ここ最近、嬉しいニュースが続きました。
不妊症とは関係ないのですが、当院へ体のケアのため通院している女子トランポリン部の高校生が、6月23日、24日に、スイスのアローザで開催されたトランポリンU‐17国際大会(ニッセンカップ)に出場して見事、 優勝 しました(世界一) 出発直前までケアをしていたので、本当に嬉しかったですね。お土産のチョコレートも、より美味しく感じました
もう一つは、昨日、7月最初の診療で、妊娠反応陽性(体外受精-移植)の報告を受けましたおめでとうございますとともに、まずは第一段階クリアです。今年、当院へ通院されている方で妊娠された女性は4名となります。
嬉しい報告を二つさせて頂いたところで、今回は、生殖という生命の神秘について、夫婦の営みがあり、受精・・・そして、着床までの流れをみていきましょう。
生命の神秘 ~受精から着床まで~
人類の歴史において、太古の昔より変わらず続けられてきたことがあります。それは子孫を繁栄する(生殖)ということです。私たちのご先祖を辿っていき、全ての地球の人のそれを足算すると天文学的数字となります。現在、地球の人口は約70億人です。この全ての人が生命誕生において共通していること、それは、必ず父と母の営みがあって、母から生まれてくることです。
今回は、その生命の神秘についてみていきたいと思います。
☆卵子…女性となる胎児は、受精後5カ月目までに将来卵子になる細胞を700万個も備えています。不思議なことに、そこから出産の頃には100万個~200万個に減り、思春期には20~40万個に減っていきます。一生の間で卵子として放出されるのは、400~500個です。
☆精子…男性の胎児では第6週から思春期になるまで、将来精子となる細胞は備えてはいますが、休眠状態にあります。思春期になると、精巣からのテストステロンというホルモンの働きで精子の生成が始まり、毎日数千万個が生成されると言われており、一回の射精で2~3億個もの精子を放出されます(現在は、この数が減少しており不妊の原因の約半数である男性不妊として問題となっています)。この精子生成機能はほぼ一生涯続けられます。
第1話 『夫婦の営みから受精まで』
☆夫婦の営みにより放たれた2億から3億個(近年は1億個にも満たない場合が多い)もの精子は、卵子へ向かって膣、子宮を通り、卵管の膨らんだ場所(膨大部)への出逢いの旅に出ます。
☆精子には卵管膨大部へ辿りつき、卵子と出逢うまでに幾多の難関が待ち受けています。
①膣内の強酸性…これにより多くの精子が命を失います。
②膣の奥から子宮頸管のはじまりにかけては粘液が栓をしており、そこに免疫機能を持つ白血球が
待ち構え、異物である精子を排除しようとします。
※①・②は身体を細菌から守る免疫システムとして必要不可欠なものです。
☆卵子は精子が出逢いの場所へ到達するのを援助すべくフェロモンのような化学物質を放出して精子をひきつけ応援します。また、頸管粘液も普段より水分量を増し白血球が希釈され、数も減少します。そして子宮筋もその流れを応援し、子宮の奥へ促すように運動します。
☆その試練に打ち克った精子(億という数があったものが数万~数十万個に減少)が子宮に到達し、ここで子宮内において、より受精に優れた精子が選抜されます。子宮からは化学物質が放出され、選抜された精子は一皮むけ、超活性化し、さらに勢いを増して動き始めます。
☆勢いよく子宮内を動きまわるうちに2本の卵管へと導かれます。ここまで到達する精子は100~250個ほどです。卵子は卵管へと化学的信号を送り卵管に収縮を起こさせ、さらに精子を奥へと導きます。そして、精子は卵管膨大部で待っている卵子へ到達します。
☆精子も卵子への到達過程において単に競争しているわけでなく、より受精しやすく、DNAを遺伝しやすい精子を残すため協力します。だ・か・ら数が必要なのでしょう。
☆卵子へ到達した精子は、一斉に卵子に対して受精すべく突撃を開始します超活性化された精子の先端の膜には、第一の障害物である卵丘細胞に穴をあける物質が備わっています。その障害を通り抜けた精子は、第二の障害物である透明帯に接触すると、様々な反応を行い精子の先端に格納されている酵素を透明帯に向け放出し、また、精子の尻尾が最後の力を振り絞る動きにより助けられ、その膜に穴を開けます。そして、最も速く到達した精子が卵子の本体とくっついて精子の遺伝子が、卵子の遺伝子の中へ取り込まれていきます。
ここで受精の成立です。
☆その後、複数の精子が卵子本体へ入り込まないように、卵子表面を包んでいる電気の流れがマイナスからプラスに変わり、特殊な顆粒状の物質が放出され、卵子の周りの透明帯をかたく変質させ、遺伝情報が混乱しないようにします。まさに劇的変化、神のなせる業です。
第2話 『受精から胎児の始まりとして子宮内膜に着床するまで』
☆卵子内にある46本の染色体(DNAという遺伝情報でできた螺旋状の鎖のようなもの)と、精子からの23本の染色体が反応し絡み合います。卵子の余分な23本の染色体は極対というごみ袋のような場所に移され退化していきます。
☆受精卵は、卵管を子宮に向けて2~3日かけて成長しながら移動します。
☆受精卵は、1~2日経過すると2個、4個、8個というように細胞分裂していきます。
☆受精から2~3日経過して、16個~32個ほどに分裂した細胞が桑の実のように見えることから「桑実胚」と言います。桑実胚は子宮に到達し、子宮内膜にある腺の分泌物から栄養を貰いながら2~3日の間、子宮内を浮遊します。
☆さらに細胞分裂を繰り返し4~6日後、100個ほどになった頃には、受精卵内部も劇的に変化し、子宮内膜着床への準備のため機能が分かれてきます。これが「胚盤胞」と言われるものであり、「胎芽の袋」が出来上がります。
☆受精から6日経過すると胚盤胞が育ち、受精卵みずからが酵素を放出して、自分を包んでいた膜に穴を開け、穴から絞り出るように孵化(ふか)します。こうして子宮内膜に直接触れることができる状態となります。
☆ここで子宮内膜への着床が始まります。
☆孵化した胚盤胞は、子宮内膜から伸びた花のような形状をした組織に接触し、胚盤胞の接触部分にある細かい毛のある細胞と絡み合っていきます。その後、胚盤胞内のある細胞が酵素を放出しながら子宮内膜の細胞組織中に切り込んでいき、深く根を張っていきます。
☆この状態に呼応して、卵巣内にある卵胞からはプロゲステロン(ホルモン)が分泌され、子宮が胚盤胞を受け入れ安くし、子宮内膜をさらに栄養、維持していきます。また、白血球や免疫系の情報を伝達するメッセンジャーが母体に対して胚盤胞を異物としないように、受け入れるようなメッセージを送ります。
☆受精から10日ほど経過すると、受胎産物は子宮内膜に完全に潜り込みます。母親の血管が胎盤のもとになる受胎産物からの絨毛組織から伸びたツルに寄り添います。
☆受精から14日の時点で、胎児の芽は、羊水に満ちた風船の中に、守られて浮かんでおり、胎盤に血管が集まって、胎児の芽に栄養を供給する用意が整っています。この時点で女性は、はじめて月経が遅れていると気づくでしょう。
この後、胎児は9か月ほど母体内で大切に育てられ、一つの生命が誕生します。
夫婦が愛し合い、生命が育つ営みを見てきました。これが悠久の人類の歴史の中で、太古から現代まで受け継がれてきています。生命って神秘的ですよね
「おまけ」として、母親のお腹の中にいた時の記憶を持つ子どもたちの言葉を書きます。
~ おまけ ~
ぼくがお父さんと、お母さんをえらんだ。知らないおじさんと空中で浮いていたら、
家の中から笑い声が聞こえてきて、そのおじさんが、「この家でいいかい」と聞いたので
ぼくは「いいです」ってこたえた。 (3歳の男の子)
『ママの おなかを えらんできたよ。』 池川 明 著より
いつの世も、ヒトの体の神秘的なシステム、そして、人智が及ばない深遠なスリチュアル的な部分、多くの機能が働いてます。男女が愛しあい、妊娠し、命が育まれ、出産し、子孫が繁栄され、DNAは脈々と受け継がれていきます。
人生において、当たり前のようなことでも、当たり前でないことがたくさんあります。
生命の誕生を見ただけでも、人は 生かされていると言えるのではないでしょうか。
鍼灸治療は、どの時期に、どのようなメカニズムで効果があるのかは分かっていませんが、子宮周囲の血流を改善することにより、妊娠し胎児を育む力(妊孕性)をサポートし、妊娠、出産の助けとなる一方法であることは言えると思います。そのような研究は、全日本鍼灸学会はじめ、世界においても報告されています。
妊娠しずらい方、妊娠するための身体づくりをしたい方は、一度、鍼灸治療を受けてみる価値はあると思います。いつもでも、ご相談くださいませ