不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

どこが新しい施策なの?-「教育基本条例案」への一日一言(14)-

2011-12-18 19:42:05 | アート・文化

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111218k0000e040145000c.html (橋下新市長:近代美術館計画を白紙に「しょぼいのいらん」:毎日新聞ネット配信記事2011年12月18日付け)

そうですか、建設予定中の美術館の計画が「しょぼい」と判断されるなら、一から練り直しになるわけですね。だとしたら、「教育基本条例案」についても、多くの市民から批判を招いているわけですから、「こんなしょぼい条例案はいらん」とか言って、一から練り直していただきたいものです。

それから、この記事ですが、「もうちょっと、マスメディアで取材されてる方、勉強したら?」と思いました。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111218ddm002010074000c.html (橋下氏:就任前から改革案続々、19日大阪市長に:毎日新聞ネット配信記事2011年12月18日付け)

実はこのネット配信記事には添付されていないのですが、我が家に届いた毎日新聞本紙のこの記事を見ると、こども青少年局関連の橋下氏の改革案として、保育・子育て支援関連の「待機児童の解消(ゼロ化)」と「児童虐待防止対策の強化」をあげていました。また、教育委員会関連の改革案としては、「学校選択制の導入」と「中学校給食の実施」をあげていました。

しかし、私に言わせると、「どこが新しい施策なの?」「こんなの、前の市長期からの継続か、前より悪くなる施策じゃないの?」という感じ。そのことは、ちょっと保育や子育て支援、教育について勉強すれば、すぐにわかります。

たとえば、鳴り物入りの施策になりそうな「学校選択制」については、東京都品川区がすでに導入していますが、いろいろと問題点も浮上しています。そのことは、佐貫浩『品川の学校で何が起こっているのか』(花伝社)や嶺井正也(編著)『転換点にきた学校選択制』(八月書館)などでも指摘されているところです。

あるいは、「中学校給食の実施」については、いままでもさんざんこのブログで指摘してきましたが、「そもそも、大阪で今までやってこなかったほうが、全国的に見たら問題」という側面があります。また、今から4~5年前、一連の施策見直しのプロセスで、大阪市内の公立中学校で実施してきた給食を廃止してきたのは、いったい誰だったのか。あるいは、そのときに大阪の市議のなかには、「弁当をつくってくるのは親の愛」みたいな発言をした方もいるとききます。そのような状況のなかで、平松市長期に公立中学校での昼食の配達サービスみたいな事業をはじめたのではなかったのでしょうか。今までの二転、三転するような、学校給食に関する大阪市の施策の点検、反省抜きにして、こんな施策を安易に提案してほしくないですね。

さらに、いまどきどこの自治体首長でも、保育や子育て支援施策に関しては、まずは保育サービスの拡充による「待機児童の解消」くらい、誰だっていいます。それがなかなかうまくいかないのを、どのように行うのか、そこが首長のリーダーシップ、政策提案でしょう。役所の担当者に「待機児童ゼロの方法を考えてくれ」というだけなら、「誰だって言える」程度のことです。

そして、「児童虐待防止対策」。実は大阪市や大阪府というのは、今までだって、全国に先駆けて虐待防止の取組に全力を挙げてきたこと、この記事の書き手はおそらく知らないのでしょう。たぶん、今の「介入型」とよばれるケースワークの方法などは、大阪市や大阪府の児童相談所のみなさんが、90年代以来、いろんな苦労のなかで積み上げてきたものです。

また、大阪市は去年の今頃、「大阪市児童を虐待から守り子育てを支援する条例」を定めました。詳しくは下記を見てください。これ、平松市長期の実績の一つです。

http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000106580.html

このような子どもの虐待防止や子育て支援を積極的に行う条例を持つ自治体である以上、大阪市は誰が市長になろうが、子どもの虐待防止の取組を積極的にやらなければいけないのであって、逆に「さぼっていれば、市民が市長を批判しなければならない」のです。

だから、私などは、「こんな記事書いていていいのか?」とも思いますし、「これのどこが新しい施策なの?」と思うわけです。もうちょっと、マスメディアの関係者はきちんと勉強して、橋下新市長の繰り出す施策を批判的に論じてほしいな、と思いました。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« いよいよ「正体」を見せてき... | トップ | いよいよ始まりましたね、橋... »
最新の画像もっと見る

アート・文化」カテゴリの最新記事