「ふるさとの話」 令和元年11月号

2019年12月30日 | ふるさとあれこれ


ふるさとの話 十一月・60号

なまけ者の男がいます。そこに貧乏神があらわれると言う民話がありました。
今月は、兵庫県の民話集から、日高町の民話「なまけ者と貧乏神」の話を書いてみます。
クイズのヒントも隠れています。

貧乏神
むかしむかしの話です。
日高のどことは分かりませんが、ひどくなまけ者で貧乏な男がいました。

年の暮のこと、男は空腹をがまんしながらいろりの横で寝ていると、天井裏から「ズド~ン」
と何かが落ちてきました。「なな、何だ?」と男がビックリして飛び起きます。

落ちてきたのは、つぎはぎだらけの汚い服を着た貧相なおじいさんです。
頭をポリポリかきながら「わしはな、天井裏でやっかいになっとる貧乏神だ」と言うのです。

「貧乏神?、まあ、この家なら貧乏神の一人や二人いても不思議でないが、それが何しに降り
て来た?」。

宝を積んだ馬
「うむ、実はな、お前があまりにも貧乏なので、この家にはわしの食い物が一つもない。さす
がのわしも、このままでは命が持たん」、「そこで逃げ出そうとしたのじゃが、あまりの空腹
で力が入らず、うっかり落ちたんじゃ」と言います。

貧乏神はこの家から逃げたかったのです。
「そうか、おれは貧乏神も逃げ出すほど貧乏だったのか」、「逃げ出す前にお前に一つ良い事
を教えてやろう」と言って話しかけます。

「明日の朝の日の出とともに、家の前を宝物を積んだ馬が通るんじゃ。一番目は金を積んどる。
二番目は銀を積んどる。三番目は銅じゃ。そのどれでもええから馬を棒で殴ってみろ。宝は全
部お前のもんじゃ」と言います。

長者になれるぞ

三頭とも殴ってもいいかと男が聞くと「なんじゃ欲が出てきおって、三頭全部でもいいよ。三番
目の馬だけなら普通の暮らし、二番目の馬も加われば裕福な暮らし、三頭ともならお前は長者に
なれるぞ」と言います。

「だがな、最後に通る四番目の馬だけは殴るなよ、わしが出ていくための馬だからな」と男に伝
えます。

日の出を過ぎて男は目を覚まします。いつものなまけぐせで朝寝坊してしまいます。
しまった~と言いながら、家の前を見ると宝物を積んだ馬です。

一頭目はとっくに通り過ぎたことも知らず、「金の馬だ~」と言って、そこにあった物干し竿で
叩こうとします。
竿が長すぎて木の枝に引っかかってしまいます。その間に銀の宝物を乗せた馬は、ゆうゆうと通
り過ぎていきます。

失敗ばかり
「しまった。まあいい、残りの銀と銅の馬を殴って、おれは大金持ちになれるぞ」と叫びます。
「次は短い棒だ」と言って台所から『すりこぎ棒』を持って待ちかまえます。

間もなく、家の前を通り過ぎようした銅の宝物を積んだ馬を殴ります。いくらなんでも、すりこぎ
棒では馬の頭に届きませ。
「しまった、またしくじったか。今度はもう少し長い棒でと、次の馬にはてんびん棒で殴ります。

やっぱり貧乏に
次にやってきた馬です。
「おかしいな、何も荷物を積んでいないぞ。まあいいや。銅のはずだからこれで普通の暮らしだ」
と、てんびん棒を馬の頭めがけて「ゴチーン」と振り下ろします。
「やった~、銅の馬をしとめたぞ」と男が大喜びしていると、それは荷物を積んでいない、四番目
の馬だったのです。

天井裏から貧乏神が降りて来てがっかりします。
「ああ、なんて事を。わしが乗るはずの馬を殺しおって、せっかくこの家から出られると思ったの
に、わしの乗る馬を殴るなんて」、「仕方がない、これからもお前の所でやっかいになるぞ」。

こうして男は、天井裏の貧乏神と一緒に、それからも貧乏な暮らしを続けたということです。

(兵庫県の民話集を参考に書きました)