製造販売の承認の際,法79条1項に基づき,承認の条件として当該承認を受けた者に対し製造販売後の安全性に関する調査(以下「製造販売後調査」という。)を実施する義務を課す取扱いがされており,その期間は原則として3年間である。
ダイレクトOTCについては,原則として,法14条の4第1項1号に規定する新医薬品として再審査の対象とする取扱いがされており,その再審査のための調査期間として指定される期間は,既に製造販売の承認を与えられている医薬品との相違の程度に応じ,通常4~8年間である。
(3) 一般用医薬品に該当する医薬品の品目数は,平成28年5月30日時点で1万0374品目である。これに対し,要指導医薬品に該当する医薬品の販売開始後の品目数は,平成26年6月12日時点で劇薬である5品目を含めて20品目であり,その後,おおむね14~23品目の範囲内で推移している。
ほの僅かということになりますね。
1 所論は,要指導医薬品について薬剤師の対面による販売又は授与を義務付ける本件各規定を合憲とした原判決には,憲法22条1項の解釈の誤りがあるというものである。
これについて
2(1) 憲法22条1項は,狭義における職業選択の自由のみならず,職業活動の自由も保障しているところ,職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形をとるため,その同項適合性を一律に論ずることはできず,その適合性は,具体的な規制措置について,規制の目的,必要性,内容,これによって制限される職業の自由の性質,内容及び制限の程度を検討し,これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない
そりゃそうですよ。職業選択は誰かに制約されるというものではありませんという意味でしかないですよ。この主張をするのであれば、弁護士資格がないのに弁護士活動をさせろと言っているのと同じレベルの要求でしょう。
(2)ア 法は,医薬品等の品質,有効性及び安全性の確保並びにその使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うこと等により,保健衛生の向上を図ることを目的とする(1条)。
イ そして,要指導医薬品は,医師又は歯科医師によって選択されるものではなく,需要者の選択により使用されることが目的とされているもの・・・医薬品としての安全性の評価が確定していないものである・・・要指導医薬品を使用しようとする者の年齢,他の薬剤又は医薬品の使用の状況等を確認しなければならないこととして使用者に関する最大限の情報を収集した上で,適切な指導を行うとともに指導内容の理解を確実に確認する必要があるとすることには,相応の合理性があるというべきである。
法律の趣旨はそうなりますね。
本件各規定は,対面による情報提供及び指導においては,直接のやり取りや会話の中で,その反応,雰囲気,状況等を踏まえた柔軟な対応をすることにより,説明し又は強調すべき点について,理解を確実に確認することが可能となる一方で,電話やメールなど対面以外の方法による情報提供及び指導においては,音声や文面等によるやり取りにならざるを得ないなど,理解を確実に確認する点において直接の対面に劣るという評価を前提とするものと解されるところ,当該評価が不合理であるということはできない。
さすがにここはいただけません。喋り方がどうだとか、これって医師がやるべき話ですよネ。しかも、先ほどらい何度も書きましたが、こちらから要求しなければ薬局で何ら説明されることはありませんし、説明を求めても説明書を読んでくださいレベルです。これって役に立ってます?法律で書かれていることを要求するのであれば、理解しましたとサインか判子を貰うレベルでしょう。そうなってませんよね。
ウ 一般用医薬品等のうち薬剤師の対面による販売又は授与が義務付けられているのは,法4条5項3号所定の要指導医薬品のみであるところ,その市場規模は,要指導医薬品と一般用医薬品を合わせたもののうち,1%に満たない僅かな程度にとどまっており,毒薬及び劇薬以外のものは,一定の期間内に一般用医薬品として販売することの可否の評価を行い,問題がなければ一般用医薬品に移行することとされているのであって,本件各規定による規制の期間も限定されている。
ん?これって根拠になってます?文脈と関係ない気がしますが。
エ 以上検討した本件各規定による規制の目的,必要性,内容,これによって制限される職業の自由の性質,内容及び制限の程度に照らすと,本件各規定による規制に必要性と合理性があるとした判断が,立法府の合理的裁量の範囲を超えるものであるということはできない。
薬剤師の仕事に免許制でOKだと思います。でも、問われているのはそこなんですか?
裁判官全員一致の意見でした。
裁判長裁判官 小池 裕 今一つ
裁判官 池上政幸 今一つ
裁判官 木澤克之 今一つ
裁判官 山口 厚 今一つ
裁判官 深山卓也 今一つ
薬剤師の仕事は仕事でOK だと思います。本当の論点は、通販で売っていいかどうかですよね。通常の販売店では薬剤師がいますが、法律の趣旨通りに機能してません。
処方箋ですら紙で渡されたもので終了ですから、対面で様子を見て相談に乗るとする規定は死文化しています。ここをもっと直接的に争点にできなかったのでしょうか。
武漢ウィルスで電話あるいはTV会議システムで処方箋を出してもらえる状態であるにも関わらず、ここを強調しても何ら意味がない、少なくとも時代に逆行している判断だと思います。
他にやりようがなかったんでしょうか。