最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

デフレで年金減額は憲法違反ではない

2024-03-30 13:59:41 | 日記
令和4(行ツ)275  年金減額改定決定取消、年金減額改定決定取消等請求事件
令和5年12月15日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  大阪高等裁判所
 国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律(平成24年法律第99号)1条の規定のうち、国民年金法による年金たる給付等の額の計算に関する経過措置、平成25年度及び平成26年度における国民年金法による年金たる給付等の額の計算に関する経過措置の特例並びに平成25年度における厚生年金保険法による年金たる保険給付の額の計算に関する経過措置の特例について定める部分は、憲法25条、29条に違反しない。

NHKの報道です
年金引き下げ “憲法に違反せず”最高裁判断 各地裁判に影響か
法律の改正に伴い年金の支給額が段階的に引き下げられたことに対し、兵庫県の年金受給者95人が「最低限度の生活を保障する憲法に違反する」として取り消しを求めた裁判で、最高裁判所は「憲法に違反しない」と判断して上告を退ける判決を言い渡しました。全国各地で起こされている同様の訴訟に影響を与える可能性があります。・・・
この裁判について最高裁判所第2小法廷の尾島明裁判長は15日の判決で「年金を引き下げずに給付額を維持すると、現役世代に負担を強いることになり、財源の圧迫にもつながる」と指摘しました。
その上で「一律の引き下げは世代間の公平を図り、財政基盤の悪化を防ぐなどの観点から不合理だとはいえず、憲法に違反しない」として上告を退け、原告の敗訴が確定しました。


事実関係等の概要です
(1)老齢年金制度においては昭和48年から、前年度又は前年において年度平均又は年平均の全国消費者物価指数が前々年度又は前々年から変動した場合、その比率等を基準として年金額を改定する仕組みが導入されていた。・・・平成14年度においては、特例水準と本来水準との間でおおむね1.7%のかい離が生ずることとなった。また、平成15年度及び平成16年度の各年金額についても、物価指数の下落を踏まえて年金額の改定に係る特例法がそれぞれ制定され、給付額が減額されたこの(2)国民年金法等の一部を改正する法律(平成16年法律第104号。以下「平成16年改正法」という。)が制定され、物価スライド制が廃止されるとともに、老齢年金の保険料水準を将来的に固定することとした上で、物価や賃金の変動を基準として年金額を改定することとした。

お約束通り法律によって上げてきたところ、デフレが酷く基準に合わせて下げました。約束どおりですね。

(3)平成16年改正法の施行後も物価指数の下落が生ずるなどした結果、特例水準は解消されず、かえって平成23年度には、特例水準が本来水準をおおむね2.5%上回る状況となっていた。・・・国民年金及び厚生年金の各収支における赤字が増大する傾向にあることが示されていた。・・・特例水準を平成27年度の開始時点までに3年度にわたって段階的に解消することとした

上告理由のうち憲法25条及び29条違反について。
(1)平成25年度及び平成26年度における国民年金法による年金たる給付等の額の計算に関する経過措置の特例並びに平成25年度における厚生年金保険法による年金たる保険給付の額の計算に関する経過措置の特例について定める部分が憲法25条及び29条に違
反する旨をいうものと解される。


裁判所は職権で、減額措置が生存権と財産権が侵害されたとして訴えたとみなしたようです。この論点について

(2)特例水準による年金額の給付を維持することは、賦課方式(現在の年金受給権者に対して支給される年金給付の財源を、主に現役世代が負担する保険料によって賄う方式)を基本とする制度の下で現役世代に本来の負担を超える負担を強いることとなり、また、現役世代が年金の給付を受けるようになった際の財源を圧迫することにもつながるものと考えられる。
(3)本件部分は憲法25条、29条に違反するものとはいえない。


その通りだと思います。自分だけの年金じゃありませんから。

裁判官全員一致の意見ですが、裁判官三浦守の補足意見
1 憲法25条1項は、福祉国家の理念に基づき、全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言し、同条2項は、上記理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したもの・・・老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止することを目的としている(国民年金法1条)。

この規定は生活保護を念頭に入れているから、別物だと言ってます。

老齢年金制度において導入されていた物価スライド制の下で物価スライド特例法を契機として生じた年金額の特例水準について、これを3年度にわたって解消する旨を定める平成24年改正法1条のうち、本件部分の憲法適合性が問題となっている。・・・本件部分が憲法25条に違反するか否かの判断において、国会の裁量を前提としながら、生活保護制度を含め、国が創造拡充すべき社会保障制度全体の中で、個々の国民の具体的・現実的な生活権の設定充実という観点から考慮される事情である。

ここは違うでしょ。本来は老後のために自分で貯金するものなのに、すってんてんになって生活保護になるのを防止するのが目的ですから、ここは自己責任のはずです。

裁判官尾島明の補足意見
本件では、老齢等によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与すること(国民年金法1条)、労働者の老齢等について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与すること(厚生年金保険法1条)を目的として創設され、運用されてきた年金制度について、法律改正により年金給付額を減ずる改定を行ったことが、憲法25条に違反するか否か

先の三浦裁判官より制度を理解しています。が

制度設計をするにはそれにふさわしい専門的知見と能力を有する機関がその任に当たることが必要である。

それって裁判所でいう話ですかね。

憲法25条2項が、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定していることから、一旦具体化した国民の生活水準を低下・後退させる場合には、裁量の幅は狭まり、相応の正当化が要求されるという制度後退禁止原則を定めており、

これって誰にとっての制度後退、前進なのかですが、そこが議論されていません。国家財政なのか、国民の福祉といっても今の受給者に限定した話か、将来の受給者も含めてなのか、主語を入れましょう。

裁判長裁判官 尾島 明
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

補足意見は微妙なものを感じますが、判決の趣旨は至極真っ当だと思います。

トンデモ 選挙違反で当選無効、でも政務活動費は返納する義務なし

2024-03-29 22:52:39 | 日記
令和4(行ヒ)317  不当利得返還請求事件
令和5年12月12日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  大阪高等裁判所
 1 公職選挙法251条の規定により遡って大阪市の議会の議員の職を失った当選人は、同市に対し、当該当選人を唯一の所属議員とする会派の行った大阪市会政務活動費の交付に関する条例(平成13年大阪市条例第25号)5条所定の政務活動に関し、不当利得返還請求権を有することはない。
2 公職選挙法251条の規定により遡って大阪市の議会の議員の職を失った当選人は、同市に対し、上記議会の議員として行った活動に関し、不当利得返還請求権を有することはない。
(2につき補足意見及び反対意見がある。)


NHKの報道です
当選無効議員に判決確定までの報酬など全額返還命じる 最高裁
公職選挙法違反で有罪が確定し、当選が無効になった元大阪市議会議員が、判決が確定するまでに受け取っていた議員報酬などについて、最高裁判所は全額の返還を命じました。当選無効が確定するまでの議員報酬などについての初めての判断で、国会議員などの同様のケースにも影響が及ぶ可能性があります。
4年前の大阪市議会議員選挙で公職選挙法違反の罪で有罪判決を受け、失職した不破忠幸元議員に対し、大阪市は確定するまでに支給した議員報酬や政務活動費など合わせて1400万円余りの返還を求めていました。
1審と2審は、元議員の活動で市も利益を得ていたなどとして、およそ160万円に限って返還を命じたため、市が上告していました。



では裁判所の認定を見ていきます。

(1)被上告人は、令和元年9月6日、上記選挙に関し、公職選挙法221条3項1号、同条1項1号の罪(公職の候補者による買収)により懲役1年、5年間執行猶予の有罪判決を受け、本件有罪判決は、令和2年2月13日に確定した。
(2)上告人は、被上告人に対し、第1審判決別紙1のとおり、令和元年5月分から令和2年2月分までの議員報酬並びに令和元年6月分及び同年12月分の期末手当の合計額から源泉徴収税額を控除した1001万0611円を支給した。
(3)被上告人は、令和元年6月19日、被上告人のみを所属議員とする会派を結成した・・・政務活動費合計410万4000円を交付した。


選挙違反でしかも買収ですか。当選無効になるので、取り消しとは違って当選したとされることそのものがなかったことになりますので、全額返金が当然になるでしょう。問題は、個人の議員報酬ではなく政治活動費がどうなるかというところのようですね。

最高裁は
上記条例に基づき交付される政務活動費は、市会議員の調査研究その他の活動に資するために必要な経費の助成として交付されるものであって、同条例5条所定の政務活動(以下、単に「政務活動」という。)の対価として交付されるものとはいえず、公職選挙法251条の規定により遡って市会議員の職を失った当選人を唯一の所属議員とする会派が政務活動を行っていたからといって、その活動により上告人が利益を受けたと評価することはできない

個人の所得になるわけじゃないから返金はしなくていいよという理屈のようですね。

さらに最高裁は上記相殺の抗弁は全部認められないところ、これを一部認めた原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、論旨は理由がある。
上記相殺の抗弁は全部認められないところ・・・上記当選人は、上告人に対し、市会議員として行った活動に関し、不当利得返還請求権を有することはないというべきである。


先の個人の所欲になるわけじゃないから返さなくてよいの理屈があるので、期末手当も政務活動費の返還に遅れた遅延損害金も払う必要はないということになります。
議論としてはすっきりしてますが、どうも納得いきませんね、ということで案の定反対意見が出てきました。

裁判官今崎幸彦の反対意見
被上告人は、市会議員選挙に当選したものの、公職選挙法221条3項1号、同条1項1号の罪により有罪の確定判決を受けたものであり、同法251条は、当選人がその選挙に関し所定の罪を犯し刑に処せられたときはその当選人の当選は無効とすると規定し、同条による無効の効果が当選時に遡って生じると解されるため、被上告人は当初からその職に就いていなかったことになる。

おっしゃる通り!

たとえ資格を欠いていたとしても、被上告人が外形上市会議員として活動したことは事実として残るのであり、上告人は、被上告人による法律上の原因を欠いた労務の提供により利益を受けたことになるのであるから、被上告人が上告人に対し不当利得返還請求権を取得することは否定できないように思われる。議員として活動したことに基づく議員報酬等の請求権と、議員としての資格を失ったことを前提とする議員報酬等相当額の不当利得返還請求権とは、両立しない発生原因事実を前提とする別個の権利である。

その通り!

選挙犯罪を行い議員資格を失った者に不当利得返還請求権として労務提供の反対給付に係る利益の保持を許すとしても、あくまでも当該労務の客観的評価に基づくべきであって、正規の議員報酬等の額と同額としなければならない必然性があるわけではない。

そうですよね。最大限譲って、政務活動費は個人の所得になっているわけではないので仕方ないとして、期末手当と遅延損害金は支払わせるべきでしょう。これは民事であって刑事事件じゃないからというのもあるのでしょうが、不法な方法で議員になった人間が市の財政と裁判の手間暇かけさせやがった上に銭も持って行くんかい!という判決は余りにも酷すぎます。

それにそもそも無効の意味を曲解しているようにしか思えません。それこそ議論が尽くされていないとしか言いようがありませんね。

裁判長裁判官 林 道晴 ダメ
裁判官 宇賀克也 ダメ
裁判官 長嶺安政 ダメ
裁判官 渡 惠理子 ダメ
裁判官 今崎幸彦 まとも

わけ分からん死刑判決

2024-03-26 17:50:56 | 日記
令和3(あ)1399  殺人被告事件
令和5年12月8日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  福岡高等裁判所

NHKの報道です。
妻子3人殺害の福岡県警元警察官 死刑確定へ 最高裁上告退ける
6年前、福岡県小郡市で妻と2人の子どもを殺害した罪に問われ、無罪を主張していた元警察官について、最高裁判所は「3人の生命を奪った結果は重大だ」として被告側の上告を退ける判決を言い渡し、死刑が確定することになりました。
福岡県警察本部の通信指令課の巡査部長だった中田充被告(45)は、6年前、小郡市の自宅で
▽38歳の妻
▽小学4年生の長男(9)
▽小学1年生の長女(6)の3人を
首を絞めて殺害したとして殺人の罪に問われました。


2枚の判決です。実質1枚に収まりますね。
憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお、所論に鑑み記録を調査しても、刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。

殺害の態様は、数分間、頚部を圧迫し又はひも状の物で絞め続けたというもので、確定的で強固な殺意に基づく上、被告人は、そのような行為を3回も繰り返し、生命を軽視する態度が甚だしい。被告人は、自身が本件の犯人であることを否認しており、そのこともあって、本件について、計画性は認められず、また、動機も不明であるが、もとより、年少の長男及び長女を殺害した動機として酌量できるような事情は見当たらない。妻については、日常的に厳しく叱責されるなどしていたという被告人が、夫婦関係のあつれきの中で抱いたであろう心情自体は理解できなくはないにせよ、殺害を決意した経緯として、しんしゃくするとしても限度がある。遺族らは、被告人に対し、厳しい処罰感情を示している。被告人は、自身の罪と向き合う姿勢を示さず、反省悔悟の情をうかがうことはできない。

本人は否認しているんですよね。ならば、否定している部分をひっくり返すような論証が必要でしょう。それが全くありません。明らかに真っ赤だとしてもですよ、そこはきちんと書かなきゃ駄目でしょう。

以上のような事情に照らすと、被告人の刑事責任は極めて重大であるといわざるを得ず、前科前歴がないことなど、被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして、当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
よって、刑訴法414条396条181条1項ただし書により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する


裁判長裁判官 長嶺安政
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴
裁判官 渡 惠理子
裁判官 今崎幸彦

全員雑過ぎますね。人の命を奪うわけですから、もう少し物証からして犯人だよと論証する必要はありませんか?しかも、わざわざ判例として最高裁のHPで公開してますよね。どういう基準で選んだのでしょうか。新しい解釈があった訳でもなく、はじめての解釈を求められたわけでもないですよね。

抵当権は賃借人と賃貸人の間の相殺に優先する

2024-03-17 10:10:13 | 日記
令和3(受)1620  取立金請求事件
令和5年11月27日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  大阪高等裁判所

抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前に賃貸人との間でした、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と上記の差押えがされた後の期間に対応する賃料債権とを直ちに対当額で相殺する旨の合意の効力を抵当権者に対抗することができるか

新聞報道がないので、事実確認から見ていきます。

(1)本件賃貸人は、平成29年1月、被上告人との間で、本件賃貸人が所有する第1審判決別紙物件目録記載の建物を次の約定で被上告人に賃貸する契約を締結し、同年10月1日、本件建物を被上告人に引き渡した。
ア 期 間 平成29年10月1日~平成39年(令和9年)9月30日
イ 賃 料 月額198万円(引渡日から2か月間は月額99万円)
毎月末日までに翌月分を支払う
(2)被上告人は、平成29年9月、本件賃貸人に対し、弁済期を平成30年4月30日、無利息、遅延損害金を年2割として990万円を貸し付けた(以下、「本件被上告人債権1」)。


家賃を入れてくれなかったので、金銭を貸し付けた形をとったようです。

本件賃貸人は、平成29年10月26日、上告人のために、本件建物について極度額を4億7400万円とする根抵当権を設定し、その旨の登記をした。

何でそんな事をしたんですかね。

(3)本件賃貸人は、平成29年10月26日、上告人のために、本件建物について極度額を4億7400万円とする根抵当権を設定し、その旨の登記をした。
(4)株式会社バディグループは、平成29年11月、被上告人から弁済期を平成30年4月30日として3000万円を無利息で借り受け、また、被上告人との間で、被上告人に対する建築請負工事に係る債務1000万円について、弁済期を同日とすることを約した。
イ 本件賃貸人は、平成29年11月、被上告人に対し、バディグループの上記アの各債務につき書面により連帯保証をした。
(5)平成30年4月30日、本件各被上告人債権について、本件賃
貸人から10万円の弁済を受け、本件賃貸人との間で残債権合計4980万円の弁済期を平成31年1月15日に変更する旨合意した。
(6)被上告人は、平成31年1月15日、本件賃貸人との間で、本件賃貸借契約における同年4月分から平成32年(令和2年)1月分までの賃料の全額1980万円及び同年2月分から平成34年(令和4年)2月分までの賃料のうち3000万円(各月120万円)の合計4980万円の債務について、期限の利益を放棄した上で、この債務に係る債権を本件各被上告人債権と対当額で相殺する旨の合意をした。
(7)上告人は、令和元年8月7日、大阪地方裁判所に対し、本件根抵当権に基づく物上代位権の行使として、本件賃貸借契約に係る賃料債権のうち、差押命令の送達時に支払期にある分以降4000万円に満つるまでの部分を差押債権とする差押命令の申立てをした。上記申立てに基づき、同月9日、差押命令が発せられ、同月14日、被上告人に送達され、同年12月9日、本件賃貸人に送達された。
(8)被上告人は、令和3年5月19日までに、上告人に対し、本件被差押債権の弁済として、令和2年2月分から令和3年4月分までの各月分につきそれぞれ78万円及び同年5月分につき40万円の合計1210万円を支払った。
(9)上告人は、本件差押命令により、本件賃料債権のうち、本件差押命令が被上告人に送達された後の期間に対応する令和元年9月分から令和3年4月分までの3960万円及び同年5月分のうち40万円の合計4000万円を差し押さえたと主張して、これから上記 の支払分を控除した部分についての支払を求めているところ、被上告人は、本件相殺合意の効力を上告人に対抗することができると主張して争っている。


何かわけ分かりませんね。書いた裁判官がいかにアホか分かります。
家主が物件を貸した。借りた人は、家賃の他に家主に金を貸した。家主はその金で工事を行った。借主に返せないので家賃相殺ということで手打ちちをした。家主は借金の全額を返せなかったので、借りていた建物が差し押さえに遭った。借主は既に払っているんだから、借りる権利があると主張したようです。

最高裁は
(1)抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをする前においては、原則として、賃貸人に対する債権を自働債権とし、賃料債権を受働債権とする相殺をもって抵当権者に対抗することができる。・・・抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前に、賃貸人との間で、登記後取得債権と将来賃料債権とを直ちに対当額で相殺する旨の合意をしたとしても、当該合意の効力を抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。

要するに抵当権をつけた人と賃借人とを比べると、過去の判決からすると抵当権をつけた人の方が優先されるということのようです。

(2)本件相殺合意の効力が被上告人に対する本件差押命令の送達前に生じたか否かにかかわらず、本件相殺合意により本件将来賃料債権と対当額で消滅することとなる対象債権が本件根抵当権の設定登記の後に取得された本件被上告人債権2であるときは、被上告人は、本件相殺合意の効力を上告人に対抗することはできないこととなる。

へー賃借人が保護されないんですね。それはそれで結構な話ではあります。抵当権を妨害するため、連携して家賃先払いでよそに持って行かれるのを妨害することが可能になりますからね。

第二小法廷判決裁判官全員一致の意見でした。判例主義上これは当然の判断になりますね。下級審が知らなかったということでしょう。

裁判官三浦守の補足意見

本件相殺合意は、本件賃料債権を本件被上告人債権1及び本件被上告人債権2と対当額で相殺する旨を合意したものであるが、相殺に関する充当の合意がされたものとはうかがわれず、平成29年法律第44号による改正前の民法512条489条の規定に照らし、本件各被上告人債権の弁済の利益に鑑みれば、平成30年4月30日に弁済された10万円及び本件賃料債権のうち本件差押命令の送達前の期間に対応する賃料債権990万円は、まず本件被上告人債権1に充当されるものと解される。


おいおい、契約の大前提である同意がないという疑問があるならば、反対意見を出さなきゃ駄目でしょう。

裁判官草野耕一の意見
1 抵当権制度(民法369条以下)には、対象不動産の所有者がその使用収益を継続することを許容しつつ、当該不動産の担保としての価値を活用した金融取引を可能にするという社会的意義があり、抵当権の物上代位(民法372条304条)が不動産の収益の果実といえる賃料請求権にも及ぶことを認めるに至った判例法は、この社会的意義をより強固なものにしたといえるであろう。

2(1) 本件は、抵当権者が物上代位権を行使して将来賃料債権を差し押さえたが、対象不動産の賃借人が同人の保有している登記後取得債権との合意による相殺を主張して当該将来賃料債権の支払を拒否したという事案である(なお、検討の便宜上、以下においては合意による相殺ではなく、法定の相殺を前提として検討を進め、法定の相殺と合意による相殺の違いについての評価は4項で述べる。)。


抵当権は普通に行われる件で重要なのはわかりますが、仮の話をここでする必要はあります?以下は今後の判決に影響せず勝手に何か言ってるに過ぎないので省略します。


裁判長裁判官 三浦 守  はぁ?
裁判官 草野耕一  ボケ
裁判官 岡村和美 妥当
裁判官 尾島 明 妥当

選挙の事前活動禁止は合憲、公示期間にやれよ

2024-03-04 11:15:26 | 日記
令和5(あ)976  公職選挙法違反被告事件
令和5年11月20日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  大阪高等裁判所

相変わらず何が争点になっているのかも分からない1枚判決です

どうもこの事件についての裁判だったようです。NHKの報道です。
前川清成前衆院議員 公職選挙法違反で有罪確定へ
比例代表で復活当選したおととしの衆議院選挙で、公示前に投票を呼びかける文書を送ったとして、公職選挙法違反の罪に問われました。
裁判で前議員側は無罪を主張しましたが、2審の大阪高等裁判所は、ことし7月、「実質的な投票依頼で事前の選挙運動にあたる」などとして1審に続いて罰金30万円の有罪判決を言い渡しました。


前から思っているのですが、選挙公示から2週間で何をするの?有権者はどうやって判断するの?と思っています。

公職選挙法129条、142条1項の各規定について憲法21条、31条違反をいう点は、公職選挙法の上記各規定が憲法21条、31条に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和43年(あ)第2265号同44年4月23日大法廷判決・刑集23巻4号235頁)の趣旨に徴して明らかである(最高裁昭和55年(あ)第1472号同56年7月21日第三小法廷判決・刑集35巻5号568頁、最高裁昭和55年(あ)第1577号同57年3月23日第三小法廷判決・刑集36巻3号339頁参照)から、理由がなく、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
よって、同法408条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


選挙期間は公職選挙法で決まっており、判例で集会の自由を阻害する規定でもないよとのことです。悪法だとは思いますが、悪法と雖も法律なので、仕方ないでしょう。問題は、何をもって事前活動とするのか、そこが争点になっていないというのは大いに疑問です。普通に、支援者にご挨拶やパーティを開くことがありますし、駅前で演説も普通にありますし。

裁判長裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美
裁判官 尾島 明