平成30(受)234 損害賠償等請求事件
平成31年3月5日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄自判 札幌高等裁判所
団地建物所有者等に対してその専有部分の電力供給契約の解約申入れを義務付ける旨の集会決議がされた場合において,団地建物所有者が上記解約申入れをしないことが他の団地建物所有者に対する不法行為を構成しないとされた事例
日経新聞の報道です。
マンションの管理組合が総会で、低額の電気供給サービスを一括導入するために、個別の電気契約を解除するよう全住民に義務付けた決議の有効性が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷は5日、決議は共用部分の変更や管理にしか認められず、専有部分には及ばないとして「無効」との判断を示した。
マンションは一般的に、住民が個別に電気契約を結んでいるが、このサービスは、管理組合が住民の代わりに電気を受け取る。「一括受電」と呼ばれ、経済産業省によると、推計で全国約60万戸(部屋数ベース)で導入。今後採用する場合は、一部住民が反対すると導入が難しくなりそうだ。
区分所有法は、マンション共用部分の変更や管理は住民が集会で決議すると規定。岡部喜代子裁判長は「個々の住民の契約解除は専有部分の使用に関する事項であり、共用部分の管理や変更ではない」と指摘した。
判決によると、札幌市のマンション(計544戸)の管理組合は2014~15年、北海道電力から一括受電するため、各住民に従来の電気契約の解除を義務付ける決議をした。住民2人が反対して実現せず、別の住民1人が低額の電気料を導入できなかったとして損害賠償を求め提訴した。
事実認定を見ていきましょう。
(1) 上告人ら及び被上告人は,いずれも札幌市内の区分所有建物5棟から成る総戸数544戸のマンションの団地建物所有者である。
うわー同じマンション内での諍いですか。たまらんですね。
(2)個別に北海道電力株式会社(以下「電力会社」という。)との間で専有部分において使用する電力の供給契約(以下「個別契約」という。)を締結し,団地共用部分である電気設備を通じて電力の供給を受けている。
これは通常の契約ですね。
(3) 平成26年8月に開催された本件マンションの団地管理組合法人の通常総会において,専有部分の電気料金を削減するため,本件団地管理組合法人が一括して電力会社との間で高圧電力の供給契約を締結し,団地建物所有者等が本件団地管理組合法人との間で専有部分において使用する電力の供給契約を締結して電力の供給を受ける方式への変更をする旨の決議がされた。
ネット回線ではよくあるマンション丸ごと一括で入ってくれると安くなりますよというのと似たような感じで、電気料金もまとめて入ってくれると安くなりますという契約のようです。でも、この管理組合は無茶苦茶な決議をした印象ですが。契約の自由を制限する決議ですよ。
(4) 平成27年1月に開催された本件団地管理組合法人の臨時総会において,本件高圧受電方式への変更をするため,電力の供給に用いられる電気設備に関する団地共用部分につき建物の区分所有等に関する法律65条に基づく規約を変更し,上記規約の細則として「電気供給規則」(以下「本件細則」という。)を設定する旨の決議がされた。・・・本件決議は,本件細則を設定することなどにより団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付けるものであった。
(5)本件決議に反対していた上告人らは,上記書面を提出せず,その専有部分についての個別契約の解約申入れをしない。
そりゃそうですよね。北海道電力の関連企業に勤務する人もいるでしょうし、また別のライバル企業の可能性もあります。
それでも決議に賛成した人は値段が下がらないのは、反対する人がいるからだとして、決議に反対した人を訴えました。
最高裁の判断は、
1 法66条において準用する法17条1項又は18条1項の決議として効力を有するものとはいえない。
重要決定事項は、共有部分の変更は区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議が必要とした17条はこの場合当てはまるのか?ということになりました。確かに建物内に引き込む施設は共有施設になりますよね。だからと言って
(1)このことは,本件高圧受電方式への変更をするために個別契約の解約が必要であるとしても異なるものではない。
(2)団地建物所有者等がその専有部分において使用する電力の供給契約を解約するか否かは,それのみでは直ちに他の団地建物所有者等による専有部分の使用又は団地共用部分等の管理に影響を及ぼすものではないし,また,本件高圧受電方式への変更は専有部分の電気料金を削減しようとするものにすぎず,この変更がされないことにより,専有部分の使用に支障が生じ,又は団地共用部分等の適正な管理が妨げられることとなる事情はうかがわれないからである。
そうなんですよ。共有部分の電気代が安くなるという部分の変更であればOKだと思いますが、どう見たって個別の電気代云々はだめでしょう。
結論
上告人らは,本件決議又は本件細則に基づき上記義務を負うものではなく,上告人らが上記解約申入れをしないことは,被上告人に対する不法行為を構成するものとはいえない。
第三小法廷判決
裁判長裁判官 岡部喜代子 当然
裁判官 山崎敏充 当然
裁判官 戸倉三郎 当然
裁判官 林 景一 当然
裁判官 宮崎裕子 当然
むしろ1審の判決が何でこんなあほな?と思いますね。
上告人と被上告人はその後どうなったのでしょう。マンションには住みたくないものです。
平成31年3月5日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄自判 札幌高等裁判所
団地建物所有者等に対してその専有部分の電力供給契約の解約申入れを義務付ける旨の集会決議がされた場合において,団地建物所有者が上記解約申入れをしないことが他の団地建物所有者に対する不法行為を構成しないとされた事例
日経新聞の報道です。
マンションの管理組合が総会で、低額の電気供給サービスを一括導入するために、個別の電気契約を解除するよう全住民に義務付けた決議の有効性が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷は5日、決議は共用部分の変更や管理にしか認められず、専有部分には及ばないとして「無効」との判断を示した。
マンションは一般的に、住民が個別に電気契約を結んでいるが、このサービスは、管理組合が住民の代わりに電気を受け取る。「一括受電」と呼ばれ、経済産業省によると、推計で全国約60万戸(部屋数ベース)で導入。今後採用する場合は、一部住民が反対すると導入が難しくなりそうだ。
区分所有法は、マンション共用部分の変更や管理は住民が集会で決議すると規定。岡部喜代子裁判長は「個々の住民の契約解除は専有部分の使用に関する事項であり、共用部分の管理や変更ではない」と指摘した。
判決によると、札幌市のマンション(計544戸)の管理組合は2014~15年、北海道電力から一括受電するため、各住民に従来の電気契約の解除を義務付ける決議をした。住民2人が反対して実現せず、別の住民1人が低額の電気料を導入できなかったとして損害賠償を求め提訴した。
事実認定を見ていきましょう。
(1) 上告人ら及び被上告人は,いずれも札幌市内の区分所有建物5棟から成る総戸数544戸のマンションの団地建物所有者である。
うわー同じマンション内での諍いですか。たまらんですね。
(2)個別に北海道電力株式会社(以下「電力会社」という。)との間で専有部分において使用する電力の供給契約(以下「個別契約」という。)を締結し,団地共用部分である電気設備を通じて電力の供給を受けている。
これは通常の契約ですね。
(3) 平成26年8月に開催された本件マンションの団地管理組合法人の通常総会において,専有部分の電気料金を削減するため,本件団地管理組合法人が一括して電力会社との間で高圧電力の供給契約を締結し,団地建物所有者等が本件団地管理組合法人との間で専有部分において使用する電力の供給契約を締結して電力の供給を受ける方式への変更をする旨の決議がされた。
ネット回線ではよくあるマンション丸ごと一括で入ってくれると安くなりますよというのと似たような感じで、電気料金もまとめて入ってくれると安くなりますという契約のようです。でも、この管理組合は無茶苦茶な決議をした印象ですが。契約の自由を制限する決議ですよ。
(4) 平成27年1月に開催された本件団地管理組合法人の臨時総会において,本件高圧受電方式への変更をするため,電力の供給に用いられる電気設備に関する団地共用部分につき建物の区分所有等に関する法律65条に基づく規約を変更し,上記規約の細則として「電気供給規則」(以下「本件細則」という。)を設定する旨の決議がされた。・・・本件決議は,本件細則を設定することなどにより団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付けるものであった。
(5)本件決議に反対していた上告人らは,上記書面を提出せず,その専有部分についての個別契約の解約申入れをしない。
そりゃそうですよね。北海道電力の関連企業に勤務する人もいるでしょうし、また別のライバル企業の可能性もあります。
それでも決議に賛成した人は値段が下がらないのは、反対する人がいるからだとして、決議に反対した人を訴えました。
最高裁の判断は、
1 法66条において準用する法17条1項又は18条1項の決議として効力を有するものとはいえない。
重要決定事項は、共有部分の変更は区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議が必要とした17条はこの場合当てはまるのか?ということになりました。確かに建物内に引き込む施設は共有施設になりますよね。だからと言って
(1)このことは,本件高圧受電方式への変更をするために個別契約の解約が必要であるとしても異なるものではない。
(2)団地建物所有者等がその専有部分において使用する電力の供給契約を解約するか否かは,それのみでは直ちに他の団地建物所有者等による専有部分の使用又は団地共用部分等の管理に影響を及ぼすものではないし,また,本件高圧受電方式への変更は専有部分の電気料金を削減しようとするものにすぎず,この変更がされないことにより,専有部分の使用に支障が生じ,又は団地共用部分等の適正な管理が妨げられることとなる事情はうかがわれないからである。
そうなんですよ。共有部分の電気代が安くなるという部分の変更であればOKだと思いますが、どう見たって個別の電気代云々はだめでしょう。
結論
上告人らは,本件決議又は本件細則に基づき上記義務を負うものではなく,上告人らが上記解約申入れをしないことは,被上告人に対する不法行為を構成するものとはいえない。
第三小法廷判決
裁判長裁判官 岡部喜代子 当然
裁判官 山崎敏充 当然
裁判官 戸倉三郎 当然
裁判官 林 景一 当然
裁判官 宮崎裕子 当然
むしろ1審の判決が何でこんなあほな?と思いますね。
上告人と被上告人はその後どうなったのでしょう。マンションには住みたくないものです。