二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

花粉症に思う 3 ~森林からの考察~

2008年04月10日 | 花粉症
『いのちの森を生む』 宮脇 昭 著より

≪人間も他の動物達と同様、生態系の一員である。物質的な欲望がどれだけ満たされたとしても、人間がこの地球上に生かされている限り、実は生態系の主役である緑の寄生者でしか、持続的には生きていけない。緑がなければ、健康な体も、感動する心も、土地固有の文化を創造するための輝ける知性も、そして遺伝子も、危険な状態に陥る可能性が深まる。緑の植物、とくに緑が濃縮された本物の森こそ、人間の命と心の基盤である。しかし、その本物の森が現在、激減している…中略…これまで日本では家を建てる材木をとるために、長い間スギ、ヒノキ、マツ、戦後はさらにカラマツなどの針葉樹の単植造林がさかんに行われてきた。美林といへば、このように山の斜面にとんがり帽子が整然と並んでいる針葉樹の管理された人工林を指していた。私が言う「本物の森」とは、こうしたものではない。「土地本来の森」すなわち生態学的に見て、その土地本来の自然林に近い種の組み合わせを維持している森のことをさしている。≫

今回は、花粉症からは話がそれるかもしれませんが、これを機会に日本の森に思いを馳せてみましょう。

≪草や木はどこでも見られるので、植物は好きなところに自由に生えているもの、それぞれ勝手に生育していると我々は考えやすい。しかし動く能力のない植物の社会にこそ、最も厳しい生物社会の掟がある。日本の森には、家を建てる材木を採るために植えられてきたスギ、ヒノキ、マツなどの針葉樹の人工林。また集落の周りに広く見られる、長い間、薪炭林、下草刈場として使われてきた落葉広葉樹のクヌギ、コナラの里山の雑木林。そして、その土地本来の樹木で構成された比較的自然に近い鎮守の森がある。生物社会の掟とそれを支える環境とのかかわりを見るとき、たとえ個人の変動はあっても、数百年から数千年も多層群落の森のシステムとして、人間の管理なしに進んできた森こそが本来の森といえる。鎮守の森に象徴される土地本来の古里の森は、まさに動く力のない植物が、あるゆる立地環境と対応し、多様性を保った、最も安定した森の姿であり、極めて強い緑の自然の表現力である。≫

日本を各地を見渡しても、世界に目を向けても、厳密なる原生林(バージン・フォレスト)は全くないと言っても過言ではないくらい自然は失われているそうです。未来の子供たちのためにも大切に考えて、行動し、持続的で健康で安心な社会生活を送れるようにしたいものです。

≪この所、大きな問題となっている花粉症も、あまりにも広く植えられてきた針葉樹林拡大造林政策の結果、スギ、ヒノキが広面積にわたって大量に植林されたところに根本の問題があるのではないかと思う。花粉対策として、例えば花粉を飛ばさない品種を探す、というのも一つの方法かもしれない。しかし生態学的な正攻法を言うならば、潜在自然植生を基本にしてできるだけ土地本来の照葉樹林、夏緑広葉樹林を回復・修復・創造することが求められる。そして、針葉樹が本来生育していた尾根筋、急斜面、水際の弱い自然域は針葉樹を残す。また、必要があって植林する場合もスギ、ヒノキ、カラマツの単一植林ではなく、昔の林業経営と同じように土地本来の広葉樹林を残し、少し遠慮しながら植える。工場生産と同じような画一的な方法で推し進められた戦後の針葉樹拡大造林は、生態学的には率直に言って、反省すべき点も少なくなかったと言わざるを得ないが、立地条件がよく、しっかり管理できるところは、今後もスギ、ヒノキ、カラマツも必要に応じて植えられるべきであろう。≫

花粉症の問題ばかりではなく、国土の保全、国民の安全、水源涵養の意味でも森を守ることは重要なことです。関東大震災や阪神・淡路大震災の時には、潜在自然植生に従い植えられていた木が多く、それらに囲まれた公園や庭、住宅地では地割れや家屋の倒壊、火災からの難を逃れたことが報告されています。これは大地に深くおろした根が地面を支えたこと、また、水分を多く吸収しているためすぐには燃え尽きることがなかったことが、私たちを災害から守ってくれたようです。

木が、ホンモノかニセモノかは、地震、火災、台風など災害の時に現れるようです。人間もその人の本当の人間性が出てくるのは、追い込まれた時です。やはり、人間も自然の一部であるということでしょうか。

花粉症を森林という観点から見つめてみました。

最後に、花粉症に対して鍼治療はよい効果が現れますので、花粉症の症状でお辛い方は、お近くの東洋医学研究所グループの鍼灸院へ一度足を運んでみてください。
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花粉症に思う 2 ~森林からの考察~

2008年04月10日 | 花粉症
林野庁はホームページで、スギの植林について国土保全、地球温暖化防止、水源涵養など公益的機能を持っているので、伐採すればよいという問題ではないと書かれてありました。果たしてそうなのでしょうか。

地球温暖化防止という観点では、「スギは二酸化炭素の吸収量が多い樹種の一つ」と説明してありました。しかし、スギでなければいけないのでしょうか。何でもかんでも温暖化防止に結びつけるという短絡的な考えでは国民は納得しないのではないかと思います。

スギは樹齢40年ほどで伐採されます。その3分の2は途中の段階で間伐されます。樹齢30年を過ぎた辺りから花粉を盛んに飛ばすようになります。70~80年代にスギの人工林面積が急増したことを考えると、夏が暑いとかという環境的な要因よりも、やはり花粉を飛ばすスギ自体が多く、手付かずのスギ人工林が多くなれば飛散量も増えるというものです。ちなみに、間伐によって1ヘクタールあたり66%のスギの本数を減らすことができるそうです。

また、国土保全、水源涵養といいますが、台風や大雨において、がけ崩れなどの災害が多いのはスギやヒノキなど単一植林を行った場所であるという事実もあります。日本の国土にもそれぞれ潜在自然植生(その土地にあった木や草)というものがあり、そこに適しているから地中深く根を張るそうです。また、針葉樹、常緑広葉樹、落葉広葉樹など多くの種類の木々によって森が形成され、その落ち葉や倒れた木が森の土地に水を吸収させるために働いているのです。自然の森は、スギ単独、ヒノキ単独では存在せず、その林の土地は疲弊し、根もはらず、落ち葉も落ちず、間伐もされないので、水を吸収することなく雨は全て川へ流れ出てしまいます。

スギやヒノキを植林することは、その土地の植生や様々な観点から見て判断されなければ、これからも花粉症の患者さんは減ることがないでしょう。

国としても様々な対策を行っているようです。その中で花粉の出ないスギを作るというものがありますが、これを人間に例えると精子を作らない男をつくるということになるのではと考えてしまいます。人間の都合でこのようなことを考え、実行することは、人間自らが大自然の生態系を崩してしまっているような気がして仕方ありません。また、薬剤により雄花を減少させるという技術が開発されているそうですが、何か人間の世界を見ているようで怖くなってきます。

当院にも花粉症で来院される患者さんもいれば、違う疾患で治療にきているが花粉症を持っている患者さんが多くいらっしゃいます。師匠である黒野先生は免疫の研究も行っており、鍼治療は適度な刺激により免疫を活性化することを確認しております。低下しているものに対しては活性化し、過剰なものに対しては制御するということだと理解しています。

というのも、鍼治療により多くの患者さんは、症状が軽減したり、消失したりするからです。患者さんが「グスッ」と鼻をすすっていても話をお聞きすると「去年よりずいぶん楽だよ」「ほとんど症状はないよ」「気分がいい」という答えが返ってきます。

鍼治療は確実に”花粉症”に対しては免疫系に作用を及ぼして、症状軽減に身体を推移させるのだな~と最近実感しています。
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花粉症に思う 1 ~森林からの考察~

2008年04月10日 | 花粉症
現在、日本で花粉症に罹っている人が約2000万人と推定されています。今はスギ花粉の時期ですが、それぞれアレルギー反応を示す花粉があり、その時期になると、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、結膜炎、のどのかゆみを発症し、ひどい人は体のだるさ、頭痛、下痢などの症状を発症する現代病です。

花粉が体内に蓄積する量が多くなり、この異物である花粉を排除するために働く、免疫システムの一翼であるIgE抗体の量も多くなります。この免疫システムが花粉に対して過剰に攻撃をしかけることが鼻や目、喉の粘膜を刺激し、つらい症状を発症させます。

花粉症の原因となる樹木・草花として、
樹木:スギ・ヒノキ・ハンノキ・ブナ・マツ・イチョウ
草花:カモガヤ・オオアワガエリ・ブタクサ・カナムグラ・ヨモギ

などがあります。

近年はディーゼル排ガスから出る微粒子(DEP)が大きな花粉とひっついて存在しており、これが花粉症発症に大きく関わっているという報告もあります。また、食生活の変化による腸内環境の悪化、遺伝的要因、コンクリート建設や道路など住環境の変化など、花粉症発症のメカニズムははっきりしていません。

しかし、花粉症発症の多くを占めるスギ、ヒノキなどに関して言えば、これは花粉の元となる木が多く植林されているからであることは紛れもない事実でしょう。そのような観点から、森林について少し考えてみたいと思います。

日本の森林面積は2512万ヘクタールで国土面積の7割を占めます。うち人工林が1036万ヘクタール(スギ林;452万、ヒノキ林;257万)であり、森林面積はここ数年横ばい状態であるのに対して、人工林は増加傾向にあります。

そして、多くの人がスギやヒノキの花粉症で苦しんでいるにも拘らず、スギやヒノキの植林が今もなお続けられているという事実もあります。

なぜ、スギやヒノキの植林が盛んに行われたのでしょうか。これらの植林が盛んに行われ始めたのは1950年代から1980年代で、特にスギは70~80年代に急増しております。戦後復興のための建設ラッシュにより大面積の森林が伐採されました。日本の高度経済成長期でもあり国内の木材需要が増加していきました。そこでスギやヒノキは加工しやすく、利用価値も高いので伐採した後に、経済利益だけを考え無計画に植林していきました。

と、この辺りまでは木材が利益なっていましたが、バブル経済に突入し、更に国内需要が増加したことで国内では木材の供給が追いつかなくなりました。そして、円高により安価な外国木材が輸入されるようになり、ここは市場原理が働き木材の値段がどんどん低価格になっていきました。間伐、枝うち+運送料が販売価格を上回るようになり、手間をかければかけるほど赤字となる事態になり、やっていけない林業の方々が増加してきました。日本の林業の現状です。

となったら、今まで管理していたスギやヒノキが管理されなくなり植林した木の3分の2は間伐されるはずが放置され、スギやヒノキの花粉の量も増量するのは誰がみても分ることでしょう。そして、1970~80年代に植林が急増したとなれば、スギが成長する30~40年後である2000年~2020年まではさらに飛散量が増加すると考えてもおかしくないと思います。

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