http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/20160505-00057361/
(「逃げる」という選択肢 中学生の自殺 17年ぶりの年間100件超に向き合う
内田良 | 名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授
2016年5月5日 9時30分配信)
書いているご本人はいたって「善意」のつもりなんでしょうし、また、自分もこれに近いことはすでに別のところで書いていたりもするのですが・・・・。
たとえば、国民教育文化総合研究所・子どもの権利検討委員会『いじめ防止のチェックポイント―その考え方と活用方法―』(アドバンテージサーバー)の28~33ページに「地域に居場所・逃げ場をつくる」と題した私の文章が載っています。
ここで私は、今の子どもたちの多くが(さらには教職員などのおとなの多くが)「学校的なもの」に時間・空間・仲間が拘束されていること、そこから「解き放たれる」場面をどういう形でつくるのか・・・・という観点から、NPOなど学校外の人々に接触し、「外の風」に触れ、「自分を解き放つ」機会を増やすことなどについて述べました。
また、そういう観点から、いじめ防止対策推進法の「体験活動の充実」等々に関する規定を読み込んで、積極的に活用する必要もあるのではないか・・・ということも、この文章で書きました。
そして、そういう自分の主張の背景には・・・・。
自分がかつて1990年代半ばに大阪市内で不登校・ひきこもり経験者の居場所づくり活動をしたり、その当時の仲間が今、大阪府内のいくつかの高校で「中退」防止の観点から居場所カフェづくりの活動をしていること。
あるいは、兵庫県川西市・子どもの人権オンブズパーソンの調査相談専門員として、実際にいじめ問題等々に悩む子どもの相談等に関わったり、あるいは、チャイルドラインのスタッフ研修等に関わったりした経験などが反映しています。
なにより、私自身が1984年、中3の5月の連休明けから「不登校」になった者でして・・・・。
そういう「実務」及び「実体験」をやった経験からこの記事について言わせていただきますと・・・・。
「長期休み明けに子どもの自殺が多い・・・。こんなもん、前々からわかってるわ!」
「学校からの逃げ道を・・・・なんて話、私ら不登校関係の市民活動やってきた人ら、90年代半ばから言うてるわ!」
「それでもなお、この現状。この実情や。ほんとうに苦しい状況にある子どもにどないしたら、私らから彼ら彼女らに必要なメッセージが届くのか。そこの部分で私ら四苦八苦してるねん。そこについてどないしたらええんか、いっぺん、あんた具体的に言うてみい!」
というのが、上記の記事に対する私の率直なコメントです。
言うているご本人は「善意」のつもりで、みなさんに注意を呼びかけるつもりなんだろうと思いますが・・・。
呼びかけられた側は「ほな、どないしたらええねん?」と思うしかない。
特に、まじめにこの問題について考え、それを防ぎたいと最前線で苦闘している人々にとってみれば、「ただ、プレッシャーを強めただけ」。
そういう一文だと思いました。
<追記> このネット配信記事って「何かに似てる文体だな」と思ったら、この文体って、何か子どもの重大事故・事件が起きたときに官公庁が学校や保育所等々の現場や保護者などに注意を呼びかける文体に似ているな~って。「私たちは注意を呼びかけましたよ。あとはあなたたち、気をつけてくださいね」と言っているだけのような気がして・・・・。「書いたご本人は善意でそう言っているのかもしれないけど、中身的にはあまりたいしたことないような、こういう文体での重大事故・事件の防止の呼びかけに、私はもう、いい加減、うんざりしている。ほんとうに現場でどうすればいいのか、そこを考えたいのだ」というのを、あらためて感じました。