散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

Schneechaos

2010-12-19 23:00:36 | 映画の話












今年は大雪に始まり大雪に終わるらしい。
飛行機の飛ばない飛行場には人が溢れるばかりで、できることなら鉄道に乗り換えることを薦め、ドイチェバーンは出来るなら旅行を取りやめた方が無難であると呼びかけていた。
幸い私は遠くに出かける必要も計画もなし、高みの見物で雪景色を楽しんでいることが出来るわけだけれど、年末休暇の旅行に出かける人は少なくないわけで、実に気の毒なことだ。
アウトバーンも事故は多発するし、いたるところで渋滞がおきてしまうのでよろしくない。
とはいえ、見慣れた景色が雪衣を纏うと美しくて得をした気分になる。







映画メモ

Die Eleganz der Madame Michel(Le herisson)というフランス映画を見た。原作は「L'Élégance du hérisson」という小説の映画化。
スノッブな家族の中で日常に辟易している自殺願望の少女、高級アパルトマンの管理人の中年女が主人公達だ。
管理人のルネは一見鈍重なおばさんの振りをしながらトルストイや谷崎潤一郎を読んでいる。読書家の彼女の部屋には本がうずたかく積まれている。
自殺願望の少女パロマは賢すぎる子供であり、大人の嘘を見抜き失望している。家族たちはそんな彼女の姿が"見えない”のだ。
たびたび母親が「何処にいるの?なぜいつも隠れているの?」とパロマを探している声が聞こえる。
パロマは部屋の隅に息を潜めているわけだけれど見つからない筈が無い。母親には彼女が”見えていない”のではないか?そんな風に思えてくる。
見えない存在としてまたルネがいる。高級アパルトマンの住人達は彼女に毎日出会っているはずなのに見ていない。住人達には彼女は「役目」であって「個人」ではないのだ。
階級の違うみすぼらしい中年女なぞには顔は無い。ある意味パロマもルネも状況も立場も違うが似た物同士だ。
そして彼らはお互いを仲間として発見し引き合う。パロマはルネの外見と無愛想さの裏に隠れた彼女の優雅さと美への感性を嗅ぎつけている。
話の内容を書くつもりは無いけれど、この映画はなかなか面白く、不思議な余韻を残した。
原作も読んでみたい。

「幸福な家庭はどれもよく似たものだが、不幸な家庭はみなそれぞれに不幸である」(アンナ・カレーニナ)