「ふるさとの話」 平成30年5月号

2019年12月11日 | ふるさとあれこれ
「アトムさんアトムさん、ありがとう。ガラポン抽選で当たったのよ、ペアチケット券が
当たったのよ」とUさんちの奥さんは大喜びです。

ひだか商人まつりの福引抽選の賞品に、劇場オープン入場券を付けちゃったのです。
来年3月末にオープン予定の江原河畔劇場のチケットです。

平田オリザさんが主宰する劇団「青年団」(東京都)が、日高の町に拠点を移してやって来
るのです。

国内外で活躍する劇作家の平田オリザさんが、豊岡市を世界的演劇祭の開催できる町にしよ
うと夢ふくらむその一歩です。

Uさんちの奥さんは「ペアチケットが何のこっちゃ分からんけれど、特賞出ましたよ~と、
カランカランと鐘鳴らされたんよ」と嬉しさ爆発した笑顔です。

アトムのうまいもの市の箱もそっちのけで、嬉しさ笑顔の奥さんでした。




ふるさとの話㊶5月号

「各界の一番が魂震えたスゴイ日本人がいた・・。大戦直前たった一人戦争を止めようと
した男がいた」というテレビ番組で斎藤隆夫の話を取り上げていました。
今月は、歴史学者・磯田道史の魂も震えたという斎藤隆夫と但馬の人たちの話です。
クイズのヒントも隠れています。

政治家・斎藤隆夫
出石町中村に「斎藤隆夫記念館・静思堂」の道路標識があります。
但馬の人ならだれでもよく知っている大正・昭和の政治家で、憲政の神様と言われた「斎
藤隆夫」の出身地です。

斎藤隆夫は東京に出た際、実業界の大物、朝来市出身の原六郎の援助で学校(現早稲田大
学法学部)に入学し学びます。
後々の政界にあっても原六郎亡きあと、その娘婿の実業家原邦造に支援を受け続けます。

政治の中に利益誘導と云うものを一切持ち込まない主義の斎藤と言う代議士を原は支援し
ます。
ともかく、見返りを見込めない斎藤に肩入れし続ける但馬の大先輩に助けられるのです。

反軍演説で除名
歴史学者・磯田が若き学生の頃、露天商から500円で買った色紙を見て感動した話です。
色紙は斎藤隆夫のものでした。
 
斎藤は国会で支那事変処理に関する質問演説をします。のちの世にいう有名な「反軍演説」
です。
痛烈に軍部を批判したことが斎藤の議員除名へとつながります。

軍に対する恐怖の中でも、勇敢にも除名決議に反対票を入れた議員は7票です。同郷福知
山の芦田均もその一人です。もちろん、大政翼賛会の流れの中で次回選挙では非推薦候補
となり、芦田、斎藤以外は落選します。

但馬の選挙民は斎藤をトップ当選させるのです。

斎藤の色紙
除名通知が届いた夜に斎藤はひとり部屋で色紙に漢詩を書きます。

 吾言即是万人声 
 毀誉褒貶委世評
 請看百年青史上 
 正邪曲直自分明

弁論は国民の声を代弁したものであり、正しかったことはいずれ歴史が証明するだろう。
正邪曲直はおのずと明らかになるだろうと書き記しました。  

この色紙を見た磯田は魂が震え、斎藤を議会に送ることに賭けた但馬の人たちの存在に涙が
出るほどに感動したと言います。
また、斎藤隆夫という人物がいたから日本人を信じることができる。斎藤隆夫を翼賛選挙で
トップ当選させた投票者がいたから日本人を信じることができると言います。

地元兵庫5区への尊敬の言葉です。

但馬の斎藤宗
斎藤を語る本は何冊か出ています。
その中の一冊「草柳大蔵著・斎藤隆夫かく戦えり」に、地元での斎藤の支持者を斎藤宗の人々
と表現しています。
斎藤隆夫を国会に送り出す剛毅な但馬人気質を述べています。

彼らは普通選挙法案の賛成演説に、2・26事件後の粛軍演説に感動して斎藤の政治活動を支
援する但馬の斎藤宗に加わった若者たちです。

但馬の人々
斎藤隆夫は良くも悪くも全く地元に利益をもたらさなかった政治家でした。
その当時も今でも非常に珍しい代議士だと言われます。

選挙区からの、ただ一度だけの出石鉄道廃線の陳情の際も「わしゃ国会議員じゃからのう」と
あまりいい顔をしなかったといいます。

氏のおかげで出来たものは何一つないのに終生トップ当選させた但馬の人々は、国にとって真
に大切な国会議員を選ぶという誇りがあったのです。
磯田の言う「魂震える話」は、但馬のみんなに向けられた讃辞だったのです。

最近、斎藤隆夫を取り上げるこんな番組が、NHKや民放で続きます。

(斎藤記念館の資料や、斎藤を語る書籍を参考に書きました)