読書日和

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「水族館ガール3」木宮条太郎

2016-09-17 17:21:39 | 小説


今回ご紹介するのは「水族館ガール3」(著:木宮条太郎)です。

-----内容-----
赤ん坊ラッコが危機一髪!?
アクアパークから海遊ミュージアムへ出向中の恋人・梶良平の帰りを待ちわびる嶋由香。
しかし、梶は出向終了後、すぐに内海館長から長期出張を命じられてしまう。
由香もアクアパークの新プロジェクトリーダーに任命され、再びすれ違いの日々に。
しかしそこには館長の深謀遠慮が…。
ラッコやマンボウ、イルカたち、人気者も大活躍のお仕事ノベル!

-----感想-----
※「水族館ガール」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「水族館ガール2」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

書店で「水族館ガール3」が発売されているのを見つけ、帯に「NHKで連続ドラマ化」とあるのが目に留まりました。
主人公である由香役は松岡茉優さんとあり、これは適役だなと思いました。

今作の冒頭、梶は海遊ミュージアムへの出向からアクアパークへ戻るのかと思いきや、出向が延長になります。
一方由香は、内海館長の発案した「もう一歩プロジェクト」のリーダーに名乗りを挙げます。
「もう一歩プロジェクト」とは「現状に満足することなく、それぞれが改善意欲を持ち、自分にとっての『もう一歩』を目指す」というものです。
梶の帰りを待ちわびていた由香は梶が帰ってきた時に成長した姿を見せたいと思いリーダーに名乗りを挙げたのですが、正式に内海館長からリーダーに任命された直後、梶の出向が延長されたことを聞きショックを受けます。
またリーダーが海獣グループの嶋由香ということで、副リーダーには魚類展示グループで由香と年の近い今田修太が任命されました。

内海館長と出向の延長が決まった梶が話す場面で興味深い話題が出てきました。
内海館長によると最近、アクアパークの母体である千葉湾岸市に日本を代表する大企業が頻繁に接触しているとのことです。
中でも主なのが二社あり、一つが博通エージェンシーという業界トップの広告代理店、もう一つが鹿成建設という日本最大級の総合建設会社です。
博通エージェンシーは悪名で有名な広告代理店「電通」がモデルだと思います。
ニ社とも東京へのオリンピック誘致が決まった直後から接触してきていて、誘致決定以降、東京湾岸の再開発が超大型プロジェクトとして騒がれ始めたためとのことです。
水族館は再開発の中核施設の一つと考えられていて、博通エージェンシーや鹿成建設はノウハウがないため、そのノウハウを手に入れるためにアクアパークに接触してきています。
アクアパークを買収して自分達の傘下にしてしまおうと考えているのではと思いました。
この動きについて内海館長は「アクアパークを一部の人のオモチャにはしたくない」と言っていて反発していました。
この動きに対抗するため、内海館長はアクアパークと海遊ミュージアムが姉妹館になることを目指しています。
海遊ミュージアムは水族館のことをよく理解している「ウェストアクア」という民間企業に出資してもらってタッグを組んでいて、アクアパークもそうしようという作戦です。
東京湾岸再開発の利権のことしか考えていない博通エージェンシーや鹿成建設の傘下にされるより余程良いという考えだと思います。
この「ウェストアクアとタッグを組み海遊ミュージアムと姉妹館になる」という目的達成のため、海遊ミュージアムに出向している梶は最前線で極秘裏に交渉する仕事を頼まれます。

由香は6月上旬に瀬戸内海洋大学で行われる海洋学国際シンポジウムに行くことになります。
水族館勤務三年目を迎えた由香にこういった経験を積ませることと、有給休暇をほとんど取っていない由香に出張にくっ付けて有給を取らせるために、岩田チーフが気を使ってくれていました。

物語の中盤から由香はラッコの臨時担当になります。
梶の極秘交渉の仕事と由香のラッコ担当の仕事がそれぞれ進んでいきます。
由香の一瞬の不注意からラッコの赤ちゃんがどんどん死に向かっていく場面は緊迫していました。

また今作でも頑なに由香への恋愛感情を認めない梶が面白かったです。
どう見ても梶も由香のことを意識しているのは明らかなのに「いや、俺があいつを心配しているのは好きだからではなく仕事で失敗しないか心配だからだ」のようなことを心の中でよく言っていました。

今作でシリーズ三作目となりますが話の展開からまだ続編が出そうです。
今作では「~ではないか」という表現を多用しているのが目につき、文章力に少し難があるような印象を持ちました。
そこを改善するとより良くなるのではと思います。


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