ブクログより
世界登山史上最大199人の犠牲者を出した八甲田山雪中行軍遭難事件を題材にした小説。
120年前の痛ましい事件を歴史雑誌の特集として組むことになり、編集者が現地に赴き、調べるうちにある疑問を抱く。
厳冬の八甲田山へ向かわせた陸軍の本当の目的は何だったのか。
そしてもう一つ、遭難死した兵士の数が一人足りない・・・
何かに導かれるように現地で取材を進める編集者はついに「稲田庸三一等卒」の存在を発見する。
本書は、編集者の取材の目線と、稲田一等卒の当時の様子によって話は進んで行く。
遭難兵の数が合わないという着眼は面白くて興味深いものだが、陸軍の本当の目的だとか、兵士の数が足りなかった本当の理由など、少し陳腐で拍子抜けしてしまう。
取材をするにあたり、現地のガイドに案内してもらって当時の行軍の道をたどったり、慰霊碑を見て回ったり、また稲田兵士の目線による雪中行軍の差し迫った絶望的な行軍の様子などは鬼気迫り胸を打つものがあるが、
離婚問題を抱えた編集者や、ファッション雑誌からイヤイヤ歴史雑誌に移ってきた編集長、また捉えどころのない地元のガイドなど、誰一人として共感できる人物がおらず、物語にのめり込めなかった。
唯一心を寄せられるとしたら、過酷な運命にさらされて理不尽な死に方をした200人の人たちかな。
特に最後の終わり方は何でしょう。
えっ!!なんでそんなこと最後に出してくる?そんな大事なこと?それが一番言いたかったこと?・・・
と、ちょっと残念な読後でした。
囚われの山 / 伊東潤