できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

これは認めてはいけない。

2008-04-20 15:27:54 | ニュース

先ほどある学会のメーリングリストを経由して、下記のような要望が送られてきました。「転送・転載歓迎」ということだったので、団体の電話番号・所在地のところだけ削除して、メールの内容をそのまま掲載します。

このブログが今まで扱ってきた青少年施策や子ども施策とは少しズレますが、今の大阪府の「財政再建」がどういった層の人びとにしわよせをもたらそうとしているのかがわかります。また、「人権施策」ということでいえば、当事者にとってほんとうに重要な施策が削られるということで、私としても「これは認めちゃダメだ」という思いがあります。その抗議のつもりで、下記の内容を掲載します。

それにしても、今日、別のところでも書いたように、「とにかく手間とお金のかかる病人が増えていく」とか、「長生きは個人と親族にとってはうれしいことだがマクロの行政コストという意味ではバッドニュース」というような価値観で、今の大阪府の「財政再建」が進められようとしているのではないか。下記の要望からは、そんなことを感じてしまいます。

くり返しいうように、私としては、「財政再建」の必要性は認めるとしても、その再建プランをつくる人びとがどういう価値観にもとづいてそれをすすめているのか、とても気がかりでなりません。もしもそんな価値観をふまえて「財政再建」が進められようとするのであれば、それは「おかしい、問題だ」と言いたいです。

<以下、メールの内容の転載>

「精神障がい者権利擁護システム事業(精神医療オンブズマン制度)」の存続に関する緊急要望書

NPO大阪精神医療人権センター

 大阪府が4月11日に発表した「財政再建プログラム試案」に「精神障がい者権利擁護システム事業」の廃止案が盛り込まれました。しかし、本事業は、府が独自に実施している施策であるところ、その中身は試案の「改革の内容」(目標額設定の考え方)にある分類(イ)「府民の生命に関わる緊急性・重要性の高い事業」に該当し、今後より一層強化することが求められているものですので、当センターは本事業の存続を強く要望します。

 以下、本事業創設の経緯および本事業が分類(イ)に該当する根拠について述べます。

【本事業創設の経緯】

 「精神障がい者権利擁護システム事業」は、1997(平成9)年に大和川病院事件がマスコミ等で大々的に報道され、同病院における精神障害者に対する重大な人権侵害の実態が明らかになったことを受けて創設されたものです。大阪府および精神科医療関係者は、大和川病院事件を深く反省し、二度とこうした事件を生じさせないために、新たな、より強固な権利擁護システムの確立が不可欠であることを確認しました。そして、精神保健福祉法上の機関である大阪府精神保健福祉審議会において議論を取りまとめ、同審議会は、2000(平成12)年8月に「精神病院内における人権尊重を基本とした適正な医療の提供と処遇の向上について(意見具申)」を大阪府知事に提出しました。これに基づいて本事業内容が具体化され、2002(平成14)年9月、同審議会の承認を得て、2003(平成15)年度から本事業が正式にスタートし、現在に至っているものです。

 本事業は、13機関(大阪府、大阪精神科病院協会、大阪精神科診療所協会、日本精神科看護技術協会大阪支部、大阪精神保健福祉士協会、大阪弁護士会、大阪精神障害者連絡会、大阪精神医療人権センター、大阪府精神障害者家族会連合会、大阪府社会福祉協議会、大阪府保健所長会、大阪市、堺市)と学識経験者で組織する「大阪府精神障がい者権利擁護連絡協議会」(事務局:大阪府こころの健康総合センター)の下で運営されており、過去5年間にのべ76病院を訪問し、院内での権利侵害の疑いがある事例の改善等に多大な貢献をしてきています。

【本事業が分類(イ)に該当する根拠】

 精神科医療では、その閉鎖性が常に問題となり、数多くの権利侵害事件が起こってきました。それを防ぐために、行政監査や精神医療審査会等のチェック機能が法的に位置づけられています。しかし、大和川病院事件の教訓は、法に基づいたチェック機能だけでは権利侵害の防止には不十分である、ということでした。これは先に述べた府の精神保健福祉審議会の場でも確認された内容です。

 当センターは、本事業が始まる以前から、大阪府下の精神科病院に入院している精神障害者の人権を擁護するための活動の一環として、精神科病院を訪問し、第三者の視点でその病院内の療養環境を視察し、行政監査や審査会では見落とされがちな人権侵害の疑いのある事例につき病院側に改善を求め、入院患者の声を聞く活動を続けてきました。ただ、これらの活動を通じて明らかになった改善を要する事項について、当センター、当事者団体、家族会、サービス提供者側や行政が同じテーブルについて議論し、改善の方向を検討することのできる場はありませんでした。

 しかし、この病院訪問活動が府の事業として公的に保障され、上記13機関と学識経験者で構成される連絡協議会のもとで本事業が運営されることにより、それが可能となり、その結果、本事業は、「府民の生命に関わる緊急性・重要性」を有する多くの権利侵害事例を未然に防止し、療養環境の改善をもたらすなど大きな成果を挙げてきました。

 本事業により改善された事項の大半は、法に基づくチェック機能の役割を与えられている行政監査や審査会の審査では、残念ながら見落とされてきたものです。

 本事業がスタートしてから5年間で、大阪府内の精神科病院入院中の患者が人としての誇りを失わずにすむ具体的な改善がなされてきました。本事業によるこれらの改善は、治療機関が「こころの安定と自信の回復」の場として機能できるようにし、結果として長期入院の減少および医療費の削減にもつながっています。

 また、本事業による病院訪問活動で出逢う入院患者には、大阪府の退院促進事業などの紹介や地域の福祉施策ができていることを伝えるなど、本事業は、病院外から病棟内への情報伝達役の一部も担ってきました。本事業は、今後より一層強化するよう求められることはあっても、その役割が小さくなることはありません。

 このように本事業は、年間約160万円弱の業務委託料をはるかに超える効果を生み出してきています。何よりも本事業が入院中の患者の尊厳を尊重し、「府民の生命に関わる緊急性・重要性」を有する権利侵害事例を未然に防止するなどの成果をもたらしたことは、高く評価されるべきです。

 本事業は、入院中の精神障害者の権利擁護システムとしては、わが国で初めての制度であり、国の「精神病床等に関する検討会」でも数度取り上げられるなど、全国的に高い注目を集めています。

 また、本事業は、2006(平成18)年12月に国連総会で採択された障害者権利条約の趣旨にも合致していますので、より一層強化発展させることが求められており、廃止はその趣旨に逆行するものです。

 以上のとおり、本事業は、その創設の経緯、目的、実績等のいずれの点からしましても、分類(イ)「府民の生命に関わる緊急性・重要性の高い事業」に該当しており、かつ、今後更に強化すべきものであることが明らかですので、当センターは、あらためて、本事業の存続を強く要望致します。

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