本業が忙しくてしばらく更新が途切れていましたが、今日からまた再開します(「一日一言」シリーズをやめたのは、この本業との兼ね合いの問題もあります。あれを続けるとなると、なかなか大変ですので)。ただ、今日もあまり長い記事を書くことはできませんので、ひとまず、文献の紹介だけにとどめます。
大阪市で先日、橋下市長が市内で開設予定の2つの小中一貫校を「スーパー学校」にするという方針を出したことは、このブログでも伝えたところです。また、それに対して私は、人口減少や少子化ということから、過疎地域などで行われているやむをえない小中一貫校化には妥当性があると思うが、私立学校並みの競争の教育を行うような小中一貫校化(おそらくこちらが「スーパー学校」化)には反対であるという意見も、このブログに書きました。
それで、いま、日本全国各地で実施されつつある小中一貫校設置のうち、この「スーパー学校化」を目指す側の動きについては、次の本などでかなり問題点が指摘されています。
![]() |
これでいいのか小中一貫校―その理論と実態 価格:¥ 1,680(税込) 発売日:2011-09 |
この本を読むと、たとえば「4・3・2」型の学年の区分で小中一貫教育を行うことには、まだ教育学的・心理学的に見ても「そのほうがいい」とする結果が得られていないこと。むしろ、従来小学校のなかでは高学年としてリーダーシップをとってきた5・6年生が、さらに上の中学生たちといっしょになることで、そういう機会が得られなくなること。5・6年生の頃から中学生並みに教科担任制や中間テスト・期末テストなどが実施され、学力獲得に向けての競争やそれに対する準備学習がすすんでいくこと、などなど。学校教育のあり方として、子どもたちにとって本当に適切な学習環境に小中一貫校がなりうるのかどうか、さまざまな疑問があることがこの本では述べられています。
あるいは、施設一体型で小中一貫教育を行っている学校では、小学校低学年の子どもと中学生とを同じ時間帯に運動場を使わせるわけにいかず、何らかの形で結局「すみわけ」ざるをえなくなること。子どもの数が千人を越えるような大規模な施設一体型の小中一貫校の場合、運動会などの学校行事の運営にもさまざまな支障が出ること。自治体の経費節減の観点から学校統廃合をすすめるなかで施設一体型小中一貫校が設置されるが、その新しい校舎の建設等に多額の支出があって、必ずしも節減効果があるとは限らないこと。そして、施設一体型の小中一貫校の設置が、その学校周辺の地域の都市再開発構想などと結びついている可能性もあること(たとえば「よりよい教育環境」などをウリにして、マンション建設などを誘発しようとか)。このように、実際の学校運営面や自治体の教育行政のあり方として、小中一貫校(特に施設一体型)の設置が妥当かどうかも、この本では示されています。
今後、大阪市内で施設一体型の小中一貫校が設置され、そこが「スーパー学校」になるのであれば、このような本で指摘されている課題をクリアしていく形でなければ子どもにさまざまな支障が出るでしょう。また、そこがクリアできないのであれば、「やめたほうがよかったのでは?」ということになると思います。この本、ぜひ、小中一貫校の設置に関心のある方には読んでいただきたいです。
ちなみに、ふと思ったのですが、大阪市内の北東のはずれ、たとえば東淀川区の井高野地区あたりの小学校1年生が、ランドセル背負って朝早くから、満員の市営地下鉄(将来、民営化されるかも?)と市バスを使って、大阪市内でも最南端とでもいうべき矢田地区の小中一貫校に通う。あるいはその逆に、川一本隔てたら堺市というような、たとえば大阪市立大学(これも将来統合される?)のあるJR杉本町駅近辺の小学1年生が、やっぱり早朝からランドセル背負って、満員電車に乗って、大阪市内でも北の端くらいになる中島中学校区の小中一貫校に通う。この光景、ちょっと想像しただけでも、ぞっとしませんか? 「子どもの通学の安全」や「子どもの成長と心身の負担」という観点から見た場合、いいんですかね、これって・・・・? 両校の通学区域を大阪市内全域に広げたら、こういうことって起こりうるんですけど・・・・。