二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

不妊症と鍼灸治療 3 (3)

2011年05月26日 | 不妊症
今回は、子宮や卵巣の簡単な解剖学的なことや、東洋医学ではどう捉えられているかなどを勉強していきたいと思います。


≪子 宮

子宮は赤ちゃんを育むところですね。

縦は約7cm、横は4cm、重さは50gの逆洋ナシ型というのが子宮のプロポーションです。また、子宮の外側から、漿膜層、筋層、内膜層に分かれています。この内膜層において妊娠する、しないの営みがなされ、赤ちゃんの元である受精卵が育っていきます。
この内膜層はさらに、基底層と海綿層、緻密層に分かれ、海綿層と緻密層のことを「機能層」と言い、この部分が増殖したり剥がれ落ちたりするわけです。


≪卵 巣

卵巣は言わずとも知れた、卵胞が成長し、卵子が排卵するところですね。

おおよそ親指くらいの大きさ…と言っても人によって親指の大きさは違うので数センチといったところでしょうか。左右一つずつ子宮の横に存在します。


≪血 管

~動 脈~
卵巣に栄養を与える卵巣動脈は、腹部大動脈より直接、繋がっています。
子宮に栄養与える子宮動脈は、腹部大動脈から総腸骨動脈、内腸骨動脈を経由して、繋がっています。子宮に入った子宮動脈は、上下に分かれていきます。

二つに分かれた子宮動脈の上の血管は、子宮側壁で卵巣動脈からの血流と吻合します。要は交流するということです。当たり前かもしれませんが、繋がっているんですね

~静 脈~
血液の帰り道である静脈は…
卵巣で、右卵巣静脈は直接、下大静脈へ繋がり、左卵巣静脈は左腎静脈に繋がり、そこから下大静脈へ流れていきます。
子宮や膣の静脈叢は内腸骨静脈へ繋がり、そこから下大静脈へ流れていきます。


≪神 経

子宮、卵巣を始めとする骨盤内臓器は、仙骨のS2~S4から神経の枝を出す陰部神経、同じ部分から出る骨盤内蔵神経、さらに、胸椎から腰椎にかけてのTh11~L4から枝を出す下腹神経により支配を受けています。

陰部神経は、体性神経と言って、骨盤内組織の運動神経と知覚神経を備えた神経です。しかし、この神経はその中に、交感神経性の線維や副交感神経性の線維も含まれています。どこの神経もそうなのですが、内臓に関わる神経はその働きが複雑なため構造も複雑なんですな~これが。

骨盤内蔵神経は、自律神経性の神経線維であり副交感神経性です。また、骨盤の中で仙骨から出た神経が集まって骨盤神経叢をつくっています。

下腹神経は、こちらも自律神経性の神経線維であり交感神経性です。こちらも脊髄から出た神経が集まってお腹の下の方で下腹神経叢を形成しています。

子宮や卵巣周辺も、これら自律神経の集まりがたくさんあることも分かっていますので、自律神経と生理周期、あるいは妊娠などは深~イイ関係があるということもガッテンですね。

鍼灸刺激は、胸椎部、腰椎部、仙骨部にある経穴(ツボ)を重視して使用します。骨盤内臓器の疾患に関しては治療する部分としては欠かせない部分です。ここに刺激をすることで、ポリモーダル受容器などの刺激を受け取る部分から、自律神経を介して、反射的に子宮動脈などの血行を促進することは、様々な研究で現象として発表されています。


ここまで、子宮、卵巣、その動脈、静脈、そして神経について簡単にみてきましたが、要は、すべてが繋がりを持って働いているということです。鍼灸刺激は、適度な刺激(筋膜に圧を加えるような刺激)を与えることで、交感神経の過緊張を改善し、副交感神経優位な状態に保つという作用があります。そのことにより血液循環も改善され、免疫機能のアンバランスも整ってくるんです。


さて、東洋医学的には、生殖器系をどう考えていたのか、いつも簡単で申し訳ありませんが、勉強しておきましょう。


≪東洋医学的 生殖系

東洋医学では、皮膚や筋肉、舌や脈などの体表観察から身体の状態を診て、また、身体に現れている症状などを考え、今、体がどんな状態で、どのように対処(治療、養生)していったらいいか考察するわけです。その一つの方法として、古来より伝わってきた診断方法が、身体を五臓六腑に分けて、その関係性をみていく方法です。

「五臓六腑に沁みわたる

なんて表現をすることがありますが、内臓や腸管など身体の中身全般を指す言葉であり、東洋医学の伝承によって使われている言葉なんですよね。

さて、五臓六腑というのは、五臓が…肝・心・脾・肺・腎、六腑が…胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦 なんですね。六腑の三焦(さんしょう)って聞いたことないと思いますが、これを説明していると本題からづれてしまいましので外します。五臓六腑は表裏関係にあり、臓が陰で腑が陽となります。上の順番のように、「肝」が陰で、それに対応する陽は「胆」と言ったようにです。ちなみに「三焦」に対応するのは「心包(しんぽう)」です。


さて、ここで子宮など生殖器系はどう考えられていたかというと…

「奇恒の腑」の一つに位置付けられていました

「奇恒の腑」というのは、上記の五臓六腑と関係を持たない器官として分けて考えられていました。
 脳・髄・骨・脈・胆・女子胞(子宮など)の六つがそれに相当します。

これらは、五臓のような複雑な生理機能を有さず、六腑のような消化・吸収・排泄などの機能も有していない、または五臓六腑とは直接関係を持たないものを指しています。「胆」に関しては、考え方が少し複雑ですので機会があれば別で話したいと思います。
生理機能としては、陰精を貯蔵、蓄積することです。

「女子胞(子宮など)」は…胞宮、胞臓、子宮、子臓などと呼ばれ、女性の内性器を包括して表現しています。月経、妊娠、受胎の機能を持ち、ちょっと専門的になりますが、衝脈、任脈の始まるところです。

陰精とは腎精のことでもあります。

精とは…「米を磨いてできたエキス成分」という意味で、転じて「人が生きていくうえで必要不可欠なもの」という意味です。
この精は、先天の精と後天の精に分けられ、前者は、親から引き継がれた生命現象の根本のことを言い、後者は、空気による呼吸や食物の消化活動によって、身体を形成し、活動のエネルギーとなるものを指します。

精気とは…人体を構成し、生理機能を営み、外敵から身体を防衛する力であり、身体に偏りなく分布していることが健康な状態であると言われています。

腎精とは…人体の成長、発育をコントロールし、生殖活動の源泉となる「生殖の精」を指しています。「生殖の精」は腎に蔵されるとされているので「腎精」とも呼ばれています。

東洋医学では、奇恒の腑は分けて考えられていますが、「精気」という意味において「腎」と深い繋がりを持っています。そして、生殖機能を考える場合、もう少し深く繋がりをみていくと、「肝」「脾」「心」とも密接に関わっていくのです。そして親から引き継がれ、あるいは、空気や食物から得られた「精気」を「女子胞」にいかに貯蔵、蓄積していくかということが「妊娠」し「出産」するための身体づくりとして大切になるのです。

発生学的に人の身体をみても、胃や腸などの腸管から、生殖器も、肺も、肝臓も、そして脳も分かれて進化してきたようです。そして、生殖器系は腎臓などとともに排泄機能の一つとして進化してきました。

このブログで、解剖学的、東洋医学的、そして、ちょっと発生学的にみてきて、だ・か・ら、何が言いたいのかと申しますと、まず人間は生命維持のためにエネルギーを使うということです。そして、その自分の「命」自体が活力があるところに「妊娠」し、「受胎」し、「出産」する力が向けられるということですね。また、全て繋がりを持って一つの個体として人間というものが営まれているということです。


最後に長文になってしまいましたが、お付き合い頂きまして、ありがとうございます

一人でも多くの皆さまが、赤ちゃんという 宝 を授かりますように

二葉鍼灸療院 田中良和
コメント
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