できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

「何から削るか?」に現れる価値判断

2008-04-20 13:22:45 | ニュース

先日からおおさか識字・日本語センターやヒューライツ大阪の存続に関して、私宛に協力の呼びかけのメールが届いたので、その呼びかけ文を直接ブログに貼り付けたり、あるいは、PDFファイルでダウンロードすることができるようにする形で、ささやかな協力をさせていただきました。今後も何か、お手伝いできることがあれば、遠慮なくおっしゃってください。

さて、今月ある雑誌に書いた文章で、今の大阪市・大阪府の行財政改革にあらわれているのは「不利益分配」の政治だ、ということを書きました。従来のように社会のいろんな層に利益誘導を行なうことが、もはや財政難などの理由によりできなくなった国や地方自治体の行政は、財政再建等の必要から、既存の施策の縮小・廃止、あるいは各種の負担増に向けて、マスメディアなどを通じてのリーダーのパフォーマンスを駆使して、それへの住民(国民)の同意を取り付ける取組みを行なう・・・・。これがある種「不利益分配」の政治だ、というものです。ちなみに、この話は私のオリジナルではなく、高瀬淳一『「不利益分配」社会』(ちくま新書)で述べられていた話を、私なりに要約したものです。

しかし、私はこの『「不利益分配」社会』という本を読んで、実は著者とは別の思いを持ったのです。それはどういうことかというと、たとえ今の国や地方自治体行政には財政再建等の必要性があるからといって、予算の何をどう削るか、何から施策を縮小・廃止するかについては、その政策立案者や行政のリーダー、施策担当者などの価値判断が現れるし、また、その政策提案や行政のリーダーの主張に同意を与える国会や地方自治体議会の各議員の価値判断があわれる、ということです。

たとえば財政再建をすすめるために、過去に多額の公的資金をつぎこんでもうまくいかなかった大型宅地開発や工場団地の建設、これに関する地方自治体自体や自治体の外郭団体の累積債務をなんとか整理する、という道もあるでしょう。その一方で、住民生活に直結する各種の福祉サービスや、市民活動などへの助成金から削減していくという道もあるでしょう。そのどちらの道を選ぶのか。つまり、誰にどのように「不利益」をつかませるのかというところには、行政のリーダーや政策立案者の価値判断が何らかの形で反映する、ということです。

さらに、もう少し踏み込んだことをいえば、「財政再建」を理由とした「不利益分配」といっても、その「不利益」はある社会の構成員に公平感を抱かせるように分配されるかどうか、という問題もあります。一見公平に、全員一律に医療や福祉面での負担増を求めても、たとえば高齢者や障害・病気のある人、子育て真っ最中の家庭(特にひとり親家庭)、失業中の人、パート・アルバイトで生計を立てている人と、高額所得者などとの間では、負担感は全く違うはずです。こういった人びとの負担感の違いや、その背景にある社会的に不利益を被りやすい層の存在などについて、政策立案者や行政のリーダーがどういう認識をしているのかも、「不利益分配」のあり方を左右します。

そう考えたときに、たとえば、あとでリンクをはっているような文章を書く人が、ある地方自治体の行財政改革の「特別顧問」だとか、あるいは、「改革推進会議」の委員長などを務めてきたということについて、このブログを見ている人たちがどう考えるのか。とても興味深いところです。

少なくとも私は、この人のいう財政再建や行政改革の必要性、場合によればその手法まではある程度理解できたとしても、たとえば、

「医療とは不思議なもので医療水準が向上すればするほど病人が増える。検査で早期発見される。その上、弱い遺伝子を抱えた人たちが生き延びる。世代を重ねるごとに人類は病弱になるという説もあるほどだ。とにかく手間とお金のかかる病人が増えていく」

「長生きは個人と親族にとってはうれしいことだがマクロの行政コストという意味ではバッドニュース」

「医療は別だが福祉や介護の分野では、かつての徴兵制のように週に一定時間、手伝うことが義務化されるのではないか」

など、こうした記述にあらわれる人間に対する見方には、とてもついていけません。

※ご参考までに、「福祉と徴用」という文章を読んでください。

<追記>2008年4月30日(水)

先ほどこの「福祉と徴用」という文章を読もうと思って、このブログにアクセスしてみたら、「サーバーが見つかりません」という状態になっていました。ブログ自体を削除・廃止したのでしょうかね? ただ、この記事がどういうものであったのかは、私、プリントアウトして、すでに何人かの方に配りました。今後、このブログの書き手がどう動くのか、引き続き、注意深く見守りたいと思います。

<追記2>2008年4月30日(水)

どうやら先のリンク先(ブログ)、復旧したようです。今はアクセス可能です。

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