令和5(受)1319 国家賠償請求事件
令和6年7月3日 最高裁判所大法廷 判決 棄却 大阪高等裁判所
1 優生保護法中のいわゆる優生規定(同法3条1項1号から3号まで、10条及び13条2項)は、憲法13条及び14条1項に違反する
2 上記優生規定に係る国会議員の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける
3 不法行為によって発生した損害賠償請求権が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の除斥期間の経過により消滅したものとすることが著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない場合には、裁判所は、除斥期間の主張が信義則に反し又は権利の濫用として許されないと判断することができる
4 同条後段の除斥期間の主張をすることが信義則に反し権利の濫用として許されないとされた事例
あまりにも有名な法律なので、ご存知の方もいるとは思いますが。
NHKの報道です
“旧優生保護法下で不妊手術強制” 最高裁大法廷で29日弁論
「旧優生保護法」は戦後の出産ブームによる急激な人口増加などを背景に1948年に施行された法律です。
法律では精神障害や知的障害などを理由に本人の同意がなくても強制的に不妊手術を行うことを認めていました。
当時は親の障害や疾患がそのまま子どもに遺伝すると考えられていたことが背景にあり、条文には「不良な子孫の出生を防止する」と明記されていました。
旧優生保護法は1996年に母体保護法に改正されるまで48年間にわたって存続し、この間に本人の同意なしに不妊手術が行われた人はおよそ1万6500人に、本人が同意したケースを含めると不妊手術を受けた人はあわせて2万5000人にのぼるとされています。
優性保護法の全文です
優生保護法2章 第二章 優生手術
(任意の優生手術)とあります。
NHKの報道は偏向報道そのものです。なので、NHKの報道はじめ「強制手術」という言葉が出てきたら、その報道はかなり恣意性が高い偏向報道だと思ってください。もし強制で同意なしでやった場合には、傷害罪ですから、個別に医師が処罰される案件です。
第五条 2項 前項の優生手術を受くべき旨の決定を受けた者の配偶者、親権者、後見人又は保佐人もまた、その再審査を申請することができる。
まずはこの条文を抑えた上で議論を見ていきましょう。
1 原告は優生保護法で不妊手術を受けた人です。
事実確認は次の通りです。
2
(1) ア 優生保護法は・・・優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする旨を定め、同法2条1項は、この法律で優生手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で命令をもって定めるものをいう旨を定めていた。そして、優生保護法施行規則(昭和24年厚生省令第3号)1条は、優生手術の術式として、精管切除結さつ法、精管離断変位法、卵管圧挫結さつ法及び卵管間質部けい状切除法を定めていた。
2条と14条で命令という言葉を使っていますが、(1)の文章だとその辺にいる不良品を見つけてしょっ引けみたいな印象になっていますね。これは
申請があって、命令で本人の意志に関係なく手術実行ですから。
①本人若しくは配偶者が遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患若しくは遺伝性奇形を有し、又は配偶者が精神病若しくは精神薄弱を有しているもの(1号)、②本人又は配偶者の4親等以内の血族関係にある者が遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患又は遺伝性奇形を有しているもの(2号)とされたほか、同法中「都道府県優生保護委員会」が「都道府県優生保護審査会」に、同法4条中「申請することができる。」が「申請しなければならない。」に改められ、同法別表に掲げる疾病や障害の分類、名称等が改められるなどした。
都道府県優生保護委員会はどういう団体かというと18条で、以下のように定められています。
第十八条 中央構生保護委員会は委員三十人以内で、都道府県優生保護委員会は委員十人以内で、地区優生保護委員会は委員五人以内で、これを組織する。
2 各優生保護委員会において、特に必要があるときは、臨時委員を置くことができる。
3 委員及び臨時委員は、医師、民生委員、裁判官、検察官、関係行政庁の官吏又は吏員その他学識経験ある者の中から、中央優生保護委員会にあつては厚生大臣が、都道府県優生保護委員会及び地区優生保護委員会にあつては都道府県知事が、それぞれ、これを命ずる。
都道府県優生保護審査会は、厚生省ができたときに名称が変わっただけのようです。問題はそこではなく、この判決文でも法令でも
誰が申請するのかが明確ではないのです。診察した医者なのか、親権者なのか。
(2)昭和28年次官通知には、審査を要件とする優生手術について、本人の意見に反しても行うことができるものである旨、この場合に許される強制の方法は、手術に当たって必要な最小限度のものでなければならないので、なるべく有形力の行使は慎まなければならないが、それぞれの具体的な場合に応じては、真にやむを得ない限度において身体の拘束、麻酔薬施用又は欺罔等の手段を用いることも許される場合があると解しても差し支えない旨等が記載されていた。
それは手術に抵抗する場合ですよね、申請はどうなんですか?
イ 日本弁護士連合会は、平成19年12月、上記報告につき、国は、過去に発生した障害を持つ女性に対する強制不妊措置について、政府としての包括的な調査と補償を実施する計画を早急に明らかにすべきである旨の意見を公表した。
日弁連は関係ないですから。意見を言うのは勝手ですが、それを参考資料として扱うのはどうかと。
(6)平成30年9月28日、被上告人X1、a、b及び被上告人X2が本件訴えを提起し、平成31年2月27日、被上告人X3が本件訴えを提起した。
上告人は、本件訴訟において、本件請求権は改正前民法724条後段の期間の経過により消滅した旨を主張した。
この判断は完全におかしいですね。文字通り読めば時効は成立していたはずです。政策的な意図を感じます。
(7)平成31年4月24日、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(以下「一時金支給法」という。)が成立し、一部の規定を除いて施行された。
あまりにも長いので、ここでいったん切ります。