最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

弁護士が利益相反で受任、相手方弁護士は解任要求できる

2017-12-31 09:00:45 | 日記
平成29(許)6  訴訟代理人の訴訟行為排除決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
平成29年10月5日  最高裁判所第一小法廷  決定  破棄自判  福岡高等裁判所
1 弁護士法25条1号に違反する訴訟行為及び同号に違反して訴訟代理人となった弁護士から委任を受けた訴訟復代理人の訴訟行為について,相手方である当事者は,裁判所に対し,同号に違反することを理由として,上記各訴訟行為を排除する旨の裁判を求める申立権を有する。
2 弁護士法25条1号に違反することを理由として訴訟行為を排除する旨の決定に対し,自らの訴訟代理人又は訴訟復代理人の訴訟行為を排除するものとされた当事者は,民訴法25条5項の類推適用により,即時抗告をすることができる。
3 弁護士法25条1号に違反することを理由として訴訟行為を排除する旨の決定に対し,当該決定において訴訟行為を排除するものとされた訴訟代理人又は訴訟復代理人は,自らを抗告人とする即時抗告をすることはできない。
4 破産者Aの破産管財人Xを原告とする訴訟において,Aの依頼を承諾したことのある弁護士Bが被告Yの訴訟代理人として訴訟行為を行うことは,次の(1)及び(2)の事実関係の下では,弁護士法25条1号に違反する。
 (1) Aは,破産手続開始の決定を受ける前に,Bとの間で,再生手続開始の申立て,再生計画案の作成提出等についての委任契約を締結していた。
 (2) 上記訴訟におけるXの主たる請求の内容は,BがAから上記の委任を受けていた間に発生したとされるAのYに対する債権を行使して金員の支払を求めるもの及び上記の間に行われたAのYに対する送金等に関して否認権を行使して金員の支払を求めるものである。


今回はかなり複雑そうです。

(1) 有限会社竹松運輸,竹松配送サービス株式会社及び竹松エキスプレス株式会社(以下,併せて「竹松三社」という。)は,それぞれ,平成26年4月3日,弁護士Y2及び弁護士Y3との間で,再生手続開始の申立て,再生計画案の作成提出等についての委任契約(以下「本件各委任契約」という。)を締結した。

民事再生法なのでしょうか、取りまとめ役として弁護士Y2とY3に依頼しました。
(2) 竹松運輸は,平成26年4月24日に裁判所に申請し、相手方洛友商事をスポンサーとして平成26年5月16日,再生手続開始の決定がなされました。が、洛友商事は,同年6月下旬,竹松運輸に対する支援を打ち切った。竹松運輸は,同年7月11日,再生手続廃止の決定を受け,同決定は同年8月6日の経過により確定しました。
スポンサーとしては「聞いてないよ」と言いたくなるような事案が沢山出てきたのでしょう。これじゃ一緒にやっていけないとスポンサーを降りて、再生手続きが終了になりました。
(3) 竹松運輸は,平成26年8月7日,破産手続開始の決定を受け,抗告人X3が破産管財人に選任されました。
まあ、再生手続きをお願いした弁護士が、再生できずスポンサーに切られたとなれば、そりゃ弁護士を変えますよね。
(4) 抗告人らは,それぞれ,平成27年8月から平成28年2月にかけて,相手方洛友商事を被告とする4件の訴訟を長崎地方裁判所に提起した。
倒産した運送会社と新たに選任された弁護士は、この商事会社にスポンサーとしての役目を果たせと訴えたようです。
(5) 相手方Y2及び同Y3は,甲事件,乙事件,丙事件及び丁事件について,相手方洛友商事からそれぞれ委任を受けて訴訟代理人となった。相手方Y1は,甲事件,乙事件及び丙事件について,相手方Y2から委任を受けて訴訟復代理人となり,丁事件について,相手方洛友商事から委任を受けて訴訟代理人となった。
ちょっと待ってください、これって利益相反にならないのでしょうか?
(6) 抗告人らは,平成28年8月1日,長崎地方裁判所に対し,本件訴訟において相手方Y2,同Y3及び同Y1が訴訟行為をすることが弁護士法25条1号に違反することを理由として,上記相手方3名の各訴訟行為の排除を求める申立て(以下「本件申立て」という。)をした。
素人の私が思ったくらいですから、やはりプロはおかしいと思ったのでしょうね。

ところが原審は「相手方の・・・依頼を承諾した事件」に当たらないとして,原々決定を取り消した。また,原審は,本件申立てを裁判所の職権発動を促すものと解し,本件申立てを却下しなかった
解せませんね、原審はどういう理屈で利益相反ではないと思ったのでしょうか。判決文にはその辺はきちんと書かれていないので分かりません。文脈から想像すると、利益相反かどうかよりも、弁護士として相手の弁護士が違反しているからと言って解任を裁判所に求めることができないとしたのでしょう。

最高裁は職権で、この点を判断することにしました。
弁護士法25条1号,同号に違反して訴訟代理人となった弁護士から委任を受けた訴訟復代理人の訴訟行為についても,相手方である当事者は,同様に,訴訟復代理人の選任が同号に違反することを理由として,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることができるものと解される。そして,上記のとおり,同号が当事者の利益の保護をも目的としていることからすると,相手方である当事者は,裁判所に対し,同号に違反することを理由として,上記各訴訟行為を排除する旨の裁判を求める申立権を有するものと解すべきである。

当然の判断ですね。本来であれば弁護士会で懲戒請求の対象ですが、弁護士会は弁護士法の規定通りの目的というよりは、政治運動をしたり単なる互助会と堕落しているので、機能しなかったのでしょう。

弁護士法25条1号に違反することを理由として訴訟行為を排除する旨の決定に対しては,自らの訴訟代理人又は訴訟復代理人の訴訟行為を排除するものとされた当事者は,民訴法25条5項の類推適用により,即時抗告をすることができるものと解するのが相当である。
上記決定に対しては,上記訴訟代理人又は訴訟復代理人は,自らを抗告人とする即時抗告をすることはできないものと解するのが相当である。


結論
そうすると,本件訴訟は,相手方Y2及び同Y3にとって,同号により職務を行ってはならないとされる「相手方の・・・依頼を承諾した事件」に当たるというべきである。
以上によれば,相手方Y2及び同Y3が本件訴訟において相手方洛友商事の訴訟代理人として訴訟行為を行うことは,同号に違反するものというべきである。


第一小法廷
裁判長裁判官 山口 厚
裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之

私なりに要約すると、利益相反関係なのに代理人として就任した。しかも、かなり昔の事件ではなく直近の話で一連の裁判にかかわる話なので、忘れてたなんてことは絶対言えない状態にあったはずです。にもかかわらず、敵側の弁護士に就任して実際にやったかどうかまでは分かりませんが、守秘義務にかかわる情報を敵側に有利に使った可能性があるのです。
はっきり言って、これは弁護士の教科書、利益相反の1ページ目に書かれていそうな最も分かり易いやってはいけない事例みたいなものです。これを指摘され逆ギレして最高裁まで粘ったようです。この弁護士の名前が晒されてないというのは非常に怖いです。弁護士会できちんと処分したのでしょうか。
当然すぎる裁判結果でした。
ちなみにこのサイトによれば、利益相反は、戒告で済んでいるようです。その一方で、「女性事務員のスカートの中を無断で撮影」は6ヶ月業務停止だそうです。何かおかしな基準ですよね。

変な弁護士に依頼するとこういうレベルの事に振り回され、裁判を続ける金がないと原審みたいなアホ極まりない判断に従わざるを得ないのです。
弁護人選出の際は、しっかり選びましょう。

トンデモ判決大阪高裁小学生6人はねた女性 検察上告せず無罪確定へ

2017-12-30 11:20:44 | 日記
NHKの報道では、
おととし、大阪・豊中市で登校中の小学生の列に乗用車が突っ込み、6人が重軽傷を負った事故で、睡眠導入剤を飲んで車を運転したとして危険運転傷害の罪に問われ、1審と2審で無罪判決を受けた女性について、検察は上告しないことを決め、無罪が確定することになりました。
大阪・豊中市の中村恵美さん(52)はおととし5月、市内で車を運転中、登校している小学生の列に突っ込み6人に重軽傷を負わせた罪に問われ、その後検察は、血液から睡眠導入剤の成分が検出されたことから、より刑の重い危険運転傷害の罪で起訴しました。
1審の大阪地方裁判所は「睡眠導入剤で正常な運転が困難になるおそれを認識していたとは言えない」などととして無罪を言い渡し、2審の大阪高等裁判所も「居眠り運転をして事故を起こしたとは言えない」などとして無罪を言い渡しました。
これについて大阪高等検察庁の田辺泰弘次席検事は、「判決内容を検討したが適切な理由が見当たらない」として上告しないことを決め、中村さんの無罪が確定することになりました。


弁護士ドットコム
検察官は、女性が「薬物の影響」によって正常な運転ができなかったとして、危険運転致死傷罪で起訴しました。
これに対して、裁判所は、この事故は「薬物の影響」で起きた事故ではないと判断したのです。この女性が薬を服用しても日常生活を問題なく送っていたこと、事故直前まで正常な運転をしていたこと、事故後の血液検査の結果などを理由としてあげています。
もちろん、検察官は危険運転致傷罪が成立しないときに備えて過失運転致傷罪も主張していました。ただ、事故の原因である過失の内容は「眠気を催したのに運転を中止しなかったこと」であるとしました。
でも、裁判所は、女性は事故直前まで正常な運転をしていたのだから「眠気を催した事実」はないと判断をして、「検察官が主張する過失はない、過失がないのだから無罪である」と結論づけたのです。


よく分かりません。

判決では、女性が事故時に居眠り状態だったことを認める一方、交通量が相当ある道路で、右左折をしていた点に着目し、「特段注意力が減退していたわけではない」とした。

この点、解説と矛盾していませんか?居眠り運転であれば、過失運転致傷罪になるでしょう。それが無罪になるというのは解せません。

寺田逸郎最高裁長官退任会見せず?

2017-12-30 10:35:13 | 日記
1月8日に退任するようなので、それまでにやればこの表題の意味はなくなります。
毎日新聞によれば、以下の報道をしてます。
来月8日に定年退官する寺田逸郎最高裁長官(69)は退任の記者会見を行わない意向を報道各社に示した。最高裁長官の退任会見は慣例として前長官まで11代連続で開かれており、実施しないのは異例。「三権の長として語る場を自ら閉ざすべきではない」と疑問視する声が上がっている。
 最高裁長官は、就任時、退任時のほか、毎年5月3日の憲法記念日前に慣例として会見を開いている。寺田長官は2014年4月の就任時と過去4回の憲法記念日には会見を行ったが、退任会見については今月19日、最高裁の広報担当者を通じて(1)個別の裁判については一切答えられない(2)司法行政の今後のことは新長官に尋ねてほしい--との理由で開かない考えを示した。報道各社は開催を要望したが、27日に改めて「遠慮したい」との回答があった。
 最高裁長官の退任会見は少なくとも第7代の藤林益三氏(1977年退官)から前長官で第17代の竹崎博允氏(14年退官)まで開かれている。この中には寺田長官の父で第10代の治郎氏も含まれる。
 山田健太・専修大教授(言論法)は「『開かれた司法』を目指す裁判所のトップなのに、語る場を自ら閉ざすのは組織が目指す方向性と逆行している。個別の裁判以外にも長官が議員として参加した皇室会議の感想など、国民が関心を持つ話題はいくつもあるはずだ」と疑問視する。
 一方、寺田長官と約4年間共に仕事をした元最高裁判事の山浦善樹弁護士は「司法のあるべき姿を考え抜いて判決を書いた彼らしい判断。何かを話せば言い訳や自慢になる恐れがある。『判決を読んでもらえれば考え方は分かってもらえる』という思いがあるのではないか」と理解を示した。
 三権のトップでは、首相と衆院議長は原則として辞任表明時や退任時に会見を行う。参院議長は「本人の意向に任せている」(参院広報課)といい、過去2代は開かれていない。


私に言わせれば、そんなことは同でのいい話で、むしろ最高裁の判事になるときに公聴会が開かれていない事の方が問題ではないかと思います。

判決文まだ公開されず:ハーグ条約を無視した判断

2017-12-29 10:16:47 | 日記
随分大きな判断が出たようです。ハーグ条約を無視した判断が出ました。
条約より国内法が優先されるのでそれはそれでありですが、今後の国内法整備に大きく影響しそうです。
朝日新聞では、「ハーグ条約基づく子の返還覆す 最高裁「養育環境悪化」」、読売新聞報道では「養育態勢が悪化、子の返還命令「撤回」…最高裁」とありますが、その他の新聞各社では今一つの扱いです。かなり重要な案件だと思いますが。

日本では、2014年4月にハーグ条約が発効されており、連れ去りが2014年に実行されていることから、原則片親に戻さなければなりません。ですが、6~11歳の子ですから自分の意思をはっきりと伝える能力があり、日本に行くことも拒否出来るので、意思を尊重したのかなとも思います。
判決文公開が待たれます。

朝日新聞
 子どもの引き渡しに関するハーグ条約に基づき、母が米国から連れ出した子を米国在住の父に返還するよう命じた裁判所の決定について、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)は「父親側の養育環境が悪化し、事情が変わった」とし、返還を認めないとする決定をした。決定は21日付。
 同条約は原則、連れ去られた子は元の居住国へ返還すると定めている。ただ、返還で子が耐え難い状況に陥る危険などがあれば例外としている。今回はこの例外が適用された形だ。外務省によると、同条約に基づき裁判所の決定の変更を求めた初のケースだったという。
 決定によると、両親は子4人と米国で同居していたが2014年7月、母が当時6~11歳の4人を連れて日本に入国。父は日本の家裁に子の返還を申し立て、16年1月に米国への返還を命じる決定が確定した。
 その後、父は競売で自宅を明け渡すことになったため、母は「決定の確定後に事情が変わった」として、決定の変更を求めていた。



裁判官の不動産投資、最高裁が認めず

2017-12-28 14:31:08 | 日記
これは重大な判決なのですが、最高裁のデータベースには出ていません。
しかも、対象者が裁判官であることから、社会的な影響は低いと判断したのでしょうか。事件の概要は、こちらです。

夫婦で賃貸アパートを新築し、賃料収入を得ようと許可を求めた男性裁判官に対し、最高裁は11月1日までに「不許可」とする裁決をしていたことがわかった。賃料収入が年間約1100万円に上り、「最も公正かつ廉潔であることが求められる裁判官には認められない」と判断したとのこと。裁決は10日25付。
裁判官は裁判所法第52条により、最高裁の許可を受けなければ兼業は出来ない。この裁判官は、裁決に先立つ2016年、兼業許可申請をしたものの不許可となっていた。そのため、外部委員会に不服を申し立てたものの、17年9月の答申で同委員会が最高裁の判断を支持したため、最高裁は改めて今回の裁決で不許可とした。



おそらく、三井環事件が念頭にあったのかもしれません。とは言え、裁判所法の抜け道はいくらでもあるわけで、この法律では直接やってはダメというだけのようです。
しかし、年収が1100万ではだめでも100万ではOKということになりますよね。判決文が公開されていないので何とも言えませんが、だめなら兼業は一切不可としなければ意味がないですし、そもそも家賃収入があったからと言って、それが判断に影響するというのはどうなんですかね。過剰反応のような気もします。
どうでもいい内容であっても、法があるなら法に従わなければならないのが法律家の勤めではありますが、釈然としません。

県議会政務活動費の領収書は誰が管理しているのか。香川県では県議議長

2017-12-26 09:22:08 | 日記
平成29(行フ)2  文書提出命令申立て却下決定に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
平成29年10月4日  最高裁判所第二小法廷  決定  棄却  高松高等裁判所

地方公共団体は,その機関が保管する文書について,文書提出命令の名宛人となる文書の所持者に当たる。

事実確認から見ていきましょう。

1 香川県議会の議員らが平成25年度に受領した政務活動費の中に使途基準に違反して支出されたものがあるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,県知事に対し,上記の支出に相当する金額について,当該支出をした議員らに不当利得の返還請求をすることを求める訴えました。
それに対して、議員は抗告人は,本件各領収書に係る文書の所持者は議長であり,抗告人に本件各領収書の提出義務はない旨主張しています。
2 香川県議会政務活動費交付条例(平成13年香川県条例第4号。以下「本件条例」という。)は,議員に対して政務活動費を交付することとしており,議員は,議長に対し,政務活動費に係る収入及び支出の報告書に領収書その他の支出証拠書類の写しを添えて,年度末日の翌日から起算して30日以内に提出しなければならない(8条1項)。
議長は,議員から提出された報告書及び領収書等の写しをその提出すべき期間の末日の翌日から起算して5年を経過する日まで保存しなければならな(11条1項)い。
3 地裁は,本件各領収書に係る文書の所持者は県議会議長であるとした上,本件各領収書のうち発行主体が法人又は団体であるもの(領収印の印影部分及び代表者以外の担当者の氏名が記載された部分を除く。)について提出を命じました。


何故議長は嫌がったのでしょうか???情報提供者を明らかにしたくなかった?まあ、政治関係も警察の調査費も明らかにできない部分があることは認めます。

裁判所は、
1 裁判所は,文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは,文書の所持者に対し,その提出を命ずるところ(民訴法223条1項),文書の所持者は,文書提出命令によって,その文書を裁判所に提出すべき義務を負うこととなる。

悪文ですね。文章を切って短めにして欲しいところです。要するに、「裁判所が命じた事は、命じられた側は義務である」だそうです。当たり前ですが。

2 この場合は、地方公共団体は,その機関が保管する文書について,文書提出命令の名宛人となる文書の所持者に当たるというべきである。
3 議長が保存している本件各領収書について,文書提出命令の名宛人となる文書の所持者に当たる。

法律系の文章らしく読みにくいですが、論旨はすっきりしてますね。
というか、そもそもなんでこれが最高裁まで争われたのか、最高裁で受任しないレベルと言ってもいいのではないでしょうか。

第二小法廷決定
裁判長裁判官 菅野博之
裁判官 小貫芳信
裁判官 鬼丸かおる
裁判官 山本庸幸

平成28年7月10日施行の参議院選挙は無効ではない(先日とは別の裁判)

2017-12-25 10:20:29 | 日記
平成29(行ツ)4  選挙無効請求事件
平成29年9月27日  最高裁判所大法廷  判決  棄却  東京高等裁判所


 平成28年7月10日施行の参議院議員通常選挙当時,平成27年法律第60号による改正後の公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,上記規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。
(意見及び反対意見がある。)


29年12月24日の本ブログの記事と別の裁判です。
毎回このような裁判が最高裁まで争われますが、過去の判例からして訴えの資格なしで棄却でいないのでしょうか。別な論点があるとは思えません。
にもかかわらず、大法廷で32ページにもわたる判決が出ています。
面倒なので、補足意見または反対意見のみ検討します。

裁判官木内道祥の意見
1 投票価値の平等と憲法適合性審査
2 選挙区の単位を都道府県とすることと投票価値の平等の関係
3 2段階の憲法判断の枠組みとその考慮要素
4 違憲状態であるか否か 違憲状態である
5 国会の裁量権の限界を超えた


裁判官林景一の意見
選挙区の有権者の投票価値が別の選挙区の有権者の投票価値の約3倍に達する状態について,そこまでの評価を明言することにはためらいがあるため,多数意見に完全には与することができない。
一人一票の原則及び投票価値の平等は,投票で民意を決定する民主主義制度の根幹である。
厳密な1対1という較差を実現するのは困難であるし,そのために過度に人工的な区割りをすることが適当とも思われない。しかし,一般的には,一人二票というべき事態となることは原則として許容できないといえると考える。


ああだこうだ言うだけで、この人が裁判官である以上、どんな方法も違憲というでしょうね。

法律をもって約束した抜本的な見直しのための更なる検討を通じて,近年の較差縮小のプロセスが継続されることを期待する。



裁判官鬼丸かおるの反対意見
できる限り1対1に近い平等を基本的に保障していると考える。
る国会の努力の方向性は正しいと評することができよう。
本件選挙を無効とする結論が考えられるところである。


前回の選挙に関する判決とほとんど一緒、コピペレベルです。判決に揺らぎがあってはいけないので、その点はつっこむ所ではありませんが、冒頭にも書いた通りわざわざ大法廷で別の裁判として扱う話なのか疑問である事。これをわざわざ最高裁のデータベースに載せる必要があるのか、昨日のだけで十分だろうと思います。

平成28年7月10日施行の参議院選挙は無効ではない

2017-12-24 09:46:38 | 日記
平成29(行ツ)47  選挙無効請求事件
平成29年9月27日  最高裁判所大法廷  判決  棄却  東京高等裁判所

 平成28年7月10日施行の参議院議員通常選挙当時,平成27年法律第60号による改正後の公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,上記規定が憲法14条1項等に違反するに至っていたということはできない。
(意見及び反対意見がある。)


今回は30ページにもわたる判決文です。
平成28年7月10日施行の参議院議員通常選挙で議員定数配分規定(以下,数次の改正の前後を通じ,平成6年法律第2号による改正前の別表第2を含め,「定数配分規定」という。)は憲法に違反し無効であると訴えました。

事実確認を見ましょう。
1 参議院議員選挙法制定当時,選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差(以下,各立法当時の「選挙区間の最大較差」というときは,この人口の最大較差をいう。)は2.62倍(以下,較差に関する数値は,全て概数である。)であった。
2 平成22年7月11日,選挙区間の最大較差が5.00倍の状況において施行された通常選挙(以下「平成22年選挙」という。)につき,最高裁平成23年(行ツ)第51号同24年10月17日大法廷判決・民集66巻10号3357頁(以下「平成24年大法廷判決」という。)は,結論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの,長年にわたる制度及び社会状況の変化を踏まえ,参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く,都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっている。


それにしても長い文章ですね。このブログでは無理やり切りました。小学校、中学校で、長すぎる文章は読みにくいと習わなかったのでしょうか。
要するに、過去の裁判で問題はあるけども憲法違反とまでは言えないとしています。

都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっており,都道府県間の人口較差の拡大が続き,総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で,都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著しく困難な状況に至っている。

過疎地はどんどん過疎化して都市部に人口が集中し、高速移動手段が発達することで、ほとんど起きている間は他所の県にいるなんていう事が当たり前になっています。
とはいっても問題があるので、解消策を取りなさいとH24の前最高裁判決で出しています。

3 平成24年大法廷判決の言渡し後,平成24年11月16日に公職選挙法の一部を改正する法律案が成立したものの、同選挙当時の選挙区間の最大較差は4.77倍であった。
4 その後も、解決するべく国会審議がありましたが、平成24年改正法による前記4増4減の措置は,都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減するにとどまり,現に選挙区間の最大較差については上記改正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続いていました。

本気で改正してないじゃないか!と言っているようです。

5 平成27年5月29日に、ある程度まとまり選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い,必ず結論を得るものとするとの規定が置かれました。

6 憲法は、選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら,憲法は,国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねている


ここ重要ですね。どんな方法を採用するかは国会の判断であり、1人当たりの選挙人の比率を平等にしろとは認定していないのです。だから、憲法違反ではないと言っています。

7 憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は,それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって,国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあると解される。

結論は
以上のような事情を総合すれば,本件選挙当時,平成27年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。

私はこの判決が妥当だと思います。司法は政治に関与してはならないこと、人口移動を強制的に調整できない事、過疎地だからと言って代議士の数を減らしていいのかという問題があるからです。特に、日本海側は過疎化が進んでいますが、同時に国防上重要な地域でもあります。現在の北朝鮮の木造船漂着、過去には拉致はほとんど日本海側です。
ところが、東京をはじめ大都市圏では国防を意識する必要がほとんどありません。ようやく北朝鮮のICBM発射実験で東京も少しは考えるようになりま下が、深刻度合いはその比ではありません。

次に、補足意見を見ていきましょう。
裁判官木内道祥の意見

1 投票価値の平等と憲法適合性審査
国会議員の選挙における投票価値は,国民が憲法上有する選挙権の内容をなすものであるから,それが平等であることは,国会を全国民の代表である議員により構成するための基本原理として憲法が要求するところであり,選挙制度の決定に当たって考慮されるべき最も重要かつ基本的な基準である。・・・
昭和58年大法廷判決は「(憲法の定める)選挙権の平等の原則は,・・・選挙権の内容の平等,すなわち・・・投票の有する価値の平等をも要求する」という原則を示し,その上で,投票価値の平等が唯一絶対の基準ではないとの説示がなされたものであり,これは,国会の立法に当たって投票価値の平等以外の要素を一切考慮してはならないということではないという趣旨で国会の裁量権を確認したにとどまるものと解される。


過去の判例で、国会に裁量権があることが不満のようです。この程度の感想であれば、わざわざ書くほどの事でもない気がしますね。


2 選挙区の単位を都道府県とすることと投票価値の平等の関係
多数意見は,都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮することが否定されないとするが,それは,飽くまで一つの要素としての考慮であり,直ちに,各選挙区の区域を定めるに当たり都道府県という単位を用いることが不合理ではないとする結論に帰結することにはならないはずである。


この人は、どんな育ち方をしたのか分かりませんが、地方で暮らすと旧幕藩体制の区割りがそのまま残っているのが分かります。今は同じ市になっていても川を超えると、昔は○藩だったとかで、なかなか一体のものとして考えられません。ましてや、全県で見るともっと露骨に現れてきます。県議会でどちらの出身かで思いっきり派閥ができます。
なので、これを根拠にするのは無理があります。

3 2段階の憲法判断の枠組みとその考慮要素
①の違憲状態か否かの判断は,当該選挙の時点における投票価値の不均衡の状態についてのものであり,上記②の国会の裁量権の範囲内か否かの判断は,選挙時点における国会の活動の方向性を測るものとして当該選挙の後の国会の動向をも考慮対象とするものである。


ん?ならば全員一致の判決にならないかと。なぜ反対しなかったのでしょうか?

4 違憲状態であるか否か
本件選挙時における3.08倍という最大較差に示される投票価値の不均衡は,従来の選挙時における最大較差より縮小したとはいえ,基本的な選挙区の単位を都道府県とすることを維持した定数配分規定によるものであり,そのままでは更なる拡大が懸念される。


だからどうなんだ?って気がしてきます。どうにかできるなら既にやっているでしょう。どうしようもなから、こまめに修正しているのです。不満があるなら政治家に転身したら?とすら思えてきます。

5 国会の裁量権の限界を超えたか否か
平成27年改正法の附則7条は「平成31年に行われる参議院選挙の通常選挙に向けて,・・・較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて・・・必ず結論を得る」とする。これは,較差の是正のための選挙制度の抜本的な見直しを,今回の改正に引き続いて行い,平成31年に行われる通常選挙(以下「平成31年選挙」という。)までに完成させるという趣旨である。
改正法に含まれる附則が「必ず結論を得る」としている以上,その実現は,国会が現に約束したものなのである。


「約束したんだから、やれよ。だらだらやってないでさっさと抜本的な対策をとれよ。」ってことのようです。企業じゃないんですよ。国会なんですよ。命令して済む話じゃないですよ。なんだか裁判官としてと言うより原告のような内容です。


裁判官林景一の意見
1 若干ではあるが格差は改善しているが、不十分であるので、多数意見にはもろ手を挙げて賛成という訳ではない。
結論として,「本件選挙の当時,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない」とする多数意見に同調するものである。

2 投票価値の平等原則
(1)「全国民の代表」を選出するに当たっての一人一票の原則及び投票価値の平等は,投票で民意を決定する民主主義制度の根幹である。憲法には投票価値の平等という言葉自体は明記されていないが,投票価値の平等は,民主主義と平等原則から直接導かれる憲法上当然の原則である。国際的な視点からも,・・・


アメリカではそうなっていません。独立戦争に早くから参加した州ほど多くの議席が得られますが、あれから250年経っても変更されていません。他国の事例を持ち出すのはどうなんでしょうか?それぞれの国情に合わせていくべきであり、一律によそと同じと言うのは駄々っ子の議論と変わりません。持ち出すなら、どうしてそれが日本の事情と同じなのか、そのほうが良いのかもう少し説明が必要です。例え、それが国際条約であってもです。尤もこの議論は司法でやるべきではなく国会ですべきですが。

(2) 平等原則の下,最大較差3倍程度で合憲といえないとした場合,どの程度まで較差を縮小すればよいのか,という問題提起があろう。原理としては,一人一票の原則といわれることからも,最大較差がなるべく1.0倍に近くなければならないということになるが,これは理想型であり,選挙区選挙という制度を選択する場合,実際問題として,厳密な1対1という較差を実現するのは困難であるし,そのために過度に人工的な区割りをすることが適当とも思われない。しかし,一般的には,一人二票というべき事態となることは原則として許容できないといえると考える。

何ですかこれ????もはや言いたいだけですよね。意見ですらありません。

3 憲法の基本原理としては,参議院議員が衆議院議員と同様,憲法43条にいう「全国民の代表」として選出されるものである以上,選挙区割りが都道府県単位を基本とする場合にも,全国民の間の投票価値の平等という憲法上の原則と調和する,すなわちこの原則を大きく損なわないようなものでなければならない(あるいはプロセスとして考えれば,より投票価値の平等を追求する方向に向かうものでなければならない)と考える。
4 投票価値の平等原則の重みを十分に踏まえ,平成31年通常選挙に向けて,現状で事足れりとすることなく,法律をもって約束した抜本的な見直しのための更なる検討を通じて,近年の較差縮小のプロセスが継続されることを期待するものであり,


都道府県別では様々な問題があるけども、しょうがないよね。頑張ってぐらいの意味でしょうか。


裁判官鬼丸かおるの反対意見
多数意見とは異なり,本件定数配分規定は憲法に違反するものであり,それに基づき施行された本件選挙も違法であると考える。
1 憲法は,参議院議員の選挙においても,衆議院議員の選挙と同様に,国民の投票価値につき,できる限り1対1に近い平等を基本的に保障していると考える。
2 4県2合区を含む10増10減案が可決成立し・・・・れ,投票価値の最大較差が大幅に縮小されたことからすれば,投票価値に関する国会の努力の方向性は正しいと評することができよう。
3 最大較差の3.08倍という数値自体からは,投票価値の平等を実現したとはいい難い。
5 上記の帰結として,本件選挙を無効とする結論が考えられるところである。


どこに投票の格差があってはいけないとする根拠条文があるのでしょうか?あくまでも国会の裁量に任されているはずです。トンデモですね。

裁判官山本庸幸の反対意見
1 投票価値の平等は唯一かつ絶対的基準
2 2割超の較差のある選挙制度は違憲無効
3 平等な選挙制度の要請は参議院も同じ

3は分かりますが、1と2は鬼丸裁判官と同じです。

大法廷
裁判長裁判官 寺田逸郎
裁判官 岡部喜代子
裁判官 小貫芳信
裁判官 鬼丸かおる トンデモ
裁判官 木内道祥 今一つ
裁判官 山本庸幸 トンデモ
裁判官 山崎敏充
裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 菅野博之
裁判官 山口 厚
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一

深山卓也裁判官のごみ処理場反対運動の行政訴訟 妥当判断

2017-12-23 17:20:12 | 日記
平成2(行ウ)100  住民監査請求事件
平成3年3月27日  東京地方裁判所  住民訴訟

 1 住民監査請求において必要とされる財務会計上の行為又は怠る事実の違法性又は不当性に関する主張は,監査請求全体の趣旨からみて当該財務会計上の行為又は怠る事実が具体的な理由によって,法令に違反し,又は行政目的上不適当である旨を指摘すれば足り,特定の法令を挙げてこれに違反する旨までをも常に指摘しなければならないものではない。

事件背景を見ていきましょう。
1 ある都民が東京都清掃局長を訴えました。
2 ごみ焼却施設の建て替えで、旧国鉄の所有地に建設する計画を立て、同工場近隣住民の還元施設に関する意向調査及び還元施設の基本設計の作成業務を、委託料を三九九万九四九〇円、契約期間を契約締結日から同年一二月三一日までとする約定で委託する旨の調査設計業務委託契約しました。
3 
1)ここに至る前に、北清掃工場付近の住民は、同工場設置が計画されて以来、その操業が住民の健康に影響を及ぼすおそれがあるとして、ゴミ焼場設置反対期成同盟(以下「反対同盟」という。)を結成して同工場の設置、操業を阻止する行動を続けてきた。
2)東京都との間で、「東京都北清掃工場設置に関する協定」(以下「第一次協定」という。)を締結したうえで、同工場の設置、操業を承認した経緯があるところ、第一次協定は、その三条において、東京都は北清掃工場に隣接する変電所跡地を買収した場合には原則としてこれを緑地とした。


ごみ清掃にかかわる反対運動が激しくて、用地買収したものの手が付けられない状態だったようですね。当時は仕方なく、緑地にしておくからと暫定的な協定を結んだようです。

3)東京都が、第一次協定三条により原則として緑地とする旨合意されている変電所跡地に還元施設を建設することを目的として締結されたものであるから、公序良俗あるいは信義則に反し無効である。

住民からすれば、緑地にすると言ったのに今更処理場にするのはだまし討ちだろうということになったようです。そこで建設をさせないようにするために、調査そのものでコンサルに払った費用は違法であるから、その分を返せと言う裁判です。
ところが、さらにらが色々あったようです。

東京都と第一次協定を締結した反対同盟は、北清掃工場付近の一一の自治会の連合体であり、付近一帯の住民を代表する組織であったが、還元施設の設置を要望し本件協定を締結した志茂反対同盟は、解体状態にあった反対同盟が昭和五八年九月に再建されたものではあるが、志茂一丁目自治会に所属する住民の一部のみで組織されたものであり、反対同盟とは別個の組織である。また、還元施設の建設が決定された昭和六三年一〇月に開催された運営協議会に出席した住民側委員は、すべて志茂反対同盟によって選任された者であった。
そうすると、還元施設の設置について運営協議会の決定及び志茂反対同盟からの要望があり、さらに東京都と志茂反対同盟との間に本件協定が締結されたとしても、東京都と反対同盟との間で締結された第一次協定の内容が変更されるはずはない。したがって、第一次協定三条は、現在も効力を有し、東京都が変電所跡地に還元施設を建設することは、これに違反するというべきである。


協定を結んだ反対同盟と言っても、自然崩壊したり参加者は違うけど復活したりしていたようです。となる協約という契約はもはや存在しない状態と言ってもいいでしょう。
ということで、払ったコンサル料を戻せと言うのは、そもそも権利がないとし、住民監査請求は住民であれば誰でもできるのでどうぞ、という判断のようです。
まあ妥当な判断ですね。

東京地裁
裁判官 鈴木康之 石原直樹 深山卓也

工業用水道の使用を廃止した者が納付する負担金は「分担金」ではない

2017-12-22 07:21:38 | 日記
平成28(受)1187  廃止負担金請求事件
平成29年9月14日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻  大阪高等裁判所


大阪府工業用水道事業供給条例(昭和37年大阪府条例第4号)23条,同条例施行規程(同年大阪府営水道企業管理規程第1号)21条の規定により工業用水道の使用を廃止した者が納付しなければならないとされる負担金は,地方自治法224条,228条1項にいう「分担金」に当たらない


事実確認から見ていきましょう。
1 ある会社が、府との間で契約して工業用水を引いてもらっていました。その会社が工業用水を使わなくなったので解約しようとしたところ、条例に基づいて負担金1308万 2795円を払えと府から言われました。
2 しかし、工業用水を引いてもらうときはその条例は無く、契約中に条例が改正されました。


会社の規模にもよりますが、1300万は大きいですね。

最高裁の判断では、
(1) 地方自治法224条は,普通地方公共団体は,政令で定める場合を除くほ か,数人又は普通地方公共団体の一部に対し利益のある事件に関し,その必要な費 用に充てるため,当該事件により特に利益を受ける者から,その受益の限度におい て,分担金を徴収することができると定めている。・・・当該利益を享受しない住民との間の負担の公平等を図るもの であると解される。

(2) 府の工業用水道事業は,地方公営企業法の適用を受ける企業として運営さ れていたものであるところ,前記事実関係等によれば,本件廃止負担金に関する本 件規定等は,使用者が工業用水道の使用を廃止することによって料金収入が減少す ることから,他の使用者の負担を軽減し,上記事業の安定的な経営を図るため,使 用を廃止した者の負担においてこれを補うことを目的として定められたものである と解され,


普通の家庭用の水道とは違って、大きな敷地に長い地下パイプを設置しなければなりませんからね。しかも、利用者の多寡に関係なくそれの設備維持費用はほとんど変わりません。なので、誰か抜けるとその分他の人たちが払ってくれない限り大赤字になります。


本件廃止負 担金は,工業用水道の使用を廃止した者が,府の工業用水道事業やその設置する水 道施設等からもたらされる利益を特に享受することを理由として,その受益の限度 において徴収される性質のものであるということはできない。

(3) そうすると,本件廃止負担金は,地方自治法224条,228条1項にい う分担金に当たらないというべきであり,これに関する事項について条例で定めな ければならないものということはできない。

結論
5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違 反がある。本件廃止負担金が分担金に当たるとした原審の判断に法令解釈の誤りが あるとする論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。


うーん、どうなんでしょうか。228条については行政の現場でも解釈に混乱が生じるようです。これをみると、下水道の使用量は225条、226条と228条に該当するようです。
(分担金)
第二百二十四条 普通地方公共団体は、政令で定める場合を除くほか、数人又は普通地方公共団体の一部に対し利益のある事件に関し、その必要な費用に充てるため、当該事件により特に利益を受ける者から、その受益の限度において、分担金を徴収することができる。
(使用料)
第二百二十五条 普通地方公共団体は、第二百三十八条の四第七項の規定による許可を受けてする行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができる。
(旧慣使用の使用料及び加入金)
(旧慣使用の使用料及び加入金)
第二百二十六条 市町村は、第二百三十八条の六の規定による公有財産の使用につき使用料を徴収することができるほか、同条第二項の規定により使用の許可を受けた者から加入金を徴収することができる。
分担金等に関する規制及び罰則)
第二百二十八条 分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。この場合において、手数料について全国的に統一して定めることが特に必要と認められるものとして政令で定める事務(以下本項において「標準事務」という。)について手数料を徴収する場合においては、当該標準事務に係る事務のうち政令で定めるものにつき、政令で定める金額の手数料を徴収することを標準として条例を定めなければならない。
2 分担金、使用料、加入金及び手数料の徴収に関しては、次項に定めるものを除くほか、条例で五万円以下の過料を科する規定を設けることができる。
3 詐欺その他不正の行為により、分担金、使用料、加入金又は手数料の徴収を免れた者については、条例でその徴収を免れた金額の五倍に相当する金額(当該五倍に相当する金額が五万円を超えないときは、五万円とする。)以下の過料を科する規定を設けることができる。

これを見ると、手数料、利用料、分担金の違いというところでしょうか。分担金となるとある程度の負担は仕方ないかもしれません。その金額の問題ですね。1300万も払えというのはどうなんでしょう。少なくとも、この会社は昭和53年(1978)使用開始、平成23年(2011)契約解除なので33年間ですよね。減価償却は終わってませんかね。
裁判官としては、この条文で判断してくれと言われたらその範囲でしか判断しませんので、弁護士は減価償却の話はしなかったのでしょうか。個人的には負けてやれよと思いますが、仕方ない判決のようです。

第一小法廷判決
裁判長裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚

微妙判決:公務員の汚職、当事者の賠償は?差し戻し

2017-12-17 18:53:25 | 日記
平成28(行ヒ)33  求償権行使懈怠違法確認等請求及び共同訴訟参加事件
平成29年9月15日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  福岡高等裁判所

県が教員採用試験における職員らの不正のため不合格となった受験者らに損害賠償金を支払ったことにより取得した求償権の一部を知事において行使しないことが財産の管理を違法に怠るものであるとして提起された住民訴訟において,上記不正は県の教育委員会の職員らが現職の教員を含む者から依頼を受けて受験者の得点を操作するなどして組織的に行われ,一部は賄賂の授受を伴うなど悪質なものであり,その結果も本来合格していたはずの多数の受験者が不合格となるなど極めて重大であったことに鑑み,これに関与した職員らに対する退職手当の返納命令や不支給は正当なものであったという事情の下では,教員の選考に試験の総合点以外の要素を加味すべきであるとの考え方に対して上記教育委員会が確固とした方針を示してこなかったことや,上記返納命令に基づく返納の実現が必ずしも確実ではなかったこと等の抽象的な事情のみから直ちに上記求償権のうち上記返納に係る額に相当する部分を行使しないことが違法な怠る事実に当たるとはいえないとした原審の判断には,違法がある。


この事件の基になった事件を見ていきましょう。もう、事件がかなり時間が経過してしまっていますので、ブログまとめサイトでしか残っていません。
大分県教員採用汚職!!
<大分教員採用汚職>矢野容疑者の長女、小学校教諭を退職

大分教員採用汚職 返納退職金分の減額認めず 最高裁
毎日新聞2017年9月15日 20時47分
 大分県の教員採用汚職事件を巡り、関与した元県教育委員会幹部に対する賠償請求額から返納済みの退職金額を差し引けるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は15日、「悪質な不正で、返納分を賠償請求額から当然に差し引くことはできない」との判断を示した。その上で、返納分を差し引くことを認めた2審・福岡高裁判決(2015年)を破棄し、審理を同高裁に差し戻した。
 事件は08年に発覚。06~07年の教員採用試験で得点の操作や賄賂の授受があったなどとして県教委の元幹部や現職幹部らが起訴され有罪が確定した。県は不採用の受験者53人に総額約9000万円の賠償金を支払った。
 元幹部の一人は県教委から命令を受け、退職金約3200万円を返納。県教委は、この金額などを差し引いた残額として、元幹部ら7人に賠償金約950万円の負担を求めた。
 これに対し、NPO「おおいた市民オンブズマン」が元幹部らに返納額などを差し引かない全額を請求するよう県に求めて提訴。1審・大分地裁は15年、返納額を差し引かない額を請求するよう命じたが、2審判決は「(組織としての)県教委にも不正の責任があり、退職金相当額を差し引くことは合理性がある」として、原告逆転敗訴としていた。
 最高裁は「合格していたはずの多数の受験者が不合格になるなど極めて重大」と指摘。返納分は差し引けないと結論付けた。裁判官4人全員一致の意見。
 原告側の瀬戸久夫弁護士は「(元幹部は)在職中に逮捕されていたなら退職金はゼロだった。返納分の減額は一般市民の目線から考えるとおかしい」と判決を評価。県教委は「判決内容を精査し、福岡高裁で県としての考え方を主張する」とのコメントを出した。【伊藤直孝、尾形有菜】



事実確認を見ましょう。

1 教員採用試験において受験者の得点を操作するなどの不正を行い,大分県は,これにより不合格となった受験者らに対して損害賠償金を支払った。
2 県の住民である上告人らが,被上告人を相手に,被上告人が本件不正に関与した者に対する求償権を行使しないことが違法に財産の管理を怠るものであると主張した。


そりゃマトモに税金を払っている身分からすれば、肝心のやらかした犯人にその損害分を請求しないとなれば、ふざけんな!でしょうね。

3 当時教育審議監であったAは,特定の受験者を平成19年度試験に合格させてほしいなどの相当数の依頼を受け,当時人事班の主幹であったGに対し,これらの依頼に係る受験者の中からAが選定した者を合格させるよう指示した。上記指示の中には,Aが,県内の市立小学校の教頭であったB及びその妻であり県内の市立小学校の教諭であったC(以下「B夫妻」という。)から100万円の賄賂を供与され,同人らの子を平成19年度試験に合格させるよう便宜を図ってもらいたい旨の依頼を受けたことによる指示もあった。

採用人事に絡んだ贈収賄事件ですよね。

4 平成18年11月頃,県を退職したことに伴い,退職手当3254万5896円の支給を受けたが,その後,上記(2)の賄賂に係る収賄の罪により有罪判決を受けた。Aは,平成20年12月,県教委から,県の条例に基づき,上記退職手当全額の返納を命じられたため(以下,この命令を「本件返納命令」という。),同21年1月,県に対し,上記全額の返納(以下「本件返納」という。)をした。
また,H,G,B夫妻及びDは,いずれも懲戒免職処分を受け,退職手当の支給はされなかった。


一応、やらかした人たちは制裁は喰らったのですか。

5 県教委の幹部職員等から,損害賠償金の財源の一部として,平成23年2月から3月にかけて合計4842万4616円の寄附を受けた。


たまに聞きますが、寄付行為とはいえ現役の職員が強制的に出させられていると聞きます。この件でそうだったかまでは分かりませんが。関係ない人からすれば、全くふざけんなと思うでしょう。

6 県教委は,平成23年8月,損害賠償金(総額9045万円)につき,損害賠償金総額から上記寄附の合計額及び本件返納に係る額(以下「本件返納額」という。)を控除した947万9488円について求償することとし,平成19年度試験における本件不正に関与した者に対して求償すべき額を739万8320円,平成20年度試験における本件不正に関与した者に対して求償すべき額を208万1168円と決定した。

この辺関係法令をよく知らないので何とも言えませんが、不正に採用された場合は、問答無用で賠償金どころじゃないと思いますが。

結論

一部は賄賂の授受を伴うなど悪質なものであり,その結果も本来合格していたはずの多数の受験者が不合格となるなど極めて重大であったものである。そうすると,Aに対する本件返納命令や本件不正に関与したその他の職員に対する退職手当の不支給は正当なものであったということができ,県が本件不正に関与した者に対して求償すべき金額から本件返納額を当然に控除することはできない。また,教員の選考に試験の総合点以外の要素を加味すべきであるとの考え方に対して県教委が確固とした方針を示してこなかったことや,本件返納命令に基づく返納の実現が必ずしも確実ではなかったこと等の原審が指摘する事情があったとしても,このような抽象的な事情のみから直ちに,過失相殺又は信義則により,県による求償権の行使が制限されるということはできない。
したがって,上記の事情があることをもって上記求償権のうち本件返納額に相当する部分を行使しないことが違法な怠る事実に当たるとはいえないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。


うーんどうなんでしょう。賠償義務があるとするならば、誰が賠償すべきかになります。
確かに採用を決定し、採用行為そのものについて県が責任を負います。が、そもそもの問題の発生原因は裏口採用を持ちかけた人と、それを受けた人ではないでしょうか。退職金の不支給をもって雇用上の制裁は受けたとしても、関係ない人を巻き込んだという点では制裁はまだですよね。

と思っていると、山本裁判官が私と近い考えを補足意見として出しています。

寄附者の善意によるはずの寄附金相当額が,原判決によれば,いつの間にかAらに対する請求額から差し引かれ,結果的にその分だけ損害賠償責任を免除するように使われている。特にAは,収賄という重大な犯罪を犯して有罪が確定した者である。前記2(8)の寄附(以下「第2寄附」という。)は,そういう者であって,これまでの同僚が寄附金を出し合って個人的に支えようという趣旨で寄附されたものと認められるので,第2寄附を請求額から差し引くのは,まだ理解できる。
しかしながら,第1寄附は,少なくとも上記書面を見る限り,そのような趣旨であったとは,全くうかがえないものである。したがって,原審は,第1寄附を請求額から差し引いた理由及び根拠として,第1寄附は本来合格していたにもかかわらず不合格となった者に対して県が支払った損害賠償金の財源に充当してほしいとの趣旨を示して拠出されたものであること等から,県が実質的にその補てんを受けたと評価できるという事情を挙げるが,このような事情だけではとても納得することができない。

・・・・自らの不祥事に基づく損害賠償責任は自ら果たすべきであり,
仮にもその責任が一部にせよ部下に押し付けられるようなことはあってはならないと考える次第である。

これまでの判例からすれば多数派が妥当なのでしょうが、一般国民から見ると山本裁判官が最もまともな判決に見えます。

第二小法廷
裁判長裁判官 菅野博之 いまひとつ
裁判官 小貫芳信 いまひとつ
裁判官 鬼丸かおる いまひとつ
裁判官 山本庸幸 素晴らしい

トンデモ判決奈良家裁:凍結受精卵無断移植でも親子

2017-12-16 10:31:12 | 日記
この子供はどんな思いで生きることになるのだろうと思うと泣けてきます。

以下、産経新聞の報道です。

凍結受精卵無断移植でも親子―外国人男性の「父子関係不存在」訴え却下 奈良家裁
夫婦関係が悪化して別居中、過去に作製した凍結受精卵を元妻の女性(46)が無断で移植し妊娠、出産したとして、外国籍の男性(46)が第2子の長女(2)との間に父子関係がないことの確認を求めた訴訟の判決で、奈良家裁(渡辺雅道裁判長)は15日、訴えを却下した。
妻が結婚中に妊娠した子は夫の子と推定すると定めた民法772条の「嫡出推定」規定を巡り、夫側の同意を得ずに移植した凍結受精卵で生まれた子にこの推定が及ぶかどうかが争点だった。
 判決は、凍結受精卵の移植については両親の同意が必要だとした上で、今回のケースでは元妻が妊娠した当時の交流状況などから、原告男性は民法上、子供の父親と推定される立場にあると判断した。
 2人は妊娠当時、婚姻関係自体は継続。原告男性側は別居して性行為はなく、元妻が凍結受精卵の移植を受ける際に同意の確認も求められなかったとして推定は及ばないと主張していた。
 訴状などによると、2人は平成16年に結婚し、21年から奈良市のクリニックで不妊治療を開始。複数作製した凍結受精卵を使って23年に第1子の長男が生まれた。
 その後に夫婦関係が悪化し、25年10月に別居。女性は26年、男性の同意を得ないまま残る凍結受精卵で妊娠し、27年4月に長女を出産した。2人は昨年10月に離婚した。
 原告の男性は凍結受精卵の移植の際に同意を求められないまま父となったことで精神的な苦痛を受けたとして、クリニックと元妻に対する計2千万円の損害賠償訴訟も奈良地裁に起こしている。



こどもはペットじゃないんですよ。勝手に愛してもいない法律上の夫の遺伝子を持った子供を産みたいのでしょうか。
幾ら子供福祉のためとは言え、子供は物ではないのは分かりますが、性行為なしで勝手に作った子供について養育費を夫が払うことになるのでしょうか?こういう身勝手な事をする女性に親権があるということは、子の福祉に合致するとでもいうのでしょうかこの渡辺雅道裁判長は思考停止しているとしか言いようがありません。

地裁で病院に対して慰謝料請求しているようですが、養育費満額を病院が払うべきですね。

トンデモ判決H4沖縄国政選挙判決:深山卓也氏

2017-12-15 19:52:32 | 日記
深山卓也氏の行政訴訟判決です

行政事件裁判例 平成4(行ケ)1  当選無効等請求事件 平成5年7月15日
判決文


1 候補者の所属政党名は公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前)68条1項5号ただし書所定の「身分」の類であると解されるから,候補者の氏名のほかにその所属政党名を記入した投票は有効である。 
2 候補者の氏名のほかに同人の所属政党名以外の政党名が記載された投票は,通常の場合,候補者の所属政党を誤って不用意に所属政党以外の政党名を記載したものとみられ,有意の他事記載には当たらず,公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前)68条1項5号ただし書にいう「身分」の類の記載とみるべきであって,有効と解されるが,投票者が事実の相違を知りつつ故意に誤った政党名を記載したときは,投票者が何らかの意図をもって記載したものであるから,有意の他事記載に当たる。 
3 候補者の氏名のほかに同人の所属政党名以外の政党名を記載した投票につき,その政党は,同人の所属政党と共に推薦団体を構成して同人を推薦し,又は前記所属政党との協定に基づき同人を支持している旨がそれぞれ報道されているものであるから,当該投票は,事実の相違を知りつつ故意に誤った政党名を記載したものではなく,同人を推薦し,若しくは支持する政党を記載したか,又はこれらを所属政党と誤認して記載したものと推認できるから,前記政党名の記載は公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前)68条1項5号ただし書にいう「身分」の類の記載に当たるとして,前記投票が有効とされた事例


事実確認
1 平成四年七月二六日執行された第一六回参議院議員通常選挙の沖縄県 選挙区選出議員選挙の候補者が訴えた事件です。
2 原告の得票数を二四万四八一八票、補 助参加人の得票数を二四万五一五九票として補助参加人を当選人と決定した。
接戦で負けてしまったのですね。

3 有効票の中には、「社会A」若しくは「社会党A」、「社大 A」若しくは「社大党A」、「共産A」若しくは「共産党A」又は「公明A」若し くは「公明党A」と記載された投票があった。
しかし、社大党は沖縄社会大衆 党(以下「社大党」)を意味し、同人の所属政党が社大党である。にもかかわらず、合計して八〇〇票以 上あり、これが補助参加人の得票数に加えられていた。

4 原告は、日本社会党、日本共産党又は公明党の党員であったこともない。したが って、「社大A」又は「社大党A」以外は無効ではないか。
5 他の事例として、本件選挙において無効投票とされた投票の中に、「自民B」、 「自民党B」又は「Bさんへ」等と記載された投票が、左記のとおり合計一〇四票 あった。
6 選挙区選出議員選挙(以下「選挙区選挙」とい う。)の投票に際し、選挙区選挙用の黄色の投票用紙を選挙人に交付すべきとこ ろ、選挙人八四名に対して、比例代表選出議員選挙(以下「比例代表選挙」とい う。)用の白色の投票用紙を交付したため、これに記載して投票された八四票はす べて無効投票と扱われた。


もう無茶苦茶ですね、沖縄選挙管理員会は!!!
これについて裁判所は、
1 補助参加人は社大党の公認候補としては立候補しなかった。
2 日本社会党及び日本共産党 の三政党との間で、革新合同選対会 議が結成された。
3 社大党は、同年四月二二日、公明党との間で、本件選挙において公明党は 補助参加人を「支持」した。
4 補助参加人は、社大覚、日本社会党及び日本共産党 の推薦、公明党の支持によるいわゆる革新統一候補として選挙運動を行なった。


要するに、投票する人が先にの間違いを誘発する前提があったと認めたのです。まあ、これだけ間違いが生じてもしょうがないよねってことですか。

5 無効投票とされた投票の中に、「自民B」、「自民党 B」又は「Bさんへ」等と記載された投票が合計一〇四票あり、これはすべて原告 の有効投票であると主張する。 しかしながら、選挙会の認定した補助参加人と原告の有効得票数の差が三四一票で あることは当事者間に争いがないから、仮に原告主張のとおり右一〇四票がすべて 原告の有効投票であったとしても補助参加人が本件選挙の当選人であることに変わりはない。

ちょっと待ってくださいよ。選挙に通ったから別に問題ないじゃないってことですか?

6 投票用紙を誤って配った件は、公職選挙法六八条一項一号によれば、「所定の用紙を用いない」投票は 無効とされているところ、投票管理者が誤って投票用紙を交付したことに基因して 投票者が所定の用紙を用いずに投票した場合であっても、そのような投票は無効で あるといわざるをえない。したがって、本件選挙においても、右八四票は、投票者が如何なる記載をして投票したかにかかわらずすべて無効投票と扱われたと推認す るのが相当。

この点は合点がいきます。

投票管理者の右違反行為は、選挙無効事由に該当するものであり、こ れを当選無効訴訟における当選無効事由として主張することはできないといわざるをえない。

?何だか飛躍していますね。選挙管理委員会が違反したことをもって、投票を無効とするのはおかしい????

右八四票を原告の有効得票数に 加算しても補助参加人の有効得票数を下回ることは明らかであるから、結局、右違 反行為が本件選挙の結果に異動を及ぼす虞はなく、これが本件選挙を(一部)無効 ならしめるものではない。

結論は分かりますが、一部は無効になるんじゃないですか?


結論
以上検討してきたところによると、原告の本件告示の取消請求に係る訴えは 不適法であるから却下すべきであり、原告の当選無効の請求は、理由がないから棄却すべきである。

何ですかこれ?
前半の複数政党間の協力があったため、実際とは違う所属政党が書いてあっても協力した政党の名前があれば有効であるという事のようですが、「名前のみ書け」が余計なことを書いてあっても有効とすること自体がおかしくないですか?
自民何某と書いてあるのは無効とされたのに、平等の基準で判断されないのでしょうか。
これはトンデモ判決ですね。

新最高裁人事:深山卓也氏、宮崎裕子氏

2017-12-09 13:19:25 | 日記
毎日新聞の報道です。

政府は8日午前の閣議で、来月8日に定年退官する寺田逸郎・最高裁長官(69)の後任の第19代長官に、大谷直人・最高裁判事(65)を指名することを正式に決めた。後任の最高裁判事には、深山卓也・東京高裁長官(63)、来月1日に定年退官する木内道祥(みちよし)最高裁判事(69)の後任には宮崎裕子弁護士(66)=第一東京弁護士会所属=をそれぞれ任命することも決めた。いずれも1月9日付発令の予定。【伊藤直孝】


深山卓也
過去の判決については、以下の通りです。
行政事件裁判例 平成4(行ケ)1  当選無効等請求事件 平成5年7月15日
行政事件裁判例 平成2(行ウ)100  住民監査請求事件 平成3年3月27日
行政事件裁判例 平成1(行ウ)181  損害賠償請求事件 平成3年3月27日
行政事件裁判例 昭和62(行ウ)107  簡易ガス事業不許可処分取消請求事件 平成3年1月28日
行政事件裁判例 平成2(行ウ)67  在留資格変更許可申請不許可処分取消請求事件 平成2年12月18日
行政事件裁判例 昭和63(行ウ)50  損失補償額増額請求事件 平成2年9月18日

裁判の性質上の問題かもしれませんが、全部行政事件でした。後ほど判例研究をしてみます。

宮崎裕子
現在弁護士なので、判決文の公開はありません。過去にどのような裁判を担当したのか知りたいですが、守秘義務があるので仕方ないですね。最高裁のデータベースでも弁護人としての名前も出てきませんでした。ということは、最高裁まで担当した事件がない、高裁までの間に画期的な判例を引き出していないようです。これはほとんどの裁判がそうなので、仕方ないですね。
主な取扱分野は、税務争訟、税務アドバイス・プランニングだそうです。

最高裁判事人事情報:大谷直人氏

2017-12-08 17:06:08 | 日記
寺田裁判官が定年退職するので、その入れ替えの長官人事が発表されました。
大谷直人氏が長官になります。なお、本ブログでは大谷直人氏のトンデモ判決率は21%でした。
どういうプロセスを経て、長官になるのか報道では出てきません。最高裁人事の発表のたびに書きますが、なぜこの人が長官なのか、なぜ裁判官なのか公聴会を是非やって頂きたい。